こんにちは、若月です。好評発売中の「マナバーン2015 EXTRA」見ていただけました? 毎度おなじみ背景ストーリー解説、今回は『モダンマスターズ 2015年版』の目玉の一つが三大エルドラージの再録ということで、ゼンディカーの歴史を書きました。ゼンディカーブロックのお話に、タルキールやウギンやナヒリ関係で新たに最近出て来た情報もぎっちり詰め込んであります。この秋ついに来る『戦乱のゼンディカー』の予習にも役立つ記事となっていると思います!
更に新企画「詰めマジックからの脱出」にも「ライターチーム」として参加させていただきました。マジックに関する様々な謎を解き、ニコル・ボーラスを倒すという筋書なのですが、こちらは写真やらイラスト(……)やら込みで載っております。参加していてとても楽しい企画でした。ぜひ読んで下さい!
さて、全てを公式記事にて展開するということで、今までにないほど多くのプレイヤーが見守ってきたタルキールブロックの物語。それが先日ついに完結しました。龍への憧れからプレインズウォーカーとして覚醒し、アラーラでのボーラスとの出会いと幻滅、孤独に心を磨り減らしたゼンディカー、そして故郷での「時間旅行」。主人公サルカンの長く数奇な旅も、一つの終着点へと辿り着きました。
サルカンの物語、そして彼が再編したタルキール世界の様相。今回は話したいことまとめて全部!話します!長いよ!!
1. サルカンの結末
第32回では、ナーセットの行方を探すサルカンが、未だ眠り続けるウギンを目覚めさせに向かった所まで書きました。主を守ろうと「透明な炎」を吐く《ウギンの末裔》に追われるも、サルカンはウギンが眠っているはずの峡谷へと辿り着きます。ですが彼の知らぬ間に(ソリンによって)面晶体の繭は破壊されており、ウギンも蘇っていました。
「彼は鮮やかな輝きを放つ、肉体と霧から姿を成した、龍の理想形だった」。時々サルカンが心に描写するウギンの姿は、本当に純粋な憧れに満ちています。
そしてついにサルカンとウギンは顔を合わせました。ウギンも、サルカンに救われたことを知っていました。感謝と、そして質問を投げかけるウギン。ウギンならば何もかもを知っていると確信していたサルカンは逆に戸惑いますが、ここに至るまでを明かしました。プレインズウォーカーとして覚醒してから、忠節を捧げるに値する龍を探してきたこと。そうと思える存在に出会い、しかし理想に描いたような者ではなかったこと。その者の命令でゼンディカー、ウギンの目へと向かったこと。それは何者かと聞かれ、悔しさを滲ませんがらボーラスの名を出した時には流石のウギンも身構えましたが、サルカンが自分に敵対する存在ではないと判ると警戒を解きました。そして異なる「現在」から、ウギンの死んだ「現在」から時を遡り、あの《命運の核心》を目にし、死の淵にいたウギンを救った。そして歴史を変えたと。
サルカンも問います。自分をこの世界に呼んだのは貴方なのか。自分が変えたことで失われた過去は何処へ行ってしまったのか。ウギンはボーラスの行動に懸念を示しながらも、サルカンの問いへと助言を与えました。過去は存在する。面晶体の欠片は存在する。タルキールの中では異なる運命を辿りながらも、その外に変化はない。エルドラージが解き放たれた過去は変わっていない。けれどサルカンはこの世界に生まれてこなかった――
「俺はある日、空から飛び降りてきた――一体の龍のように」
その理解とともに心に清明を得て、ウギンに感謝の言葉を残し、サルカンはナーセットを探しに飛び立ちました。彼女は死んではいないと、そして追放されたのであれば、この歴史でも彼女はウギンの領域を目指すのだろうと信じて。
果たして、サルカンが思った通りでした。願った通りでした。雪山に一人、ゆっくりと、確固とした歩みを進めるナーセットの姿がありました。そして彼女が放つオーラにサルカンは気付きます、「別のナーセットがただ垣間見たにすぎない、何かに触れた」のだと。サルカンは空から降りて人の姿に戻り、やって来る彼女を待ちました。
そして二人はついにこの歴史で対面しました。
突然目の前に現れ、自分の名を呼ぶ見知らぬ男にナーセットはさすがに警戒しますが、「サルカン」という名を聞いて目を驚きます。彼女は《沈黙の大嵐、シュー・ユン》が死の前に残した記録を読み、サルカンを知っていました。誰もが自分を知らない世界で、自分が生まれてこなかった世界で、彼女だけが自分を知ってくれていた。こみ上げる喜びとともに、サルカンは迷いもしましたが全てを正直に明かしました。奇しくも、いや当然、それはナーセットが学んだ禁断の歴史と同じものでした。
