皆さんこんにちは。
2017年も残りわずかとなりましたが、皆さんモダンを楽しんでいますか? モダンは、レガシーよりもデッキのコストがリーズナブルで好きなデッキを使い続けられるフォーマットです。アメリカでは一番人気のある構築フォーマットで、来年のSCG Tourのメインイベントのほとんどがモダンになったほどです。筆者も現在リアルでは一番触る機会の多いフォーマットです。
さて、今回の連載ではSeason Two SCG Invitationalと、併催されたSCGO Roanoke、SCG Classics Roanoke、そして、グランプリ・オクラホマシティ2017の入賞デッキを見ていきたいと思います。
Season Two SCG Invitational
月と青い中速デッキ
2017年12月1日-3日
- 1位 UR Gifts Storm
- 2位 Lantern Control
- 3位 Grixis Death’s Shadow
- 4位 Grixis Death’s Shadow
- 5位 Temur Moon
- 6位 Eldrazi Tron
- 7位 Jeskai Control
- 8位 Burn
Eli Kassis
トップ8のデッキリストはこちら
スタンダードとモダンの混合フォーマットで競われたSeason 2 SCG Invitational。スタンダード部門はほぼTemur EnergyとMono Redの2大勢力でしたが、モダン部門では各自が得意な戦略を持ち込んでおり、それぞれデッキに対してこだわりも見られました。
二日目進出デッキの分布によると、Jeskai ControlとGrixis Death’s Shadowが特に多く、これは強豪プレイヤーの多くが安定したパフォーマンスが期待できるデッキを選択した結果だと言えます。Jeskaiは常に一定数が選択してくると思われるAffinity、5C Humans、Gift Stormなどと相性が良く、Grixis Death’s Shadowは軽い妨害とクロックに恵まれており環境の多くのデッキと勝負になります。
Season Two SCG Invitational デッキ紹介
「Temur Moon」「Lantern Control」
Temur Moon
ユニークな構成のデッキを好んで使うGerard Fabianoですが、今大会でも例外なくTemur Moonという個性的なデッキを選択していました。
《血染めの月》を使った青いデッキは青赤の2色のBlue Moonがメジャーですが、このデッキは《血染めの月》が中心的なカードではなく、クリーチャーがほとんど採用されていないBlue Moonと比較するとクリーチャーが多めで、JundやAbzanのようなミッドレンジ寄りです。
Tron、Titan Shiftなどの土地コンボ、Grixis’s Death Shadow、AbzanやJeskaiといった多色ミッドレンジ、そしてコントロールのように現在のモダンの環境は特殊地形に頼ったデッキが多く《血染めの月》はこれらのデッキに刺さります。
☆注目ポイント
《タルモゴイフ》は《流刑への道》や《致命的な一押し》といった低コストの対策が多くなり対処されやすっくなりましたが多くのデッキが主力の除去としている《稲妻》に耐性があり、まだまだ主要なクロックとして活躍が期待できます。
《高原の狩りの達人》と《不屈の追跡者》はアドバンテージが取れる優秀なクロックとして活躍します。Jundでたまに見かける程度ですが、アグロデッキやBurnとのマッチアップではライフゲインは重要な要素で、トークンも出せるので除去されてもアドバンテージが取れます。除去されずに残れば変身することで除去兼本体火力になり、4/4というスペックを活かしてクロックとしても機能する優秀な1枚です。
《不屈の追跡者》も手がかりトークンによってアドバンテージを稼ぎつつサイズもアップするので、相手にとっては見たら即除去したいクリーチャーです。数ターン生き残ればそれだけでゲームを決めてしまうほどのインパクトがあります。
他にアドバンテージを稼ぎ出すクリーチャーでは《瞬唱の魔道士》と《ヴリンの神童、ジェイス》が見られます。《瞬唱の魔道士》はモダンの青いデッキである程度まで低コストのスペルを採用しているデッキではほぼマストなクリーチャーですが《ヴリンの神童、ジェイス》も最近見かけるようになりました。《ヴリンの神童、ジェイス》のルーター能力は墓地を肥やすので《タルモゴイフ》のサイズアップにも貢献し、さらにプレインズウォーカーに変身するので、相手は複数の異なる種類の脅威に対処しなければならないため、非常に厄介です。
