アヴァシンはソリンが生み出した。だからこそ、彼女に最期をもたらすというソリンの役目には、想像を超える酷さが、筆舌に尽くせない痛みが、伴っていた。
( ノД`)……
悲愴な物語。もう自称闇の心の持ち主とか茶化せる雰囲気じゃなくなってきた。元々アヴァシンはソリンが創造したものです。人間を保護し、自分たち吸血鬼の「食糧」が減り過ぎないように。このフレイバーからは(そしてライフルーズ効果からは)深い愛着を持つのであろう天使を始末することの彼の苦痛がわかります。どちらの絵も「顔をそむけている」ところが特にね……。
そして「人間を守る」目的で創造したアヴァシンを始末してしまうということは、このまま行くとやがて人間は吸血鬼や狼男に食われて滅び、食糧を失った彼らもいつか……この世界の未来やいかに。
こんにちは若月です。今回は待ちに待った『イニストラードを覆う影』が始まったところで、旧作の「おさらい回」です。ネットでいただきました様々な質問から、多くの人が疑問に思っていることに可能な範囲で回答してみました。
0. 質問タイム
旧『イニストラード』も5年前。当時まだマジックをプレイしていなかった人、背景ストーリーにさほど興味がなかったという人も多いでしょう。それに今でこそ背景ストーリーは「Magic Story」として公式ウェブサイトにて週刊連載されていますが(ちなみに「Uncharted Realms」→「Official Magic Fiction」→「Magic Story」とタイトルが変遷しました)、当時はそのある意味前身の「Savor the Flavor」というむしろ開発話寄りの連載記事であり(こちらもスゲーおもしろいのですが)、あまり物語の詳細は語られていませんでした。再訪にあたってみんなはどんな疑問を持っているのだろう? マローが時々やるのに倣って、というわけではないのですが今年の1月にこんな質問をツイッターに流しました。
【緩募】近いうちにイニストラード復習記事を書きたいと思っているのですが、「〇〇について詳しく知りたい」「旧イニストラードの××はどうなったの」等の疑問点がある方は是非教えて下さい。それについて書けるかどうかはわかりませんが参考にさせて頂きます。
— M. Wakatsuki/aisha (@aishawakatsuki) 2016年1月27日
そうしましたらありがたいことに、とてもたくさんのお返事をいただきました。全てに個別にというわけにはいきませんが、多かった質問の内容を踏まえまして幾つかまとめて解説していこうと思います。
1. イニストラードってどんな所?
イニストラードには5年ぶりの再訪。この連載でも最後にイニストラードをきちんと扱ったのは第10回の「まとめ回」が最後でした。まずはイニストラード世界についてざっと説明しますね。
マジックの様々なセットにはそれぞれのテーマがあり、舞台となる世界の個性が反映されています。「金属世界」ミラディン。「都市世界」ラヴニカ。「ギリシャ神話世界」テーロス。「神話+戦国日本世界」神河。多くが我々の住む次元の何かをモチーフにしています(その方が色々わかりやすいですからね)。そしてイニストラードはしばしば「ゴシックホラー世界」と表現されます。ゴシックホラーとは? 手元の辞書を引きますと、まず「ゴシック」とは「文学作品や映画、ファッションなどで、幻想的・怪奇的・頽廃的な雰囲気をもつもの」。
古城や館、幽霊、月、怪奇現象。読む者の恐怖に訴えかける物語。「吸血鬼ドラキュラ」「フランケンシュタイン」といった作品に代表される古典的ホラーとでも言いましょうか。直接読んだことがなくとも、映画を観たことがなくとも「だいたいこういうもの」とはわかるかと思います。それがモチーフとなっているイニストラードは、そんな吸血鬼や狼男や幽霊といった「古典的ホラーの怪物が人間を脅かす世界」。輝く月を背後に美しくも恐ろしい吸血鬼が人々を値踏みし、狼男は人間性を捨てて遠吠えを上げる。また逆に、いわゆる定番種族であるエルフやゴブリンがいないというのも、マジックの世界としては大きな特徴かと思います。
