あなたの隣のプレインズウォーカー ~第38回 ストロングホールド物語もリマスター~

若月 繭子

若月 繭子


 こんにちは。若月です。

 さてウェザーライト・サーガの物語。原語小説こそ電子書籍化されているので今も読むことはできますが、何せ15年以上前のエキスパンション。当時の「Duelist」誌などに掲載されたままの記事もあり、資料は散逸し始めています。私なりにできればどこかで文章にしておきたい、という気持ちはずっと以前からありました。ですが長い間踏み切れなかった理由もあります。


「最後まで書かないといけない」



※イメージです

※画像は【What’s New With What’s Old?】より引用させていただきました。


 「当たり前だろ」と思われるかもしれませんが、何せ4ブロック以上にも渡る壮大な、そして膨大な数のキャラクターが織りなす物語です。扱い始めたとしても一体いつまでかかるのか、中だるみせずに書ききることができるのか。そして最近のプレイヤーにとってそんな大昔の話は果たして面白いのか。そんなわけで「お試し」的に第33回を書かせていただいたのですがこれがありがたいことに驚くほど好評で、続きのリクエストもかなりの数をいただきました。
 
 というわけで今後ゆるく不定期にお届けしていくことになりそうです。よろしくお願いいたします。



1. 懐かしいカードの話

 第33回でも述べましたが、テンペストブロックのカードには今なおトーナメントで使用されているものが多く存在します。『テンペスト』の発売年は1997年、『ストロングホールド』『エクソダス』が翌1998年。日本語版が発売されるようになったのが1996年(基本セット第4版)ですから、ようやく母国語でマジックが遊べるようになってだいぶ敷居が下がり、また「スタンダードのローテーション」も制定されて今日にまで至るマジックの基本システムが確立した、そんな頃です。それでいて黎明期のエキスパンションのように「一部のカードがぶっ壊れている」というわけでもなく。これはよくよく考えたら凄いことですよね。

 個人的な思い出話になりますが、私がテンペストブロックで一番愛用していたカードは《スカイシュラウドのエルフ》でした。


スカイシュラウドのエルフ


 緑だけでなく白と赤のマナも出せる、何気ないコモンのマナエルフ。当時のスタンダードには《宝石鉱山》《知られざる楽園》《真鍮の都》《反射池》と多色土地が充実しており、「5CG」のような多色デッキが盛んに使用されていました。ですがそういったカードはやはり値段が張ったことから(《極楽鳥》も当時は高かった)、私は緑単デッキにこのエルフや《水蓮の花びら》を入れて《解呪》《ケアヴェクの火吹き》を打つという「3CG」を愛用していました。《スカイシュラウドのエルフ》は「マナフィルター」のようにも機能することから一枚場に出ていればよく、白と赤のカードもシンボルの濃さを気にすることなく色々入れられたのが楽しかったですね。

 まあそれはともかく、今回お話しする『ストロングホールド』の有名カードはこのあたりでしょうか。


罠の橋


 赤単やMUDに欠かせない《罠の橋》。物語的には意思を持つように動く「流動石」製の橋です。


モックス・ダイアモンド


 《モックス・ダイアモンド》は現代流に調整されてもなお、MOXの名に恥じぬ強力マナアーティファクトです。つい先日もレガシーGPで優勝した土地単のキーカードとして話題になりましたね。


マナ漏出


 何度も再録され、すっかりモダンの定番カウンターとなっている《マナ漏出》


スリヴァーの女王水晶スリヴァー


 忘れてはいけない、今も多くの愛好家がいるスリヴァー達。


ヴォルラスの要塞


 そしてこのエキスパンションの舞台である敵の本拠地、《ヴォルラスの要塞》。今も時折レガシーのジャンドやアグロロームで見るこのカードから、『ストロングホールド』の物語は始まります。



2. ストロングホールドの物語







クリックすると拡大します。



 「ストロングホールド/Stronghold」とはまさしく「要塞」の意味。主人公達が突入する場所がそのままエキスパンション名になっています。ちなみにエキスパンションシンボルはその門である《落とし格子》


落とし格子


 ヴォルラスの要塞は空にまで達する巨大な火山の中に位置し、その真下には《裏切り者の都》があります。要塞は巨大工場でもあり、流動石(第33回参照。ラースの地表を覆う、意思を持ったように流れる岩石)を生産してはラースの境を押し広げています。

