藤江 竜三のスタンダード視点 ~『イニストラード:真夜中の狩り』10選~

藤江 竜三

はじめに

こんにちは。ライバルズリーグ所属、Hareruya Prosの藤江 竜三です。

日没を遅らせる者、テフェリー群れの希望、アーリン光の勇者、シガルダ

ついに『イニストラード:真夜中の狩り』の全カードリストが公開され、発売日が近づいてきました。同セットのカードパワーが高いことに加えて、スタンダードで使用できるエキスパンションが入れ替わるローテーションが実施されるため、新しくマジックを始めたり、復帰しようと考えている方にはとても良いタイミングになるのではないでしょうか。

そこで今回は『イニストラード:真夜中の狩り』発売後の新環境を考え、スタンダードの注目カード10枚を紹介したいと思います。

環境整理

『イニストラード:真夜中の狩り』の発売にともない、『エルドレインの王権』と『テーロス還魂記』、『イコリア:巨獣の棲処』、『基本セット2021』がスタンダードでは使用できなくなります。そのなかでも『エルドレインの王権』には《砕骨の巨人》《恋煩いの野獣》《エッジウォールの亭主》《エンバレスの宝剣》など強力カードが多数ありました。

砕骨の巨人

とりわけ《砕骨の巨人》がスタンダードを去る影響は大きそうです。今まではタフネス2以下のクリーチャーはすぐに除去されてしまうため、戦場に出てすぐにアドバンテージが稼げない限りは採用すら敬遠されてきました。《砕骨の巨人》亡き後、既存のカードでも大きく評価が変わるものが出てくるのではずです。

ネヴァーウィンターのドライアドワイト勝利した冒険者

たとえば、《ネヴァーウィンターのドライアド》《ワイト》《勝利した冒険者》といったカードが活躍できるようになるかもしれません。

また、新環境を占う上ではMTGアリーナのスタンダード2022の結果は欠かせません。同環境では白単や緑単などのアグロ、バントパーティ、オルゾフコントロール、シミックランプなどが勝ち組となっていました。そのため『イニストラード:真夜中の狩り』発売後もそれらが主力になると思っていました。

しかしながら、『イニストラード:真夜中の狩り』は想像以上にカードパワーが高いセットでした。どうやらスタンダード2022とはまるっきり異なったデッキが登場することになりそうです!

それでは、新スタンダードで活躍しそうな注目のカード10枚を選んだのでご覧ください。

藤江の10選

新鋭

《レンと七番》

レンと七番

まずは目玉のプレインズウォーカーである《レンと七番》!!経験上、クリーチャー・トークンを生成できるプレインズウォーカーは大体強いです。

[+1]能力で墓地を肥やしつつ手札に大量の土地を確保し、[+0]で先ほど得た土地をしっかりと使えます。[-3]は上2つの能力と噛み合っており、まずはこの能力から起動して守りを固めながら上2つの能力を使い分けていくことになりそうです。奥義はあまり使うことはなさそうですが、あって困ることはありません。

カザンドゥのマンモス

気をつけて欲しいのは、[+1]能力を起動しても《カザンドゥのマンモス》などの呪文/土地の両面カード(スペルランド)は手札に加えられないことです。能力を十分に活用するためには、今までのマナ基盤を少し変更する必要があるかもしれません。

収穫祭の襲撃

さらに新カードである《収穫祭の襲撃》との相性もバッチリ。《収穫祭の襲撃》から《レンと七番》を含めた5マナのカードが一気に2枚めくれたらまさにお祭り状態です。

多色土地

さびれた浜難破船の湿地
憑依された峰落石の谷間草茂る農地

注目すべきはプレインズウォーカーやクリーチャーばかりではありません。やはりマジックの基本となるのは土地であり、特に1枚で2色を生み出せる多色土地は構築戦において欠かせません

『イニストラード:真夜中の狩り』の多色地形は非常に強力であり、この記事を書くにあたって5種類全部入れて、「はい、残りあと5選^^」としようかと考えたほどです。間違いなく多色デッキの足場を支える基本となる土地でしょう。アンタップ条件をみるにこの土地はややコントロール向けなので、全体的に環境が少し遅くなるかもしれません

《運命的不在》

運命的不在

インスタントでクリーチャーのみならず、プレインズウォーカーも破壊できるシンプルに強いカードです。色は白ですが…効果は黒っぽいですよね。

石の宣告

これほど使い勝手の良いカードがただで使えるわけもなく、当然デメリットがあります。それは除去したクリーチャーのコントローラーに手掛かり・トークンを与えてしまうこと。間違いなく強いとは思いますが、カード1枚は無視できるほど軽いデメリットではありません。似たカードで『イニストラードを覆う影』に《石の宣告》がありましたが、この「調査」には泣かされた人も多いのではないでしょうか。

《聖戦士の奇襲兵》

聖戦士の奇襲兵

え!?2マナ3/1に瞬速が!?しかも《解呪》付き!?おまけに人間!?

