あなたの隣のプレインズウォーカー ~第40回 ゲートウォッチ一大事~

若月 繭子


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 あけましておめでとうございます、若月です!

 新年らしく爽やかな新カードで始めてみました。やり遂げた4人の表情、差し込む陽光、眼下の荒地に芽吹きはじめる緑。「めでたしめでたし」のエンディングを思わせるアートです……けれど一体どうやってこのカードの場面にまで行くんでしょうか。これを書いている時点で物語は【ウラモグ&コジレック大暴れ、海門は破壊されてプレインズウォーカー達は皆生死すら定かでない】んですけど! まあカードにこうして登場しているので心配はしていませんが。

 そんなふうに『ゲートウォッチの誓い』の物語も始まった所で、今回は「ちょっと気になること」をいくつかお話ししたいと思います。


※WARNING!


 この先には2016年1月5日発売の書籍【The Art of Magic: the Gathering: Zendikar】 (以下「アートブック」と表記します) のネタバレが含まれています。

 物語展開には触れていませんが、まだ知りたくないという方は戻ることをおすすめします。




1. コジレックの気配





公式記事「コジレック覚醒」より引用
(掲載:2015年12月9日)

「違う――コーシじゃない。コジレック。巨大にして矛盾、神々の概念のよじれた紛い物。」


 《連結面晶体構造》にウラモグが拘束された直後、皆が「勝てる!」という希望を抱いたまさにそのタイミングで現れ、全てを打ち砕いたペテン師・コジレック。「ウラモグ以外の巨大エルドラージは行方知れず」と以前から説明されてきました。とはいえ今じっくり見ると、『戦乱のゼンディカー』の物語やカードといった様々な場所に「コジレックの気配」があったことに気付かされます。

 まず、物語ではウラモグの現実の脅威が描写されるとともに「神話」でのコジレック、「ペテン師の神コーシ」についても意味深に、かつ早くから語られていました。


公式記事 「軍勢の形勢」より引用
(掲載:2015年10月22日)

ギデオンは振り返った。「離れる前に一つ質問させて下さい。あなたが話してくれたコーシとウーラの物語、最終的に真珠を手に入れたのはどちらだったのですか?」

ノヤンは得意になって笑みを浮かべた。「もちろん、コーシですよ。コーシの物語はほとんどがそういうものです。コーシがウーラに何かをさせる、ウーラが元々やろうとは思わなかったことを。そしてコーシがその利益を得ると」ノヤンはコーシの物語が好きだった。



公式記事 「故郷の海」より引用
(掲載:2015年10月1日)

コーシを崇める者はいない。誰もがそれを知っていた。大人たちは彼の物語を聞こうとしなかった――いや、彼女が後に学んだことには、その物語は幼稚だからだと。だがそれは冒涜的でもあり、それを耳にするのは恥ずべき事なのだと。ならば何故彼らは子供達にその物語を伝えていたのだろう? 何故、敬虔な物語ではなく、日の当たる物語ではなく、三神が海、大地、空を創造した物語ではなく? 何故、神々が愚かに思える物語を伝えていたのだろう?

そもそも、何故コーシの彫像が作られたのだろう?

震えが彼女の身体に走った。神々の視線は虚ろで、無慈悲だった。それは容易いことだろう、何もかも、とても容易いことだろう、覚醒したあの怪物達は本当に神々であり、崇拝に値する存在だとしてひざまずくのは。容易いのだろう……ただ彼女は物語を覚えていた。コーシがエメリアのローブを盗む物語、ウーラを騙して石を飲み込ませる物語を。


 コーシの元信者ノヤン・ダール、そしてコーシのように【別の神】を欺いて【宝物】を手に入れたキオーラ。メタ的な予想ではありますが、こうやってコーシの話を繰り返し出してくるってことはこの先何かあるのかな……と思った人は多かったのではないでしょうか。