ジェスカイが残した記録です。ウギン、そして古の五氏族。
何処にいたのかと問われ、ナーセットもまた、自分が見た信じられないもの、真に理解できてはいないものを語ります。書かれざるものなのか、どこか、別の……「別の世界」。何もかもを心得たようなサルカンのその言葉に彼女は驚き、そしてプレインズウォーカーという存在を教えられます。アジャニの時もそうでしたがサルカンは新米プレインズウォーカーと縁がありますね。自分と同じ存在であるプレインズウォーカーに対して心を開いて接する、これはサルカンの個性の一つでしょう。例えば、ジェイスは自身がプレインズウォーカーだと他者に知られるのをひどく怖れ、自分以外のプレインズウォーカーも非常に警戒します。逆にサルカンは自身が見たような、体験したような無限の世界を誰かと共有できることを喜ぶように思えます。
サルカンは彼女に尋ねます、この世界を離れるつもりはあるのかと。この世界にはまだ多くの神秘がある、だから「私はこの世界にいたい」。ナーセットのその言葉に、サルカンは満足そうに頷くのでした。
自分達は今、真に望んだ世界にいる。そして彼女はその真価を理解してくれていると。
2. サルカンが変えた世界
サルカン本人以上にタルキール世界が変化しました。1280年前の『運命再編』を経て各氏族は龍へと降伏し、龍王の名を冠するようになり、少しずつ性質も変化しました。ゲーム的に説明しますと旧氏族を構成していた楔三色の「頂点」である対抗色が抜け、友好二色の氏族となりました。『覇王譚』の歴史で各氏族を全ていたカン達も異なる姿となって『龍紀伝』の歴史に存在しています。それぞれ、色々とまとめてみました。
いつも通り順番に迷いましたが、第30回で書いた氏族紹介と同じ順です。思うに勢力が5つだけというのは扱う側にも優しいですね。ラヴニカは何をしようにもギルド10個単位ですし、テーロスに至っては神様が大小15柱もいて出番の差がとても顕著でした。勢力のバリエーションが豊かな世界は華やかで楽しいものですが、ほどほどが良いのかもね。
■アタルカ(元・ティムール)
アタルカは炎の龍。『覇王譚』の歴史では雪と氷に閉ざされていた旧ティムールの領土ですが、『運命再編』~『龍紀伝』では少し温暖になったようです。龍の存在が環境をも変化させるタルキール。ティムール改めアタルカは支配者である龍王アタルカの無尽蔵の食欲を満たし続けるために日々戦い、狩りをして生きています。さもなくば龍の食糧となるのは自分達なのですから。かつてのティムールの「青」成分、彼らが振るう精霊の魔術は多くが失われましたが、今も龍には隠しながらも僅かが生き残り、そして過去からの歴史を伝えています。
『運命再編』の頃からネットでは「食いしん坊キャラ」が定着していた龍王アタルカですが、『龍紀伝』の記事が出てもやっぱりひたすら食べてばっかりでした。そしてアタルカに関係するフレイバーテキストも同様にこの通りで擁護のしようがない。
《山頂をうろつくもの》フレイバーテキスト
「若造、お前は山の頂点にいるイエティたちを狩らないのか?奴らの肉は熊の肉のように柔らかく、その血は火のように温まる。あの獲物なら、アタルカ様もご満足いただけるだろう。」
――狩猟の統率者、スーラク
「若造、お前は山の頂点にいるイエティたちを狩らないのか?奴らの肉は熊の肉のように柔らかく、その血は火のように温まる。あの獲物なら、アタルカ様もご満足いただけるだろう。」
――狩猟の統率者、スーラク
そう、スーラク。5人のカンがどのように変化したか、という物事を語る時に大抵「オチ」に持って来られるのが彼ですね。北米のゲームイベント「PAX EAST」のパネルディスカッションにて熊パンチこと《凶暴な殴打》から《勇壮な対決》が公開された時には大歓声が上がっていました。(動画8分50秒付近から)。
「時間軸に関わらず、不変のまま残る伝説もある。」スーラクについて何よりも雄弁に語っているのがその龍パンチこと《勇壮な対決》フレイバーテキストでしょう。
彼は『龍紀伝』バージョンの方が精悍なイケメンという感じがしますね(※個人の感想です)。「主役回」の公式記事「狩猟の呼び声」では、ご主人様であるアタルカへの食糧を奪い取ろうとした龍を《勇壮な対決》の絵の通りにパンチで倒していました。いくら弱っていたとはいえ龍をワンパンで倒してしまうとか、あなた本当に人間か。
(記事より抜粋)
彼は武器を持っていなかった。それを必要としたこともなかった。
彼は武器を持っていなかった。それを必要としたこともなかった。
つまりその両手の剣は……解体用?