《聖戦士の奇襲兵》は全カードリストを見て目を疑った新カードNO.1です。そのデザインは多くのフォーマットで使われるポテンシャルを秘めています。近年では《レンジャー・クラス》や英雄譚のように戦場へ出たときに仕事をするエンチャントが増えたことを考えると、置物(エンチャントやアーティファクトの俗称)破壊もこのぐらいの強さが必要な時代になったのかもしれません。

しかし、これがコモンとは…。ぜひフォイルでそろえたいカードです。スタンダード落ちするまでお世話になることでしょう

辺境地の罠外し辺境地の罠外し

このカードに加えて、緑の《辺境地の罠外し》も素晴らしい対策カードとなっています。今後置物を採用する場合は、戦場へ出ただけである程度仕事をしないと活躍するのは難しい時代になるかもしれません。

《茨橋の追跡者》

茨橋の追跡者

戦場へ出るだけで仕事をするナイスカードであり、しかもサイズは4/3。除去されたとしても手掛かり・トークンが残るためカード2枚分の働きをしてくれる、まさに新世界の《砕骨の巨人》です。

レンジャー・クラスエシカの戦車

手掛かり・トークンを先に使ってしまうとパワーダウンしてしまいますが、緑には《レンジャー・クラス》《エシカの戦車》などトークンを生成するカードはいくらでもあるため心配無用です。かつてのスタンダードでは《茨橋の追跡者》と効果の似ている《不屈の追跡者》はあらゆるデッキに採用された実績があり、今回もよく見かけることになりそうです。

秋の占い師原初の敵対者風変わりな農夫

《茨橋の追跡者》以外にも『イニストラード:真夜中の狩り』の緑には《秋の占い師》《原初の敵対者》、デッキによりますが《風変わりな農夫》など強力な3マナ域が揃っています。デッキ構築の段階でどのカードを選択するか、考えるだけで今から楽しみです。

《不吉な首領、トヴォラー》

不吉な首領、トヴォラー無謀な嵐探し

今回の注目のアーキタイプである狼男《不吉な首領、トヴォラー》《無謀な嵐探し》とともに環境の中心で暴れ回ってくれるのではないでしょうか。狼・狼男のアーキタイプはすでにスタンダードで活躍している《レンジャー・クラス》《群れ率いの人狼》があるため、それだけでもプラス評価できます。

不吉な首領、トヴォラーケッシグの狼の地

《不吉な首領、トヴォラー》は息切れしやすいアグロデッキおける貴重な手札補充役であることに加えて、裏面の《深夜の災い魔、トヴォラー》になれば硬直した盤面で一気に勝負を決められる《ケッシグの狼の地》に似た能力もついています。まさに1枚で複数の仕事をこなす凄いやつです。対象が狼・狼男限定のため、これらが満載の狼男デッキを早く組んで見たくてワクワクがとまりません!

さらにこのカードが優秀なのはデッキ全体を狼・狼男でガチガチに固めなかったとしても、《レンジャー・クラス》《群れ率いの人狼》と一緒に使うだけで十分強そうなことです。

既存カードを超える!?

《感電の反復》

感電の反復

え!?コピー呪文に「フラッシュバック」が!?

実例指導

『イニストラード:真夜中の狩り』には目を疑ったカードがいくつかあるのですが、《感電の反復》もその1枚です。《実例指導》と比べるとその強さはわかりやすいかと思います。驚くことにほとんど同じカードなのに「フラッシュバック」が付いているお得っぷり《実例指導》が一部のデッキで使われていたことを考えると、このカードも可能性を秘めています。

コピー呪文は「魔技」と相性が良いので、それとの組み合わせが見つかるとさらに面白くなるとおもいます。実際に使うときはできれば3マナ以上のカードをコピーしたところですが、《感電の反復》→「フラッシュバック」→《火遊び》とプレイして6点分のダメージを分割して与えるなかなか小狡い動きもできそうです。ほかにもイゼットには《星の大魔導師、ヴァドリック》《秘儀の注入》といった一緒に使えそうな相性の良いカードもあり要注目です。

星の大魔導師、ヴァドリック秘儀の注入

《血に飢えた敵対者》

血に飢えた敵対者

《血に飢えた敵対者》は多くの人がテキストに「キッカー」と書いてくれたらスッキリするのになぁと思ったであろうカードです。ところがこのサイクルの能力は「キッカー」とは少し違います。「キッカー」は唱えるときにマナを支払うのに対して、こちらは戦場へ出た後に支払います。先に余分なマナを支払わなくて済むため、カウンター相手にはこちらのほうが強いテキストになっています

