コンボデッキのサイドボーディングについて学んだ3つの教訓

Piotr Glogowski

Translated by Riku Endo

原文はこちら
(掲載日:2024/1/17)

はじめに

マジックにおいて、サイドボードプランが突然カチッとハマり、すべてが腑に落ちるときほど楽しいことはないと私は感じています。しかし、そこに到達するのは必ずしも容易ではありません。

特にコンボデッキでは!

原始のタイタン再活性

今回は、私が多くの時間を費やしてきた2つのアーキタイプ、モダンの「アミュレットタイタン」とレガシーの「リアニメイト」を使うなかで学んだ教訓をもとに、私のサイドボード哲学の変遷について話したいと思います。

教訓1:自分のカードと相性の悪いカードを見つけよう

弱者選別

サイドボーディングする際のもっとも基本的な意味合いとしては、そのマッチアップで弱いカードを見極めたいということでしょう。よく「悪いやつを抜いて、良いやつを入れろ」というジョークがありますが、マジックプレイヤーであればだれでも、サイドボーディングするときに正しい入れ替え候補を見つけだせず麻痺してしまう経験があると思います。

より一般的な相手への解答を重視するデッキであれば、抜くべきカードはよりシンプルになる傾向があるでしょう。たとえば、対戦相手がクリーチャーを出してこないなら《致命的な一押し》は抜くべきカードです。しかし、ときには犯人を見つけだすのにもっと手間がかかることもあります。

コンボデッキでは、デッキ内のカードが自分のやりたいゲームプランを成立させるのに何らかの形で役立つ可能性が高いです。そのため、対戦相手の脅威に対応できないからとサイドアウトするのではなく、自分の戦略と関係のないつながりの弱い部分を特定することから始める必要があります。

アミュレットタイタン

緻密

《緻密》はアミュレットタイタンに対して有効な場面が多いです。通常、ほとんどの打ち消しを多様するようなデッキに対しては、辛抱強く次々と脅威を繰り出していくことが最善の解決策になります。ではそうすればいいのかと近道をするのは簡単ですが、《緻密》はタダで唱えることができ、そこで得たマナとテンポを使ってこちらを打ち負かそうとするデッキによく採用されているのです。

《緻密》を乗り越えるには、相手に《緻密》を「想起」で唱えるよう仕向けさせ、こちらが次のターンに再びクリーチャーを唱えるのがもっとも簡単な方法です。逆に、《召喚士の契約》でクリーチャーを探しにいかなければならない場合、《緻密》を乗り越えるのは本当に難しいでしょう。

召喚士の契約

そのカードが機能するかどうかを見極めたい場合に良い方法があります。あるメタゲームにおける各デッキ間の相性をはかるのはよく行われることですが、それを特定のカードどうしに当てはめてみるのです。たとえば、環境に多いアミュレットタイタンの《召喚士の契約》《緻密》の相性を見てみると……《召喚士の契約》のほうが弱いですよね。

原始のタイタン耕作する巨躯
気前のよいエントワームとぐろエンジン龍王ドロモカ

そのかわり、《原始のタイタン》《耕作する巨躯》のようなターンを跨いでも唱えなおせるクリーチャーや、《気前のよいエント》《ワームとぐろエンジン》《龍王ドロモカ》のようなサイドボードの脅威は《緻密》とのマッチアップを有利にしてくれます。

ウルザの物語精力の護符活性の力血染めの月

《ウルザの物語》《精力の護符》を2枚そろえるのに優れており、頻繁に3ターン目の勝利を可能なものにしてくれますが、サイド後は非常に相性の悪いカードと対面することになります。《活性の力》《ウルザの物語》と2つ目の対象を見つけるのに苦労しないので、いつでも有効です。一方、《血染めの月》は後手よりも先手のときにはるかに良く機能します。

防御の光網魂の洞窟

もちろん、カードとカードの相性にも程度はあります。例として、《防御の光網》は比較的新しいアミュレットタイタンのサイドカードです。《魂の洞窟》がすべての問題を解決していた時代は終わりました。現在では《魂の洞窟》《対抗呪文》に対しては極めて優れていますが、スタック上で《原始のタイタン》が対峙するそのほかのさまざまな妨害に対処できません。

