あなたの隣のプレインズウォーカー ~第85回 あなたの隣のコマンダー2019 (義) 兄弟戦争・因縁編~

若月 繭子

はじめに

「やはり兄弟戦争か……」

昨年の夏頃、このような声がとても多く聞かれました。『基本セット2019』の物語において、ニコル・ボーラスとウギンが双子であったことが明かされました(っていうかそういう設定になりました)。

太古の昔から敵対してきた、そして多元宇宙でも最強クラスの力を持つであろう2体の古龍。彼らにどんな因縁があるのかは長いこと謎でした。その争いが世界を揺るがしかねないような2体の関係は、双子。マジックの物語について多少なりとも知っているなら、あのウルザミシュラを思い出さずにはいられなかったと思います(ウルザとミシュラは同じ年生まれの兄弟であって双子ではないのですが)。

最高工匠卿、ウルザ工匠の神童、ミシュラ
プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス精霊龍、ウギン

そしてマジックの物語にはもう1組、戦争とまではいかずとも有名な「対立する兄弟」が存在します。大叙事詩ウェザーライト・サーガ、その(中盤までの)中核となった2人です。正確には実の兄弟ではなく義兄弟ですが。それが今年、『統率者(2019年版)』にて揃ってリメイクされるとは!

ウェザーライトの英雄、ジェラード姿奪い、ヴォルラス

こんにちは、若月です。2011年に初登場し、2013年から毎年発売されている『統率者』セット。過去の有名キャラクターが盛んにカード化されているということで、この連載でも取り上げるのが恒例です(昨年は飛ばしてしまいましたが)。

今年は「ウェザーライト・サーガ」好きにとって熱すぎるラインナップ、けどやはり一番注目すべきはジェラードヴォルラスでしょう! 今回は『ウェザーライト』から『ネメシス』に渡るこの2人の物語を解説します。なお各セットの詳細については過去に書いていますので、そちらを参照して頂ければ幸いです。

1. ジェラードの今昔

やはりまずこれに触れねばなりません。ウェザーライト・サーガの主人公、《ジェラード・キャパシェン》。伝説的なヒーローであり……公式にて繰り返し「失敗だった」と言われ続ける伝説のクリーチャー・カードでもあります。

公式記事「物語のためのデベロップ」より引用

同時に、我々は主人公である《ジェラード・キャパシェン》で問答無用の大失敗をしでかしました――彼の叙事詩的な立場に沿うべきであったそのクリーチャーは、そうならずに永遠にクソレア箱に追いやられてしまったのです。

公式記事「あるヴォーソスのオリジン」より引用

マジックには多くのフレーバーの成功がありますが、我々はまたフレーバーの失敗も知っています。《ジェラード・キャパシェン》は実際に《サーボ・タヴォーク》を殺せません。

公式記事「読者からのお便りコーナー」より引用

たしかに、テーマ性と競技性の間にも線引きはあるね。例えば、「ウェザーライト号の乗組員」をテーマにしたデッキは、トーナメント・シーンとはまったくの無縁だろう――私の認識している範囲では、《ジェラード・キャパシェン》がレガシー環境を席巻したなんて事実はないよ。

ジェラード「ちくしょう、覚えてろよ!」(※記事中、《ジェラード・キャパシェン》に付けた吹き出しの台詞)

公式記事「タルキール回顧録」より引用

ジェラードやカマール、グリッサ、ラーダのようなマジックの物語の重要なキャラクターの何人かは、何もしないカードしか作られませんでした。そして私は、我々がそれらのセットにおいて人々がそのキャラクターで興奮する機会を逃したと考えています。

公式記事「カードの登場 その2」より引用

こうして、このカードは、私にとって、ウェザーライト号の乗組員の中で飛び抜けた失敗作になったのだ。

1つ目に、ジェラードは赤白の人物だ。まして、彼のカードは敵対色のセットである『アポカリプス』にあるのだ。なぜ我々が彼を赤白にしなかったのか、理解できない。2つ目に、彼の2つの能力はメカニズム的にもクリエイティブ的にも噛み合っていない。3つ目に、あれだけの期待があったカードなのに、我々はまったく推さなかった。

最終的に、誰もプレイしたいと思わないような、フレイバーの欠けたカードになった。何年も昔に作られたカードではあるが、公式に謝罪したい。将来、ジェラードをもっと公正に表したカードを作る機会が与えられることを祈っている。