《瞬唱の魔道士》や《ヴリンの神童、ジェイス》の選択肢を増やすために、スペルの種類が豊富です。《瞬唱の魔道士》と《稲妻》で対処しきれない高タフネスのクリーチャーに対処するために《仕組まれた爆薬》がメインから採用されています。AffinityやDeath’s Shadowなどのマッチアップで活躍します。
サイドボードの《削剥》は最近多くのデッキで見られるようになった除去スペルです。アーティファクトを対処しつつクリーチャー除去にもなるフレキシブルなスペルでAffinity、Lantern Control、5C Humans、各種《霊気の薬瓶》デッキなど様々なデッキに対して使えます。
Lantern Control
4 《古きものの活性》
3 《思考囲い》
1 《突然の衰微》
4 《発明品の唸り》
4 《ミシュラのガラクタ》
4 《オパールのモックス》
4 《写本裁断機》
4 《洞察のランタン》
2 《真髄の針》
2 《伏魔殿のピュクシス》
1 《墓掘りの檻》
1 《黄鉄の呪文爆弾》
3 《罠の橋》
1 《魔女封じの宝珠》
-呪文(42)-
《洞察のランタン》と《写本裁断機》を軸にしたプリズンデッキ。《コジレックの審問》や《思考囲い》といったハンデスで相手のプランを妨害し、《オパールのモックス》を始めとするマナ加速を駆使して《洞察のランタン》と《写本裁断機》を設置して、最終的に相手をロックしていくことが主なゲームプランとなります。
《洞察のランタン》は双方のプレイヤーのライブラリートップを公開した状態にするので、《写本裁断機》や《グール呼びの鈴》といったミル能力を持ったカードと組み合わせることで相手の危険なカードをシャットアウトしていきます。《罠の橋》や《真髄の針》といったカードで相手の行動を制限していき、この時点で相手の手札に解答がなければロックの完成です。
元々はモダンに存在する数多いメタ外のローグデッキの一つでしたが、『異界月』や『カラデシュ』から新戦力を獲得したことで強化されました。有名プレイヤーもプロツアーやグランプリで使うようになり、その存在が知れ渡った現在では、SCGOの上位でもよく見られるデッキです。
☆注目ポイント
環境の多くのデッキがクリーチャーによる戦闘が主な勝ち手段であるため、《罠の橋》は相手の勝ち手段の大半をシャットアウトします。軽いカードが多く、《オパールのモックス》のようなマナ加速もあるので手札の消費も速く、《洞察のランタン》のようなキーカードが揃うまでの時間を稼ぎます。
《古きものの活性》と《発明品の唸り》はキーカードを探し出すことに貢献します。《発明品の唸り》は『霊気紛争』から加入したアーティファクト版の《召喚の調べ》で、青のトリプルシンボルを安定してキャストするために、Samuel Blackは《幽霊街》や《発明博覧会》よりも、《植物の聖域》のような色マナが出る土地を優先しており、マナ基盤の安定のために緑黒が必要となる《突然の衰微》の枚数も減らされています。
《発明品の唸り》によって《墓掘りの檻》、《真髄の針》、《黄鉄の呪文爆弾》、《魔女封じの宝珠》などを状況に応じてサーチするシルバーバレット戦略を取ることも可能です。これにより安定性が向上し、《洞察のランタン》+《写本裁断機》+《罠の橋》を3ターン目までに揃えやすくなりました。
《ミシュラのガラクタ》は0マナというコストを活かして《オパールのモックス》の「金属術」の条件を満たす助けとなり、《発明品の唸り》の「即席」や、《罠の橋》のために手札の枚数も減らすことを可能にしています。ドローもできるのでデッキ圧縮にもなり、このデッキにとって極めて重要なカードの一枚です。
《ボーラスの工作員、テゼレット》はアーティファクトが戦場に並んでいる状態では、「+1」能力を起動して次のターンにゲームを終わらせることも可能にします。「-1」能力も《石のような静寂》のような対策カードを用意してくる相手に対して異なるアンサーを要求するため強力です。勝利するのに時間がかかるデッキなので、速やかにゲームを終わらせることを可能にするカードは重要です。
《アズカンタの探索》は最近よく見られるようになった『イクサラン』からの新カードです。一度変身すればコントロールやミッドレンジに対して頼れるアドバンテージエンジンとなるので、相手の妨害にも対抗することが可能です。
SCGO Roanoke
伝統的なTronがEldrazi Tronに勝利
2017年12月2日-3日
- 1位 Tron
- 2位 Eldrazi Tron
- 3位 Dredge
- 4位 Mono Red Prison
- 5位 GW Company
- 6位 Grixis Death’s Shadow
- 7位 Titan Shift
- 8位 Grixis Death’s Shadow
Benedict Chukwuma