 『テンペスト』は、ウェザーライト号がいよいよこの要塞に近づいたという所で終わっていました。『ストロングホールド』はそのまま続きから始まります。密かにウェザーライト号は要塞へと横付けされ、スタークを案内役としてジェラードミリー、クロウヴァクスを加えた4人が内部に侵入します。今や救出対象はシッセイ艦長だけではありませんでした。《旗艦プレデター》との戦いで連れ去られたカーン(とレガシーのアーティファクトもろもろ)、それを追いかけていったターンガース。そしてスタークは要塞への人質である娘タカラを、クロウヴァクスは愛する守護天使セレニアを探すことが目的でした。

 スタークを先頭に、一行は要塞内を注意深く進みます。外ではスカイシュラウド・エルフとヴェク族の連合軍が攻撃を開始し、要塞には警戒態勢が発令されました。それによって要塞内の警備は薄くなり、ジェラード達は容易に探索することが可能となりました。ですがこれも要塞の主ヴォルラスの策略でした。彼はジェラード達の侵入を察しており、高みの見物をしていたのでした。


沈思黙考


 敵ボス(なのだろうと思われていました、当時は)であるヴォルラスは『テンペスト』から幾つかのカードに姿を現していました。見るからに恐ろしい《司令官グレヴェン・イル=ヴェク》を易々と従える様、また鎧なのかそうでないのか一見よくわからない謎めいた身体構造は明らかな「強キャラ」オーラを醸し出していました。

 道中ジェラード達は「地図室」に入り、そこで巨大な機械に囲まれた青い球体を目撃します。そこには何かの模様が――空を飛ぶ船の乗組員達にはすぐにわかりました。それはドミナリアの地図。そしてよく見ると、そこには軍隊の移動や攻撃計画が記されていました。仲間を救出にやって来たこの異世界、ですが今や彼らはドミナリアの全てが危機にさらされていると知ります。


侵入警報侵略計画


《侵略計画》フレイバーテキスト
ジェラードはミリーが見守る中で地球儀を調べた。そして、突然、目を大きく見開いた。「これはドミナリアだ!」



ジェラードは、無論のこと、それについては何もわからなかった。だが地図から彼はヴォルラスが意図する何らかのものを悟った。彼はその小さな像を動かした、プレデター号の模型もその中にあった。彼はグレヴェンの船の航跡から、暗黒の帳がベナリアを覆っていくのを見た。同時に、ドミナリアとこの永遠の暗闇との間に立つのは、自分とレガシーだけなのかもしれないと思ったのだった。

―――小説『Rath and Storm』より訳


 地図室を出るとスタークの案内で一行は監房へ向かい、そこでカーンとターンガースを発見します。二人は解放されますが、共に心身への激しい拷問を受けて苦悩の最中にありました。ターンガースは(前回グレヴェンに殺された)《ヴァティ・イル=ダル》の副官候補として「仕込まれる」ことになり、肉体への激しい拷問が加えられた上に醜く変化させられていました。一方で肉体的拷問は用をなさないカーンは揺れ動く密室に多数のモグとともに押し込められ、そのずっしりと重い銀の身体がモグを潰すことにより、「他人を傷つけない」という彼の誓いを破らせるという精神的苦痛を与えられていました。凄く手の込んだ嫌がらせだ……。


拷問室責め苦


 ともかくも二人を救出し、先へと進んだ一行は《ヴォルラスの研究室》を発見します。そこではガラス製の筒の中にシッセイが囚われていました。ジェラード達は艦長を解放しますが、それは《ヴォルラスの多相の戦士》の一体でした。それを倒し、彼らは更に要塞奥深くを目指しました。

 さらに先へ進むと突然、セレニアが何処からともなく飛来し、クロウヴァクスへと襲いかかりました。ミリーが飛び出しますが、彼女はセレニアの剣に切り裂かれてしまいます。クロウヴァクスは涙ながらにセレニアと戦いますが、彼女は抵抗せずにクロウヴァクスの刃を受けて砕け散りました。その破片は渦を巻いて舞い、最愛の天使を失って泣き叫ぶクロウヴァクスへと飛びかかり、そして彼もまた傷ついたミリーの隣に倒れました。

 クロウヴァクスはひたすらセレニアを求めてここまでやって来ました、なのにその手で彼女を殺害してしまうことになります。そもそも、そのセレニアとは。二人の関係は。


闇の天使セレニア

庇護の天使ミューズの囁き弱体化


《庇護の天使》フレイバーテキスト
私の家族は彼女の光で守られていたから、危険は近づいてこようとさえしなかったよ。
―――クロウヴァクス


《ミューズの囁き》フレイバーテキスト
彼女の歌を聞いていて、それが葬送歌だと気がついたんだよ。
―――クロウヴァクス


《弱体化》フレイバーテキスト
クロウヴァクスはセレニアが飛翔鑑プレデターをウェザーライトへ先導していくのを目撃していた。甲板の上で激しい戦いが始まると、彼は彼女の裏切りのショックで、力が萎えるのを感じた。