ジェラード・キャパシェン

改めてこうして列挙するともう可哀想になってくるレベルだ。私もあまり否定的なことは書きたくないのですが、確かに「長く壮大な物語のクライマックスにて遂にカード化された主人公」としてはあまりにも……でした。最初にジェラードのカードとして意図されたのであろう《武芸の達人》、そしてジェラードの名を冠するかつての有名カード《ジェラードの知恵》を意識している、というのはわかるのですが。

武芸の達人ジェラードの知恵

一方で近年、主に統率者系セットにて過去の主要キャラクターが盛んにカード化されるようになり、同時に既出キャラクターの「リメイク」もちらほらと見られるようになりました。先陣を切ったのは『統率者(2017年版)』の《ウェザーライトの決闘者、ミリー》、そして『モダンホライゾン』の《ウェザーライトの艦長、シッセイ》が記憶に新しいかと思います。

ウェザーライトの決闘者、ミリーウェザーライトの艦長、シッセイ

そんな感じだったので、また上で挙げたように公式記事でも盛んに言及されていたことから、「そのうちジェラードのリメイクが来るのでは」と噂されてもう長い時が経っていました。上記の通りシッセイは『モダンホライゾン』でリメイクされたので、やはりそろそろジェラードも……という期待が高まっていたところで、やってきました今年の統率者。

(大まかに訳)「新登場の赤白統率者は、新たなデッキタイプを組ませてくれるものだ。全マジックでも最も有名な登場人物の一人が、遂にそのレガシーを正当に扱うのだ。そしてこの素晴らしいアート! 世界よ、これが《ウェザーライトの英雄、ジェラード》だ」

おお!!??上で引用したように確かに赤白ですが、攻撃的なジェネラルじゃない赤白統率者は新しい!確かにジェラードは、(例えばギデオンのような)戦闘能力特化のキャラクターというわけではないのですよね。ところで私はこのカードテキストを見て、はっとすると同時に切なくなりました。

《ウェザーライトの英雄、ジェラード》

ウェザーライトの英雄、ジェラードが死亡したとき、これを追放し、あなたの墓地にあるアーティファクトやクリーチャーであってこのターンに戦場からあなたの墓地に置かれたカードをすべて戦場に戻す。

「死亡したとき」。ああ、知ってるけど、死亡する……。『アポカリプス』の発売は今から18年以上前の2001年6月、物語ネタバレとかもう気にすることもないかと思いますが。ジェラードはその身を捧げてレガシーのアーティファクト群とひとつとなって(《レガシーの兵器》)、ヨーグモスを滅ぼしてドミナリアを救いました。もし当時これがジェラード本人のカードとして出ていたら、「そうか、ジェラードまでも死んでしまうのか……」みたいに受け取られたのでしょうかね。

《ウェザーライトの英雄、ジェラード》フレイバーテキスト

ジェラードが最後にとった行動は、決して滅ぶことのない彼の遺産をはっきりと残した。

そしてこの美麗なアート。ウェザーライト号の船体と翼をイメージしているのであろう背景には、共に戦った乗組員の姿が描かれています。

左はシッセイターンガーススクイー。この3人は話中で死亡することなく、『アポカリプス』後もドミナリアで生きました……スクイーに至っては今も生きているようです。右はカーンオアリムミリー、それぞれドミナリアから旅立った3人です(ミリーは「ラースで死亡」ではありますが……)。上はもちろんジェラードの最愛の恋人であり、ファイレクシアの疫病によって死亡してしまったハナ。物語の終盤では、彼女の姿を模した船首像がウェザーライト号に取り付けられました。

メイン乗組員としてはもう2人、クロウヴァクスアーテイがここには描かれていません。これは物語途中でファイレクシア側に回ってしまったからなのでしょうね。そうならざるを得なかった、不可抗力なところもあったのでちょっと可哀想ではあります。

2. 前日談~ウェザーライト

それでは物語に入りましょう。ジェラードの血筋であるキャパシェン家は、ウルザによるドミナリア防衛計画のひとつである「血統計画」によって生み出されました。ですがそれはファイレクシアに察知され、一族は皆殺しにされてしまいます。幼いジェラードだけが《銀のゴーレム、カーン》に連れられて逃げ延び、《ジャムーラのシダー・コンド》へと預けられました。(とはいえ、他にも生き残りがいたことが後に明らかになるのですが。『ドミナリア』の《模範となる者、ダニサ・キャパシェン》《艦の魔道士、ラフ・キャパシェン》はその子孫です)