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UR Gift StormやJeskai、Affinity、5C Humansといった今大会直前まで人気のあったデッキは上位では少な目で、エルドラージも含めたTronが勝ち組でした。Jeskaiを始めとする青いフェアデッキに強いことが主な勝因です。
Invitationalでも人気のあったGrixis Death’s Shadowも安定したパフォーマンスを見せており、やはりデッキの種類の多いモダンでは相手を妨害しつつ軽いクロックでプレッシャーをかけていくという一貫性のある戦略はベストな選択肢のようです。
墓地を利用するコンボデッキであるDredgeも最近はMagic OnlineのPTQで結果を残し、復権してきています。
SCGO Roanoke デッキ紹介
「Dredge」
Dredge
《ゴルガリの墓トロール》が禁止になったことで弱体化を強いられた直後はしばらく姿を見なくなっていましたが、現在は全体的に墓地のマークが薄いこともあり、直前の11月13日に開催されたMagic OnlineのPTQで優勝するなど、復権の兆しを見せています。
軸をずらした戦略なのでJeskaiやGrixis Death’s Shadowなど妨害要素を多数搭載したミッドレンジ系のデッキに強く、墓地に対するマークが薄かったのに加えてこれらの戦略がポピュラーだったこともこのデッキの勝因です。
☆注目ポイント
《ゴルガリの墓トロール》という最高の「発掘」カードを失いましたが、《ゴルガリの凶漢》、《臭い草のインプ》、《暗黒破》、《壌土からの生命》、《ダクムーアの回収場》といったカードは揃っているので、戦略自体はまだまだ健在です。
《ゴルガリの凶漢》と《臭い草のインプ》は再利用可能なブロッカーとして活用できるので、普通にキャストされることもあります。「発掘」されるカードの枚数は少な目ですが、《壌土からの生命》はカードアドバンテージになり《恐血鬼》を墓地から復活させるための土地を確保する手段になります。
《安堵の再会》は《ゴルガリの墓トロール》が不在の現在でも12枚以上ものカードを墓地に落とせる可能性があるのでデッキの爆発力は健在です。
《燃焼》はこのデッキを使う理由の一つで、一方的なスイーパーとしてもフィニッシャーとしても機能するスペルです。《壌土からの生命》で墓地の土地を回収することで、Xのコストである手札を補充することができます。
軸をずらした戦略のため、多くのデッキに対してメインボードは有利ですが、墓地対策がサイドインされるのでこちらも対抗策を用意します。よく見られる墓地対策は《安らかなる眠り》や《墓掘りの檻》といった置物なので《突然の衰微》と《古えの遺恨》で対策できます。《虚空の力線》がサイドボードに採用されるぐらいに墓地へのマークが厳しいと流石にキツイですが、デッキの種類が多いモダンでは墓地対策のサイドを十分に確保できるデッキは限られています。
SCG Classics Roanoke
珍しいデッキが多数
2017年12月2日-3日
- 1位 Jeskai Control
- 2位 B/W Eldrazi Taxes
- 3位 Enduring Ideal
- 4位 Lantern Control
- 5位 8 Rack
- 6位 8 Rack
- 7位 Elves
- 8位 8 Rack
Mark Stanton
トップ16のデッキリストはこちら
優勝こそ現在最もポピュラーなデッキの一つであるJeskaiでしたが、その他はClassicsらしく個性的なデッキが多数勝ち残っていました。
SCG InvitationalやSCGOと併催して開催されたイベントでしたが、今大会でプレイオフに3名のプレイヤーを送り込んだ8 Rackなど、注目に値するデッキが多く見られました。
デッキテク・インタビュー: Jessee Leese -8 Rack-
今大会で多数の入賞者を出した8 Rackを使用していたプレイヤーの一人であるJessee Leeseさんにお話を聞くことができました。
彼女のリストはメインから4枚採用された《群れネズミ》のように、他のリストと比較して個性的なアプローチが見られます。SCGO Baltimoreでも同様のリストで10位という好成績を残しています。
――「まず最初に8 Rackを使う理由を教えてもらえますか? あと、使うようになってどれぐらいになりますか?」
Jessee「デッキを使うようになったのは2016年の3月ぐらいからで、理由はマジックで好きな色が黒だったからです。8 Rackはモダンで黒という色を一番楽しめるデッキだと思い、使うことを決めました。競技大会に参加するようになって気が付いたのは、このデッキは色々な形にカスタマイズすることができる、ということですが、黒単色のバージョンがベストだと思います」
