あなたの隣のプレインズウォーカー ~第36回 ゼンディカーだよ! 全員集合!!~

若月 繭子

若月 繭子


 こんにちは、若月です。

 先日、公式記事「プレインズウォーカー達の現状2015」が掲載されました。新顔としてウギンとナーセット、そして『統率者2014』にプレインズウォーカーが5枚収録されたこともあって前年比7人増の総勢31人!! タルキールブロックだけではなく、幕間でそれぞれの物語が進んでいたりいなかったり、かと思えばほぼ放置状態だったり、更新しようがなかったり……これ来年もあるのでしょうか。そして私は毎年最後のあたりでヴェンセールの項目にさめざめと泣かされるのでしょうか。

 あとこの連載的に取り上げねばと思ったのがこれ。

古龍のプレインズウォーカー、ニコル・ボーラスは多元宇宙の至る所に散りばめた下僕を絶えず操作することを何よりも楽しんでいる。彼は不本意ながら下僕となった龍のシャーマンにしてプレインズウォーカー、サルカン・ヴォルを苦しめることを長く楽しんできた。



>楽しんできた。


残酷な根本原理








 さて、いよいよ誰もが待ち焦がれる『戦乱のゼンディカー』の発売が迫ってきました。既に背景ストーリー連載「Uncharted Realms」は「戦乱のゼンディカー編」に突入していますし、プレビュー本番も始まりました。というわけで直前特集と行きましょう!



1. 主要人物組


■ ギデオン・ジュラ

「ゼンディカーを取り戻す!」


 前回扱ったばかりですが押しも押されもせぬ主人公。ジェイスを引き連れてゼンディカーに戻ってからはもう「ギデオン無双」しながらエルドラージを狩り続けています。ラヴニカへの回帰ブロック以来、メインストーリーの裏で「ラヴニカとゼンディカーを往復して戦い続けていた」ことが先日明らかになりましたが、その証拠として現地では広くその名前と名声が知られているようです。


公式記事「隠れ家での殺戮」より抜粋

 壁に背中をつけ、ギデオンはうごめき群れをなす残った落とし子と顔のない徒食者に対峙した。それらの巨大な種父、ウラモグの飽くなき飢え、異質な意思の知性なき体現。この生物どもは自分達の前に立つのが何者なのかは知らない。ギデオン・ジュラ。ケフ砦の救い主、オンドゥの偉大なる狩人、カビーラの勇者。そのようなことは気にもしない。それらにとって、彼はただもう一つの肉片、命を吸い尽くす対象。

 だが壁の背後にいる人々は知っていた。彼は自分達にとっての希望、この恐るべき脅威を生き延びるたった一つの好機。救助であり解放。ゼンディカー中の無数の兵士にとって、彼はそんな存在だった。今再び、彼はそうならねばならなかった。




※画像は【隠れ家での殺戮】より引用させていただきました。


 かっこいい……。ていうか戦乱のゼンディカー編に入ってからの公式記事のギデオンは毎週とにかく格好良くて私は幸せです。そして新ギデオン! 今回のギデオンはカード名もそうですが、能力からもはっきりと「ゼンディカーの一員」であることが示されています。





《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
2白白
プレインズウォーカー ― ギデオン
+1:ターン終了時まで、ゼンディカーの同盟者、ギデオンは破壊不能を持つ5/5の人間・兵士・同盟者・クリーチャーになる。これはプレインズウォーカーでもある。このターン、これに与えられるすべてのダメージを軽減する。
0:白の2/2の騎士・同盟者・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
-4:あなたは「あなたがコントロールするクリーチャーは+1/+1の修整を受ける。」を持つ紋章を得る。
忠誠度: 4


 いつもながらのクリーチャー化能力、ですが今回は「人間・兵士・同盟者」。同盟者。この名とタイプが意味するものは。

 ご存じの通り、「同盟者」のクリーチャー・タイプは『ゼンディカー』と『ワールドウェイク』に登場していました。イメージとしてはパーティを組む「冒険者」達。戦士・僧侶・魔法使い的なあれです。それぞれが互いの能力を補いつつ力を合わせて冒険に向かうというもので、「素晴らしい宝物に満ちた危険な世界での冒険」というゼンディカーの(当初の)イメージにぴったりでした。そして「同盟者」は旧ゼンディカー開発当初はまさしく「冒険者/Adventurer」という名称で進んでいたのが、能力表記の都合や英語の文字数削減のために「同盟者/Ally」に変更された、と当時の公式記事「やるぜゼンディカー その2」にありました。「同盟者」ですと「同じ目的を持つ仲間」感が強い気がしませんか。