ジャムーラのシダー・コンド

そこでジェラードは、シダー(「将軍」の意)・コンドの息子ヴュエルと共に育てられました。2人はそれなりに仲の良い間柄だったようですが、ヴュエルの内には嫉妬と怖れがありました。後にラースから工作員スタークが送り込まれ、ヴュエルを暗黒面へと誘い込み始めました。

やがてヴュエルが成人の儀式を受ける時が来ます。それはシダーの正式な後継者となるために不可欠のもの。その直前、スタークはヴュエルに毒を盛りました。儀式は、現地の切り立った崖を誰の力も借りずに1人で登り切るというものですが、ヴュエルはその毒によって、途中で身動きが取れなくなってしまいます。ですがそこでジェラードが義兄を救うべく、崖を登ってヴュエルを助け出しました。命こそ助かりましたが、ヴュエルはなぜそのまま死なせてくれなかったのかと怒り狂いました。成人の儀式に失敗したことで、部族や父親から落伍者とみなされるのです。

絶望と共に部族を離れたヴュエルへ、再びスタークが近づくと力の誘惑と復讐を囁きました。ヴュエルはジェラードへの復讐を誓い、スタークの元で2年間を過ごした後に自分の父親を含む部族を滅ぼしてしまいました。一方ジェラードはまたも逃れ、今度はヤヴィマヤにて《マローの魔術師ムルタニ》の保護下に入るとともに、そこで出会った《猫族の戦士ミリー》《ラノワールの使者ロフェロス》と友情を育みました。

猫族の戦士ミリーラノワールの使者ロフェロス

後に3人は揃ってシッセイ艦長率いるウェザーライト号の乗組員となりました。シッセイもまた、ウルザが定めた運命の一員だったのです。ジェラードは航行長のハナと恋仲になり、充実した日々を過ごしていきました。

艦長シッセイ航行長ハナ

ですが《ガロウブレイド》《モリンフェン》との戦いにおいて、ロフェロスが命を落としてしまいます。最初は家族や養父、そして今度は親友。自分の運命が負うものの重さを知ったジェラードは船を降りることを選びました。そしてしばしベナリア軍に身を置いていましたが、状況は否応にも彼を再びウェザーライト号へ引き寄せました。

ある日、ミノタウルスの乗組員、一等航海士ターンガースがジェラードを呼び戻しにやって来ました。シッセイ艦長が荒廃の王の下僕に誘拐されたと言うのです。

航海士、ターンガース

ターンガースも今回リメイクですね!《タールルームの勇士ターンガース》とは身体の色が異なるのがわかるかと思います。元々、彼はこのように茶色をしていたのですが、ラースにて変質させられた結果、あの姿になってしまったのでした。

シッセイが誘拐された、その知らせにはジェラードもさすがに愕然となりました。どこまでも運命からは逃れられない……ターンガース自身もジェラードが決して好きではありませんでしたが、説得しなければならない自分の立場も、仲間の願いもわかっていました。いい台詞がありますので紹介します。

小説「Rath and Storm」P.30-31より訳

「お前がその生き方を選んだことで、ロフェロスが死んだのは事実だ。お前がレガシーを、お前の運命を追い求めることを選んだために死んだ」

ジェラードは冷笑するように返答した。「その通りだ。そしてもう誰もそんな目には遭わせたくない」

「なら、シッセイはお前のその選択によって死ぬことになるだろう。お前はいつも、やるかやらないかの理由を探す。今回の理由は、」そこでターンガースは言葉を切り、顔を上げて声を強張らせた。「俺達も、お前が必要だからだ。ハナは集めたレガシーを調べながら言っている、ラースにいるシッセイに辿り着くためには、お前が唯一の希望だと。あいつも死なせるな。確かにお前はロフェロスを守れなかった。だがお前がシッセイの唯一の希望なんだ」

ハナの名前を出されたジェラードは、ふっと心が緩むのを感じました。共に過ごしたその記憶を悲しいものにしてしまうのは、死ぬよりも辛いことのように思えたのです。ジェラードは少し時間を貰うと、軍での厄介事を片付けて再びウェザーライト号に加わりました。自分の運命を受け入れたわけでも、吹っ切れたわけでもありませんでした。けれど今のところは、仲間のために戦うつもりでした。

3. テンペスト~エクソダス

そしてドミナリアでさらなる仲間を集めて、ウェザーライト号はラース次元へと突入しました。すでに長くなっていますので、ジェラードとヴォルラス以外のところは簡潔に進めます。詳細は第33回38回44回を参照して下さい。