――「他のリストでは《鼠の短牙》や《罠の橋》がメインに採用されているのをよく見かけますが、Jessee Leeseさんは《群れネズミ》を採用していますし、単色でありながらカードの選択にプレイヤーごとの個性が現れる面白いデッキですね」
Jessee「他のリストではビートダウン対策に《罠の橋》がメインから採用されていますが、攻撃を宣言したあとに《頭蓋囲い》をインスタントスピードで付けることができるAffinityのようなデッキとのマッチアップでは効果が薄く、《小悪疫》を使うことが多いので3マナ以上のコストのカードは実はあまり入れたくありません。なので、メインには入れないことにしました。特にコントロールとのマッチアップでは相手の手札を減らすことが難しく、《拷問台》だけでライフを削り切ることは難しいと思い、何か別の勝ち手段が必要だと考えたときに見つけたのが《群れネズミ》なんです」
Jessee「戦場に出てすぐに除去されなければコピーのトークンを増やすことができて、カウンターにも強く、クロックも速く、なによりもこのカードを予測していた相手がいなかったことも大きかったと思います。最初は《罠の橋》1枚と《群れネズミ》3枚でしたが、《拷問台》よりも《群れネズミ》による戦闘で勝つことが多くなったので、テーマに一貫性を持たせるために《罠の橋》はサイドに移すことに決めました」
――「8 Rackが相手のときにはJeskaiのようなコントロールは《流刑への道》を始めとする除去を減らしてくると思うので、《群れネズミ》は予測していなかった相手にとっては非常に厄介なクリーチャーになりそうですね」
Jessee「ほとんどのプレイヤーは《罠の橋》をメインから採用した《変わり谷》以外ほぼノンクリーチャーリストだと思っていたようで、有利を得られることが多かったです。《変わり谷》の部族シナジーも《群れネズミ》を採用することにした理由の一つですね」
――「スタンダードの黒単を思い出しますね。相性の良いマッチアップと苦手なマッチアップも教えてもらえますか?」
Jessee「特に苦手なデッキはEldrazi TronとAffinityで、Eldrazi Tronはマナ加速から強力なクリーチャーが高速展開されるのでハンデスが追い付かなくてきつく、除去や対策も《難題の予見者》で落とされることがありますし、X=1の《虚空の杯》を出されるとデッキの半分以上のスペルがプレイできなくなります。《小悪疫》、《ヴェールのリリアナ》のようなサクリファイス系の除去をたくさん引けないと勝つのが難しいマッチになりますね」
Jessee「Affinityは素早く横に並ぶので対処が追い付かないことが多く、手札も速く使い切るのでハンデスの効果が薄いので苦手なマッチになります。有効なサイドボードは《真髄の針》とスイーパーの《バントゥ最後の算段》で《真髄の針》は《頭蓋囲い》《電結の荒廃者》《鋼の監視者》を指定していきます。あと苦手なマッチアップでもう一つ、Dredgeがあります。ハンデスがまったく役に立たなくて、サイドの《虚空の力線》頼みになりますね」
Jessee「相性の良いマッチアップはStorm、Scapeshift、Burn、Lantern Controlです。StormとScapeshiftはコンボデッキなのもあってハンデスが強くて、Stormは《ゴブリンの電術師》や《遵法長、バラル》を除去してハンデスでキャントリップや儀式スペルを落とせば勝ちやすくなります。Scapeshiftとのマッチアップでは《小悪疫》がとても強く、あまり速いデッキではないので、コンボを決められる前に《ヴェールのリリアナ》と《拷問台》でロックすることができます」
Jessee「Burnは50:50のマッチアップだと思っていましたが《大歓楽の幻霊》さえ対処できれば相性の良いマッチアップだということが分かりました。サイド後は置物対策が入ってきますが、ここでも《群れネズミ》の群れが活躍します。サイドのカードでは《集団的蛮行》がこのマッチにおけるMVPです」
Jessee「Lantern Controlは最近よく見かけるようになったデッキですが、8 Rackはクリーチャー除去や《罠の橋》に耐性があります。このマッチアップではサイド後に《群れネズミ》は抜いてしまいますからね。気を付けなければいけないカードは《神聖の力線》と《魔女封じの宝珠》だけですが、《ヴェールのリリアナ》の「+1」能力は対象を取らないし、《拷問台》も対象に取らないので、もし張られてしまっても勝つチャンスはあります。Lantern Controlはハンデスに弱く《思考囲い》が良く効きます」