 そのギデオンが真の「同盟者」に、ゼンディカーの仲間になるエピソードが公式記事「空岩の生存者」でした。ゼンディカー生まれでないギデオンがその世界に抱く愛着。ゼンディカーで冒険の日々を送る、そんな違う人生があったならという夢想。そして去ることはしない、最後までここにいるという誓い。胸熱と言わずして何と言おうか!! しかし当時ゼンディカーの続編が作られるかどうかの話があったかはわかりませんが、この「冒険者」→「同盟者」という名称変更によって今回のギデオンが「ゼンディカーの仲間」という印象が遥かに強くなったのだとしたら、嬉しい結果オーライだと思いません?


 さてネットでの反応を見ますと、物語だけでなくカードでの活躍も非常に期待されている新ギデオン。ですがそちらよりも一足早く、先日の世界選手権2015のトップ4デッキに『マジック・オリジン』の両面ギデオンが!!



Sam Black「白単信心」
世界選手権2015 (最終成績4位・予選ラウンド4-0)

21 《平地》
3 《ニクスの祭殿、ニクソス》
1 《領事の鋳造所》

-土地(25)-

4 《万神殿の兵士》
2 《アクロスの英雄、キテオン》
4 《白蘭の騎士》
3 《搭載歩行機械》
1 《族樹の精霊、アナフェンザ》
3 《オレスコスの王、ブリマーズ》
4 《徴税の大天使》
4 《風番いのロック》

-クリーチャー(25)-
3 《勇敢な姿勢》
4 《見えざるものの熟達》
3 《払拭の光》

-呪文(10)-
3 《天界のほとばしり》
2 《異端の輝き》
2 《正義のうねり》
2 《悲劇的な傲慢》
2 《太陽の勇者、エルズペス》
1 《アラシンの上級歩哨》
1 《勇敢な姿勢》
1 《存在の破棄》
1 《払拭の光》

-サイドボード(15)-
hareruya



アクロスの英雄、キテオン徴税の大天使


 驚きの「白単信心」。テーロス期、各種信心デッキでただ一つ隆盛に至らなかった白単信心がここにきて。しかも遅れてやって来たテーロス人・ギデオンがそのデッキを輝かせているとは、フレイバー的にも熱いじゃないですか。物語での活躍については私はもう全く心配していないので、新ギデオンのカードもそれ以上に輝いてくれることを期待! 期待!!



■ ジェイス・ベレレン

「俺は目へ向かう」



束縛なきテレパス、ジェイス


 物理的な戦闘はギデオンの担当、ですがもっと根本的な問題を解決すべくジェイスが連れて来られました。それこそ私達は六千年前のエルドラージ封印や面晶体の由来を知っていますが、キャラクターはそうではありません。面晶体にエルドラージを抑えつける、エルドラージに対抗できる何らかの力があるとゼンディカー人は気付き始めており、ジェイスにはその謎を解くという役割が与えられました。第20.5回で「ラヴニカの平和を担うという責任を負うことになったジェイスは、もしかしたら今後は基本セット以外には登場しにくくなってしまったかもしれません」とか書いたけれど特にそんなことはなかった!引継ぎをして来たようですけれどそれで本当に大丈夫なんですかギルドパクト様。