■テンペスト

すぐに、ウェザーライト号は襲撃を受けました。敵要塞の主ヴォルラスに送り込まれた禍々しい旗艦プレデター、それを率いるのは恐るべき戦士、グレヴェン・イル=ヴェク。ヴォルラスによって脊髄移植を施されている彼は、隷属という屈辱を敵への熱烈な憎悪に変えて戦います。

司令官グレヴェン・イル=ヴェク旗艦プレデター

グレヴェンは配下のモグを率いてウェザーライト号に飛び移り、乗組員との戦いが始まりました。ジェラードがグレヴェンと対峙しますが、傷を負わされてしまいます。

手加減なしサディスト的喜び

新ジェラードのアートでは口元に傷があるのがよく見えますが、これはこの時についたもの。続いてプレデターからの熾烈な砲撃を受け、ウェザーライト号が激しく揺れた際に、ジェラードは船から落下してしまいます。グレヴェン達は撤退し、そしてウェザーライト号もまた眼下の森へと墜落していきました。

突然の衝撃断念落下中断

ジェラードは幸いにも深い森の植生に落ちたことで死を免れていました。ですが、そこは凶暴な怪物が跋扈するスカイシュラウドの森。ジェラードは逃走し、やがて森に住まうヴェク族に救出されました。彼らは要塞の勢力に抵抗する人間種族で、スカイシュラウドのエルフとも志を同じくしていました。そして保護されていたジェラードのもとに、彼の生存を信じて捜索に出ていたハナとミリーがやって来ます。

再会を喜び、全員が状況を把握すると直ちに要塞への侵入作戦が練られました。スカイシュラウド・エルフとヴェク族が陽動を起こし、ウェザーライト号は後方から密かに接近するというものです。そして、ウェザーライトは墜落の際に次元航行装置を損傷していましたが、要塞からそう遠くない位置に次元間ポータルがあるという情報を手に入れました。そちらの調査と起動には、ウェザーライト号の魔術師であるアーテイが向かうことになりました。

ラースの灼熱洞ラースの死の奈落

ウェザーライト号はスリヴァーの群れが生息する灼熱洞を乗り越え、要塞直下に広がる死の奈落を抜け、密かに要塞へと横づけにされました。

■ストロングホールド

シッセイ艦長を救出すべく、ジェラード達は要塞へと侵入します。案内人はかつてヴォルラスに仕えており、艦長の誘拐においても手を引いたスターク。決して信用ならない彼ですが、娘タカラを誘拐されたためにそうせざるを得なかったと告白し、今はジェラードへと忠誠を誓っていました。

ラースのスターク

いくつかの遭遇を経て一行は地図室に入ります。そこにあったのは、巨大な機械に囲まれた青い球体でした。空を飛ぶ船の乗組員達は、それがドミナリアの地図であることを即座に認識しました。さらに、そこには軍隊の移動や攻撃の計画が記されていました。このラースの敵は、ドミナリアへの侵略を計画している……

侵略計画

一方、外ではスカイシュラウド・エルフとヴェク族による攻撃が始まり、戦力がそちらへ向かったことで要塞内の警備が薄くなっていました。ですがエヴィンカー(支配者)のヴォルラスはそれを把握していました。

覚醒沈思黙考

拷問室研究室を越え、プレデターとの戦いで連れて来られたカーンとターンガースを救出し、さらに一行は進みます。次第にジェラードは、敵の長であるヴォルラスについてひとつの確信を深めていきました。途中《闇の天使セレニア》の襲撃によってミリーが重傷を負い、クロウヴァクスも呪いを受けてしまいます。彼らをターンガースとカーンに任せ、ジェラードはスタークだけを伴って艦長の捜索を続けました。

ドリーム・ホール

そして辿り着いたのはドリーム・ホール、ヴォルラスの私室であり要塞の中枢です。そこではヴォルラス自身が2人を待ち受けていました。その部屋に入るや否や、いくつもの映像が映し出される様にジェラードは目眩を覚えます。

それは――自分とヴュエルの過去でした。共に遊ぶ少年時代。あの成人の儀式。養父の死。人間ヴュエルの姿が、恐るべき怪物へとゆっくり変質していく様子……ジェラードの予感は確信となりました。ヴォルラスは義兄ヴュエルだったのです。シッセイ艦長を誘拐した一連の陰謀は、ヴュエルが義弟に対して企んだ復讐でもあったのです。