Jessee「Jund、Abzan、GW Companyなどミッドレンジは50:50です。《翻弄する魔道士》や《帆凧の掠め盗り》での妨害がうまくいかない限りは、5C Humansともほぼ互角ですね。《スレイベンの守護者、サリア》が一番厄介なクリーチャーになりますが《致命的な一押し》で対処できますから。Jeskaiは五分から微不利だと思いますね。相手は《群れネズミ》を想定していない場合が多いのでその分のアドバンテージはありますが《謎めいた命令》はこのデッキにとって対処が難しいカードです」
――「採用されなかったカードについても教えていただけますか?」
Jessee「《ニクサシッド》はBaltimoreのチーム戦で使ってみた結果、除去耐性のなさと3マナというコストもあって不採用になりました。《漸増爆弾》は1で起動するのも2で起動するのも自分の方が被害が大きくなる場面が多いので、他のリストと違って《群れネズミ》を採用しているので採用を見送っています。《狂乱病のもつれ》は使ったことはありませんが、コントロールに強そうなカードなので試してみようと思います」
――「なるほど。詳しい解説、ありがとうございました!」
8 Rackは使っているプレイヤーが少ないですが《思考囲い》、《ヴェールのリリアナ》、《致命的な一押し》といったモダンでも屈指の強力なスペルを搭載したデッキです。次にご紹介するグランプリでワンツーフィニッシュを飾ったTitan Shiftのようなコンボデッキに強いデッキであることも注目に値します。他とは違ったデッキを使ってみたいというプレイヤーにもお勧めです。
グランプリ・オクラホマシティ2017
土地コンボの躍進
2017年12月9日-10日
- 1位 Titan Shift
- 2位 Titan Shift
- 3位 Dredge
- 4位 Tron
- 5位 Through the Breach
- 6位 Tron
- 7位 Living End
- 8位 Tron
Larry Li
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プレイオフはTronやTitan Shiftといった土地コンボが中心で、決勝戦もTitan Shiftのミラーでした。それ以外ではDredge、Living End、Through the Breachといったコンボデッキが中心の大会でした。
Tronが現在有利なポジションにあることは今大会の前の週に開催されたSCGO Roanokeで確認済みでしたが、Jeskaiを始めとした環境の多く存在するミッドレンジに有利で、そういったデッキが活躍している現環境では良チョイスとなります。
グランプリ・オクラホマシティ2017 デッキ紹介
「Titan Shift」「Tron」「Through the Breach」
Titan Shift
2 《森》
3 《踏み鳴らされる地》
1 《隠れた茂み》
4 《樹木茂る山麓》
3 《吹きさらしの荒野》
3 《燃えがらの林間地》
4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
-土地(27)- 4 《桜族の長老》
4 《原始のタイタン》
-クリーチャー(8)-
《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を軸にした土地コンボで、《風景の変容》や《原始のタイタン》によって土地を高速で並べて《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の誘発能力による直接火力によって勝利を目指します。
デッキの戦略上《遥か見》のようなマナ加速も多く採用されているため、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》によるコンボ以外にもマナ加速から《原始のタイタン》や《業火のタイタン》といった強力なフィニッシャーを高速展開していくことも可能です。
マナ加速によって土地を並べて、フィニッシャーの《原始のタイタン》や《風景の変容》からの《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》によって勝負を決めるという一貫した戦略のため、基本的にどんな相手でもやることがそこまで変わらず、モダンのデッキの中ではプレイングも比較的簡単なことから初心者にもお勧めのデッキとしてよく挙げられています。
☆注目ポイント
一時期は《約束の刻》が採用されたバージョンが流行りましたが、今大会を制したLarry Liのリストには不採用でした。青いデッキにとっては《原始のタイタン》や《風景の変容》と共にマストカウンターとなる《約束の刻》ですが、5マナという重いコストが懸念されたのか、軽いキャントリップ兼マナ加速になる《探検》が優先されています。