■シルムガル(元・スゥルタイ)
氏族としては『覇王譚』の歴史とそれほど違いは見られません。密林の王国にて絶大な権力を振るい、富を蓄える特権階級。恐るべきゾンビの軍勢。
第32回で既に触れましたが、シルムガルはタシグルへと防腐処理を施して装飾品に加工し、特別な儀式の時などに身につけています。伝説のクリーチャーにとってカードイラストは「肖像画」のようなものですからそりゃあ身につけない訳にはいかないですよね。「最後のカンの死体」は龍にとっては最大の勝利の象徴でしょう、千年経っても大切にしているというのも納得です。
シルムガル氏族の恐ろしいところは、用済みになった者や政争に敗れた者はクロコダイルの餌にされたり殺されてシブシグ(ゾンビ)にされる、というのもありますが、「氏族の龍は氏族員であろうと構わずに食べてしまう」というものでしょう。
《若年の識者》は公式記事「アート概要を『濫用』する」によると「《龍王シルムガル》は、贅を尽くした環境に魔道士を監禁し、学べる限りのことを学ばせて「飼う」制度を作り上げた。魔道士の脳が最高の状態を迎えると、彼らは龍の生け贄となり、学んだ知識を貪られる」のだそうです。つまり彼はその「最高の状態」を迎えないように踏みとどまりながら生きながらえようとしている、のでしょう……
シディシも、ゾンビになってしまったとはいえ、そのしたたかな性格や重要な立場に変化はありません。こちらのシディシは「通訳」として龍王の言葉を自分に有益なように伝えて利用していたのが明らかとなって処刑され、ですが彼女個人の能力は未だ有用だとして蘇生されました。「接死」能力を持っているのは、いつの日かシルムガルをも倒してしまえるような毒を身体に蓄えているため。彼女はシルムガルから地位を奪うことを諦めてはおらず、力を蓄えつつ機会を待っています。
ところでシルムガル氏族、『タルキール龍紀伝』トレイラーで影も形も無いんですよね……『ニクスへの旅』の時のように後から「完全版」が出るのでは? プレインズウォーカーのコントロールを得るというシルムガルの能力は物語の伏線なのでは? という推測もありましたがそれもどうやら無いようで。単なる尺の都合とかだったのでしょうか? ちょっとかわいそう。
■コラガン(元・マルドゥ)
第30回ではマルドゥについて「ラクドス+ボロス」と表現しましたが、白が抜けたらその通りすっかりラクドス教団じみた秩序なき戦闘集団になってしまいました。赤黒デンジャラス。ラクドスと同様、絶対的強さとカリスマを持つ長がいるからこそ一つの勢力としてまとまっていられるのでしょう。「共食い」があるあたりも同じです。《血顎の憤怒鬼》《血顎の狂信者》といったカードの「血顎」はコラガン氏族の中でも共食いをする者達の通称。しっかし「二色の特徴」を説明する上でラヴニカのギルドは便利で偉大だなあ。
明確な「倒すべき敵」らしき存在のない(まあボーラスはちょっと別ですな)タルキールブロック。ズルゴはサルカンにとって、ナーセットを殺害した憎むべき存在でした。ですが歴史が変わり、ズルゴはその立場も体格も、クリーチャーとしてのサイズもずいぶんと小さくなってしまいました。「サルカンはズルゴに復讐することを望んでいた。かつて仇敵であった男の凋落した姿を見るまでは」 そんな《強迫》のフレイバーテキストや、恒例の世界観紹介記事「プレインズウォーカーのための『タルキール龍紀伝』案内 その2」の記述「巨体の短気なオーク、ズルゴは龍王コラガンの従者を務めるまで落ちぶれてしまった」 には全多元宇宙が泣いた。更には上でも書きましたPAX EASTの動画、7分45秒付近で「兜砕き→鐘突き」というズルゴの変化が語られていますが、何で説明している方まで笑ってるんですか。
ところで、「タイムトラベルして歴史を変える」という題材の作品は数多く存在しますが、最も有名な映画の一つが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」かと思います。そして2015年は「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」の年(ちなみに私は3が一番好きです)。それを意識してなのか、公式記事の各所でもしばしばこの作品に言及していました。新セット恒例の、マローによる個別カードデザインの記事「龍詞に魅せられて その2」にはこうあります。
(記事より抜粋)
『タルキール覇王譚』ブロックをバック・トゥ・ザ・フューチャーに喩えるなら、ズルゴはビフだ。彼は最初主役級の悪党だったが、話の終わりには大局的に見てちっぽけな存在になってしまうのだ。
『タルキール覇王譚』ブロックをバック・トゥ・ザ・フューチャーに喩えるなら、ズルゴはビフだ。彼は最初主役級の悪党だったが、話の終わりには大局的に見てちっぽけな存在になってしまうのだ。
映画を観ていれば実に納得の表現。ネットでは《黄金牙、タシグル》と並び立つ「ネタキャラ」扱いのズルゴ、公式のある意味ぞんざいな扱いもネタキャラとして認知されているが故でしょうか。タルキールの歴史の変化を説明する各種文章では事あるごとに「鐘を突いている」と連呼され(まあ、ナーセット絡みでズルゴに言及しないわけにもいかないので仕方ないのですが)、また別の公式記事「Mファイル『タルキール龍紀伝』編・パート2」では「ただのおっさん(原文:just some guy)」呼ばわりです。能力も実にシンプルになった事で「ただのおっさん」感が表現されていると。そして公式記事でも元カンサイクルでは唯一「主役回」を貰えず……でもいいじゃない、プロツアー優勝デッキに採用されたんだから! カードとしては最高の栄誉だよ!!