面晶体を利用してエルドラージに対処するゼンディカー人達。


 とはいえ彼の旅路はのっけから多難です。ゼンディカーに到着するなり彼とギデオンを迎えたのは落とし子の大群。得意技である「精神攻撃」が効かないのであろうエルドラージに対してジェイスが戦う術は念動力くらいしか無いという様子で、公式記事ではギデオンに頼りっぱなしでほぼ後ろをついて行くだけでした。対人でしたら相当強いんですけどねえ。「エルドラージの解放に加担してしまった」責任感からゼンディカーを訪れたものの、その大自然と怪物達に翻弄されるジェイス。基本ラヴニカシティーボーイなのだからしゃーないわな。『マジック・オリジン』の両面ジェイスが荒ぶっている現在のスタンダードとのギャップに苦笑してしまうくらいです。どうしてもカードの強さのイメージが先行しがちですが、弱っちい時はとことん弱っちいのがジェイスです。とはいえそこが可愛いくもあり。



駅広告ジェイスも見つけました。2015年7月18日、JR原宿駅にて撮影。


 そして遠く《ウギンの目》へと旅立つも、公式記事「信者達の巡礼」ではエルドラージの狂信者達や、よりによってウラモグ本体と遭遇した挙句、ただ一人でウギンの目へと向かうことになってしまいました。既に発表されているアートの中にはウギンと対面しているものがあり、また《面晶体の記録庫》のフレイバーテキストではウギンと会話しているので、きっと何とか辿り着くのでしょうけれど。

 オリジンジェイスの話が出たついでにちょっと。ジェイスは好奇心旺盛なことで知られていますが、そのことについて印象深い記述が『マジック・オリジン』ファットパック小冊子にありました。

『マジック・オリジン』ファットパック小冊子より訳

ジェイスの記憶の欠落は今や知識と真実への飽くことを知らぬ欲求となって彼を焚き付けている。彼は今の自分を受け入れ、これからの自分にも満足している。だがかつての自分が何だったかは知らないままに。


 「ジェイスは面倒くさがりな割にいつも揉めごとに首を突っ込むよなあ」とはずっと思っていました。ジェイスのオリジン記事「欠けた心」によれば、師匠である《高位調停者、アルハマレット》と対決した際に故郷や家族の記憶のほとんどを消し飛ばされたようです。過去の記憶の欠落がどうしようもなく彼に真実と知識を求めさせる……なんだちくしょう切ないじゃないか。



■ ニッサ・レヴェイン

「時々わからなくなるの、私達が止められるかどうかも」


 「だゾ☆」からもう4年になるんですね。『基本セット2015』で再登場して以来、ひたすらゼンディカーのために戦い続けているニッサ。その姿は強く勇ましく、ですが同時に悲壮感が漂っています。いくら強くなろうとも、いくらゼンディカーと繋がろうとも、結局、絶対的な数では敵わない。目の前のエルドラージを倒しながら、救いを求める声に応えながら、その事実は常にニッサの心の片隅に沈んでいます。


 


 それでもゼンディカーの力の体現のごとき巨大エレメンタル、アシャヤを得て百人力のニッサ……と思いきや、公式記事「声なき叫び」では一体何があったのか、あれほど強かったゼンディカーとの、アシャヤとの繋がりが途絶えてしまいました。そして落とし子に襲われ、かつてのように剣で戦おうとするも奇妙にも身体はその戦い方を忘れてしまったかのようで。ですがそんな彼女のピンチに現れたのが、難攻不落の肉体と素晴らしい戦いの技を持つ人間の男性――そう、ギデオンでした。ニッサはその見慣れぬ鎧の装いに、彼がこの世界の者ではないと、プレインズウォーカーなのだと直ぐに勘付きました。

 早くも出会いを果たした二人、そしてニッサは自分から進んでプレインズウォーカーだという正体を明かしに行きました。かつてニッサは、自身がプレインズウォーカーだということをひた隠しにしていました。


小説『Zendikar: In the Teeth of Akoum』チャプター2より訳

その力のことは誰にも言ってはならない。それは災い以外の何でもなかった……次元渡りのこの力は。


公式記事「声なき叫び」より抜粋

「違う――そうじゃないの。私はそんなことを、自分を証明することを気にしてるんじゃないの」 ニッサは気分を害していた。「私――私は、プレインズウォーカーなの。あなたと同じように」


 当時と状況はだいぶ違いますし、相手も全く違います(ゼンディカーの時はソリン)。そして今回は自分と同じような者に尋ねる必要があったとはいえ、これまでのニッサを知る身としては驚き以外の何でもありませんでした。エルドラージと戦うギデオンの力にニッサが感銘を受ける様子も好意的で、やはり白と緑の友好色ということか。

