あなたの隣のプレインズウォーカー ~第105回 『灯争大戦』後日談 リリアナ逃亡編~

若月 繭子

今回のお話は

こんにちは、若月です。『ゼンディカーの夜明け』の物語や設定をいろいろ語りたい。嬉しいことにウェブ連載も再開したしね!けれどまもなく『統率者レジェンズ』もやって来ます。一方まだ『灯争大戦』後日談でも肝心の肝心、リリアナの結末を解説していない……何を書こうか。Twitterで尋ねてみました。

圧倒的だ!!まあ私としても、それを解説しない限り『灯争大戦』関係の話を終わらせられないのも事実です。語っていない内容はほかにも色々ありますが、これが一番大きなトピックですし。そういうわけで、『灯争大戦』後のリリアナがどうなったのか、小説「War of the Spark: Forsaken」(以下、Forsaken)から解説していきます。とても長いので2回か3回かかる予定ですが、ご了承下さい。ちなみに、この連載ではこれまでにも『灯争大戦』関係の記事をたくさん書いてきました。参考として一覧を載せておきます。

1. はじめに

これまでこの連載では、リリアナの顛末についての明言を避けてきました。小説で語られはしましたが、それ以外の場所で公式に公表されていない(私が見つけていないだけかもしれませんが)ため……というのが一番の理由でした。とはいえ、同じ指名手配されたプレインズウォーカーの追跡を解説した過去回にて、一緒に少し触れていたので紹介します。

第93回より引用

虚偽の主張を不可能にする《真理の円》のもと、ケイヤとヴラスカは各自の旅と戦いについて述べ、証拠の品を差し出しました。ケイヤは(付き添いのテヨが)《鎖のヴェール》を魔法の光球の中に入れて、またヴラスカは石化した手首を。ほかの証言や魔法による確認もあって、それらは確かに殺害の証拠として二ヴ=ミゼットと各ギルドに認められました。

ヴェールのリリアナ

ケイヤはリリアナ殺害の証拠として《鎖のヴェール》を持ち込み、それは認められました。リリアナはヴェールをどれほど手放したくても手放せない、それは読者だけでなく物語のキャラクターも知っていたようです。ケイヤが《鎖のヴェール》を証拠とした件について、アゾリウス評議会の臨時ギルドマスターを務めるラヴィニアは「私が知る限り、リリアナにヴェールを差し出させるには、死体から剥ぎ取る以外にないでしょう」と同意していました。ですが……

死者を目覚めさせる者、リリアナ

『灯争大戦』から1年以上、Forsakenから8か月ほどを経た『基本セット2021』にてリリアナが再びカード化。つまり?ちなみに第99回でこんなことを書いていました。

第99回より引用

……確かに、確かにテゼレットはラルを返り討ちにしましたが、指名手配全員生存じゃ締まらないのはそりゃそうですが、私は貴方が死んでしまったことが、心から悲しいのです。

そう、3人の指名手配犯のうち死亡したのはドビン・バーンだけ。テゼレットについては第93回で解説しましたが、リリアナも生きているのです。『基本セット2021』での登場がそれを示しているのならば、きちんと解説してしまってもう大丈夫でしょう(いや元々小説で語られているので、別にいつ解説しても問題はなかったのですが)。

公式記事「THE LORE OF CORE SET 2021 ON THE CARDS」より訳

仲間を裏切ってボーラスの軍勢を率いるよう強要され、リリアナは正しい行動へと突き動かされました――ボーラスへ反逆し、その軍勢を向けたのです。これによって命を失うはずであったリリアナは、ギデオンの犠牲によって生き永らえました。以来、リリアナは彼方の次元へと逃げ延び、そこで自分は何者なのかを、そして先だっての大戦における自らの行いを熟考しています。

この説明を読むに、《死者を目覚めさせる者、リリアナ》はForsakenの途中かその後の彼女なのだろうと推測できます。その衣装も慎ましく(露出度が低く)、逃げ延びて静かに隠れている状況を示しているのかもしれません。では、ここに至るまでに一体何があったのでしょうか?

2. 登場キャラクター

とはいえ、『灯争大戦』の話を扱うのも数か月ぶりなので、ここは改めて登場人物についてのおさらいから入りましょうか!

■リリアナ・ヴェス

戦慄衆の将軍、リリアナ戦慄衆の将軍、リリアナ

追われる者。屍術師。過去に契約を交わした四大悪魔を始末してついに自由を得たと思いきや、契約はニコル・ボーラスに移譲されており、その下僕となる以外に選択肢はありませんでした。そしてボーラスの命令に従い、ラヴニカで永遠衆を指揮して殺戮を繰り広げますが、傷つき倒れたギデオンの姿を見て悟ります――「ボーラスの下僕として永遠に生きるのは、死ぬより嫌」と。

それをきっかけにボーラスへと反逆し、ギデオンの犠牲によって生き永らえながらボーラスの灯を永遠神に食わせ、消滅させました。そしてその直後、ラヴニカからプレインズウォークで逃亡しました。行き先は……故郷ドミナリア。

