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衝撃の6色目、「無色」が実装された革命的新セット『ゲートウォッチの誓い』。今回もこの新環境のリミテッド環境分析を行いたいと思う。
「無色」はもちろんリミテッドにも大きな影響を及ぼしているのだが、そんな新環境のリミテッドの特徴を端的にまとめると、
・無色は3色目
・青の衰退
・白の強化
・膠着狙いの戦略にとっては逆風
・青の衰退
・白の強化
・膠着狙いの戦略にとっては逆風
このようになる。
■ 無色は3色目
まず無色カードについて。リミテッドにおいてはオーバーパワーと判断され、近年姿を見なかった軽量のタッパーなど、単純なスペックとしては優秀なラインナップがそろっている無色カードだが、土地の供給に制限があることから無色が主色や2色目になることは構造上ありえず、全ての無色カードが3色目タッチでしか運用できないという制限はそのカードパワーを加味してもあまりにも大きな足かせとなっている。
具体的な例を挙げると《作り変えるもの》などは本来どの色でも初手級のスペックなはずだが、3色目タッチでしか使えない点を加味して考えると残念ながら二流以下のカードとして評価せざるをえない。逆に《終末を招くもの》など、重くて強いパーツは3色目にタッチしてでも使う価値がある。
■ 青の衰退
次に前環境で最強を誇った青の衰退についてだが、主な要因としては、(1)無色系にパーツの枠を持っていかれたことで有色ビートを組む際にカード供給に不自由さが生じる点、(2)3パック目の「嚥下」と「昇華者」のパーツが1パック分の供給では機能不全を起こす可能性が高く使いにくい点の二つが挙げられる。雑な言い方をすると「青黒無色」以外のコンビネーションでは死にカードが多すぎてピックの柔軟性が低いのだ。
■ 白の強化
では青が最強の座から落ちたところで新たな最強色は何かというと、筆者は白を推したい。現環境の白は歴史的に見ても稀有なレベルでの層の厚さを誇っている。カードリストを見直してほしい。白の最弱のコモンカードのテキストには3マナ1/4「警戒」と記載されている。
つまり白の全てのコモンは (いずれかのアーキタイプにおいて) プレイアブルなカードであり、アンコモンまで見まわしてみてもアンプレイアブルなカードは《イオナの祝福》のみで、ここまで供給が潤沢だと白ができる位置に座った時点でドラフトが半分終わっているといっても大げさではない。
これは土地をピックする余裕を持たせないと無色カードが相手にされなくなるといった理由でプレイアブルなカードが増量されたことと、ストーリー上の都合で白は無色のカードに枠を割かないといった決定がされたことによるものだろう。
■ 膠着狙いの戦略にとっては逆風
最後に膠着狙いの戦略が成立しにくくなった理由としては、単純に「青黒嚥下」と「黒緑トークン」の二つのアーキタイプが退場したためである。基本的に捌くのに注力してフィニッシャーは遅く取れる雑なエルドラージに任せとけばいいといった戦略は、あまりに3パック目に依存するため成立しなくなったということだ。
現環境でビートでない場を作る系統のアーキタイプは、唯一白黒のみである。現環境は青黒も黒緑も前環境の白赤のようなダメージカーブでゲームを進めることを目指すのだ。
では、以上を踏まえて最強のアーキタイプは何かというと、現状では白赤であると結論付けたい。土地をピックしなくて済む有色構成にすることで、その分の余裕をマナカーブデザインに回すことが可能で、そのマナカーブに沿って展開される戦線を「支援」と「怒濤」でバックアップするスタイルは強烈の一言である。
次点では同じく白メインのビートダウンで、除去が少ない代わりに大きく「支援」に先鋭化した「白緑ビートダウン」が有力候補となってくる。
白から入って赤ができない場合、《ニッサの裁き》などのアンコモン以上の強力なカードから白に入って、中盤で《鞍背ラガーク》が回ってきた場合などに有効な選択となる。
今回はこの白系ビートダウンの二つに焦点を当てて解説したい。では、まずは白赤から。
■ 白赤コモン優先順位
1位 《ザダの猛士》