 とはいえ、出会いと印象は良かったものの、やはりアシャヤとの、ゼンディカーとの繋がりが途絶えたことの方が彼女にとっては打撃だったようで、交流を深めることはせずに早々と離脱してしまっていました。




《ニッサの復興》フレイバーテキスト

彼女と次元の繋がりが回復し、ゼンディカーの活力が自身を通じて湧き出すのをニッサは感じた。


 まあ、このフレイバーテキストを読む限りでは大丈夫そうです。一人離れていったニッサですが早くギデオンやジェイスと合流して共闘してくれるといいな。



■ キオーラ

「感謝するわ、この槍を」


 ゼンディカー生まれのマーフォークのプレインズウォーカー、キオーラ。エルドラージに対抗できるような力(=巨大海洋生物)を求めてテーロス世界を訪れていた彼女はエルズペスとアジャニがニクスへと向かう手助けをした後、《海の神、タッサ》と対峙するのですが、テーロスブロック内でその結末は明かされていませんでした。そして前回記事にも書いたように5月掲載の公式記事「海を落ちて」にてその戦いの一部始終が明らかになりました。キオーラはタッサに敵わなかったものの、その神器である《タッサの二叉槍》を奪ってプレインズウォークして逃げることに成功しました。

 この記事への反響はかなりのもので、多くのプレイヤーがキオーラへと喝采を上げていました。きっとこの光景は「神々が定命の存在にしてやられる物語を聞いて溜飲を下げるテーロスの人々」と同じだったのでしょうね。キオーラの明るさも相まって、非常に痛快な話でした。そしてまたもプレインズウォーカーに武器を持ち逃げされるテーロスの神。タッサさんの信心が心配です。

 この記事でまた印象的だったのは、キオーラが「神」という存在をどう思っているかということでした。今目の前にいる神、そして故郷の神を。

公式記事「海を落ちて」より抜粋

自分は何も知ってなどいなかった! あの神々は神々などではなかった。詐欺師コーシの正体は恐ろしい皮肉とともに明かされた。神は偽物だった――エルドラージの巨人コジレックの記憶が、馬鹿者達の囁きの伝言ゲームによって歪んだのだ。



エムラクールの手暁輝きの発動者


《エムラクールの手》フレイバーテキスト

「私は美しき神を信じていました。 しかし、これが神の真の顔です。」
――カムサの僧侶、アイリ


《暁輝きの発動者》フレイバーテキスト

「我々がエメリアやウーラやコーシとして知っていたものは、神の如き存在でもなんでもない、残忍な計略で、大きな間違いでしかなかったのだ。」
――「発動者伝」


 『エルドラージ覚醒』の幾つかのカードのフレイバーテキストに、神の正体がエルドラージだと知った人々の言葉があります。同様にこのキオーラからは、自分達が神として崇めていたものの正体を知ったゼンディカーの人々の感情がわかります。キオーラ曰く「恐ろしい皮肉」。詐欺師の神コーシは本当に偽物でした。いえ、詐欺師の神だけでなく空の神も、海の神も。つい先日公開されたこのカードで初めて知り、衝撃を受けたという人も多いのでは?




マーフォークの神話における名は左からウーラ、エメリア、コーシ。
その本当の姿は。



無限に廻るもの、ウラモグ引き裂かれし永劫、エムラクール真実の解体者、コジレック



 このあたり、エルドラージとゼンディカーの神話の関係についての話はとても面白いので、次回にまとめて取り上げたいと思っています。そしてこれ書いていたら来たよーしっかり来たよー新キオーラ。




 しっかり《タッサの二叉槍》持ってるね! これを書いている9月上旬現在、まだ『戦乱のゼンディカー』の物語連載にキオーラは登場していません。ですがエルドラージとの絶望的な戦いの物語を、持ち前の軽やかさと明るさできっと癒してくれるのでしょう。早く読みたい!