ヴュエルは部族を滅ぼした後、スタークによってドミナリアではない世界へと送り込まれました。そこで何があったのかを彼は多くは語りません。ただ「永遠の時を苦しみ、肉体と魂を捨て、多大な犠牲を払って前任者から玉座を勝ち取った」のだと。ともかく時を経て再びスタークの前に姿を現したヴュエルは今の――ヴォルラスの姿となっていたのでした。

ヴォルラスは支配者としてラースに君臨するとともに、多元宇宙の様々な生物に興味を抱いて研究や実験を行っていました。今回のアートはまさしくその様子ですね。スリヴァーをその起源となる次元(どこなのかは未だ不明ですが)からラースに持ち込んだのもヴォルラスなのだとか。要塞のそこかしこにヴォルラスの「研究成果」があり、ジェラード達もここに至るまでに何度も遭遇していました。

ヴォルラスの召使いヴォルラスの研究室ヴォルラスの多相の戦士

ちなみにテンペスト・ブロックのずっと未来、『次元の混乱』の物語にて敵として立ちはだかる狂気のシャドー、Weaver King(織手の王)もそういった実験体の成れの果てです。

ジェラードはヴォルラスへ襲いかかろうとしましたが、その前にシッセイとタカラが姿を現しました。明らかに2人は操られている様子でした。スタークはタカラを止めようとしてその剣を両目に受けてしまい、ジェラードは撤退しようとするヴォルラスを追いかけます。そこに突然ターンガースが現れてヴォルラスの逃げ道を塞ぎ、挟み撃ちにするとジェラードは渾身の突きをヴォルラスに与えました……が、それもまた要塞でこれまで倒してきたようなシェイプシフターでした。

軽蔑強打スケープゴート

ヴォルラスは本人ではありませんでしたが、シッセイとタカラは正気を取り戻していました。ようやく、ラースへと侵入した目的が果たせそうでした。

■エクソダス

遁走

救助した2人を連れ、ジェラード達は再びウェザーライト号を目指します。《ヴォルラスの庭園》にて船に合流しようとしますが、グレヴェンが彼を追っていました。庭園ではそれだけでなく、船で療養していたはずのミリーとクロウヴァクスが死闘を繰り広げていました。ジェラードにはわかりませんでしたが、セレニアを殺して呪いを受けたクロウヴァクスをミリーは止めようとしていたのでした。ミリーを助けるべきか彼は躊躇しましたが、彼女を見捨てる苦渋の決断をすると船に乗り込みました。

屠殺

ウェザーライト号は《スカイシェイパー》の力を得て全速力でポータルへ向かいます。そこでは乗組員のアーテイがポータルを開いて待ち構えていました――けれど背後にプレデターが迫っており、減速してアーテイを乗せる余裕はありませんでした。ウェザーライト号がポータルを抜けた瞬間、なぜかそれは閉じられてしまいました。乗組員たちは知るよしもありませんでしたが、それはプレインズウォーカー・ウルザの仕業でした。

移ろいの門精神力

シッセイ艦長を救出し、ウェザーライト号はポータルを抜け、ともかくラースからの脱出には成功しました。クロウヴァクス、アーテイ、ミリーの3人を見捨てることにはなりましたが……。

そう、ウルザが唐突に登場してテンペスト・ブロックの物語は終わります。その次は『ウルザズ・サーガ』、つまりそこに続くためなのだろう……というのはわかります。続くウルザブロックは「過去編」としてウルザの生涯やファイレクシアとの因縁、ウェザーライト号の誕生などが1年をかけて描かれました。 ですがテンペスト・ブロックを振り返ってふと疑問に思うのです。敵ボスであり宿敵であるはずのヴォルラス本人が、結局ジェラード達の前に姿を現さなかったような?と。

4. 続きます

すみません、ここまでですでに長くなってしまいました。ですがジェラードとヴォルラスの決着はポータルを抜けた先、『メルカディアン・マスクス』でじっくりと語られます。

次回「決着編」もすぐに掲載されますので、少々お待ちください。

(続く)

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若月 繭子 マジック歴20年を超える古参でありながら、当初から背景世界を追うことに心を傾け、言語の壁を越えてマジックの物語の面白さを日本に広めるべく奮闘してきた変わり者。 黎明期から現在までの歴代ストーリーとカードの膨大な知識量を武器にライターとして活動中。 若月 繭子の記事はこちら