 彼女はクロウヴァクス一家の守護天使でした。かつてクロウヴァクスはセレニアへの愛からその守護天使としての任務から彼女を解き放ち、自分の愛に応えてくれるよう願いました。ですが彼女はクロウヴァクスの手を離れ、何処か遠くへと飛び去ってしまったのです。遥かラースまで。それは何故?はっきりしたことはわかっていませんが、手がかりになりそうなものが『ウルザズ・サーガ』の一枚のカードにあります。


迫害


《迫害》フレイバーテキスト
私のもっともすぐれた戦士は、ファイレクシア人の手にかかった。セレニア嬢が尊厳ある死に方をしたことを祈る。
―――大天使レイディアント


 時間軸的には『ウルザズ・サーガ』の方が過去です。はっきりした一次資料が見つからなかったのですが(昔の物語はこれが辛い)、セレニアはファイレクシアの工作員としてクロウヴァクス一家を監視していた、のでしょうか。ともかく、他の者達にはわかりませんでしたが、このとき彼はセレニアを殺したことによって呪いを受け、吸血鬼と化してしまったのでした。


死の一撃呪われたクロウヴァクス


《死の一撃》フレイバーテキスト
張りつめた一瞬の後、凍りついたように動かぬセレニアにクロウヴァクスの刃が振り下ろされた。闇の天使はガラス細工のように粉々に砕け、クロウヴァクスは自分の精神が崩壊するのを感じた ――― 呪いは実現したのだ。


 さて負傷者が発生したことにより、彼らは二手に分かれます。ジェラードとスタークは要塞内の捜索を続け、ターンガースとカーンがミリーとクロウヴァクスをウェザーライト号まで運ぶ。ですがカーンはもう一つの役割を自覚していました。それは奪われたレガシーを取り戻すこと。

 彼はターンガースとも分かれて一人レガシーの気配を追い、そして《スリヴァーの女王》に遭遇しました。彼女はヴォルラスが収集したレガシーの防御を任せられていました。カーンはレガシーを返してくれるようにと女王を説得し始めました。全てのスリヴァーが女王の一部であるように、レガシーは自分の一部なのだと。

 女王を説得するカーンの言葉が《給食スリヴァー》のフレイバーテキストにあります。


《給食スリヴァー》フレイバーテキスト
「あんたがたと私は親戚なんですよ」とカーンはスリヴァーの女王に言った。「あんたがたが完全なものになるためには子供が必要でしょう。私も自分を完全なものにするためにはレガシーの品が必要なんです」


 スリヴァーの「集団意識」を持つ女王はカーンの説得と心情を理解し(《心変わり》)、レガシーを彼へと返還します。ですがこの後の女王の運命は定かではありません。ともかくカーンはウェザーライト号へとレガシーを持ち帰りました。

 一方ジェラードとスタークは要塞の中枢、《ドリーム・ホール》へと入ります。そこではヴォルラス本人が彼らを待ち構えていました。


ドリーム・ホール


 このドリーム・ホールにて、ジェラードは一連の事件の真実を知ります。ヴォルラスの正体はかつての義兄、ヴュエルが悪へと堕ちた姿でした。

 ジェラードは幼い頃、北ジャムーラの将軍シダー・コンドーの元に預けられ、その息子ヴュエルと乳兄弟として育てられました。二人は表向きは仲良く成長したようです。




※画像は【魔法の軍団】より引用させていただきました。クリックすると拡大します。


 ジェラードの育ての親シダー・コンドー。伝説のクリーチャーではありませんが、「Vanguard」にてカード化されています。

 やがてヴュエルが成人の儀式を受ける日が訪れました。それは村の高い崖を自らの力だけで登りきるというものです。容易いと思われたその試練ですが、ヴュエルは途中で不自然な体力の消耗に見舞われて行き詰まり、動けなくなってしまいます。登ることも降りることも叶わず、そのまま落ちるに思われたそのとき、義弟ジェラードが「先に崖を登って成人の儀式を勝手に果たした」後、身動きできないヴュエルに手を伸ばしてヴュエルを救い出したのでした。