10 《山》 1 《森》 4 《樹木茂る山麓》 1 《奔放の神殿》 4 《マナの合流点》 -土地(20)- 4 《鋳造所通りの住人》 4 《僧院の速槍》 3 《鐘突きのズルゴ》 1 《激情のゴブリン》 1 《稲妻の狂戦士》 2 《ゴブリンの熟練扇動者》 -クリーチャー(15)- |
4 《乱撃斬》 4 《アタルカの命令》 4 《ドラゴンの餌》 4 《稲妻の一撃》 4 《軍族童の突発》 4 《かき立てる炎》 1 《強大化》 -呪文(25)- |
4 《大歓楽の幻霊》 4 《焙り焼き》 2 《ゴブリンの熟練扇動者》 2 《凱旋の間》 1 《ゴブリンの踵裂き》 1 《破壊的な享楽》 1 《洗い流す砂》 -サイドボード(15)- |
アグロデッキには十分選択肢として入るのでは、と言われていましたら本当に! むしろ準決勝、「疾駆」能力で《悲哀まみれ》をかわして殴り続ける「ピンポンダッシュ」が話題になりましたよね(動画25分00秒付近から)。これはこれである意味綺麗なオチがつきました。めでたしめでたし。
■ドロモカ(元・アブザン)
まあ、トーナメントでは相変わらず《包囲サイ》が猛威を振るっていたりするんですが。かつてのアブザンの黒成分であった祖先との繋がり、「死霊術」をそのまま抜いたら珍しくまっすぐに白緑のいいところを取ったような優しい氏族になりました。氏族は龍王ドロモカの庇護の下、家族の絆を重視しながら人と龍が共に砂漠の厳しい環境を生きています。『龍紀伝』世界では最も安心して暮らせそうな氏族ではないでしょうか。そして再編前後合わせてタルキールには「愛されネタキャラ」が豊作なのですが、アブザン/ドロモカはカードでも記事でも真面目を貫いています。
龍王によって禁止されているとはいえ、ドロモカ氏族にもアブザン時代の祖先や族樹への崇拝を密かに受け継いでいる者達がわずかにいます。『龍紀伝』のアナフェンザもその一人でした。アナフェンザの「主役回」である公式記事「絆と血」(覇王譚)・「守護者」(龍紀伝)。どちらも、彼女を巡る「家族」が二人登場しています。一人は第30回でも触れましたオークの義弟ガヴァール、もう一人はカードにこそ登場していませんが、氏族において重要な地図師の役職に就く従兄弟オレット。
『龍紀伝』の歴史ではカンではないながらも熟達の兵として軍を率いるアナフェンザでしたが、ある時コラガンの軍勢に追われ、族樹の魔術を使って彼らを撃退するも、その様子を龍に目撃されてしまいました。オレットは敬愛するアナフェンザの処刑人の役割を龍へと嘆願します、その龍の光の吐息に魂までも消滅させられるよりは、と。彼は『覇王譚』の歴史ではアナフェンザ一家の情報をスゥルタイへと売り渡し、後に氏族を追放されていました。
そして処刑されたアナフェンザの魂は、オレットによって誰も知らぬ砂漠の樹へと繋がれて残され、更に彼はあらゆる地図からその情報を抹消しました。アナフェンザはドロモカ軍で「守護者」として半ば怪談のように語られながら、今も氏族を守っています。一方、『覇王譚』でアナフェンザと種族を越えた絆を結んだガヴァールは、『龍紀伝』ではコラガン氏族を離れてはおらず、アナフェンザとは敵同士として戦場で対峙しました。二つの歴史は裏表。悲しいけれど心に沁みる物語です。
■オジュタイ(元・ジェスカイ)
『覇王譚』の時もここだけ公式記事が多いなど五氏族でも扱いが大きかったジェスカイ。オジュタイと名を変えた今回『龍紀伝』でもヒロイン・ナーセットの出身氏族であり、また公式記事「プレインズウォーカーのための『タルキール龍紀伝』案内」においてもオジュタイ氏族の項目は最長でした。
かつての氏族が終焉を迎える歴史の転換点「カンの落日」では冷酷な支配者という雰囲気を醸し出していたオジュタイ、ですが『タルキール龍紀伝』のカードが公開され始めて割と早い時期に出た《オジュタイの命令》。氏族員がずらりと並んで愉快なポーズを取るイラストにこいつら変わってねえ! それどころかオジュタイまで後ろにいるってどういうこと!! ジェスカイはもはや存在しないとか何だったんですか。
そして《卓絶のナーセット》のプレビュー記事ではすっかりカンフーに染まってしまったような、でも美しい合掌ポーズのアートとその優しき師匠っぷりを披露し、更には今現在のトーナメントで最も活躍している龍王はオジュタイです。なんだこの評価V字回復は。やっぱり狡猾だ。
ええ、私も「カンフー」要素は赤だと思っていました。何せ奇抜さといえば青赤のカラーパイ(風評被害)(だいたいイゼットのせい)。と思いきや赤が抜けてもカンフーでした。コラガン氏族の項目で「『二色の特徴』を説明する上でラヴニカのギルドは便利で偉大」とは書きましたが、二色の全てを体現するラヴニカでもカンフーだけは体現していなかったということか。イゼット団は赤青のイメージを決定づけましたが、オジュタイ氏族は白青に新たなイメージを吹き込むのでしょうか。