■ケイヤ

死者の災厄、ケイヤ死者の災厄、ケイヤ

追う者。幽霊暗殺者。ボーラスから幽霊議員オブゼダートの暗殺を依頼されてそれを成功させるも、知らぬうちに彼らの契約を引き継いでオルゾフ組のギルドマスターにされてしまいました。ですがボーラスに協力したのはそこまで。

『灯争大戦』ではラヴニカや人々を守るために戦い、そして「誓い」を立ててゲートウォッチの一員となりました。とはいえ、一時的にでもボーラスに加担したプレインズウォーカー(兼ギルドマスター)の1人として、逃亡犯を追う任務を全ギルドより課せられました。それも最大の戦犯ともいえるリリアナを、です。

■テヨ・ベラダ

盾魔道士、テヨ盾魔道士、テヨ

庇う者。盾魔道士。灯争大戦の開戦に伴う《次元間の標》に呼ばれるようにして覚醒したばかりの若きプレインズウォーカーです。ラヴニカに来て早々に幸運にもケイヤやラット(後述)に出会い、そのまま行動を共にするようになります。

ニヴ=ミゼット再誕の儀式を永遠神ケフネトから守るなど、厳しい戦いの中で様々な出会いと経験を得て大きく成長しました。そしてラヴニカにとってもゲートウォッチにとっても部外者であるからこそ、ケイヤへの任務に対して疑問を抱きます――リリアナは本当に殺さねばならない人物なのか、と。

■アレイシャ・ショクタ

促す者。門なしの少女。通称ラット。本人のカードはこれを執筆している時点で存在しませんが、Forsaken表紙の中央左の女の子です。プレインズウォーカーではないものの、ラクドス教団の友人に依頼されたスパイ活動を通して彼らや多元宇宙の存在を知っています。

何もわからずラヴニカに飛んできたテヨを拾い、直後に大戦が勃発。先天的に不可視状態という極めて稀な体質であり、特に苦労なくその姿を見ることができるのは母親を含めたわずかな人数だけ。不思議なことにテヨとケイヤにも難なく彼女が見えることから、2人と行動を共にします。


以上の4人が「リリアナ編」のメインキャラクターです。またヤヤとジェイスやチャンドラ、トミクも所々で関わってきます。

3. 逃亡者リリアナ

さて、『灯争大戦』後日談のタイトルである「Forsaken」。手元の辞書には「見放された」「見捨てられた」「孤独の」「わびしい」とあります。まずはその、見放されたリリアナの心情を中心に説明していきましょう。

沼

ドミナリア、カリゴの森。リリアナはよろめきながら、廃墟と化した生家の方角へ漠然と進んでいました。夜は更けて月は低く、照らす光はわずかです。思考は乱れ、酷い有様でした――まるでラヴニカの、廃墟と化した第10管区広場のように。

つい先ほどまでラヴニカにいました。ギデオンの死に涙を流し、まだ涙を流せることを嬉しく思いました。そしてそんな感情を心の奥深くへと押し込みました。ラヴニカを離れたのは、自分の身に危険が迫っているためです。ボーラスが倒され、永遠衆は動きを止めました。ラヴニカの英雄たちがまもなく自分のところまでやって来るのは明らかだったのです。でも逃亡先としてここを選んだ覚えはありませんでした。ラヴニカからプレインズウォークした、けれどドミナリアを意識したかどうかは定かでありません。ここは生まれ育った場所、そして自分の人生が地の底に落ちた場所です……。

ふと、リリアナは気付きました。ボーラスの角の間に浮いていたあの宝玉を片手で掴んでいることに。滑らかな手触りで、見た目よりも重く、銀色、いや金色。元々の色を思い出せず、そして手の中で回すたびに色が変化するようでした。長いことこれは単なる装飾だと思っていました。けれど、ボーラスはこれを用いてプレインズウォーカーの灯を吸収していたのです。なぜこの石がボーラスと共に消滅しなかったのかはわからず、どうしてこれを持ってきたのかという記憶もありません。

リリアナは沼地の奥へ投げ捨てようと考えましたが、そのための力すらありませんでした。ならばただ落とせばいい。水へと沈めればいいだけ。無論、そうはしません。この石には力が、価値があるかもしれないのです。リリアナ・ヴェスは常に力を求めている、それを投げ捨てるような人物ではない――誰もがそう知っていました。誰もがそう信じていました。あの男を除いては。

黒き剣のギデオンギデオンの犠牲

ギデオンはリリアナの別の可能性を信じていました。リリアナがずっと見せつけてきた自分自身の姿、利己的で力に飢えた人物。けれど、真のリリアナは決してそのような存在ではないと。

小説「War of the Spark: Forsaken」チャプター2より訳

無論、ギデオン・ジュラは愚か者だと証明されただけだった。愚か者だったと。

今、あの男の記憶がリリアナへと大きく迫っていた。「私はここでは英雄になれない。だがリリアナ、君なら」「大切にしてくれ」そう言っていた。死にゆく中で言っていた。私を救おうとして死にゆく中で。ギデオンが彼女へと持つ信念を、リリアナはずっと冷笑していた。

あの男の見方は正しかったと証明されたのだろうか?