怪物だけではありません。屍術師、悪魔信者、狂科学者。脅かされている側の人間の中にすら敵は存在します。
人間にとっては敵ばかりの世界。彼らの戦う力が守護天使アヴァシンを頂点とした信仰体系です。天使達に守られ、力を与えられて、人類はかろうじて踏みとどまっているという状況にあります。かろうじて踏みとどまっているんです、設定上は。カードでいくら人間側が強くとも。
その状況が崩れたのが前回のイニストラードでした。
ごく簡単に説明しますと、アヴァシンは大悪魔《グリセルブランド》との決闘の果てに共に《獄庫》へと囚われてしまい、大天使の力を失った人類は多くの怪物に脅かされて存続の危機を迎えます。
逆転劇を起こしたのは何とリリアナでした。遠い昔に契約を交わした悪魔の1体であるグリセルブランドの行方を追う彼女は苦労の末にそれが獄庫の中へ囚われていると知り、《スレイベンの守護者、サリア》を利用して獄庫を破壊させ、それによってアヴァシンは世界へと帰還したのでした。
一方のグリセルブランドはその展開が語られたプレビュー記事、本人のカードが登場した次の段落で殺されてしまいました。これは今でも類稀なる「出落ち」として語り継がれています。そのあたりの詳細は第10回を読んでいただければと思います。
加えて説明しますと、旧イニストラードブロックのそういった物語は「一つの大陸内」での出来事でした。大陸の名称こそ不明ですが、その中の四つの州名は我々もよく知る土地カードに登場していました。
ガヴォニーは人類文明と信仰の中心、ケッシグは森林地帯で狼男の本場。ネファリアは港町が並ぶ沿岸地域、ステンシアは吸血鬼が本拠地とする危険な山岳地帯です。
ところでこの「ゴシックホラー」というジャンルが成立したのは産業革命前後のヨーロッパ。文明や科学がそれなりに発展したからこそ、それで説明できないものは恐ろしく、それでいて心惹かれるということなのでしょう。特にヴィクトリア朝時代のイギリスでは、こういった怪奇小説は堅苦しく息苦しい現実から逃れる絶好の息抜きだったのだとか。そんな時代背景に誕生したジャンルということもあってか、それをモチーフとしたイニストラードもそれなりに文明が進んだ世界という気配があります。中でもよくわかるのが人々の衣装。
分厚い布地の質感、ボタンや鋲で留められたジャケット、洒落た革のベルトやこだわりを感じる帽子。「そこに住む人々の衣装」は世界のイメージを強固に決定するものの一つです。イニストラードのビジュアルデザインはその衣装にかなりこだわっていまして、イメージは「1790年代から1800年代の西ヨーロッパ的な雰囲気」。中世というよりはむしろ近世ですね。公式ウェブサイトで不定期連載されている「ハンウィアー・クロニクル」や旧イニストラード時にあった同様の企画「The Cursed Blade」から、新聞や印刷技術が存在することもわかっています。
なんか火炎放射器とか二足歩行ロボとかもありますけど……まあこれはマッドサイエンティストの作品ってことでイニストラードの文明レベルそのものと厳密な合致はしないと思う。
また、何気にポイントなのが「寒い世界」ということです。イニストラードの季節は「新月(春。最も短い)」「収穫月(秋)」「狩人月(冬。最も長い)」の3つで、夏がありません。カードイラストに描かれている人々を見ますとそのほとんどが割と分厚く、かつお洒落に着込んでいます。プレインズウォーカーも同様、いつも同じ衣装の彼らまでもこの通りに。
基本半裸のガラクがこの世界では服を着て、いつもしっかり着込んでいるジェイスが更にコートを羽織るくらい寒いのだとわかります。しかしジェイス、イニストラードにやって来てすぐに買ったようだけどその着こなしはもうちょっと何とかならなかったのだろうか……いつもの青いフードの上に更に重ね着って。リリアナにも「素敵なコートね」なんて煽られてたじゃないの。
2. 旧作から『覆う影』までの間には何があったの?