激しい叱責緻密ティシャーナの潮縛り

《激しい叱責》《緻密》《ティシャーナの潮縛り》や除去呪文は、どれも《原始のタイタン》を異なる角度から妨害してきます。便利なことに、《防御の光網》はこれらすべての妨害に対して非常に相性が良いのです。《活性の力》に対してさえ引けを取らず、《血染めの月》をかいくぐった《一つの指輪》を守ってくれます。

沈黙

しかし、ここで検討したいのは《防御の光網》が出てくる前にほんの一瞬だけアミュレットタイタンのリストに登場したカード、《沈黙》についてです。《沈黙》《防御の光網》と同じ問題に対処しようとしていたのですが、マッチアップ全体を通してみるとあまりに弱く、《活性の力》《血染めの月》に対して入れたいどのマッチアップにおいても死角があったのです。

リアニメイト

外科的摘出否定の力

レガシーのリアニメイトは、最初に私が上記の教訓を思いついたデッキです。デルバーを中心としたほとんどの青のマッチアップでは、相手は除去を減らして《外科的摘出》《否定の力》の枚数を増やしてくることが予想できます。

納墓信仰無き物あさり

《納墓》《信仰無き物あさり》といったおなじみの方法でクリーチャーを墓地へ送る手段は、本質的にはカードアドバンテージを失っています。特に、《外科的摘出》がクリティカルに刺さった場合は、壊滅的な打撃を受けることになります。ハンデスによる妨害とリアニメイトがすぐにできる手札は非常に強力ですが、《信仰無き物あさり》がどのようにゲームの敗北につながるかを数えてみましょう。

Badlands不毛の大地

《Badlands》をフェッチで持ってくると《不毛の大地》の前にさらすことになります。《信仰無き物あさり》でアドバンテージを失った直後の《不毛の大地》は本当に激痛です!

外科的摘出

《信仰無き物あさり》を使用するには、相当な数のリアニメイト対象を手札に持っておく必要があります。ハンデスやリアニメイト呪文を探すために最初に《信仰無き物あさり》を唱える一般的なプレイパターンでは、《外科的摘出》の前に無防備になってしまうのです。

オークの弓使い

・最後になりますが、《オークの弓使い》はレガシーで人気のカードです!場に《オークの弓使い》がいる状況で《信仰無き物あさり》を唱えるのは罰当たりな行為です。

こうして書き出してみると、《信仰無き物あさり》はデルバーデッキにおいて多くの弱いマッチアップを抱えており、サイド後のゲームでは悪化してしまいます。

あなたはサイド後に起こりうるカードごとの悪いマッチアップをすべて把握しておき、それらに対処するようにすべきです。それが、このプロセスの2つ目のステップへとつながるのです。

教訓2:どんなプランが可能かを探して、自分のデッキの強みに着目しよう

ダウスィーの虚空歩きオークの弓使い

リアニメイトを使っていて、サイド後のメインプランのパフォーマンスの貧弱さにイライラすることがありました。《ダウスィーの虚空歩き》は主にその能力のために、すでにこのデッキの一般的なサイドボードツールとなっていましたが、それ単独では代わりのゲームプランとして機能しなかったのです。《オークの弓使い》が登場してから、この2枚を組み合わせてアグレッシブ・サイドボーディングのようなものを作ろうとしましたが、それも上手くまとめることができませんでした。

最初の「教訓1」をこのデッキに当てはめて、もっとも弱いつながりを見つけることに集中するまで時間がかかりました。そこで問題になったのは「《信仰無き物あさり》をサイドアウトしつつ、メインデッキのように強力なデッキのまま機能させることはできるのか」というものでした。

私はほかの既存のデッキからテクノロジーを借りることにしました。そのころレガシーではディミーア想起が流行っていて、《再活性》をフェアなカードとして《悲嘆》《カザド=ドゥームのトロール》と一緒に有効的に使っていたのです。

悲嘆再活性Troll of Khazad-dum

《カザド=ドゥームのトロール》はそのパズルにピッタリとはまっていて、“リアニメイトできる土地”として強く望まれていた安定性をもたらしています。また《納墓》のパッケージは健在なので、ブン回りの可能性も残っています。

2マナ域のクリーチャーは、墓地対策を求めてマリガンした対戦相手にプレッシャーをかけることに成功しました。ハンデス呪文は、相手の墓地対策を抜く必要がなければ、キーカードを抜いて相手の戦略に穴を開けることができるのです。