そしてナーセット。この初期忠誠度の高さは、プレビュー記事で見せてくれた貪るような好奇心の表れなのでしょうかね。(我々というプレインズウォーカーに)呼び出してもらえて様々な次元の珍しいものが(盤面に)沢山。最初からハイテンションで場をきょろきょろしているようなイメージが思い浮かびました。
ナーセットはオジュタイ氏族ですが、カードにはそれを特徴づける「透かし模様」が入っていません。これは《槌のコス》にミラディン勢力模様が入っていなかったり、《ドムリ・ラーデ》《見えざる者、ヴラスカ》《ラル・ザレック》にギルド模様が入っていないのと同じ理由でしょう。何かに所属していたとしてもプレインズウォーカーは本質的に自由であり、各プレインズウォーカー一人一人が一つの勢力と言っていい存在です。
ナーセットと言えば、個人的に忘れられない公式記事の一文があります。ズルゴの所でも挙げました「龍詞に魅せられて その2」より。抜粋しましょう。
そして、《英雄の導師、アジャニ》で2色のプレインズウォーカーが一式揃ったときから求めていた、生きている白青のプレインズウォーカーも手に入ったのだ。
「生きている白青のプレインズウォーカー」 ブワッ
……そういえば、リアル・ネットを問わず頻繁に受ける質問として「龍王たちの性別」があります。回答はこちら。
雄(オス):オジュタイ、シルムガル
雌(メス):ドロモカ、コラガン、アタルカ
『運命再編』プレビュー当時早くに登場したのがアタルカとコラガンで、両者とも記事から雌だとわかったからでしょうか。「龍王は全員メスでタルキールはウギンのハーレムなのでは」という噂も流れましたが、きちんと雄もいますよ。とはいえ龍が「龍の嵐」から成体で生まれてくるタルキールにおいて、その性別にどれほどの意味があるのかは謎です。あと何でサルカンは一目で龍の性別がわかるのかも謎です。
3. 龍人サルカン
多くの場合、複数回カードに登場しているプレインズウォーカーの絵は、その時の状況や心境を表現しています。例えば友人を探しにその次元を訪れた《滞留者ヴェンセール》や《真面目な訪問者、ソリン》は、何処かを見つめながら友の行方を気にかけているような表情です。一方で《思考を築く者、ジェイス》は自身を巡る様々な力と思惑に疲れた隠世的な雰囲気があります。
そこに今回のサルカンはとても清々しく誇らしく晴れやかな表情で、龍が舞う空の下に堂々と立っていますよね。全てをやり遂げたかのように。
《揺るぎないサルカン》(と《卓絶のナーセット》)の絵はカードよりも一足早く、『タルキール龍紀伝』ブースターパッケージの絵として公開されていました。この記事、今見ても本当お似合いだなあ君ら。
《揺るぎないサルカン》
プレインズウォーカー ― サルカン
2緑青赤
+1:カードを1枚引く。その後、あなたのマナ・プールに、好きな色のマナ1点を加える。
-2:飛行を持つ赤の4/4のドラゴン・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
-8:あなたのライブラリーから望む枚数のドラゴン・クリーチャー・カードを探し、それらを戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。
忠誠度: 4
プレインズウォーカー ― サルカン
2緑青赤
+1:カードを1枚引く。その後、あなたのマナ・プールに、好きな色のマナ1点を加える。
-2:飛行を持つ赤の4/4のドラゴン・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
-8:あなたのライブラリーから望む枚数のドラゴン・クリーチャー・カードを探し、それらを戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。
忠誠度: 4
なんとびっくり青が入ってティムールカラーのサルカン。あー確かに昔ティムールの教えを受けてたしティムールと深く関わってたし……と考えていましたが今回サルカンがこの三色になったのは割と「メタな」理由でした。公式記事「Mファイル『タルキール龍紀伝』編・パート2」から抜粋しますと、
《揺るぎないサルカン》は最初ジャンドでしたが、それには大きな問題が1つありました――リミテッドはもちろん、スタンダードでも唱えられないに等しかったのです。我々は彼を「誰もプレイしない最高のプレインズウォーカー」と呼ぶようになってしまいました。最終的に我々はクリエイティブのところにこの懸念を持って行き、そして彼らはこのカードの色をもっと唱えられる色に変えることを認めてくれました。
/(^o^)\ナンテコッタイ