その通りだった。ギデオンが死んだ後、その死が何をもたらしたか、あるいはその死がリリアナをどうしたかを知ることも叶わなくなった後――彼女はボーラスを倒すことでその死に報いようとしたのだ。そして倒してのけた。

その通り。ギデオン、私はやり遂げたのよ。あなたじゃなくて私が。リリアナ・ヴェスがニコル・ボーラスを倒した。あなたのためにね、厚切り肉さん、見たこと?

今彼女に見えるのはギデオンの最期の、恐ろしい、立派な笑みだけだった。そして彼女の呪いを受けた後、風に散っていった灰だけだった。その灰を、その微笑みを覚えていた。だがどうやっても、ギデオンの顔を思い出せなかった。兄のように思うようになっていた男の顔を。

兄と何ら変わりなかった。どうしてどちらの顔も思い出せないのだろう?

ギデオンの記憶に苛まれながら、リリアナはぬかるみの中を進みました。足元がおぼつきませんでした。揺らいでいるのは足元だけではなく、リリアナ・ヴェスという存在そのものかもしれません。ボーラスと、ギデオンがそれを揺るがしてしまったのです。

神秘を操る者、ジェイス

そして、ジェイスも。彼は戦いの最中、リリアナの殺害任務を率いていました。それ自体は衝撃でしたが、自分がもたらす殺戮を思うに驚くべきことではありませんでした。ですがすべてが終わった後、テレパスで接触してきたジェイスの心にあったのは、怒りではなく心配でした。リリアナ自身の行いと、ギデオンを身代わりにしたという事実。なのにジェイスは怒りではなく、気遣いと同情を向けてきている――耐えられませんでした。自分が壊されてしまいそうでした。

リリアナは足を止め、水面に映る姿を見下ろしました。泥水に汚れ、枯れ木に引っかけたドレスは破れています。外見を取り繕わないのは全くもってリリアナ・ヴェスらしくありません。身を綺麗にする呪文を唱えようとしましたが、そのための集中すらできませんでした。それもまた自分らしくありませんでした。

つまり、リリアナ・ヴェスではないのかもしれません。ただの偽物。もしくはジェイス・ベレレンが作った幻影。彼が思うリリアナ・ヴェス、汚く醜く邪悪な魔女。では自分にとってジェイス・ベレレンとは何だったのでしょうか?誘惑し、利用し、操った男でした。悪魔から自由を勝ち取るために……いえ。深く埋もれさせた人間性のどこかで、それは嘘だとわかっていました。ジェイスを本気で愛していたのもまた事実だったのです。

今やリリアナはずっと求めていたものをすべて手に入れました。若さ、力、自由。ですがそのための対価として、確固たる自分自身というものを失ってしまったのです。

そしてそのとき、リリアナはつまずき、深い水へと倒れこみました。彼女はそのまま沈み、溺れていきます。心のどこかでそれを歓迎しました。あるいは、これが自分に相応しい終わりなのだと。とはいえ、死ぬとしても沼の中に突っ伏してそうなるつもりはありませんでした。いくらか苦労して身体をあおむけにすると、濁った水の中から少しだけ月の光が見えました。目を閉じ、息を吸って肺を水で満たし、沈んでいきました。

小説「War of the Spark: Forsaken」チャプター2より訳

最後に今一度月の光を見ようと、彼女は目を開いた。そしてほんの一瞬、何かが、もしくは誰かが真上を通過し、岸から見つめていた。白い人影?それとも……難攻不落の白いオーラをまとった人影?

ギデオン!ギデオンが!

彼女はもがき、泳ぎ、水面へ向かおうとあがいた。会って、話をしよう、これを最後に。言わせるために。私は、何者なのかと。水に浸かったドレスが重く、息は続かなかった。だが構わなかった、あの厚切り肉に生きてまた会えるなら。彼女は水面に顔を出し、空気を求め、浅い地面へ向かい、やがて立ち上がって彼の姿を探した。そして必死の一瞬、木々の中に白い人影を垣間見たように思えた。濁った泥水がもつれた髪から目にかかり、リリアナはそれを拭った。「ギデオン?」

だが返答はなかった。誰もいなかった。当然、誰もいなかった。そして間違いなくギデオン・ジュラではなかった。あの男は死んだのだ。知っているはず。目の前で消滅していった。私を救って死んだ。私を救って……このために。

これはギデオンの復讐。それを受けて当然だとリリアナは思います。そして明白な目的も理由もなく歩き続けました――生家へ向かって。気付かぬうちに、辺りには鴉が集まりつつありました……

闇告げカラス

鴉。それが意味するところをリリアナはよく知っていましたが、あえて無視を続けました。あの男には会いたくありません。ですが向こうはそんなことは気にしていないようで、鴉は数を増してリリアナを追いはじめました。リリアナの歩みに合わせて木から木へ、枝がその重みでたわむほどの数で。ふとリリアナは思い付きました。この木を枯らしてやったら?彼女は片手を伸ばし、鴉が群がる木から生命力を吸い取りました。その木は見る見るうちに枯れて折れ、鴉の群れは飛び立たざるを得ませんでした――ですが、その内の一羽が。

