情報を制す者はマジックを制す。
特にSNSによる情報交換が盛んな現代、口コミがその後のメタゲームに与える影響は計り知れない。
すなわち、バズってる(話題になっている)カードを知ることは、メタゲームの把握と予測の大いなる助けとなることだろう。
当企画では、そんな「今、バズってるカード」を週刊で追っていきたいと思う。
カードの紹介に入る前に、先週行われたイベントやマジック関連の主な出来事を簡単におさらいしよう。
アメリカでモダングランプリが開催される
先週末、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスにて【グランプリ・ロサンゼルス2016】が、ノースカロライナ州シャーロットにて【グランプリ・シャーロット2016】がそれぞれ開催された。
モダングランプリは今年3月4-6日に同時開催された【グランプリ・デトロイト2016】・【グランプリ・ボローニャ2016】・【グランプリ・メルボルン2016】以来2ヵ月強ぶりで、【2016年4月4日 禁止制限告知】が発表されてからは初のモダングランプリとなった。
《ウギンの目》禁止によりエルドラージ系のデッキは落ち着きを見せ、多様性が取り戻されたモダン環境。2つのトップ8を見渡しても、ビートダウンとコンボとコントロールが同居しており群雄割拠の様相を呈している。
7月10日(日)と9月17-18日(土・日)にはモダンフォーマットで【ワールド・マジック・マジック・カップ2016予選】が開催され、7月16日からはPPTQもモダンシーズンに差し掛かる。モダンは今、最も熱いフォーマットであると言えるだろう。
【『エターナルマスターズ』のプレビューウィーク開始】
今週から【『エターナルマスターズ』】のプレビューウィークが開始された。
このほかにも《吸血の教示者》や《死儀礼のシャーマン》などのカードも続々と公開されている。【マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト】や【公式ツイッターアカウント】などの情報もチェックし、話題に乗り遅れないようにしよう!
主要な出来事はこのくらいだろうか。
さて、それでは今大きな話題を呼んでいるカードたちを紹介しよう。
1. 《ハーキルの召還術》
【グランプリ・ロサンゼルス2016】の決勝戦で親和を使用していた13歳の若き才能・Ethan Brownを破り、見事に優勝を収めたのはマーフォークだった。
モダンの親和とマーフォークの相性差といえば8:2どころか9:1とまで言われるほどの厳しいマッチアップだが、優勝者のSimon Slutskyはサイドボードの《ハーキルの召還術》を駆使して華麗に戦い抜いた。
12 《島》 2 《魂の洞窟》 1 《ワンダーワインの分岐点》 1 《雲の宮殿、朧宮》 4 《変わり谷》 -土地 (20)- 4 《呪い捕らえ》 4 《アトランティスの王》 4 《真珠三叉矛の達人》 4 《銀エラの達人》 1 《幻影の像》 1 《潮縛りの魔道士》 3 《メロウの騎兵》 2 《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》 4 《波使い》 -クリーチャー (27)- |
1 《蒸気の絡みつき》 3 《四肢切断》 4 《広がりゆく海》 4 《霊気の薬瓶》 1 《大祖始の遺産》 -呪文 (13)- |
4 《地盤の際》 4 《ハーキルの召還術》 2 《はらわた撃ち》 2 《呪文貫き》 2 《大祖始の遺産》 1 《潮縛りの魔道士》 -サイドボード (15)- |
11枚のロード(+1枚の《幻影の像》)を《霊気の薬瓶》のサポートによって素早く戦場に並べ立て、《広がりゆく海》+「島渡り」によってブロック不能の攻撃を繰り出す比較的オーソドックスな形のマーフォークデッキ。
基本戦略は比較的シンプルではあるものの、プレイングがシビアで“やり込み具合”が勝率に大きく関わるとも言われているこのアーキタイプ。構築も数枚の微差に好みが大きく出てくるが、サイドボードの《ハーキルの召還術》4枚はほぼ不動の枠である。
展開力と打点の差、そして何よりマーフォーク側にとってはほぼ止めようのない飛行持ちのクロックが多い親和に対してそれだけ不利がつくという事実を裏付ける要素でもあるが、今回のグランプリの決勝の結果からも分かる通り絶対にひっくり返すことのできない勝負ということでもない。構築とプレイング次第で苦手な相手とも渡り合えるデッキの強さは非常に魅力的だ。
また、単色ということもあり比較的組みやすいデッキでもある。これからモダンを始めてみたいと考えている方は、この機会にマーフォークを組んでみるのもいいかもしれない。
2. 《研究室の偏執狂》
【グランプリ・シャーロット2016】で優勝を収めたのはなんとメインボードが62枚のアドグレイスだった。
そのメインボードにひっそりと1枚だけ入れられた《研究室の偏執狂》は、このデッキの新たなキーパーツとなるかもしれない。