そして、これが上手くいったのです!このサイドボードプランを使って、再びMOCSの権利獲得までほんの少しのところまで迫ることができました(残念ではありましたが、これが私の最後の姿ではない!)。

いつもこのようにまとまりのある機能的なサイドボードが見つかるわけではありません。リアニメイトがこの形に到達できたのは、最近登場したいくつかのカードのおかげです。

たとえば、アミュレットタイタンは非常に緻密なコンボデッキでり、怪物的なマナベースがデッキの半分以上を占め、呪文を普通のマジックのように上手くプレイできません。このデッキは対策を避けるのではなく、対策を押し切る必要があるのです。

教訓3:勝負どころを選ぼう

ときには、自分のデッキに対して相性の悪いカードをプレイされることもありますが、それを対処するためには少し運に身を任せる必要があります。そして、これは仕方のないことなのです!

月の大魔術師四肢切断

アミュレットタイタンはその見事な例になります。《月の大魔術師》《血染めの月》そのものとは違い、《耐え抜くもの、母聖樹》が自然できれいな解答とはなりません。実際に除去呪文が必要で、《四肢切断》はもっとも効率的でベストな選択肢になります。ただ問題なのは、それを引かなければいけないということです。

ギシャスの初子、イツキンス荊景学院の戦闘魔道士

多くのプレイヤーが《召喚士の契約》《ウルザの物語》のツールボックスとしての側面に誘惑され、場に出た《月の大魔術師》を対処しようと完璧な解決策を探し出そうとしています。ときおり、アミュレットタイタンがまさにこの問題に対処するために《ギシャスの初子、イツキンス》《荊景学院の戦闘魔道士》をサイドボードに採用していることに気がつくでしょう。

解決しなければいけない問題は、「そのサーチ可能な選択肢は、現実的かつ達成可能な勝利への道を示しているか?」「《荊景学院の戦闘魔道士》で実際にゲームの流れを変えるためには、どれくらいカードをそろえる必要があるのか?」ということです。

森まだ死んでいない対抗呪文

この具体例では、まず《森》が必要になります。土地は4枚必要で、《月の大魔術師》が場に出る前にバウンスランドをプレイしているとそろえるのが難しくなります。さらに、《まだ死んでいない》であれ《対抗呪文》であれ、《月の大魔術師》を守るあらゆる可能性をかわす必要があり、これらすべての条件がクリアされた後でなければ、《召喚士の契約》の契約コストを払うために丸ごと1ターン遅れをとる可能性が高いのです!

《荊景学院の戦闘魔道士》を持ってこれることが自分の勝利の一因になるには、これだけ多くのチェックポイントを通過しなければなりません。先ほどの例えを使うなら、《荊景学院の戦闘魔道士》にアクセスできたからといって、《召喚士の契約》《月の大魔術師》の相性が大きく改善されるわけではないのです!

四肢切断一つの指輪

より現実的な勝利への道は、《四肢切断》を自然に引き、相手が《月の大魔術師》を守れるようになる前にすぐさま倒して、1マナというわずかなロスでコンボを決めきることです。あるいは、《一つの指輪》を使って大量にドローをしながら、ゲームを長引かせてもいいでしょう。効果的な対処手段があれば、手札を勝利へと変えてくれるのを助けてくれます。

《召喚士の契約》よりも《四肢切断》を使う頻度が低いというのは本当でしょうか?それは、間違いないでしょう!しかし、覚えておかなければならないのは、ゲームに勝つ可能性がもっとも高くなるようにデッキを組むべきだということです。これは必ずしも、どんな状況からでも勝つことができることと同じではありません。


今回伝えたいことは以上です。みなさんがサイドボードプランに取り組む際にも、これらの考え方が同様に役立つものになることを願っています。

ピオトル・グロゴゥスキ (X / Twitch / Youtube)

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Piotr Glogowski マジック・オンライン上でkanisterとしてその名を轟かせ、Twitchの配信者としても人気を博す若きポーランドの雄。 2017-2018シーズンにはその才能を一気に開花させ、プロツアー『イクサラン』でトップ8を入賞すると続くワールド・マジック・カップ2017でも準優勝を記録。 その後もコンスタントに結果を残し、プラチナ・レベル・プロとしてHareruya Prosに加入した。 Piotr Glogowskiの記事はこちら