同・チャプター5より訳

一羽の鴉が降下し、リリアナの第2の最大の宿敵へと変身した――鴉の男。若いころから覚えているそのままの姿だった。几帳面に整えた白髪と髭、染み一つない――わずかに時代遅れの装い。黄金色に輝く瞳。「相変わらず、粋な装いなのね」その賛辞が嘘であると声色に込め、彼女は言った。

この男は、覚えているままの姿というだけではなかった。覚えている姿そのものだった。

つまり、幻影。もしくは非常に精巧なシェイプシフター。どちらにせよ、目にしているものはあの鴉以上に現実の姿ではない。今もって、彼女はこの男の真の外見を知らなかった。正体を知らなかった。

知りたくない、というのが正しいかもしれない。

リリアナが初めてこの男に出会ったのは、プレインズウォーカーとして覚醒する以前のことでした。元々この男の助言に従ったために、現在のリリアナがあるのです――兄を治癒しようとして人ではないものに変質させてしまい、その兄に殺されかけたことでプレインズウォーカーとして覚醒しました。以後も鴉の男は、次元や時代を問わずリリアナの前に姿を現しては助言を授けてきました。ただし、必ず現在よりも悪い状況へと導くように。

それは今回も同じでした。耳を傾けるだけでいいと彼は言います。どこへ行くべきか、何をすべきか。そしてリリアナは理解していました、今の自分はそんな甘言に対してひどく無防備であると。それでも、この男の危険性は把握していました。元々、破滅に追い込まれたのはこの男によってなのですから。

それから、どれほどの時間が経ったのか。リリアナは鴉の男を振り切り、また歩き続けていました。かと言って何を求めているのかもわかりませんでした。生き永らえてまでも求めるものは。そもそも、何かを求めているのでしょうか。リリアナは長年、悪魔からの解放をひたすらに目指してきました。一方で、その目的を果たしたならどうするかについては、一度たりとも現実的に考えたことはなかったのです。目的を果たすための対価についてもそうでした。

そして空虚な心の彼女へと、また別の声が囁きかけました。鴉の男の次はそう、鎖のヴェールに棲まう霊です。最初に手に入れたときよりずっと強く。

鎖のヴェール

声はただ強いだけでなく、今回はこれまでにない現実感をもってリリアナの心に訴えかけます。空虚なリリアナに、それは誘惑的に響きました。この身を、すべての重荷をヴェールの霊に委ねてしまうのがいいのかもしれない。それが一種の死だとしても。ここに至って、リリアナの心のかなりの部分は、何よりも死を求めていると気づきました。悪魔、ボーラス、そして次は鴉の男か鎖のヴェールか。これ以上利用されたくはありません。多元宇宙にとっても、自分自身にとっても、そうするほうがいい……

生家はもうすぐでした。すべてが始まった場所。愛する人々を破滅させた場所。そこで終わらせるのは理にかなっていると思えました。リリアナは廃墟と化した生家を見渡せる丘の上へやって来て……そして唖然としました。

ヴェス家の館は完全に再建されており、中では饗宴が開かれている様子でした。

4. 追跡者たち

次元を挙げた祝賀

ほぼ同時刻、勝利直後のラヴニカ。勝利――ですがケイヤの心はかじかむようでした。あまりに多くの死がありました。たとえケイヤがほとんど知らない、全く知らない人々だったとしても。彼女は幽霊暗殺者として死に近しく関わり、死者へと終わりを与えてきました。それでも、自分までも死者のようになってしまったと感じたことは今日までありませんでした。時間が経てば、悲しむことができるのでしょうか。涙を流せるのでしょうか。そう願いました。

友の顔を見たい、心からそう思いました。ラヴニカに来てそう長くない中で出会った者たち。中でも、テヨとラットに。いつの間にか彼女の「従者」になっていた若者2人に。とても純朴で、そしてその下に隠された強さを持っている、純粋な魂の持ち主。2人に比較したなら、ケイヤ自身はまるで闇に生きる吸血鬼のように思えました。

そしてケイヤが見つけたとき、2人はゲートウォッチの面々が何かを話し合う様子を眺めていました。ゲートウォッチ、その名を聞いたのは今日が初めてでした。多元宇宙を守ると誓い、そのために戦ってきたプレインズウォーカーたち。彼らがいなければ、ラヴニカに生き伸びる道はなかったとケイヤは確信していました。そして、

「その……私、誓いを立てたい、かもしれない」

誰かがそう言う声が聞こえ、全員がケイヤの方を向きました。自分だった!ラルやチャンドラは驚いて聞き返してきました。そう……誓いを。ケイヤの心の何かが動かされたのは間違いありませんでした。自分自身よりもずっと大きな何かの一部になりたい。自分はただの泥棒ではない、ただの暗殺者ではないと示したい。多元宇宙が苦しんでいるときに、呼ばれるような存在に――ゲートウォッチになれるかもしれない、と。この「誓い」の場面はウェブ連載版にありましたが、Forsakenではケイヤ視点でその心情を含めて描かれていましたので、そちらを訳して紹介します。