 更に、『戦乱のゼンディカー』に数体登場していたコジレックの血統エルドラージ。【第37回】に書いたように、エルドラージの落とし子はカード名以外にも、見た目でだいたいその血統が判別できます。コジレック種の特徴は「頭上に浮かぶ黒曜石の鋭い刃」。今見るとそのカード名と能力が、コジレックの存在を暗示していたように読み取れます。


コジレックの伝令コジレックの媒介者


《コジレックの伝令》
あなたが無色の呪文を唱えるためのコストは(1)少なくなる。

《コジレックの媒介者》
(T):あなたのマナ・プールに(◇)(◇)を加える。


《コジレックの媒介者》フレイバーテキスト

「この世界の暗部で何か恐ろしいものが育っている。私が恐れているのは、敵の数が想像を遥かに上回ることよ。」
――ニッサ・レヴェイン



 「伝令」とはつまりコジレックからの何かを告げるもの。「媒介者」とはつまりコジレックへと繋げるもの。この2枚、明らかに《大いなる歪み、コジレック》を唱えてくれと言っているようなものじゃん……いや別にウラモグでも問題ないのですが、せっかくカード名にもコジレックを冠しているんですし。

 更に、今回登場の新たな基本土地《荒地》。そのアートには誰もが驚きましたよね。螺旋を描くように組み合わさった正方形、油膜のような虹色。よく言われているように私達の次元での【ビスマス結晶】に酷似しています。これがコジレックやその血統の「食い跡」。




 《荒地》のアートは2種類ありますが、片方はウラモグの血統のものですね。白く脆い多孔質の骨のような。個人的には「白化したサンゴの骨」に似ているなと思いました。このへんも「海の神」の想起なのかしら?

 そしてこのコジレックの食い跡も、よくよく探すと『戦乱のゼンディカー』時点で割と見つかっていたのでした。



※画像は【厳粛なる誓い その2】より引用させていただきました。



ハヤバイ


 例えばこれ《ハヤバイ》の足元に。このエルドラージ、大きな絵で見ると腕や体のあちこちに目があるのがわかります。これもコジレックの血統の特徴。『ゲートウォッチの誓い』でたくさん見ることができます。


怒りの座、オムナスコジレックの歩哨


 カードサイズでもあの螺旋の四角形模様がよくわかるのは《怒りの座、オムナス》ですね。何かコンピューターの回路みたいだな、と最初思いましたよ。《コジレックの歩哨》ではアート右下と、テキストボックスを透かしてこっそり見えています。

 ところで実は『戦乱のゼンディカー』のカードに、ただ1枚、新コジレックの姿が描かれているものがあります……《ウギンの洞察力》。左上に注目。




ウギンの洞察力



《ウギンの洞察力》フレイバーテキスト

「おぬしはウラモグの脅威と言う。だが、あれは3体で来たのだ。それを忘れるでない。」
――ウギンからジェイス・ベレレンへ


 このカードではジェイスが《ウギンの目》を訪れ、そこでウギンへとエルドラージの対処法を尋ねるという物語上極めて重要なシーンが表現されています。ウギンがエルドラージの脅威を説明する中で作り出した幻影、なのですが、単なる説明スライド以上の何物でもないのか、はたまた『ゲートウォッチの誓い』でコジレックが出てくることを暗示していたのか……。

 私はウギンは別に黒幕でも何でもないと思っているのですが、なんかこれは嫌だなあ。



おまけ:エムラクールは?


 新コジレックが発表されるとともに、ネットでは「エムラクールはどうしているの?」と少し話題になりました。また、ウラモグとコジレック、それぞれの攻撃方法には違いがあり、『エルドラージ覚醒』の時点よりも差別化が成され、カード名や能力にも表現されています。

 何もかもを食らうウラモグは「絶え間ない飢餓」、時と空間という現実を歪ませるコジレックは「大いなる歪み」。ならばエムラクールのそれは? これらの疑問については、『戦乱のゼンディカー』ファットパック付属の小冊子の記述が手がかりになるかもしれません。訳しました。


