情報を制す者はマジックを制す。
特にSNSによる情報交換が盛んな現代、口コミがその後のメタゲームに与える影響は計り知れない。
すなわち、バズってる(話題になっている)カードを知ることは、メタゲームの把握と予測の大いなる助けとなることだろう。
当企画では、そんな「今、バズってるカード」を週刊で追っていきたいと思う。
カードの紹介に入る前に、先週行われたイベントやマジック関連の主な出来事を簡単におさらいしよう。
【リリアナがゲートウォッチ入りする】
ついに(?)リリアナが誓った!
スタンダードでも《異端の癒し手、リリアナ》として活躍し、モダンやレガシーでも《ヴェールのリリアナ》でおなじみのプレインズウォーカー・リリアナがゲートウォッチのメンバーへと仲間入りを果たした。
すでに【ギデオンと共闘しているアート】などが公開されていたが、この急展開に興奮したという方も多いことだろう。
現在、誓いの全文は上に貼った【「Access Magic: 『異界月』 第3話」】から確認できるが、ここでも引用させていただこう。
【「Access Magic: 『異界月』 第3話」】より引用
一人よりも力を合わせたほうが強力になれるのはわかっているわ
それで私が力を得て
鎖のヴェールに頼らなくて済むなら
私もゲートウォッチになるわ
これでいい?
一人よりも力を合わせたほうが強力になれるのはわかっているわ
それで私が力を得て
鎖のヴェールに頼らなくて済むなら
私もゲートウォッチになるわ
これでいい?
リリアナらしい(?)少し険のある締めのセリフなどはかえって可愛げがあって微笑ましい(ただし100歳超)。リリアナの人物像については【若月 繭子女史の記事】を読むと非常に分かりやすいので、詳しく知りたいという方はぜひそちらをご覧いただきたい。
主要な出来事はこのくらいだろうか。
さて、それでは今大きな話題を呼んでいるカードたちを紹介しよう。
1. 《悪魔の契約》
『異界月』の環境では、背景ストーリーも含めて大活躍すると思われるリリアナ・ヴェス。
《悪魔の契約》は、そのリリアナが交わした「4体の悪魔との契約」をモチーフとし、契約主に多大な恩恵をもたらす。アップキープごとに、4マナの呪文としては破格のライフ、そしてハンド・アドバンテージを得ることが可能だ。
しかし、悪魔は存外せっかちだ。4ターン後には、契約主の生命を奪い去っていく。利益を得るために何らかの代償を求められるカードは多数あるが、「あなたはこのゲームに敗北する」という文言ほど、わかりやすい代償は存在しないだろう。
それでも、この危険な取引に魅了された人は多く、代償を回避する方法が講じられた。利益を貪った後、《悪魔の契約》を手札に戻してもう一度契約をしたり、契約そのものを破棄したりするのだ。前者は《シルムガルの命令》や《分散》、後者は《苦渋の破棄》や《ドロモカの命令》、《天使の粛清》などが代表である。
そして、『異界月』でもう1つの、そして“最凶”の回避手段が手に入る。敗北という代償を相手に押し付けてしまうのだ。
《無害な申し出》。
相手にパーマネントをプレゼントする、という一見無害な効果だが、可愛いイラストに騙されることなかれ。プレゼントの内容は失効目前の《悪魔の契約》だ。利益のみを享受して、契約主の名義を対戦相手に書き換えてしまえば、後は悪魔が淡々と処理してくれる。
この「デメリットを相手に押し付ける」という挙動は、《寄付》+《Illusions of Grandeur》の【トリックス】を彷彿とさせる。
《悪魔の契約》が登場したスタンダード環境では、《変容する忠誠》と《果敢な泥棒》という「交換する手段」は存在したが、相手もエンチャントをコントロールしている必要があった。その点、《無害な申し出》は一方的に押し付けることが可能だ。
シンプルで分かりやすいコンボだが、凶悪さは言うまでもない。リリース後は、あちらこちらで契約の押し付け合いが発生するだろう。購入したら、名義確認はお忘れなく。
ちなみに、イニストラード次元には《聖所の猫》と《黒猫》という、マジックを代表する可愛い猫コンビが居る。
マジックの世界で「猫」といえば大抵が筋骨隆々の二足歩行で戦場を駆け抜けているが、この2匹は実に猫らしくて可愛い。片方はゾンビだが。
2. 《アロサウルス乗り》
かつて【Travis Wooがモダンの《出産の殻》デッキで試みた】コンセプトが、『異界月』の新カードである《異界の進化》によって現代に蘇る……(※2016年7月現在、モダンで《出産の殻》は禁止です)。
さぁ、《アロサウルス乗り》を《異界の進化》して《エメリアの盾、イオナ》をプレイしよう!