小説「War of the Spark: Forsaken」チャプター1より訳

「私は暗殺者として、盗賊として生きてきた。自分なりの道徳で生きてきた。けど一番の主義は常に、『自分の身は自分で守れ』ってことだった。私は幽霊になって生きることができるから、誰からも触れられずにいることができた。これは文字通りのことだけど、感情のほうでも同じだった、誰からも触れられずに。でも、ラヴニカで暗殺者として、盗賊として、まさかのギルドマスターとして、それと、もっとまさかの戦士として過ごした時間は、私を変えないわけはなかった。みんなの隣で戦うことは、ひとつの栄誉に感じた。私の、こう異様な生き方の中でも、一番怖くて、けど最高だった。ゲートウォッチのみなさんが今日示してくれたこと――」ケイヤはオレリアが抱く鎧を一瞥した。「――今日、命を投げ出してもやり遂げてくれたこと……うん……陳腐な表現かもしれないけど、とても、心を打たれたの。もし認めてくれるなら、みなさんの一員になりたい。どうか、もし困ったときは、私を呼んで欲しい。一緒に隣で戦いたいから」

「ぜひ!」 とチャンドラ。

「私もだ。ケイヤさん」アジャニも、レオニンの笑みで答えた。

ゲートウォッチのもう3人――ジェイス、テフェリー、ニッサも微笑み、頷いて同意を示した。

そしてケイヤは深呼吸をし、誓いを立てるために右手を掲げた。そして差し出せる力の象徴としてか、彼女はその手を幽体化し、それは柔らかな紫色の光を帯びて半透明に浮かび上がった。次に、どう宣言すべきかを考えた。彼女はこの日、ギデオンを含むゲートウォッチの6人が繰り返した誓いを聞いていた。あのドラゴンに対する勝利などとても定かではなかったときのことだった。それぞれの言葉は違っていたが、首尾一貫したひとつの主題があった。

「私は多元宇宙を旅して、生者のために、死者が……ええと、往く手助けをしてきた。けどこの数か月、この数時間にラヴニカで目にしたものは、私が知っていると思っていたすべてを変えてしまった。二度とさせはしない。すべての人に然るべきものが与えられるように、私はゲートウォッチになる」

うん。悪くはなさそうかな。

ケイヤの誓い

そしてオレリアがギデオンの鎧をゲートウォッチに手渡すと、彼らはそれを抱え、追悼する人々の中へと歩きだしました。ギルドの指導者たちはそのときを待っていました――戦犯であるリリアナ・ドビン・テゼレット、その暗殺をケイヤたちに依頼するとともに方針を話し合うためです。ゲートウォッチの耳に入れたくないというのは明らかでした。とはいえ戦いが終わった直後で今は全員が疲労困憊、そのため詳細は翌日に持ち越しとなりました。

その夜、オルゾフ組での夕食にてケイヤはラットとテヨから尋ねられます。本当にリリアナ暗殺任務へ行くのか、と。

小説「War of the Spark: Forsaken」チャプター9より訳

思わず、ラットは尋ねた。「本当にヴェスさんを殺しに行くんですか?」

ケイヤは唖然としたようだった。そして眉をひそめ、返答した。「死なずにラヴニカを離れられる方法があるなら……行くわ」

「ですが」テヨは顔色を失った。「あの人が僕たち全員を救ってくれたんですよ。ケイヤさん。それはご存知でしょう」

ケイヤが示す難色は次第に明白なものとなった。「テヨ、あの人の永遠衆の手でどれだけの人が死んだかわかっているの?」

「あの人の永遠衆ですか、それともあのドラゴンのですか」

「それは重要なこと?あの軍団を私たちに向ける必要はなかったのだから」

「それは確かなんですか?」純粋に好奇心から、ラットは尋ねた。

「誰もに選択の余地はあるのよ、ラット。その選択肢がどちらもとても不快だったとしても、選択の余地が存在しないってことじゃない」

「ええ、わかります」ラットは小声で答え、テヨは納得できないというようにかぶりを振った。

ケイヤは表情を緩め、共感を浮かべた。「テヨ、必ずしもあなたに同意してもらえるとは思っていない。あなたはずっと誰かを守るために鍛えてきたけれど、私はずっと生者の世界から危険な者たちを排除してきたのよ。これはあなたではなく私の仕事。あなたにはあなたの言い分がある、けれどこの決定に関わっているわけじゃないわ」

部外者であるからこそ、テヨは疑問に思っていたのです。確かにリリアナはボーラスのために永遠衆を率いており、そのためにたくさんの人々が死にました。ですが、彼女が最終的にボーラスに逆らわなければ、もっとずっと破滅的な結果になっていたのは間違いありません。少なくとも、説明や弁明の機会を与えてやるべきではないか――それが彼の考えでした。