Emrakul, the Titan of Corruption

エムラクールは既知のエルドラージの巨人三体でも最大にして最強であり、山が大地から抜錨されたように空を漂う。別の巨人達がその足跡に残す完全な破壊とは対照的に、エムラクールは岩や水といった非生物には影響を及ぼさない。彼女の足跡には生物の歪みが記され、それが植物か、動物か、知的生物かどうかは関係ない。それら変化した有機体の幾らかは今もゼンディカーに残っているが、そのほとんどは萎んでしまった。

エムラクールは他の巨人よりも素早く、虜囚状態から回復したと見られる。彼女はコジレックよりも先に姿を消した。研究者のほとんどは、彼女は既に次元を離れたと信じている。彼女の落とし子らの特徴的な格子状構造は繊維質の肉へと朽ち、その弱体化状態において現在でも脅威となっているものはごく僅かである。



引き裂かれし永劫、エムラクールエムラクールの名残



《エムラクールの名残》フレイバーテキスト

エムラクールは何ヶ月も目撃されていない。その間に血統の数は減ったが、ドローンがいまだ脅威であることに変わりはない。


 「Corruption」。腐敗・堕落・退廃といった所でしょうか。上で「以前からコジレックの気配があった」ことをつらつらと書いてきましたが、今探す限りでは『戦乱のゼンディカー』・『ゲートウォッチの誓い』にエムラクールらしき気配は見えません (単にあってもわからないだけという可能性もありますが) 。

 しかしこれ、「既知のエルドラージの巨人三体/the three known eldrazi titans」って表現は少しビクっとしますね。四体目以降がいてもおかしくない書き方じゃないですか……。



2. エキスパンションシンボルの話


 『ゲートウォッチの誓い』のエキスパンションシンボル。四つの三角形が組み合わさったようなそれは一体何を示しているのでしょうか。

 個人的には最初見たときは「海門の灯台の表象かな」と思いました。物語でプレインズウォーカー達が奪還しようとする、ゼンディカー文明の最終防衛線。その「Sea Gate」を見守るのがゲートウォッチなのかな? と。ですがコジレックの覚醒とともに「海門の灯台」は破壊されてしまいました。Zendikar Expeditions版《秘教の門》にはその灯台が堂々と描かれています。確かにGateだ。




 そして『ゲートウォッチの誓い』のカードの至るところに、このシンボルに似たものを見かけます。自然物らしからぬ直線形を。




公式記事 「コジレック覚醒」より引用

風景に立ち上がる異質な形状は、恐ろしいほどによく知っていた。漆黒の刃の王冠がその頭部らしきものの上に離れて鎮座し、それはありえないほど平坦で、ありえないほど黒く、まるで空間に穴があいたようだった。


 『ゲートウォッチの誓い』の目玉は間違いなくコジレック。『戦乱のゼンディカー』におけるウラモグとその落とし子らと同様に、今回のセットのエルドラージはほとんどがコジレック種。それぞれ少しずつ異なる「黒曜石の鋭い刃」を頭上に掲げています。形状こそ様々ですが、左右対称で鋭く尖っているところはだいたいで一致しています。

 公式な発表こそありませんが、『ゲートウォッチの誓い』エキスパンションシンボルはコジレックの血統のエルドラージの象徴を示している、のではないかと思います。

 形が似ているな、と思ったのはむしろ『エルドラージ覚醒』に登場していたものに多い気がしました。特にこのあたり、《背くもの》が一番近いかな?


コジレックの職工戦慄の徒食者背くもの


 『ゲートウォッチの誓い』が発表されたのは2015年9月1日。『戦乱のゼンディカー』プレビューが始まる少し前でした。時に、エキスパンション名は物語の盛大なネタバレとなります。『新たなるファイレクシア』・『アヴァシンの帰還』はその最たるものでしょう。

 ですがエキスパンション名だけでなく、エキスパンションシンボルすらその後の展開のヒントになりうる……とか、本当難しいなあと。



3. 《コーの安息所》


 ここでがらりと話は変わりまして。

 Zendikar Expeditionsには再録禁止でない、なおかつ「汎用性のあるカード名」の土地が選ばれています。そりゃそうだ、ゼンディカーには【ラノワール】【リシャーダ】【永岩城】【トレイリア】もありませんし【ウルザ】【ミシュラ】もいないのですから。汎用性のある名称、なおかつそれぞれのアートにゼンディカー流のアレンジが加えられています。