マナクリーチャーを経由すれば最速で2ターン目に《エメリアの盾、イオナ》が戦場に出てくるという夢とロマンが溢れる驚異的なコンボ。決まれば実質的に2ターンキルである。
居ても立っても居られなくなったので、気が早いと思われるかもしれないがデッキリストを作成した。
4 《森》 2 《繁殖池》 2 《草むした墓》 4 《霧深い雨林》 4 《新緑の地下墓地》 4 《樹木茂る山麓》 -土地 (20)- 4 《極楽鳥》 4 《貴族の教主》 4 《サテュロスの道探し》 3 《ニクスの織り手》 2 《エルフの笛吹き》 4 《わめき騒ぐマンドリル》 4 《アロサウルス乗り》 3 《グルマグのアンコウ》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 1 《グリセルブランド》 2 《エメリアの盾、イオナ》 -クリーチャー (32)- |
4 《思考掃き》 4 《異界の進化》 -呪文 (8)- |
追加の《アロサウルス乗り》として《グルマグのアンコウ》と、1マナ軽いものの《わめき騒ぐマンドリル》を採用している(ただし、《グルマグのアンコウ》はピッチコストにできないため3枚だ)。
《わめき騒ぐマンドリル》でも《グリセルブランド》か《大修道士、エリシュ・ノーン》をサーチすることができるので、十分な仕事を果たしてくれることだろう。4/4トランプルというタフなサイズは壁としてはもちろん、いざというときのビートダウンプランでも役に立つ。
なぜ《エルフの笛吹き》? と思われるかもしれないが、これはもしも《エメリアの盾、イオナ》たちフィニッシャーを“引いてしまった”ときにも戦場に出すことができるため採用している。
《ニクスの織り手》は《アロサウルス乗り》のコストにすることもでき、自身の能力で「探査」のための墓地を肥やしつつ墓地に落ちてしまったフィニッシャーを手札に戻すことができる何でも屋である。
もちろん《アロサウルス乗り》や《異界の進化》の性質上カウンター呪文には非常に弱い(《差し戻し》ですら致命的)のだが、それはオールインコンボの宿命として割り切って考えるしかないだろう。そういった弱点を踏まえたとしても、モダンというフィールドで2ターンキルの可能性を追い求める価値は十二分にあるはずだ。
3. 《十三恐怖症》
ついに来てしまった。《十三恐怖症》の時代が……!
組み合わせて使えと言わんばかりのこの2枚。至ってシンプルな組み合わせなので語るべきことは少ないが、せっかくなのでルールについて再確認しよう。
おそらく全国10万人の《十三恐怖症》ファンのみなさんにとっては既知のことばかりだとは思うが、今後は《十三恐怖症》がメタゲームを塗り替えることになるため、使われる側もしっかりと確認していただきたい。
まず《十三恐怖症》の能力はいわゆる「if節ルール」とは異なる。勝利条件や敗北条件を持ったカードは《臨死体験》や《極悪な死》など「if節ルール」を持ったカードが多いため混同しやすく、注意が必要である。また、「may(してもよい)」でもないため誘発イベントが発生した場合(《十三恐怖症》の場合はアップキープの開始時を迎えたとき)必ず誘発する。
逆に言えば、必ず誘発型能力がスタックに乗るため、その解決前に行動することができる。そのため《地獄の樹》とコンボすることが可能になっているというわけだ。
また、誘発に際してまずモードを選択した後、誘発型能力がスタックに積まれることになる。解決時に「じゃあプラスで」「じゃあマイナスで」といったことはできないので、しっかりと「《十三恐怖症》が誘発したのでモードを選択します」など、対戦相手とコミュニケーションを取りながらゲームを進行しよう。
また、優先権が発生するタイミングや《地獄の樹》の能力を起動すべき瞬間についてはしっかりとチェックしておいた方がよいだろう。ここで解説したいところだが、一から説明するとかなり長くなってしまいそうなので【MTG Wiki:優先権】をご覧いただきたい。
いかがだっただろうか?
今週もまた多くのカードがプレイされ、注目され、議論を呼ぶのだろう。
次回の記事も楽しみにしていただけたら幸いである。
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