そして翌朝。ケイヤがアゾリウス評議会にやって来ると、すでに出席者のほとんどは揃っていました。ゲートウォッチは彼女を除いてギデオンの葬送のためにテーロス次元へと向かい、またテヨはラットを探してラヴニカの街へ出ていました。プレインズウォーカーではない彼女は、ケイヤやテヨとの別れを予期して1人で去ってしまっていたのでした。

話し合いの場には各ギルドの代表者だけでなく、プレインズウォーカー数人の姿もありました。

敬慕される炎魔道士、ヤヤ野獣の擁護者、ビビアン放浪者

彼女たちがここにいる理由をケイヤは推測できず、それでもニヴ=ミゼットの先導で話が始まりました。議題はもちろん、指名手配されたプレインズウォーカー3人の追跡について。ラルはテゼレットの追跡をすでに了承しており、ヴラスカも自らの行いがラヴニカに危機を招いたとして、すぐにドビン追跡の任務を請け負いました。

ですがケイヤの番というところで、ヤヤが割って入りました。リリアナは死ななければいけないというのはこの場の総意なのか、と。ゲートウォッチがテーロス次元へ赴く直前、ヤヤは「長く生きていると、友を見送るのは辛い」と言って同行を断っていました。それは本当なのかもしれませんが、どうやらこちらに参加するのも目的であったようです。その問いかけに、ギルドの代表者たちはあからさまに不満の声を上げましたが、ヤヤは動じずに自らの意見を述べました。

小説「War of the Spark: Forsaken」チャプター20より訳

「リリアナがボーラスを殺したんだ。私たちの誰にもできなかった」ヤヤはニヴ=ミゼットへと向き直り、目を合わせた。「火想者さん、あんたを含めてね」

オレリアが返答した。「つまり、リリアナは最初からボーラスを殺せたはずだということです。そうではなく、待った。何千という人々が死ぬまで。そしてそのほとんどは、リリアナが支配していた永遠衆の手によるものです」

「ギデオンの助けが必要だったってことだよ」

「ならば、彼女は最初からそれを願うべきでした。もしそうしていれば、ギデオン・ジュラは今もなお生きていたかもしれません」

「それを置いても」とラザーヴ。「真意が不確かであり、かつニコル・ボーラスを倒すほどの力ある者の存在に我々は苦しみ続けて良いのか? あの者は次にどう動くというのだ?」

ヤヤはその言葉に頷いた。「つまり、誰も反対しないと?」誰も口を開かなかった。ケイヤですらも。ヤヤは再び頷き、黙った。

そしてニヴ=ミゼットは改めてケイヤに向き直り、リリアナの殺害任務を割り当てた理由を説明しました。まずケイヤはこれまで幽霊暗殺者として、幽霊や各種アンデッドと戦ってきました。屍術師のリリアナに辿り着くまでは、少なくない数の不死者を倒す必要が出てくるでしょう。そしてケイヤはリリアナとの因縁も、対立も全くありません。よって暗殺者としてはよくある仕事のひとつになる――というものでした。

確かに因縁はないとしても、問題が2つあります。まず、リリアナは一体どこへ行ったのか。彼女がプレインズウォークしてからすでに1日が経過しており、今やその軌跡は完全に消えてしまっています。ですがそこで放浪者が声を上げました。リリアナはドミナリアにいる、と。放浪者はリリアナがプレインズウォークで去った直後にそれを追い、行先を確認していたのでした。そう、溺れかけたリリアナが見た白い人影、あれは放浪者だったのです。彼女はドミナリアの具体的な地名まではわかりませんでしたが、ヤヤはその話からリリアナの故郷カリゴと断定しました。そしてジェイスが推測していたように、リリアナは自暴自棄になっている……と。

同チャプターより訳

ケイヤはヤヤを見つめた。「ジェイスといえば。どうしてあなたはここにいるんです?とてもこの計画に賛同しているようではありませんし、このためにゲートウォッチから離れて来たようですが」

ヤヤはそれを正した。「あんたはゲートウォッチだが、私は違うよ。あんたは誓いを立てたけど、私はそんなことはしていない。けど知っておいてくれ、私は弟子のチャンドラ・ナラーが心配なんだ。昨晩、あの子を追ってカラデシュ次元のバーンの家まで行ったんだよ」

「バーンはいたのか?」ヴラスカが尋ねた。

「いや。前にいたのは確かだったけれど、今はいなかった。けど私が心配なのはチャンドラと、あの子の魂を引き裂く葛藤なんだ。今このときも、チャンドラは深く悩んでる。バーンは悪いやつだが、ヴェスは全く別の問題だ。チャンドラとの関係は複雑で深いからね。今のあの子の状態を見るに、その手が届かないところでこの決定が進んで欲しいんだよ」

ケイヤが尋ねた。「つまり、あなたはリリアナやバーンの暗殺を止めることで彼女を守ろうと?テゼレットも?」

「テゼレットが死ぬべき理由は山ほどある。バーンも逃すわけにはいかない。リリアナ殺害を止めるための話ができればと思ったけど……明らかにそれは論外だね。今チャンドラを『守る』唯一の方法が、この話を進めることだっていうなら、ドミナリアのリリアナの故郷まで案内してあげるよ。けどそこまでだ。リリアナを暗殺した奴だ、って目でチャンドラに見られたくはないからね」