 【第37回】からの繰り返しになりますがこの《神無き祭殿》は本当に衝撃を受けました。確かに神などなかった! そしてこの《マナの合流点》にはゼンディカーの大地や気象が荒ぶる「乱動」現象が描かれていますね。実は【『戦乱のゼンディカー』トレイラームービー】に登場していました (0分21秒付近) 。

 そんな中で一つ、異彩を放っているのが《コーの安息所》。元々は『ネメシス』のカードです。


コーの安息所


 「確かにコーいるけど!」と思った人も多いことでしょう。【第33回】にも書きましたが、ラース次元のコーは元々ゼンディカーが起源です。よってノープロブレム。

 アートブックに、この「ゼンディカー版・コーの安息所」の説明がありました。正確な名称は「コーの岸壁安息所/Kor Cliffhaven」 (《岸壁安息所の騎士》《岸壁安息所の吸血鬼》というカードがありますね) 。

 「岸壁安息所」は特定一か所の名称ではなく、オンドゥ大陸、マキンディ地溝内に散在するコーの一時的な宿営地を示しています。綱や鉤の扱いに長ける彼らは眩暈がするような高所でも、まるで他種族が地上を歩くように過ごせるのだとか。そしてここは他種族にとっても探検の際の重要なベースキャンプとなっているのだそうです。

 しかし『テンペスト』ブロックのコーは「ダメージを移し替える」能力で特徴づけられ、一方でゼンディカーのコーは多くが装備品の扱いに長けたウィニー向け小型クリーチャー。『テンペスト』ブロック当時は装備品が存在しなかったというのもありますが、それほど共通点の見えない2つのコーをこんな形で繋いでくるなんて、実に粋じゃないですか。



4. ゲートウォッチ/The Gatewatch


 セット名発表当初から疑問でした、「ゲートウォッチってなんぞ」。それが早速、プレビュー開始とともに明かされていました。


公式記事 「すべての始まりに」より引用

マジック史上最新のプレインズウォーカーのチームには新しい性質があって、ただの友情関係じゃなく、自分たち以外が対処できない様な脅威から多元宇宙の人々を守るための誓いなんだ。このチームは「戦乱のゼンディカー」ブロックだけで終わるものではなく、将来のマジックの物語にも繋がっていく。


 ゲートウォッチとは「チーム名」。プレインズウォーカーが集合し、結束し、多元宇宙の様々な脅威に立ち向かう。この記事ではかのウルザが率いた対ファイレクシア部隊「ナイン・タイタンズ/The Nine Titans」や前回エルドラージに対処した「三人組/The Three」と並び称されていました。

 「新世代プレインズウォーカーのチーム」はこれが初ですね。思えば毎ブロック5-6枚プレインズウォーカー・カードが登場しますが、その多くが物語内で結託して一つの目的のために行動する、というのはもしかして初めて!? 『ローウィン』で最初にあの5人が登場してから8年とか経ってるんだけど!

 2人組くらいでしたら結構ありましたし、一応『ミラディンの傷跡』ブロックは3人が行動を共にしていましたが、あの3人(エルズペス・コス・ヴェンセール)そんなに仲も良くなかったしなあ。

 そして『ゲートウォッチの誓い』発表時から公開されていた【プレインズウォーカー達のアート】は、4人の「誓い」でした。フレイバーテキストでのそれぞれの宣誓がまた凛々しいわね!