とはいえ緑青赤という色に合わせながらも、しっかりサルカンしている能力ですよね。ドラゴン好きは揺るぎない。このサルカンは自分自身こそドラゴンに変身はしませんが、ドラゴンを出す能力を二種類持っています。タルキール世界を統べる龍を意のままに呼び出せる彼は、まさにその名の通りに人にして龍にてカン、大いなるカンなのだと思います。それにほらナーセットと同じ色が入った! よかったねこれでこっちの歴史でも仲良くできるよ!!(余韻台無し) 正直に言いますと私このコストを初めて見た時、「同じ色入れてくるとか本当にナーセット好きなんだな!!」と爆笑しました。あーまあこの連載で何度か書いてる「同色・友好色は仲良し説」、別に公式発表があったとかではなくあくまで経験則なんですけどね。今回のサルカンとナーセットも三色と二色なので、むしろ色がかぶらない方が難しいですし。
ところで実はこの姿のサルカンはずっと早くに、『タルキール覇王譚』時点で登場していたのでした。『覇王譚』のトレイラームービーなのですが、0分21秒付近で一時停止してよく見て下さい。
前髪のメッシュ、衣装、黄金色に輝く瞳、何より杖の先の面晶体の欠片がありません。明らかにこのサルカンは《揺るぎないサルカン》。つまりこの冒頭は、全てが終わってからの「回想シーン」だったようです。そしてこのトレイラーのナレーションはサルカン自身が務めているのですが、その冒頭。
「戦のために生まれし者 支配のために生まれし者」
「俺は どちらでも なかった」
この「俺はどちらでもなかった」という台詞の原文は「I was never born at all.」。ひねらずにそのまま訳せば「俺は生まれてこなかった」。これは『龍紀伝』のサルカンの事も示していたのでしょう。上でも書きましたが、『龍紀伝』の歴史においてサルカンは生まれてこなかった。ある時突然、その姿で出現した。公式記事で彼は言っていました、「俺はある日、空から飛び降りてきた――一体の龍のように」。まさに、サルカンは人であり龍。
それにしてもこの《サルカンの怒り》のフレイバーテキストにはぐっとくるものがあります。ああ、ヤソヴァが遺したティムールの伝承がしっかり生きているのだなあ。彼女が見た、人であり龍である伝説の存在サル-カン。そういえば《龍語りのサルカン》は「伝説のドラゴン・クリーチャーになる」んですよね。伝説。一方で同じようにクリーチャー化するプレインズウォーカー、ギデオンは「伝説のクリーチャー」にはなりません(ギデオンの場合はプレインズウォーカーの唯一性を残しているためだとは思いますが)。《龍語りのサルカン》の「伝説」というステータスも何だか伏線だったのかな、とまで感じてしまいます。
4. ここで特別企画~あの《残酷な根本原理》は一体何度使われたの?~
サルカンとボーラスの関係を表現する際に丁度良いためなのか、公式記事や各種メディアでやけに頻繁に使用されていた『From the Vault:Twenty』及び『統率者2013』版《残酷な根本原理》のアート。果たして何度使われていたのでしょうか? 見つけられる限りを数えてみました。
◆公式記事「クルフィックスの洞察」
これは今からほぼ一年前に掲載されました、テーロスブロックの記事です。そうテーロス。クルフィックス神が世界の外の脅威について語る中でボーラスについても言及していました。その台詞を抜粋しますと、
『レオニンのアジャニはとても強大な敵と対峙した。同輩の世界を歩む者であるドラゴン。我にとっても、そのドラゴンは不可解なほどに古い存在だ。彼は無限の力と永遠の生命を探し求めている。その計画は世界と世紀をまたぎ、慈悲などなく、その目の前に立ちはだかるものに容赦などしない』
立ちはだかっているのは決してサルカンではないのですが、これ「暴君ニコル・ボーラス」を表現する一番丁度良いイメージなんですよね……。当時既に『タルキール覇王譚』のタイトルと宣伝画像、主人公がサルカンだということは発表済みでしたが、この調子ではまた酷い目に遭うんかなあ……と勝手にかわいそうな気持ちになったのを覚えています。
◆公式記事「プレインズウォーカー達の現状」
新世代プレインズウォーカーが登場したのは2007年。当初5人だったその面子も今では両手両足で数えられない人数にまで増えました。この記事ではそんな彼らの生存や死亡も含めた「現状」がわかりやすく解説されています。そしてニコル・ボーラスの項目の説明文とともにあったのが、そろそろお馴染みになりつつあった根本原理絵でした。その説明文を抜粋します。
ボーラスは多次元間計略の工作員としてテゼレットとサルカンを評価しており、今は更に多くのプレインズウォーカーの下僕を求めることに心を傾けているように思われる。
「評価しており」 と説明しているのに絵はお仕置き中。なんでだ。そういえばある意味「同僚」のサルカンとテゼレット、面識はあるんでしょうかね?