 ですが命こそ助かったものの、彼にとってそれは失敗と屈辱以外の何でもありませんでした。彼は部族を去り……そしてやがて復讐の為に戻ってきました。ヴュエルは生まれ育った部族を滅ぼしますが、最も復讐を望む相手、ジェラードの姿は何処にもありませんでした。その後彼はラースへと渡り、その地の支配者の座に就きました。「ヴォルラス/Volrath」の名は「Vuel of Rath」から来ているのだそうです。シッセイ艦長を誘拐したのは、ジェラードをこの次元へとおびき寄せ、復讐を遂行するためだったのです。


墜ちたる者ヴォルラス


 ヴォルラス本人のカード化されるのはしばらく先、『ネメシス』にて。「墜ちたる者/ Fallen」という二つ名はその物語内での立ち位置でもあり、悪に堕ちた過去からのものでもあり……

 更にジェラードは知らないながらも、ヴュエルをその堕落への道へ導いたのはスタークでした。ヴュエルに暗黒の才能を見た当時のラースの支配者はスタークを工作員として送り込み、彼が悪の道へ進む算段をさせたのでした。後にスタークの前へと現れたヴュエルはそれを全て知り、娘タカラを誘拐して今度は自分に従わせます。

 そのようにスタークはヴォルラスとの繋がりを持ち、シッセイの誘拐に加担しながらも今度はジェラードに手を貸してその救出の手引きをする《二枚舌》の人物……とはいえ今の彼の一番の目的は、自分自身よりも大切なただ一人の存在、娘を救い出すことでした。裏切りを続ける危うい立場のスタークもやがてそれに相応しい運命を辿ることになりますが、それはもう少し後の『メルカディアン・マスクス』での話になります……。

 そしてジェラードの前に、ヴォルラスに操られたシッセイとタカラが現れました(《手綱》)。マラクザスを倒したときと同様にスタークがヴォルラスの背後をとりますが、彼は難なく打ち負かされてしまいます(《軽蔑》)。そしてタカラがスタークへと襲いかかり、説得する父親へ切りかかってその視力を奪ってしまいました。ジェラードはシッセイを気絶させると続けてヴォルラスを一撃のもとに倒しました……が、それは多相の戦士の変身姿であり、ヴォルラス本人ではありませんでした。


強打スケープゴート


《スケープゴート》フレイバーテキスト
多相の戦士の死骸が形を変えはじめ、次第にヴォルラスの似姿になっていった。「人を欺くのは楽しいだろうな、ヴュエル」とジェラードは言った。「これはほんの試し切りだ」


 『エルドラージ覚醒』『ギルド門侵犯』にて再録もされている《強打》の初出はここ。コモンなので見かける機会も多く、「ヴォルラス倒された!?」と思った人も当時多かったのではないでしょうか。

 そのようにこのヴォルラスは偽物でしたが、多相の戦士が死亡するとシッセイとタカラの精神支配は解かれ、彼らは遂に合流を果たしました。



3. 「脱出行」へ、そして深まる謎

 ジェラード達がついにシッセイ艦長を見つけ出した所で『ストロングホールド』の物語は終わり、『エクソダス』へと続きます。ですが事態は収束には程遠い状況で、むしろ謎の方が増えていました。


・クロウヴァクスは呪いを受けて吸血鬼化したが、それは何を意味しているのか?

 クロウヴァクスは呪いを受け、そのクリーチャー・タイプが示すように吸血鬼と化してしまいました。本人のカード化はこれが初、そして彼は元から黒いカードによく登場していたのであまり「何かが変わった」ようにも見えませんでしたが。

 とはいえ2015年の私達は知っているんですよね。クロウヴァクスの二枚目のカードを、そして変わり果てた彼の姿が描かれたカードを。「既に知られている先のネタバレ」をどうするかというのはウェザーライト・サーガを扱うときの悩みどころでして、かといって全く扱わないのもわざとらしいですし難しい。


隆盛なるエヴィンカー隆盛なるエヴィンカー


 『第10版』で再録された際の《隆盛なるエヴィンカー》にはクリーチャー・タイプとして「吸血鬼」がしっかりと書かれています。


虐殺悪魔の意図


 そして背景ストーリーを知らずとも、クロウヴァクスが何か凄惨なことをしているのだろうとわかるカード。《悪魔の意図》の手前に見える金属製の蜘蛛脚は……

 それにしても何故吸血鬼なんでしょう? 天使と対になる種族といえばデーモン、ですが天使と吸血鬼。古くからマジックにはこの二つの種族には不思議な関係が存在します。このセレニアとクロウヴァクスもですが、記憶に新しい所でアヴァシンとソリンも「天使と吸血鬼」です。もしかしたら、それは『アルファ版』からマジック黎明期に活躍したクリーチャー、《セラの天使》《センギアの吸血鬼》に由来しているのかもしれません。