ギデオン「正義と平和のため、私はゲートウォッチとなる。」
ジェイス「多元宇宙の繁栄のため、私はゲートウォッチとなる。」
チャンドラ「それで人々が自由に生きられるのなら、そうね、ゲートウォッチになるわ。」
ニッサ「すべての次元の生命のため、私はゲートウォッチになるわ。」


 チャンドラだけ定型を外した、少しカジュアルな雰囲気なのが逆に良いですね。彼女らしさ、自由の赤らしさがよくわかります。この先構成員が増えることも期待できます (減る可能性ももちろんありますが……) 。プレインズウォーカーが出会うところにドラマあり、これまでのキャラクターでチームに加入するとしたら誰だろう、とか想像するだけでも楽しいですね!

 ついでですので「誓い」の4人と、そうでない2人についても2016年1月中旬現在の状況を確認しておきましょう。


■ ギデオン

 カードは強力、物語では大活躍。そんなキャラクターの株が上がらないわけがありません。《連結面晶体構造》を完成させウラモグを閉じ込めるまでの間、たった1人ウラモグの前に立ちはだかり足止めをするという離れ業を見せてくれました。いくら破壊不能能力を持つとはいえ「ウラモグとタイマン」には驚きや感嘆を超えて唖然とした人は多かったかと思います。



※画像は【『戦乱のゼンディカー』 発表】より引用させていただきました。


 『戦乱のゼンディカー』パッケージ、ウラモグと一対一で戦う絵が本当に物語中に存在する場面だったとは誰が想像できようか。いや画像詐欺とは言わないまでもさすがにイメージ画像でしょ、いくらギデオンでも無理っしょ! って思うじゃない!!

 ちなみにアートブックにエルドラージの大きさが書かれていました。コジレックは身長500フィート (約150メートル) 以上、エムラクールは「傘」の直径600フィート (約180メートル) 、傘の頂上から下の触手の先端まで200フィート (約60メートル) 。ウラモグだけ数字がなく、巨人三体の中では最小とはありますがそれでも人が生身で対抗できるサイズじゃねえよ……ちなみにゴジラが50メートルとかだよ……。



※画像は【この荒廃に生を受けて】より引用させていただきました。


 こんなスケール。いやいやいや無理無理無理無理。

 そんなふうにウラモグは一旦封じ込めましたが、面晶体の罠はあっさりニクシリスに壊されてしまいました。【公式記事 「オブ・ニクシリスの報復」】の回ではその悪魔といつもの武器ではなく格闘での戦いを見せてくれていました。

 関節技を多用していたあたりに「ああ、君テーロス人だなあ」と思いましたよ!アクロス式格闘術 (参考:【公式記事 「王子アナックス その2」】) ですかね。その回ではニクシリスに敗北してしまいましたが、まあ破壊不能ですし大丈夫でしょ (いつものオチ) 。


■ ジェイス

 今回プレインズウォーカー・カード出なかったねえ。今のゼンディカーの惨状に意図せずとも加担した責任感からか、決して逃げようとはせず真摯に自身の役割に向き合い続けています。【公式記事 「『目』での天啓」】ではあのボーラスと同等の強大な存在であるウギンと対面し、自分がエルドラージの封印を解いた一因であることを認め、だからこそ巨人達を止める決意をはっきりと示していました。

 その時の台詞、「俺はエルドラージの解放に加担しました。奴らを止める役割を持てるなら、やります」。ジェイスらしからぬ、と言っては失礼だけどかっこよかったよ!! とはいえ相変わらず戦闘になると苦戦しっぱなしで、エルドラージ相手では落とし子1体にすら手こずり、ニクシリスにはワンパンKO。ですが『ゲートウォッチの誓い』新カードでも、諦めない姿を見せてくれています。





《ゲートウォッチ招致》フレイバーテキスト

「プレインズウォーカーはどんな危険からも逃げられる、などと言われていることは知っている。だがギデオンの言う通り、我々は逃げずに戦える者でもあるのだ。」
――ジェイス・ベレレン



《一致団結》フレイバーテキスト

部隊を鼓舞する台詞に困り、ジェイスは自問した。「ギデオンならば何と言うだろう。」



 ギデオンを思い出す所に信頼感があって良いねえ。ところで次のセット『イニストラードを覆う影』のキービジュアルにいるのはジェイスです。



※画像は【『イニストラードを覆う影』 発表】より引用させていただきました。




 物語そのものには関係ないと思いますが、『ローウィン』で登場してから何と9年目にして初の衣装チェンジ (っても上着着ただけのようですけれど) 。イニストラードは寒い世界、何せ半裸のガラクが服を着込むくらいです。