厚く取りたいマナ域であり、「支援」の対象として最適な「先制攻撃」持ちでもあり、膠着した場でも遠距離射撃で残ったライフを詰めることができるというオールラウンドな活躍ぶり。全コモンで優先度トップ。
2位 《オンドゥの戦僧侶》
白の最優先パーツ。このシステムが稼働していると、相手としてはダメージレースという軸で勝負できなくなる。2体並ぶとこの世の終わり。最も輝くのは白黒だが、その他ビートダウンデッキでも十分な勝利貢献度を見せる。
3位 《巨岩投下》
4~5ターン目に戦線を伸ばしつつ相手の4マナ圏などを処理することで、一気に相手と2馬身分の差をつけることができる強力なテンポカード。運用上の注意としては、「怒濤」で打てるように2マナを厚く取ってデッキ全体をまとめることを意識しよう。
4位 《孤立領域》
ザ・万能除去。見たままの強さなのでこのカード自体にコメントすることは特にないのだが、このカードの登場で《フェリダーの仔》の価値が上がったことは意識しよう。
5位 《ゴブリンの自在駆け》
《骨の鋸》からの《ゴブリンの自在駆け》は現環境の2ターン目ベストムーブ。青赤のパーツというイメージが強いカードだが、種族が同盟者でもあり、相方の《骨の鋸》が「支援」の対象として、前環境に比べて評価が上方修正されたフライヤーと相性が良いという点で、白赤でも早めに確保していいカードとして評価する。
6位 《落とし子縛りの魔道士》
従来のタッパーはコントロールでもビートでも変わりなく無類の強さを見せるが、現環境のタッパーは起動コストとしてもう1体クリーチャーをタップする必要があり、裏表で2体タップして強引に戦線をこじ開ける動きの破壊力が大きく落ちるため《ゴブリンの自在駆け》を優先した。
しかし本質的にこの2枚にそれほど大きな差はなく、ドラフト序盤で路線が未確定のうちは主色の方を優先していい。
同率7位 《アクームの炎探し》 《コーの鎌使い》 《コーの空登り》
白赤は3マナ域の層の厚さが尋常ではないので、そこまで必死にならなくても十分な性能のカードで3マナは埋めることができるため、性能的にはもっと優先度を上げて評価して良いであろう3枚をまとめてこの位置で評価。
あえてこの中で優劣をつけるなら、他のカードで替えが利かない点を評価して《アクームの炎探し》を最優先に。マナフラッドが許容されない白赤というアーキタイプにおいて《アクームの炎探し》は必須パーツと言える。
10位 《探検の猛禽》
素晴らしい性能だが白赤の5マナ域は多く見積もっても4枚までであり、それに対して優秀な5マナのカードが多すぎるためこの位置で評価。
11位 《現実の流出》
軽量火力をこの位置で評価することを意外に思われる人もいるかもしれないが、白赤をドラフトする上で一番気を付けなくてはいけないのは、捌くカードに目が行き過ぎて押し込むパーツの層が薄くなることなので注意しよう。
とはいえ、《オンドゥの戦僧侶》が除去できるのは重要。《目潰しドローン》のタフネスが2だったら5位でもよかったのだが……。
12位 《マキンディの飛空士》
「支援」の枚数によって評価が変わる。基本はパワー2以上で揃えたいのでこの位置で評価するが、2マナ域のお約束として中盤以降に2マナが必要枚数に満たない場合は大きく上方修正される。
13位 《溶滓のへリオン》
シングルシンボル、ナイスサイズ、おまけに2点でさらにトランプルと良いことしか書いてないが、それでも優先度的にはこの位置になってしまうのは白赤の層の厚さゆえである。
同率14位 《力強い跳躍》 《戮力協心》
もう何度目になるか分からないが、ここでもう一度こう言わなくてはならない。現環境の白赤の層の厚さは尋常じゃないことになっている。プレイアブルなコンバットトリックが需要を大きく上回って用意されているので、充分に勝利貢献度の高いこれらのカードも優先度としてはこの位置で評価することになってしまう。
また、3パック目の《面晶体の掘削者、ザダ》は前環境に比べて価値が急激に上昇したカードなので注意しよう。さりげなく《戮力協心》がシングルターゲットでも良い点で強力な噛み合いを見せている。
16位 《骨の鋸》
採用する基準として、飛んでいる生物と《ゴブリンの自在駆け》《岩屋の装備役》《武器の教練者》の枚数が合計4枚以上あると望ましい。《ゴブリンの自在駆け》が3枚数以上の場合は2枚目の投入も検討していいが、2枚目を入れるなら《アクームの炎探し》を必ず確保しておきたい。