前述の通り、「獄庫が破壊されてアヴァシンが世界に帰還しました、めでたしめでたし」だったのが旧『イニストラード』ブロックのラストでした。それ以降も公式記事や基本セット・特殊セットのカードとして時折イニストラードには「回帰」していまして、主にガラク周りで動きがありました。これは第26回に詳しく書きましたが、もう一度ざっと。
今回新カードでめでたく生存確認された素敵な老紳士オドリック、初登場は旧『イニストラード』ブロックではなく『基本セット2013』でした。アヴァシンが帰還したイニストラード世界。オドリックはある時教会からの指令を受け、副官グレーテと共に奇妙な狼男の討伐に向かいます(ところで《浄化の天使、アヴァシン》のフレイバーテキストに「背教聖戦士、グレーテ」とあるのですが、このグレーテさん?)。目撃情報を集めて待ち伏せをし、投網でその狼男を捕えます。それはとてつもない大男、ですが少なくとも人間でした。
ガラクの身長は249cm。確かに狼男と見紛う巨漢です。リリアナの《鎖のヴェール》からの呪いを受けて弱っていたガラクでしたが、アヴァシンが世界に放った力によって多少ながら癒され、そのままイニストラードを彷徨っていたようです。オドリックらはガラクを拘束し、その処遇はアヴァシンに委ねるとして首都スレイベンへと向かったのでした。
……という話だったのですが、『基本セット2015』では少々異なる展開になっていました。一度は呪いが弱まったガラクでしたが、リリアナへの復讐心を燃やし続けた果てに、再びその呪いに身も心も蝕まれて多元宇宙最強の生物=プレインズウォーカーを狩る怪物と化してしまいました。
『マジック2015 ― デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』(以下:『DotP2015』)の物語ではそんなガラクを止めるために「私達」を含めた多くのプレインズウォーカーが奔走します。そのうち1人がイニストラード出身のヴロノス/Vronosというキャラクター。カード化はされていないながら『DotP2015』のデモムービーで登場しています。彼は元々《精鋭の審問官》でしたが狼男との絶望的な戦いの中でプレインズウォーカーとして覚醒し、アヴァシンの命を受けてガラク討伐に向かいましたが……(《頂点捕食者、ガラク》の「+1」能力)繰り返しますが、このあたりの詳しい話は第26回を参照していただければと思います。
……と、そんな出来事こそありましたが大まかには「アヴァシンが帰還し、人間が勢力を盛り返し始めたところ」くらいの認識で問題ないと思います。ちなみに『アヴァシンの帰還』から『イニストラードを覆う影』までの時間経過は「1年弱」だそうです。
3. 旧作のキャラクターはどうなったの?
人気キャラクターがたくさん登場していた旧『イニストラード』ブロック。お気に入りキャラの再登場を待ちわびている/いた人も多いかと思います。ここでは今回本人のカードが登場しなかったキャラクターについて探りました。
■ ギサとゲラルフ
旧『イニストラード』ブロックで仲良く喧嘩を繰り広げていたゾンビ使い姉弟、ギサとゲラルフ。この2人はおもしろい経歴の持ち主です。当初はカード名やフレイバーテキストにちょこっと出てくるだけのキャラクターだったそうですが、公式記事で人気が出ました。ですが旧『イニストラード』ブロックでは間に合わなかったそうで、マローも「2人をカード化すべきだと予測できればよかったのだが」と言っていました。
その後『統率者2014』にてめでたくカード化されました。色こそ違えど、ともに5マナ3/4というあたり双子ですね。ゲラルフの隣で器具台を持っているのはホムンクルスの助手オグロールくんと思われます。
前述のように、旧『イニストラード』ブロックのカードが作られていた段階ではこの2人の人気が予測できなかったらしく、『アヴァシンの帰還』で物語が完結した際も二人の行方はよくわかっていませんでした。ギサはいくつかのフレイバーテキストからは逮捕されてしまったとわかりましたが、ゲラルフはその名前すら見当たりませんでした。
そして時は流れて今回、どうやら2人は相変わらずやっているらしいことが明らかになりまして、自身の作品と一緒に姿を見せてくれています。《ギサの召集》を見るにギサは脱獄したのでしょうか。
またゲラルフは『イニストラードを覆う影』プレビューの一環として実にきもちわる……彼らしい形で新カードのヒントを寄越してくれました。元々良家の子息だけあってか、けっこうきれいな字を書きますね。
(ホームズ格内)ははは、謎の前に英語がわからないでは話にならないからね。ここに日本語へ翻訳した手紙も用意した。さぁ、さっそく謎解きといこうじゃないか! #MTGSOI #SOIKickoff pic.twitter.com/sfacblt98B
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) 2016年3月4日
「本人たちのカードこそないけれど相変わらずやっている」、これはある意味一番安心できる現状だと思います。
■ サリア
モダンとレガシーで今も大活躍のサリア。WMCQプロモにもなりました。カードは強くてアートは美しい、そんなキャラクターの人気が出ないはずがありません。
一度はハッピーエンドで終わった物語に回帰する、それも「影に覆われて」。過去『ミラディンの傷跡』ブロックがあの通りだっただけに、今回は旧作キャラの生死や現状をいつになく多くの人が気にしていました。そして……
みんな喜べー! 生きてたぞー!! でも冷静に考えて旧キャラが「生きてた」って喜ばないといけない世界ってどんだけ怖いの。ある意味ウラモグに蹂躙されまくっていたゼンディカーよりも怖い気がしたよ!!