■ オブ・ニクシリス

「いつの日か、我は復讐を成そう」


 『統率者2014』組でゼンディカーに関わるのはナヒリだけじゃねえんだぞー、むしろそのナヒリとも因縁あるんだぞー、のニクシリス。物語には昨年以来顔を出していませんでした。そしてゼンディカーに関わる黒のプレインズウォーカーはソリンだけじゃねえんだぞー、とばかりにカムバック! 再覚醒!



※画像は【オブ・ニクシリスの様々な姿】より引用させていただきました。





 すっごい嬉しそう。この絵を見ますと頭部だけでなく腕のあたりにも人間だった頃の鎧の面影がありますね。しかし一度灯を失ったというのにどうやって「再覚醒」したのか。公式記事「オブ・ニクシリスの様々な姿」にはこうありました。


そして今、彼は「適応すること」によってついに、プレインズウォーカーの灯を再び手に入れたのだ。


 「適応することによって」……? 更に気になるのは、上に挙げた4人は皆「エルドラージをどうにかする」という目的は同じなのですが、ニクシリスの目的は何なのか。自分の力を奪い、封じたナヒリやゼンディカー世界への復讐心を抱いていることは確かですが、それ以上のことはわかっていません。そして他のプレインズウォーカーに比べてここに取り上げる量少ないですが、上に書いた通り「物語には昨年以来顔を出していない」ので許して下さい。皆気になっているので「主役回」を楽しみに待ってます。



2. あの三人組


タルキールブロックはサルカンの壮大な物語だったのですが、「ゼンディカー前哨戦」でもあったと思います。『統率者2014』も動員されて、六千年前にエルドラージをゼンディカー次元に封じた三人と、当時の様子が明らかになりました。


■ ソリン・マルコフ&ナヒリ

「エルドラージだ。面晶体のまどろみから目覚めたのは君だけではない」

「神なんかじゃない!」



ソリン・マルコフ石術師、ナヒリ


 旧ゼンディカーブロックにて、エルドラージの封印が緩んでいることを察したソリンは古の約束に従い、ゼンディカーを訪れました。ですがウギンとナヒリの姿はなく、彼は現地で出会ったニッサやアノワンの力を借りて「ウギンの目」へと向かうもののニッサによってエルドラージは解放されてしまった、とは過去何度か書いてきた通りです。

 小説『Zendikar: In the Teeth of Akoum』の描写を読む限りでは、ソリン一人でも封印を直せる算段はあったようです。ここで改めて疑問なのは、もう二人は何故来なかったのか。タルキールブロックの物語で、当時ウギンは「面晶体の繭の中で眠りについていた」ことが明らかになりましたがナヒリは一体どうしていたのか。そして気づいている人も多いと思います、ナヒリの行方を尋ねられたソリンの挙動が明らかにおかしかったことに。


公式記事「ソリンの修復」より引用

 ウギンの両眼がぐるりと動いてソリンへと戻った。「面晶体の魔道士は? ナヒリは何処におる?」
 「羞恥」という概念はソリンから消失して長かった。何千年もの時の間に、人間としての彼の脆さと不安は成長し、花開き、そして枯れ落ちた――長い時を生き、彼は後悔というものに動じなくなった。そして、それでも、長い時の中で初めて、ある心地の悪い感情が彼の内で増大した。不快な痒みが、ある重要な物事をしくじった、その責任を彼が――彼一人だけが――負うという感情が。それは正確には自責ではなかった。彼の心の中、自責というものがかつてあった場所にこだまする、ただ鈍い、調子外れの響きだった。
「彼女は――ここにはいない」 特定の声色を出すことなく、ソリンは言った。
「それは見ればわかる」 ウギンは言った。「彼女の所在を問うているのだ。まだゼンディカーに? 我らも合流するべきであろう、我さえ旅できるようになればすぐにでもだ」
「彼女が、そこにいるとは思わない」 ソリンは注意深く言った。
 ウギンの首の襞が苛立ちに震えた。「事実を言うのだ、曖昧なことではなく。彼女は死んだのか?」
「いや」 ソリンは言った。「生きている」 今ウギンが真実全てを知る必要はない、ソリンはそう判断した。「彼女がいる場所は、もしかしたら判るかもしれない」