除去が少なく、デッキの大半が盤面に影響を及ぼさないマナ加速や《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》によるコンボのサポートで占められているため、アグロデッキとの相性は悪くなります。そのアグロデッキに少しでも体制を付けるためにメインから採用されたスイーパーの《焼けつく双陽》は、サイクリングが付いているので手札で腐らない便利なスペルです。
サイドに忍ばせてある《魔女封じの宝珠》はあまり見かけないカードですが、ハンデスや火力から身を守り《神聖の力線》と異なり色マナを必要としないので使いやすい1枚です。
Tron
最近はTronと言えばエルドラージクリーチャーを多数採用したEldrazi Tronが主流でしたがJeskaiなど中速デッキが結果を残すようになり、伝統的なTronも見られるようになりました。
Eldrazi Tronは《虚空の杯》や《難題の予見者》といった妨害要素が多目ですが、ロングゲームにおける強さはTronに軍配が上がります。
緑に何かしらの色を足すことが多く、最近のトレンドは軽い除去である《致命的な一押し》や、ハンデス兼除去の《集団的蛮行》、ハンデスの《思考囲い》のために黒を足したバージョンで、苦手なコンボデッキに耐性を付けています。
☆注目ポイント
《古きものの活性》や《森の占術》など、Eldrazi Tronよりも土地をサーチする手段が豊富なので、3ターン目にウルザランドを揃えて《解放された者、カーン》をキャストしやすくなっています。
1マナの軽い単体除去である《致命的な一押し》は苦手なアグロデッキとのマッチアップで活躍します。サイド後はライフゲインしつつ5/3が残る《スラーグ牙》が入り、さらに《集団的蛮行》も追加され、厳しいマッチアップであることは変わらないものの、以前と比べると大分改善されています。
ハンデスはこのデッキが苦手とするコンボデッキとのマッチアップの改善に一役買っています。特に除去としても機能する《集団的蛮行》はElvesやCounters Companyのような《集合した中隊》を使うクリーチャーコンボデッキに対して特に有効で、マナクリーチャーなどを除去しつつ《集合した中隊》も落とすことで、相手の動きを著しく減速させます。
Through the Breach
《聖トラフトの霊》や《呪文捕らえ》といった最近のJeskaiの定番のカードは見られず、《裂け目の突破》によって《引き裂かれし永劫、エムラクール》のコストを踏み倒すコンボデッキです。除去とカウンターで時間を稼ぎつつ相手の隙を見て瞬殺コンボを狙う動きは、かつてモダンの環境を支配していたTwinを彷彿させます。
コンボ要素が入ったJeskaiは実はこれが初めてはなく《先駆ける者、ナヒリ》の能力によって《引き裂かれし永劫、エムラクール》をサーチするJeskai Nahiriも『イニストラードを覆う影』リリース直後に見られました。
コンボ要素により通常のJeskaiよりもTronとの相性が少し良くなっており、途中まではJeskai Controlと同様の動きなので相手に読まれ難かったのも勝因だと思われます。
☆注目ポイント
《裂け目の突破》+《引き裂かれし永劫、エムラクール》のコンボによって相手は大半のリソースを失います。15点ダメージなのでゲーム自体は続くこともありますが、ほとんどの場合は《稲妻》や《瞬唱の魔道士》で最後の数点を削り切ることが可能なので、問題になることはありません。《裂け目の突破》はインスタントなので隙が少なく、コンボを決める際に自分のターンにタップアウトする必要がないのも、この戦略の強みです。
《アズカンタの探索》は今やモダンの青いデッキの定番のカードとして定着しており、ドローの質の向上に貢献するので《瞬唱の魔道士》、火力除去、カウンターと揃っているJeskaiのようなコントロールデッキにフィットしておりよりフレキシブルな動きが期待できるようになりました。一度変身することでアドバンテージエンジンとなり、決定力に欠けていた青白系の最も欲しかった逸材と言えます。
総括
SCG Tourのフォーマットの多くがモダンになったことに伴い今年の春からUSA Modern Expressを始めましたが、日本国内でもグランプリ・神戸2017のようなモダンのイベントも充実していました。
来年2月に開催されるプロツアー『イクサランの相克』もモダンで、今最も熱いフォーマットの一つです。デッキの種類も多く、特にデッキビルダーにとっては面白いフォーマットなので、この連載をきっかけにフォーマットに興味を持っていただけたのなら幸いです。
以上USA Modern Express vol.10でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを! そして、良いお年を!