1 《島》 1 《平地》 4 《闇滑りの岸》 4 《宝石鉱山》 4 《金属海の沿岸》 4 《欺瞞の神殿》 4 《啓蒙の神殿》 -土地 (22)- 4 《猿人の指導霊》 1 《研究室の偏執狂》 -クリーチャー (5)- |
3 《否定の契約》 4 《血清の幻視》 4 《手練》 4 《天使の嗜み》 3 《大霊堂の戦利品》 1 《稲妻の嵐》 4 《むかつき》 4 《ファイレクシアの非生》 4 《睡蓮の花》 4 《五元のプリズム》 -呪文 (35)- |
4 《神聖の力線》 3 《呪文滑り》 3 《ハーキルの召還術》 2 《思考囲い》 1 《すべてを護るもの、母聖樹》 1 《否定の契約》 1 《殺戮の契約》 -サイドボード (15)- |
基本戦略としては《むかつき》+《天使の嗜み》(あるいは《ファイレクシアの非生》)のコンボによってライブラリーを全て引ききり、《稲妻の嵐》で大量の土地を捨てて勝利するというデッキである。
このデッキの《研究室の偏執狂》はサブの勝ち手段である。《研究室の偏執狂》が戦場にいるときに《天使の嗜み》を唱え、《大霊堂の戦利品》でデッキ内に存在していないカード名を指定することでライブラリーを全て追放し、ドロー呪文を唱えることでゲームに勝利することができる。
もちろん《大霊堂の戦利品》自体がコンボパーツを探す役割も担っており、デッキの動きを阻害しないフィットしたカード選択である。
構成としてはつい先日、2016年5月13-15日に開催された【2015 MAGIC ONLINE CHAMPIONSHIP】に出場していた【Daniel Grafensteinerの使用デッキ】とほぼ同じで、メインボードの《啓蒙の神殿》が2枚増えており、サイドボードの《トレイリア西部》が3枚目の《呪文滑り》に変更されているのみである。
デッキが62枚になっている理由としては、土地の枚数を増やすことによる《稲妻の嵐》の威力増大が考えられる(ごく稀だが、対戦相手のライフがあまり減っていない状況だとゲームを決められないことがある)。
キーカードの《むかつき》と《天使の嗜み》がインスタントであることから対戦相手の不意をついてゲームを決めることができるという点も強みで、回していて非常に楽しいデッキだ。少し変わったデッキを使ってみたい、という方にはきっとご満足いただけるであろうデッキである。
3. 《変位エルドラージ》
さて、少し(?)モダン環境で粗相をし過ぎたエルドラージデッキだが、彼らは《ウギンの目》が禁止されたことで、もう完全に消滅してしまったのだろうか?
答えは否である。今回、【グランプリ・ロサンゼルス2016】ではChannel Fireball所属のプロプレイヤー、Pascal Maynardが《変位エルドラージ》を4枚採用したエルドラージデッキの新たな形「バントエルドラージ」の可能性を示してくれた。
2 《森》 1 《平地》 1 《繁殖池》 1 《神聖なる泉》 1 《寺院の庭》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《魂の洞窟》 3 《低木林地》 2 《ヤヴィマヤの沿岸》 4 《エルドラージの寺院》 1 《幽霊街》 -土地 (24)- 4 《貴族の教主》 1 《極楽鳥》 2 《呪文滑り》 1 《エルドラージのミミック》 4 《変位エルドラージ》 4 《作り変えるもの》 4 《難題の予見者》 4 《現実を砕くもの》 4 《希望を溺れさせるもの》 -クリーチャー (28)- |
4 《古きものの活性》 4 《流刑への道》 -呪文 (8)- |
3 《仕組まれた爆薬》 3 《墓掘りの檻》 2 《頑固な否認》 2 《石のような静寂》 1 《エルドラージのミミック》 1 《世界を壊すもの》 1 《否認》 1 《四肢切断》 1 《引き裂く突風》 -サイドボード (15)- |
過去の青白エルドラージデッキの最大の強みであった《ウギンの目》+《エルドラージの寺院》によって2ターン目に4マナ圏のエルドラージを展開する動きは、緑が足されたことによって1ターン目にマナクリーチャー→2ターン目に《エルドラージの寺院》といった流れで再現されており、安定感は多少落ちたものの事実上2ターン目《難題の予見者》プレイが可能となっている。
《変位エルドラージ》や《希望を溺れさせるもの》でボードを制圧しつつ、搦め手で攻めてくるコンボデッキに対しては《難題の予見者》をブリンクすることでコンボ達成を阻害する。
《ウギンの目》禁止でエルドラージデッキが使えなくなってしまった、というエルドラージ難民(?)も少なくないことだろう。そんな方にこそぜひオススメしたいデッキだ。
いかがだっただろうか?
今週もまた多くのカードがプレイされ、注目され、議論を呼ぶのだろう。
次回の記事も楽しみにしていただけたら幸いである。
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