 どうにも不明瞭な態度。そしてこのやり取りからは、ソリンはナヒリがゼンディカーにいないことを知っていたように読み取れます。そもそも、「大修復」を経て未だにナヒリが生きているということ自体がイレギュラーに思えます。何も手段を講じなければ不老不死でなくなり、寿命を迎えている筈なので……コーの寿命は実はとても長い、とかでしたら別ですけれどそういうわけでもなさそうですし。

 ソリンはウギンに言われ、ナヒリを探しにタルキールを旅立ちました。そこから彼がどうなったのか、そもそも何処へ向かったのかは今のところ定かではありません。公式記事「プレインズウォーカーたちの現状2015」のソリンの項目は、意味深な一文で締められていました。


彼が守るべき次元が一つだけならば、物事は遥かに単純なのだが。


 元々ソリンはイニストラード世界を、自身が創造した守護天使アヴァシンに任せて旅に出ており、時折戻るだけだった筈です。イニストラードを守ることと、ゼンディカー。それが両立しない……? 今は全て推測でしかないので、これ以上は語らないでおこう。



■ ウギン

「あやつがエルドラージの解放を仕組んだのだとしたら、あやつは我が覚えているよりも遥かに迂闊な者だということか」



精霊龍、ウギン


 上で「大修復」の話が出ましたが、ウギンが眠っている間にそれは起きました。彼は自身の弱体化に気づいたのでしょうか? 精霊龍なので元から寿命については関係無さそうですが。今のところ発表されている画像やカードから、ジェイスに面晶体の様々なことを教えているらしいウギン。彼もゼンディカーに来るのか、それともタルキールに留まりながらジェイスを迎えたのか。それはまだわかりません。ですがプレインズウォーカーが出会う所にドラマあり。この二人の対面がどんなものになるのか、今から楽しみで仕方ありません。

 もう一つ。エルドラージの解放がボーラスの策略だったとウギンはサルカンから知らされました。一方でボーラスはウギンが復活した……いや、彼から見れば「実は生きていた」ことを知りません。太古の時代から敵対しているらしいこの龍達も、やがて再び対峙する時が来るのでしょうか。



3. 誘いを断った二人


■ リリアナ・ヴェス

「まるで、何もかもが正しく制御されていないような、そんな感じ」





 前回記事でも触れましたが、リリアナはジェイスに復縁を迫る「鎖のヴェール」に対処するための協力を願おうとするも、勿体ぶっていたためにギデオンに持って行かれてしまいました。そして逆にジェイスから協力を要請されるもそれを突っ撥ね、自分の問題を対処しに向かいました。鎖のヴェール、契約悪魔の残り二体。そういえば「デュエルズ・オリジン」にてその二体が登場していましたので見た人もいると思います。名前は「ラザケシュ」と「ベルゼンロック」。鴉の男曰く、彼らはこれまでにリリアナが倒した二体(《魂の貯蔵者、コソフェッド》《グリセルブランド》)よりもずっと強いと……。

 ああそう、結果的にリリアナの兄を死へ至らしめ、それによって彼女をプレインズウォーカーとして覚醒させ、数百年が過ぎても彼女の前に姿を現してはことごとく悪い結果をもたらすその「鴉の男」。複数の次元に姿を現していることから彼はプレインズウォーカー、そして鴉へと姿を変えられることからシェイプシフターに違いない、とはリリアナも指摘していた通りです。



※画像は【リリアナの「オリジン」:第四の契約】より引用させていただきました。


 数百年前から生き続ける、シェイプシフターのプレインズウォーカー。それ一人しかいないよね……と思うんですが困ったことに「ボーラスではない」可能性の方が現状では高そうなんですよ。というのも、リリアナオリジン記事に、「大修復」を経てかつての力や不老不死の肉体を失って年老いた(!)リリアナが登場しています。そしてこの記事の描写から、リリアナが覚醒したのは『スカージ』~『時のらせん』の中間と推測できます。一方のボーラスは『時のらせん』の物語で蘇るまでは長いこと死亡しており、残留思念か何かだけがあったという状態でした。従ってリリアナ覚醒時にボーラスが登場しているのは、何かない限りはおかしい……と思うんだ……個人の感想です。