 ウギンから「エルドラージを対処したくばソリンを探せ」的なことを言われていたので、その通りにイニストラードへ向かったと考えるのが妥当でしょうか。ゼンディカーでは精神攻撃も幻影も睡眠も効かないエルドラージ相手に苦戦しまくりのジェイス。次の相手はもうちょっとマシ、だといいんだけどねえ。


■ ニッサ




 『基本セット2015』・『マジック・オリジン』と登場してはきましたが、ようやくニッサが故郷ゼンディカーを舞台に再びカード化されました。乗っているのは【アシャヤ】ですね。【第25回】にも書きましたがかつては「弱いプレインズウォーカー」といえばニッサでした。それがここまで主役級の存在になるなんて感慨深い……マローも【PV】で「よくぞここまで出世してくれた」と言っていたほどです。

 【第36回】からの続きになりますが、ゼンディカーの魂との繋がりが断たれた原因を追い、辿り着いた不毛のバーラ・ゲドにてオブ・ニクシリスと、無残に引き抜かれた「カルニの心臓」を発見します。そのカルニの心臓とは何か。記事の記述を見るに、「世界の魂が具現化した花」のようなものと考えておけば良さそうです。


カルニの心臓の探検


 そこで彼女はニクシリスからカルニの心臓を取り戻し、ゼンディカーの魂との繋がりを取り戻し、悪魔を生き埋めにして海門の戦いへと帰還しました。一方敗北を被ったニクシリスはそれで諦めることはなく……。

 ちなみにニクシリスは唐突にそこにいたという訳ではなく、実は『基本セット2015』の頃から活動していたのでした。


公式記事 「忌むべき者の夢」より引用
(掲載:2014年8月6日)

地中深くで、そのデーモンは生命の小さな球へとそっと手を伸ばした。彼は少量の土を取り除き、そして小さな、緑色と黄金に輝く花を、掌におさめた。


気をつけろ! 公式ストーリーはたまにこんなふうに年単位の伏線を張ってくるぞ!!


■ キオーラ

 「言わんこっちゃない……」。【公式記事 「コジレック覚醒」】を読んだ感想がそれでした。


潮汐を作るもの、ロートス


 《タッサの二叉槍》を手に入れ、その力を借りて《潮汐を作るもの、ロートス》を呼び出し、意気揚々とウラモグを倒しに向かったキオーラ。神話でウーラを騙すコーシに自身の姿を重ねて……ですが実際にウラモグを目にしたのは初めてだったのでしょうか、更に本物のコジレックまでも出現してロートスは成す術もなく蛸刺にされ……いやまず8マナ払おう。

 そして今回、ゼンディカーを守る側のプレインズウォーカーでありながら「誓い」のメンバーにおらず、アートにも見当たらず、ただ1枚のフレイバーテキストで台詞が確認されたのみでした(《押し潰す触手》キオーラのフレイバーテキストが入る予定だったそうですが)。




《水没した骨塚》フレイバーテキスト

「地上が踏破しつくされても、海の深部には未知の領域がずっと眠り続けているのよ。」
――キオーラ


 これを書いている1月上旬現在、キオーラがどうなったのか公式記事では明かされていません (アートブックには少し書かれていたのですが、まだここでは触れないでおきます) 。プレインズウォーカーの中でもキオーラは登場するだけで場を明るくしてくれるキャラクターなので、このまま終わって欲しくはないんだけどなあ。


■ ニクシリス

 ヒロイックに株を上げたのがギデオンならば、強烈な悪役っぷりで痺れさせてくれたのがニクシリスでしょう。



※画像は【オブ・ニクシリスの報復】より引用させていただきました。



 ニッサに敗れるも実に冷静に状況を分析、海門へと向かった所で《連結面晶体構造》の完成を目撃、これ幸いとそのエネルギーを用いて自身の「プレインズウォーカーの灯」を再点火し、同時に連結構造を破壊してウラモグを解放し、更には地中で眠っていたと思しきコジレックをも覚醒させました。