■ 《ザダの猛士》よりも優先するアンコモン
1位 《救援隊長》
やりたい放題やっているように見えるが4ターン目にキャストすると実質「支援」2であることが多く、見た目ほど凶悪ではないと思わせておいて冷静に考えるとやっぱりやりたい放題やっている。
2位 《怒りの具象化》
初手ならこちらから取っていいが、2パック目で2マナ圏のラインナップに不安がある場合は《ザダの猛士》を優先していい。
■《救援隊長》より優先するレア
・《保護者、リンヴァーラ》
・《ムンダの先兵》
・《炎呼び、チャンドラ》
・《巨人の陥落》
・《ゴブリンの闇住まい》
毎回恒例の1枚で勝てる系のみなさんです。
《ゴブリンの闇住まい》だけはタダツヨというよりは、デッキを適切にカスタマイズして真価が発揮されるタイプのカードなので注意。
戦場に出たときの能力でおかわりするのは単純に考えると除去がベストだが、白赤は優先度を高めて確保する除去が《巨岩投下》《孤立領域》と《ゴブリンの闇住まい》で使いまわせない構成なので、せっかくのボーナスを空振りさせないためには、ドラフト段階で《戮力協心》の優先度を高めてピックするなどのケアが必要だ。
決してこれは妥協ではなく、2ドローしつつ「支援」2×2は、2体除去よりも勝利貢献度が高い場合が多い。
7 《平地》 7 《山》 2 《そびえる尖頂》 1 《砂岩の橋》 -土地(17)- 1 《帆凧の斥候》 3 《ザダの猛士》 1 《オンドゥの戦僧侶》 1 《コーの懲罰者》 1 《影の滑空者》 1 《コーの鎌使い》 1 《アクームの炎探し》 2 《グリフィンの急使》 1 《面晶体の掘削者、ザダ》 1 《落とし子縛りの魔道士》 1 《探検の猛禽》 1 《溶滓のへリオン》 -クリーチャー(15)- |
1 《多勢》 1 《力強い跳躍》 2 《戮力協心》 1 《巨岩投下》 1 《ギデオンの誓い》 1 《停滞の罠》 1 《骨の鋸》 -呪文(8)- |
※前環境から評価が上がったカードとしてはすでに言及した《フェリダーの仔》の他に、「支援」との相性の良さから《帆凧の斥候》をはじめとしたフライヤー全般と《天使の贈り物》が挙げられる。
逆に評価が下がったのは「上陸」生物全般と《ヴァラクートの発動者》だ。《ヴァラクートの発動者》は3マナ域の供給が潤沢な点と、《アクームの炎探し》によって不要な土地のロンダリングができるようになった点が大きい。
■ 白緑コモン優先順位
1位 《オンドゥの戦僧侶》
白緑は競争率の高い白から色を主張して、やらせてもらえる緑に渡るシナリオが多いので、やはり1位は白のトップコモンであるこの1枚。白赤に比べて白緑は除去が薄い分、このカードで相手の飛行分のダメージを相殺して勝つような展開が珍しくない。
2位 《孤立領域》
除去が減ったことから上方修正しようと考える人もいるかもしれないが、2マナ圏も減っているので結局《オンドゥの戦僧侶》を超えることはない。
3位 《鞍背ラガーク》
はっきり言って白緑は白+《鞍背ラガーク》の組み合わせだ。このカードが回ってこないような位置で白緑を始めないように。逆に考えると《鞍背ラガーク》を3手目以降で回してしまうと、下から見ると緑に行けるサインに受け取られかねないので注意されたし。
4位 《マキンディの飛空士》
白赤と比べて大幅ランクアップの1枚。厚く「支援」が取れる白緑ならではの評価。「支援」される前提で考えれば素のパワーが低いというデメリットよりも、飛行であり2マナ域である点の重要さが優る。
5位 《落とし子縛りの魔道士》
同盟者の供給がそこまで安定しない点と、無限回収する《鞍背ラガーク》とマナ域が被っていることから白赤より若干優先度を下げて評価。
6位 《コーの鎌使い》
白赤では《コーの空登り》と同列で評価したが、白緑では《鞍背ラガーク》で強化してすぐに殴れる点で明らかにこちらの優先度が高い。
7位 《コーの空登り》
白赤の場合より起動マナの工面が難しいが、それでも強いことは確か。
8位 《探検の猛禽》
《鞍背ラガーク》からつなげて継続的に相手にプレッシャーを与え続けよう。
9位 《タジュールの道守》
打点充分。《力強い跳躍》の対象としてベスト。