セラの天使センギアの吸血鬼

希望の天使アヴァシンイニストラードの君主、ソリン


 下は最近ちょっと噂のある二人。先日『イニストラードを覆う影』が発表されましたが、やはりソリンの話になるのでしょうか。すっごいわくわく。

 『ストロングホールド』の時点では「追加のクリーチャー・タイプを得た」くらいで、物語上でのクロウヴァクスの立場にさほど変化はありません。この「吸血鬼」というステータスがどう影響して《隆盛なるエヴィンカー》のような邪悪な姿になっていくのかは、この先『エクソダス』『ネメシス』の物語にて……。



・敵の正体と目的は?

 もっと重要なのはこちらでしょう。要塞の主ヴォルラスがシッセイ艦長を誘拐したのは、ジェラードへの復讐のためでした。それだけでなく、ラースの軍勢がドミナリアへの侵略を企てていることが明らかになります。それも全てヴォルラスの意図なのでしょうか?

 第18回からの繰り返しになりますが、『ストロングホールド』の段階で既にその謎を解く鍵がありました。それも、一見何気ないアンコモンに。


要塞の監督官


《要塞の監督官》フレイバーテキスト
楽しい仕事が一つ終わるたびに、われわれはヨーグモス様の聖なるお姿に一歩近づく。
―――要塞の建築技師の日誌


 ヨーグモス。その名が登場したのは『アンティキティー』。未訳であり、そして日本にはほとんど入ってきていなかったエキスパンションです。私もかろうじて《ヨーグモスの悪魔》が『クロニクル』に再録されていたのでその名前に憶えがあった、というくらいだったでしょうか。何にせよ、当時日本でその名を知る人は少なかったと思います。


Priest of Yawgmothヨーグモスの悪魔


 そのヨーグモスとは何者か。今でこそ明らかになっていますが、当時はほぼ謎に包まれていました。この連載でもあまりきちんと紹介したことはなかった気がします。とりあえず、ここでも簡単に触れておきましょうか。
 
 まず、よく誤解されるのですが、ヨーグモスはプレインズウォーカーではありません。彼はウルザとミシュラの「兄弟戦争」よりも数千年昔、ドミナリア次元に生きた一人の人間でした。

 古代ドミナリア、テリジア大陸の広範囲を支配していた「スラン帝国」。数々の強力なアーティファクトを創造し、また華麗な都市を建造していた文明です。その首都Halcyon(ハルシオン)に原因不明の病がはびこり、ヨーグモスは「医者」としてその治療と病の研究にあたったことから地位を得ました。

 そしてあるときハルシオンを訪れたプレインズウォーカーに、その病を治療するための「隔離場所」になるような地がないかと尋ね、当時無人となって長かったファイレクシアを紹介されます。ヨーグモスはファイレクシアを手に入れ、「生命と機械の完璧な融合」を目指して研究を重ね、人々を改造し始めました。

 やがてスラン帝国と、おぞましい怪物の軍勢と化したファイレクシアとの間に戦争が勃発します。その最終決戦のさなか、ファイレクシアからドミナリアへと繋がる唯一のポータルを閉じられ、ヨーグモスは永遠にドミナリアから閉め出されてしまいました。そしてそれから数千年、ファイレクシアにて神のごとき力を蓄えながら、彼はドミナリアに帰還できる日を待ち続けました。あの兄弟がファイレクシアとドミナリアを再び繋げるまで……。

 ここでヨーグモスの名が出てきたことにより、ラースと要塞の軍勢は全く新規に登場した勢力ではないということがわかりました。とはいえこの頃の情報はあまりに断片的で、昔から深く背景世界を追っていた人でもどこまでを推測できたでしょうか(私は全然でした)。ラースを、ウェザーライト号をめぐる物語は一気に広く深く、何千年も前から続くヨーグモスとの、ファイレクシアとの争いと何らかの繋がりがあるということを示していました。



4. 次回予告 (予定は未定です)

 そんな所で今回の記事、ウェザーライトサーガ・ストロングホールド編は終了となります。続きのエクソダス編も遠くないうちに書きたいですね、先はまだまだ長いのだ。ひとまず次回は『統率者(2015年版)』を……統率者……今年の………





蘇りしダクソス進化の爪、エズーリ



 うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ (慟哭)


(終)



この記事内で掲載されたカード



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