◆『タルキール覇王譚』トレイラームービー
すっかりおなじみになった、セット毎のトレイラームービー。カードの画像を実に上手く動かしているのですが、ここでついにこの絵が動きました。
0分37秒付近からになります。ナレーションは「俺は故郷に戻り 魂が2つのドラゴンに引き裂かれるのを感じた」「片や 暴君 片や 幽霊」。まあね、これがサルカンとボーラス唯一のツーショット絵だもんね……
◆「タルキール覇王譚」 公式ハンドブック
ホビージャパンさんからエキスパンション毎に出版されている「公式ハンドブック」シリーズ。もちろん私も毎回買っています。ネットでカード画像もテキストも参照できる時代ですが、紙媒体は紙媒体で持っていると主に調べ物に何かと便利なんですよ。その『タルキール覇王譚』ハンドブックでは、表紙を一枚めくるとこの絵が出迎えてくれました。
その場所には大抵、該当エキスパンションの何からの絵が入っているのですが……。ちなみに『運命再編』ハンドブックの同じページには《精霊龍、ウギン》、『タルキール龍紀伝』ハンドブックは《揺るぎないサルカン》。本当に何故なのか。
◆グランプリ・静岡2015 日本公式カバレージ
《残酷な根本原理》はトーナメントシーンにおいても輝かしい名を刻んだカードです。2009年のプロツアー京都、ガブリエル・ナシフの伝説的なトップデッキは間違いなくマジック史に残る名場面でしょう。何しろ私だって知ってるくらいです。アルティメイタァァァム!!
それとは多分特に関係ないと思うのですがグランプリ・静岡2015の日本公式カバレージバナーがこの絵でした。
そもそもこのGPのフォーマットはリミテッドなのだが……。正月早々お仕置きされるサルカンさんが正月早々可哀想だと思いました。
◆公式記事「揺るぎなき、そして気高き者」
『タルキール龍紀伝』最終回とも言える記事でも、この絵は使われていました。ここに至るまでの過程をウギンへと説明するサルカン、ですがそのためにはどうしてもボーラスとの関係について言及しない訳にはいかず……(以下、記事より抜粋)
「それは何者かね?」 ウギンは言った。
「理解しておられる筈です」 サルカンは言った。「俺自身の心すら定かではありませんでした。あいつは俺が思ったような者ではなく、俺を壊し、思うがままに俺をねじ曲げました」
「その者の名は?」
「……ニコル・ボーラス」 サルカンは惨めに声を絞り出した。
「理解しておられる筈です」 サルカンは言った。「俺自身の心すら定かではありませんでした。あいつは俺が思ったような者ではなく、俺を壊し、思うがままに俺をねじ曲げました」
「その者の名は?」
「……ニコル・ボーラス」 サルカンは惨めに声を絞り出した。
そしてこの絵。まあでも逆に考えましょう、ボーラスの下僕時代に「礼儀正しい態度」を覚えたらしいサルカン、おかげでこの話でウギンに対してもその尊敬をしっかり伝えられているじゃないですか。
以上、タルキールの物語開始前から感動の最終回まで余すことなく、計6回。大団円を迎えられたからこそこんなふうに笑って書けますがこれはひどい。
5. トゥルーエンド
サルカンは歴史を再編しました。想い焦がれた、龍のいる素晴らしい世界を成すために。
素晴らしい世界。ですがそれはサルカン主観での話であって、『覇王譚』世界線と同じように氏族は互いに争っています。何ら変わっていないのではないか? そんな考えもよぎります。ですが、「龍が生きている」という決定的な違いはタルキール世界そのものを根本的に変えたと私は考えています。各種公式記事にて、ウギンの生死とタルキール世界との関わりが示されています。
つまりはウギンが生きている『龍紀伝』の歴史では、タルキール世界は相変わらず争いの中にありながらも、滅びに向かってはいない、生きている、ということなのでしょう。ヤソヴァの表現を借りるならば、世界の生命力が生きている。「世界は、生きる」 ……これはタルキールと直接関係は無いのですが『スカージ』の小説ラスト近く、《邪神カローナ》が倒されてその身から魔力がドミナリア世界へと戻って行くのを見た《クローサの拳カマール》の言葉です。何だかそれを思い出しました。サルカンが変えた世界、こちらはこちらで人々は色々と大変な思いをしていますが、少なくとも世界は生きているのでしょう。未来があるのでしょう。
このカードは『オンスロート』が初出でした。元々は《ミラーリ》の魔力で植生の成長が暴走するという雰囲気のカードです。もしかしたらこの再録は、『龍紀伝』の生き生きとしたタルキール世界を表現しているのかなあ、とも思いました。ちなみに『龍紀伝』に再録カードは何と16枚。リミテッドやスタンダードローテーションの関係上、《平和な心》《否認》《帰化》といった「基本的な呪文」を再録する必要があるのは確かですが、妙に多いですよね。『覇王譚』→『龍紀伝』の再録も含めて、これも「時間旅行」の一つの表現だったり? ほら再録カード見て「ああ、昔使ったなあ、懐かしいなあ」ってふと思うことあるじゃないですか。