ゴブリンの闇住まい

私が新しいカードをみるときに指標の1つとしているのが能力の似た過去のカードです。たとえばこのカードだと《ゴブリンの闇住まい》と能力が似ています。墓地から3マナ以下の呪文を唱える能力は共通していますが、ダメージレースでは威迫に勝る速攻があり、支払うマナが同じの場合はサイズこそ一段階劣るものの、《血に飢えた敵対者》は状況に応じてフレキシブルなサイズで出すことができます。トータルで比較すると《ゴブリンの闇住まい》よりもやや強いように思います。

さらに《ゴブリンの闇住まい》がスタンダードに存在したころよりも全体的にカードパワーが低くなっているので、「とても活躍するのでは!?」と期待を込めています。このように過去にあった似たカードと比較すれば、闇雲にカードの強さを考えるよりも当たりやすいと思っています。

血に飢えた敵対者剛胆な敵対者
原初の敵対者穢れた敵対者幽体の敵対者

因みにこのカードはサイクルになっており、このサイクルから数枚入れることも考えたのですが、敢えて外しました。次期スタンダードでの登場頻度予想は高い方から赤>白>緑>黒>青と考えていますが、みなさんはどう予想しますか?

《火遊び》

火遊び

《火遊び》は『イニストラード:真夜中の狩り』にいくつかある過去カードの上位互換カードです。《ショック》の上位互換となれば期待しないわけにはいきません。《ショック》はテンポを取れる優秀な火力ながら、プレイヤーを対象にする際はどうしてももったいない感が拭えませんでした。

しかし、《火遊び》にはプレイヤーを対象としたときにのみ占術が付き、しっかりと後続の有効牌を引き込めるようになっています。最強の再録カードと噂される《秘密を掘り下げる者》(通称、デルバー)の「変身」のアシストとしても期待できますし、《霜噛み》とともに多くのデッキで見ることになりそうです。

消えゆく希望

上位互換と言えば、《送還》の上位互換である《消えゆく希望》もこれまたデルバーと相性が良いカードです。占術1にどこまで価値を付与できるか、構築の腕が試されます。

夢溢れるロマンカード

《不自然な成長》

不自然な成長

2倍!2倍!ですよ!!

二段攻撃をつければさらに倍!ぶん投げてもさらに倍!もう一枚出してさらに倍!一撃!

《不自然な成長》はとても夢があり、今回のセットで私を一番ワクワクさせてくれるカードです。

群れ率いの人狼老樹林のトロール節くれだった教授不自然な成長

言うまでもなくトランプル持ちのカードととても相性が良いです。《群れ率いの人狼》《老樹林のトロール》《節くれだった教授》《不自然な成長》といった動きを想像するだけで楽しみで仕方がありません。《不自然な成長》があれば《群れ率いの人狼》はそれ単体でも「集団戦術」の誘発条件を満たせるようになり、4マナ余っていれば10/6トランプルにまで成長するなど相性抜群です。

節くれだった教授カズールの憤怒

また、クアドラプルシンボルなので多色では使いにくそうですが、《節くれだった教授》を10/8にして《カズールの憤怒》でぶん投げる一撃必殺が狙えるかもしれません。2倍系カードはともするとネタカードかと見てしまうこともありますが、このカードはガチでやってくれるのではないかと期待しています。

この記事で私が《聖戦士の奇襲兵》を推したことはとりあえず忘れて使ってみてください

おわりに

さて、これにて私の『イニストラード:真夜中の狩り』の10選は終了です。これからのスタンダードでどれほど活躍するのか楽しみです。

また、今回選んだカード以外にも活躍するカードはあるかもしれません。発売前のこの時期は各々が使いたいカードに思いを巡らすため、結果的にスタンダードがもっとも活性化して、一番面白いことは間違いありません。

ぜひみなさんも10選を考えたらTwitterなどで教えてくださいね!それでは。

藤江 竜三 (Twitter / Twitch)

この記事内で掲載されたカード

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藤江 竜三 Ryuzoの名で彗星のごとくMTGアリーナへと現れた新時代のプレイヤー。ミシック予選を二度に渡り突破した経験を持っており、その後も勝ち星を稼ぎ続けた結果、競技マジックの最高峰マジック・ライバルズ・リーグへ2020-2021シーズンの選手として招待される。《火の予言》入りジェスカイファイアーズなど「アグロに対して勝率8割」を目指したデッキ構築を心がけており、特にスタンダードを得意フォーマットとしている。 藤江 竜三の記事はこちら