魔性の教示者

共に過ごした時間はそれほど長くありませんが、チャンドラはリリアナを姉のように慕っていました。リリアナは悪魔を倒した後にボーラスに下らざるを得ませんでしたが、その理由は誰にも語っていません。よってゲートウォッチにとっては、利用された後に裏切られたようなものでしょう。果てにはそれでギデオンが死亡してしまったのですから。ジェイスは逃亡直前のリリアナに接触してその葛藤を知り、仲間たちにもそれを伝えました。ですが、誰もリリアナの行動の裏にあったすべてを把握してはいないのです。

さて、リリアナの行方については判明しました。もうひとつの問題は、オルゾフ組のギルドマスターとしての契約です。ケイヤはボーラスの計略でギルドマスターになってしまったのであり、本人もギルドのほうもこの状態が続くことは望んでいません。ですがそれはそれとして契約は存在し、このままではラヴニカを離れられない、もしくは離れたなら死亡してしまう可能性すらあるのです。

その身に繋がる債務を全部帳消しにしてしまえばいいのかもしれませんが、そんなことをすればオルゾフ組は崩壊してしまいます。ラヴニカのパワーバランス的にも避けたい事態です……というところで、ケイヤに随行してきていたトミクが解決策を提示しました。魔法によって一時的かつ合法的に、ギルドマスターとしての契約を自分へと委譲することができる、と。

高名な弁護士、トミク

ギルドマスターとしての責務の重さを知るケイヤは心配しますが、トミクは大丈夫だと請け負いました。なおこのときのラルとのやり取りが非常に微笑ましいので、気になる人は第93回を読んでみて下さい。強く生きろラル。

かくして、ケイヤのリリアナ暗殺についても各種の問題は解決しました。ですが最後にひとつ、ニヴ=ミゼットと全ギルドは追跡の3人に、ひとつの要件を提示しました。ターゲットを殺害した際には、その証拠を持ってくるようにと。死体やその一部をそのまま持ったとしても、それらは次元渡りに耐えられません。つまり何か別の、かつ確実な証拠が必要とされるということでした。

5. ヴェス家の没落

場面はリリアナに戻ります。生家へ近づくにつれ、それは綺麗に修繕されているとわかりました。崩れた館は自身の破滅の象徴、けれどそれが勝手に冒涜された気分でした。一方で絶望とは別の感情が生じたことを、意識を別のものに向ける理由ができたことを嬉しく思いました。

と、そこで、沼の影の中で囁きかける声が聞こえました。ヴェールではなく、実体を伴った声です。顔を向けると、1人の老女が枯れ木の間から手招きをしていました。召使のような粗末な装い、ですがその首には金色の太い首輪がはめられていました。

小説「War of the Spark: Forsaken」チャプター26より訳

「私を呼んだのはあなた?」リリアナは傲慢な様子で言った、今もそのような外面を保てているかどうかを確認するために。

必死の、必死の虚栄心……

「カリーナと申します。カリーナ・テモアン。ただ貴女をお救いしたいだけです。あの館にこれ以上近づいてはなりません。どうかお願いです」

黄金の首輪が輝き、リリアナはそこから熱が発せられるのを感じた。その首輪は老女の喉を焼いていた。それでも、顔をしかめながら、老女は苦痛と戦いながら警告を続けた。「ここは安全ではありません。ご主人様に捕らえられる前に逃げなければ。館のご主人様に」

彼女は館を指さし、そして苦痛の悲鳴を押し殺した。リリアナはその首輪の下から肉の焼ける匂いを感じた。カリーナは膝をついた。

やめなさい。私のためにそんなことは。私はこれ以上の死を背負っては……

不安と怒りの中、リリアナは老女の隣に膝をついて問いただしました。館の主人というのは?怒りの矛先を向けられる存在を心から欲しました。

同チャプターより訳

リリアナは繰り返した。「教えて、テモアンさん。ヴェスの館の主人というのは?」

「呪いが帰ってきたのです。憎まれしリリアナ・ヴェスが」カリーナはかろうじてそう告げた。

リリアナ・ヴェスに捕まって首輪をはめられる前に逃げろ、カリーナはそう繰り返しました。そしてその「リリアナ・ヴェス」について話すほどに、カリーナの首輪が熱を増していきました。主人に反するような発言をすると、罰として喉が焼かれるのです。それでもカリーナは、逃げるようにと促しました。

リリアナ・ヴェスに仕えるほどに、苦痛を被る……リリアナはカリーナの手をとり、その血からマナを引き出すと老女の喉元へ送りました。火傷が和らぎ、カリーナは驚きました。傷を癒したわけではなく、苦痛の源へと生命力を向かわせただけです。足しても引いてもいません。確かに、かつては癒し手になるために修行していました。ここからそう離れていない場所で、ずっと昔に。