 ギデオン達がコツコツと積み上げてきた全てを一気にブチ壊してくれましたが、そのあまりの鮮やかさはむしろ読んでいて楽しいくらいだったわ! 主役回【オブ・ニクシリスの報復】では主人公組を次々とあしらい、「元・旧世代」は伊達じゃないと示してくれました。

 にしてもプレインズウォーカーの大幅弱体化イベントである「大修復」を、「多くの世界が庇護者を失ったので征服するチャンス」なんてポジティブに受け取る旧世代は初めて見たよ!同じ黒かつ元・旧世代プレインズウォーカーでもボーラスとリリアナは衰えや老いに対して強迫観念に近いものすら抱いているというのに。





《無情な処罰》フレイバーテキスト

「我は陰惨なこの世界で幾千世代も苦しみ続けてきた。それだけの時間をお前に費やすことはできぬが、劣らない苦しみをお前にも味あわせよう。」
――オブ・ニクシリス


 あとずっと思っていたんですけれど基本的にノリが良くて雄弁よねこの人 (悪魔) 。【主役回】が全部一人称視点だというのもありますが。エルドラージはどうしても感情のない、理解を超えた存在なので、ニクシリスは同じ「敵役」でありながらもどこか好感が持てます。

 ところでニクシリスが最も復讐を求める相手、ナヒリは今回カード化されず、今のところ気配すらありません。やっぱり次なの? イニストラードなの? ソリンさんと何があったの? 興味は尽きない。


■ チャンドラ





 遅ればせながら参戦!思う存分戦える、この生き生きとした表情ったらもう。【第36回】にも書いたように「参加フラグ」があったチャンドラ。これを書いている時点では他のプレインズウォーカー達とまだ合流できていませんが、カードでは既に共闘を繰り広げています。





《食い荒らす炎》フレイバーテキスト

オブ・ニクシリスはすべての可能性を考慮していたが、チャンドラ・ナラーは想定外であった。



《巨人の陥落》フレイバーテキスト

ギデオンが落とし子の血統を食い止めている間に、チャンドラがそれに繋がるエルドラージの巨人を焼いた。


 おお……何ということだ……ギデオンとチャンドラが同じカードに、同じフレイバーテキストにおる……これを感慨深いと言わずして何と言おうか。元々チャンドラの力になるべくゼンディカーへ向かったギデオン、そして2人がついにそのゼンディカーで共に戦っているなんて。

 この記事では何度も書いてきましたが、友好色同士のキャラクターは仲が良く、対抗色同士はそうでない傾向にあります。これは色が性格というよりもその元となる「価値観」を定義しているから、だと思っているのですが。ギデオンとチャンドラ、白と赤、れっきとした対抗色同士。ようやく再会を果たすのであろう2人がどんな関係性を見せてくれるのか、私が一番楽しみですよ!!!



5. 今年もよろしくお願いします


 今回で第40回、連載を開始してから4年半になります。↓の「このシリーズの過去記事」も壮観なボリュームになってきました (それでも広木さんには及びませんが) 。こちらとしても楽しんで書かせていただいております。『ゲートウォッチの誓い』の物語はまだまだ序盤、『イニストラードを覆う影』も待っています。特に旧イニストラードの頃は公式記事で詳しいストーリーが語られていたわけではなく、更に小説も出ていません。あの恐ろしくも魅力的なゴシックホラー世界がきっと毎週私達の手に!やべえ!!

 更に「リマスター」シリーズでウェザーライト・サーガを最後まで語るという目標もできました。毎回そちらに割くわけにもいかないのでどれほど進むかはわかりませんが、変わらず愛されるあの物語を少しでも今に、新世代に伝えていければと思います。

 それではまた次回に。

(終)



この記事内で掲載されたカード



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