 しかしこのリリアナオリジン、なにげに「大修復を経た旧世代プレインズウォーカーは何もしない限りは老いる」ということが初めてはっきりと示された貴重な記事です。でも老女リリアナの大きな絵が載っていないのはせめてもの情けという奴でしょうか。



■ チャンドラ・ナラー

「私はここにいる。そう約束したの」





 ギデオンとジェイスはゼンディカーへ戻る前にレガーサ次元へと立ち寄り、チャンドラにも協力を要請しました。ですがチャンドラは自身を受け入れてくれたケラル砦への恩義から、同行しないことを選びます。その公式記事「炎への献身」でのやり取りを読むに、白のギデオンと青のジェイスと赤のチャンドラ。三人合わせてジェスカイ、じゃなくてやっぱり対抗色なだけあって何か根本的な相性の悪さが否めないような……。

 ですがチャンドラにはどうにも「参加フラグ」があるような気もします。


公式記事「プレインズウォーカー達の現状2015」より抜粋

その修道院は穏やかで心地良いのだが、彼女は今も心躍る冒険と黒焦げになった敵の甘い香りを切望している。腰を落ち着けようと最大限の努力をしてはいるが、ゼンディカーの壮大な風景とニコル・ボーラスの手に操作されたという苦い記憶は彼女の心に鮮やかに燃え続けている。


 そして『戦乱のゼンディカー』についての各種発表やプレビューで、今現在「赤のプレインズウォーカー」の姿が見当たりません。ゼンディカーに関わった赤のプレインズウォーカーはチャンドラ以外にもサルカンがいますが、つい先日ハッピーエンドを迎えたばかりの彼が果たしてやって来るのだろうかとも思います。むしろ折角ハッピーエンド迎えたんですからしばらくナーセットと一緒にタルキールでゆっくりしてていいのよ?

 ……ってここまで書いたのでこれはこれで残しておくんですが先日発表されました『戦乱のゼンディカー』第二エキスパンション、『ゲートウォッチの誓い』。その告知ツイッターに添えられた画像にはチャンドラの姿があるじゃないですかー。



 短髪チャンドラかわいい。得意そうな、かつ吹っ切れたような笑顔が清々しいじゃないの。同様にやけに短髪になったジェイスもこれはこれで気になりますが。本当に衣装こそ毎回同じだけど髪型は毎回違うね君は。この四人のポーズも何なんでしょうね。



4. 次は……?


 すぐ上に書きましたが、『戦乱のゼンディカー』第二エキスパンションのタイトルは『ゲートウォッチの誓い/Oath of the Gatewatch』。「ゲートウォッチ」とは何ぞや? 「ゲート」は単純に考えてギデオン達がエルドラージから取り返そうとしている都市、「海門/Sea Gate」のゲートだとは思いますが。ああ、こうラヴニカへの回帰ブロック時代に「『ギルド門侵犯』のギルド門って何だろう?」ってかなり真剣に悩んだら(旧作当時なかったので)単に各ギルドの領域の入口だった、というのをなんか思い出しましたよ。考えすぎも時に良くない。



※画像は【『ゲートウォッチの誓い』 発表】より引用させていただきました。


 大きく描かれたニッサの背後、浮岩の上に並び立つプレインズウォーカー4人。小さいですが左からチャンドラ、ニッサ、ジェイス、ギデオンですね。各人のポーズがまた決まっています。「並んでかっこいいポーズを取る」構図にちょっとタルキールを思い出しました。彼らの背後には奇妙に整列した面晶体がありますがこれも何か意味がありそう。まだ公開内容はとても少ないですが、少なくとも「明るい」雰囲気がありそうです。2セット制になって物語展開はどうなるのか、そして何処かへ行ってしまったらしいエムラクールとコジレックは一体。これからも目が離せません。

 次回はキオーラの所でも書きましたが、ゼンディカーの神々とエルドラージの関係について、旧ゼンディカー期の資料も踏まえて色々まとめようかなと考えています。加えて『戦乱のゼンディカー』のプレインズウォーカー、キオーラかニクシリスの話もできたらいいな。

それではまた。

(終)



この記事内で掲載されたカード




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