異端の癒し手、リリアナ

とはいえ目的は達せられ、リリアナ自身もふと心が軽くなったのを感じました。それでもカリーナは逃げるよう促しますが、放ってはおけませんでした。いえ、むしろ誰かを必要としているのはリリアナ自身でしょうか。

やがて、カリーナはヴェスの館から少し離れた家屋を示しました。リリアナは手を貸しつつ同行し、召使の住居と思しきその家へと入ります。中にいた全員が同じ金の首輪をつけていました。召使ではなく、虜囚。リリアナはカリーナを落ち着かせると、ここで何があったのかを尋ねます。純粋に事実を述べるだけであれば首輪は反応しないようで、カリーナは言葉を選びながら答えました。

小説「War of the Spark: Forsaken」チャプター28より訳

「あれは、陰謀団のリッチの騎士が倒されたという噂が流れた、その直後だったかと思います」

「ええ。私も聞きました。その……死については」

リリアナは可能な限り平静を保って返事をした。その「リッチの騎士」とはジョスなのだ。自分の、最初の犠牲者。兄のことは心から愛しており、その命を救おうとした。だがそうではなく、彼女は兄を狂気で呪い、自らの手で殺さざるを得なくなったのだ。後に陰謀団は兄をリッチとして蘇らせ、リリアナはまたも兄を殺すこととなった。だが2度目にして最後の死の際、兄は言ったのだ、リリアナこそが家族に降りかかった呪いなのだと。

私が気にかける相手に降りかかる呪い。私自身にすら、いえ、特に私自身に。

「少しの間、カリゴでの生活は良いものでした。ですが自然とは空白を嫌うものに違いありません。少なくとも邪悪なものは。鬼火が毎夜、不自然なほどにたくさん現れはじめたのです。あのお話はご存知かと思いますが……」

「お話?」

「『ヴェス家の没落』です。誰もが知っている」

リッチの騎士、ジョス・ヴェス最後の別れ

リリアナは言葉を飲み込みました。過去の自分の行いが子供を怖がらせる物語として地元に広まっているというのは一応知っていましたが、詳しい内容までは把握していませんでした。なおこの「ヴェス家の没落」は、3枚のカードのフレイバーテキストにて言及されています。

森林の墓地戦慄の影鬼火

《森林の墓地》フレイバーテキスト

「結局、若きジョスの死体は見つからなかった。人殺しの妹もだ。」 ――「ヴェス家の没落」

《戦慄の影》フレイバーテキスト

「ヴェス家の屋敷を取り巻いていた森はカリゴ沼になった。広大な泥沼で、名を口に出すことのできない恐ろしいものがさまよっている。」 ――「ヴェス家の没落」

《鬼火》フレイバーテキスト

「暗い晩には今でも、死んだ兄を探すヴェスの娘のランタンが、カリゴの森では見られるという。その後を追った物は、その娘の終わりのない探索に巻き込まれるそうだ。」 ――「ヴェス家の没落」

カリーナは《鬼火》の話を暗唱しました。そしてこの鬼火が墓所に集まり、「リリアナ・ヴェス」が現れたのだといいます。このリリアナは死者を蘇らせ、そして戦いが起こりました。ですがゾンビたちはどれほど攻撃しても全く傷を負う様子もなく耐え、やがて全員が降伏を強いられました。首輪をはめられ、下僕として仕えるよう強制され、館の再建もさせられた――カリーナはそう説明しました。

リリアナは疑問でした。その「リリアナ・ヴェス」にゾンビの召使がいるなら、どうして生きた召使を必要とするのでしょうか。尋ねると、数体が護衛として残っているものの、ほかは単純にいなくなったと。魔力を用いてその存在察知しようと試みましたが、近隣の一帯にゾンビの活動は全く感じ取れませんでした。何もかもが奇妙でした。リリアナはカリーナの話をしばし考え、結論に至りました。その「リリアナ・ヴェス」に会わなければなりません。

6. おまけの宣伝

今回はここまでになります。果たしてそのリリアナ・ヴェスとは一体?ケイヤは暗殺任務に出ることになったけれどテヨとラットはどうするのか?ていうかラットは同行できないのでは?ジェイスとチャンドラはこの件にどう向き合うのか?Forsakenでのリリアナの話はキャラクターたちの心情も含めてじっくり説明したいので、もう少しお付き合いください。これでも端折っているんじゃよ?

ところで先日、こちらの動画に関わらせていただきました。

この連載を読んでいただいていればかなり今更なラインナップかもしれませんが、それでも選んだ5つです。それに、記事を目で読むのと声に出して読み上げてもらうのとではまた印象が結構違って、自分で書いたとはいえかなり新鮮な気分でした。視聴していただけましたら幸いです。

それではまた次回に。年内にはリリアナ編終わらせたいな。

(続)

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若月 繭子 マジック歴20年を超える古参でありながら、当初から背景世界を追うことに心を傾け、言語の壁を越えてマジックの物語の面白さを日本に広めるべく奮闘してきた変わり者。 黎明期から現在までの歴代ストーリーとカードの膨大な知識量を武器にライターとして活動中。 若月 繭子の記事はこちら