10位 《壌土の幼生》
2マナを埋めつつ、タッチカラーのボムの受け入れを作る渋い1枚。初見ではアンプレイアブル寄りだったが、回数をこなすごとに評価が上がっていった。
11位 《末裔招き》
3マナから5マナに飛ぶ意味が大きい構成のデッキでは同率6位で評価してよいが、「2→3→《鞍背ラガーク》」が白緑の定型の動きなので基本はこの位置で評価。
12位 《網投げ蜘蛛》
黒緑などに多い、重いレアにつなげる構成であれば《末裔招き》よりも優先していいが、典型的な攻めるタイプの白緑であればこの位置で評価する。
13位 《忍び寄りドローン》
白に無色要素がないためパンプ用のマナを用意する必然性が低く、基本はただの熊として評価。《変位エルドラージ》などの無色カードを採用して無色土地の運用が肯定された場合には、マナベースに合わせて上方修正。その他、マナカーブを埋める必要がある場合でも上方修正される。
14位 《力強い跳躍》
最後のひと押しを無理やり押し込むカードとして、コンバットトリックとしてはこのカードを最優先に。
15位 《まばゆい反射》
白緑は言ってみれば育てゲーなので、序盤で他のビートに後れを取るのはしょうがないこととして、その遅れを取り戻す工夫を細かく用意することになるのだが、その役割に最適な1枚がコレ。
16位 《戮力協心》
基本的に「支援」スペルは《鞍背ラガーク》と役割が被るため、除去と奇襲性の高いカードでスペル枠を埋めたいのだが、相手のデッキが強すぎたり、除去が全く取れていないなどで無理やり勝ちに行く必要がある場合には、1マナ域を複数枚取ることで「2→3→《鞍背ラガーク》」ではなく「1→2→支援→《鞍背ラガーク》」の動きを目指すという緊急避難的選択肢がある。その場合の受け入れを考えて《戮力協心》は白緑においても無理のないところで確保していいカードだ。
17位 《イトグモの蔦》
構えやすく充分にプレイアブルなカードではあるのだが、今一つ狙いがボーッとしたカードなので優先度的には下がる。
■ 《オンドゥの戦僧侶》よりも優先するアンコモン
1位 《ニッサの裁き》
白緑の足りない要素と厚くしたい要素がこの1枚に。正に求めていた品質。初見でタップがいらないことに驚いたが、よく見たら「格闘」ですらなくて我が目を疑った。
2位 《草原の滑空獣》
《鞍背ラガーク》で強くした生物が飛ぶ→勝利。
3位 《救援隊長》
さきほどの【白赤の項目】を参照されたし。
■ 《ニッサの裁き》よりも優先するレア
・《保護者、リンヴァーラ》
・《ムンダの先兵》
・《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》
特にコメントする必要はないだろう。
7 《森》 6 《平地》 1 《沼》 1 《進化する未開地》 1 《平穏なる広野》 1 《未知の岸》 -土地(17)- 2 《マキンディの飛空士》 1 《壌土の幼生》 1 《噛み付きナーリッド》 1 《オラン=リーフの発動者》 1 《ベイロスの仔》 2 《コーの鎌使い》 1 《末裔招き》 1 《影の滑空者》 1 《マキンディの巡回兵》 3 《鞍背ラガーク》 2 《探検の猛禽》 1 《タジュールの道守》 1 《ベイロスの虚身》 -クリーチャー(18)- |
1 《力強い跳躍》 1 《異常な攻撃性》 1 《ニッサの裁き》 1 《孤立領域》 1 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 -呪文(5)- |
※3ターン目までに生物を2体以上並べて、《鞍背ラガーク》につなげらるようにマナカーブをデザインしよう。そのためにスペル枠が圧迫されても問題ない。また、白緑は消耗戦を見すえた形、先行押切の形、場を膠着させてレアにつなぐ形など、デッキの勝ちパターンやベストムーブを把握すれば細かく最適化できる柔軟性があるので、手なりで構築しないように注意しよう。
以上、今回は環境をリードする白ビートについて解説した。
次回は「青黒無色」と「白黒同盟者」を中心に、紙面が余れば「青赤怒濤」にも言及できればと思っている。
それではよいリミテッドライフを。
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