話が少しそれました。
『タルキール覇王譚』の歴史、その物語は存在しないことになりました。「平行世界」として存在し続けるというわけでもなく、過去を変えたことによってその歴史は消え去りました。故郷でありながら、サルカンは故郷を失ってしまうことになりました。今自分がここにいる世界こそ思い描いてきた理想の世界、ですがそこは厳密に彼の「生まれ故郷」ではなくなってしまいました。
かつて『ローウィン』にて新世代プレインズウォーカーが初めて登場した頃の記事「Planeswalkers Unmasked」に、今もしばしば思い出す印象深い一文があります。抜粋して訳します。
ああ、プレインズウォーカー達はローウィン世界にはそぐわない。そこが重要だ。彼らはプレインズウォーカー、あらゆる場所において……故郷であっても……彼らは異邦人なのだ。
プレインズウォーカー・カードは当初『未来予知』に収録の予定だったのが、調整が間に合わず『ローウィン』に先送りされることになった、という説明箇所からの抜粋です。この延期によって意図せずプレインズウォーカー達が「異邦人」だと際立つこととなりました(ローウィンには人間もレオニンも存在しないため)。「プレインズウォーカーは異邦人、例え故郷にいても」。サルカンはまさにそうなってしまったのだなあ、と……。
『タルキール龍紀伝』トレイラームービーにてサルカンはこう言っていました。
「俺は 自分の過去を捨て去った」
「俺は今 はぐれ者となった 時に置き去りにされた者だ」
「俺は今 はぐれ者となった 時に置き去りにされた者だ」
1分14秒付近です。《龍語りのサルカン》の分厚く重そうな衣装を脱ぎ捨て、身軽な《揺るぎないサルカン》の姿へと変わりながら、とても晴れやかに。
第32回にも似たようなことを書きましたが、タルキールブロックの物語の何が心地良いかって、サルカンの喜怒哀楽の豊かな起伏が間違いなくその一つだと思います。サルカンはこれまでボーラスの支配に縛られウギンの囁きに苛まれ、ずっとその感情を思うがままに出せなかったんですよね。『運命再編』以降ではそれらから解放されて、様々な熱い想いを我々読者へとダイレクトに伝えてくれていました。
サルカンは願った通りに、ナーセットと再会できました。その死の運命を変えたいと願った彼女が生きている。勿論、自分のことは覚えていない、面識はない。だけど彼女だけは自分の存在を、別の形でとはいえ知っていてくれていた。そしてサルカンが成した世界の真価をナーセットは理解してくれている。まさしく「タイムトラベルもののトゥルーエンド」だと思いました。二人の再会が時の連環を繋げ、歴史はここから始まります。共に新たな姿で、真に望んだこの世界で。
この先、サルカンとナーセットがどういった関係を築いていくのかはまだわかりません(何せ『龍紀伝』ナーセットは16歳とかそのくらいみたいですし)。そしてプレインズウォーカーはいずれ、何らかの形でその世界を離れる存在です。プレインズウォーカーと非プレインズウォーカーの関係では、友情であろうと愛情であろうと、常にどこかにその「いつか離れていく存在」という影がつきまといます。ですが少なくとも二人は共にプレインズウォーカー。例えタルキールから歩み出たとしても、無限に広がる世界を共有することができますよね。
長くなりましたが、そろそろ締めに入らせて頂きます。
マジックの物語において、ハッピーエンドは稀です。記憶にも新しいテーロスブロックやミラディンの傷跡ブロックは言うまでもなく、前回「導入部」を扱ったウェザーライト・サーガも、最終的はヨーグモスを滅ぼしファイレクシアの侵略を退けたものの、メインキャラクターの多くが死亡してしまいました。当時好きだった、もしくは愛用していたカードのキャラクターが死亡し、涙したという人もいるのではないでしょうか。
そんな中、「全てを公式記事で展開する(そして翻訳も行う)」という初の試みで進行し、そのためかつてないほどに多くのプレイヤーが見守ったタルキールブロックの物語は、誰もが「良かったね」と嬉しくなれるような素晴らしいエンディングを迎えました。本当に、マジックの物語としては稀に見る、とても爽やかな大団円でした。
サルカン、おめでとう。そして素晴らしい物語をありがとう。
(終)
※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『揺るぎなき、そして気高き者』
http://mtg-jp.com/reading/translated/ur/0014856/
『クルフィックスの洞察』
http://mtg-jp.com/reading/translated/ur/0010770/
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