堕落した月皇評議会に対抗する気のある聖戦士を集めるため、サリアは聖トラフト騎士団を結成した。
「聖トラフト騎士団」とは。今回その詳細はまだ判明していませんので続報待ちですね。
それとこれは私個人の予想というかただの願望なのですが、メインストーリーをウェブサイトで扱うようになり、各国語翻訳もして誰でも手軽に読めるようになったからには、昔のようにキャラクターが唐突に理不尽に死ぬというのは減るのではないでしょうか……減るといいよね。
■ タミヨウ
> 突然の神河 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
旧『イニストラード』ブロックでは物語には特に関わらなかったタミヨウ。神河の空民、「ムーンフォーク」である彼女はイニストラードの美しい銀の月に惹かれてその研究をしていました。物語に関わらずとも「観光客」的に他の次元出身者が登場することもある、という大きな前例になってくれたのだと思います。
ですが今回は物語にしっかり関わってくるようで、ジェイスはマルコフ荘園にて(タミヨウの共同研究者が持っていたらしい)彼女の日誌を拾い、そこから「天使が狂ってしまった」という重要な情報を得ます。
ホラー作品で「手記を残している」人物というのは大抵すでに死んでいるのですが、《アヴァシンの裁き》では落下しそうになるジェイスへと手を伸ばす白い後ろ姿が。そしてカードでは見切れているものの《苦渋の破棄》の場面にはタミヨウ(とジェイス)がいることがゲームデーのプレイマット画像から判明しています。
これを見るにどうやらタミヨウは生きており、日誌を手にしたジェイスと合流できるようですね。アヴァシンにソリン、ジェイスにタミヨウ。主要キャラクターが集まるこの場面は《連結面晶体構造》や《コジレックの帰還》並みの重要シーンのように思えます。でも青同士のジェイスとタミヨウ、これはリリアナが嫉妬するぞ?
■ おまけ:ティボルト
イニストラードの再訪が発表されてからというもの、多くのプレイヤーが「ティボルトは再登場するのか」と気にしていました。この記事のために質問を募集したところ、トップバッターでいただいた質問もティボルトに関するものでした。
@aishawakatsuki 旧イニストラードのティボルトは結局どうなったのか気になります!デュエルデッキソリンVSティボルトとかあったと思うんですが、そのあたりのストーリー全然知らなくて・・・
— とらうお (@torauoo) 2016年1月27日
松本友樹さん!
ティボルトの最新情報は2015年8月の公式記事、そこでは「所在は知れない」とのことでした。少なくとも死んではいなさそうでしたが、『イニストラードを覆う影』のカードにはティボルトの影すらありません。本人のカードなし! イラストにもなし! フレイバーテキストにもなし! 赤入りプレインズウォーカーがアーリンとナヒリですでに2枚! はたしてこの先彼の再登場はあるのでしょうか。私も知らないんだ。
4. 種族のあれやこれや
質問を募集したところ、種族に関するものをたくさんいただきました。特に多かったのが狼男、吸血鬼、そしてデーモン。いくつかまとめて書きましょう。
■ 狼男
今回も盛りだくさん両面カード。特に狼男関係は「両面でオチがついている」ものが多くてクスっときますね。中でも私が好きなのはこれ。
狼姿で木を伐り、人間姿で納品する。便利。
『アヴァシンの帰還』にてアヴァシンの力で狼男の呪いは変質し、ある者は癒え、ある者はウルフィーとなって天使に仕えるようになりました。なので狼男は残っていなかったのでは? という疑問がありました。これについては当時の記事を参照してみましょう。
(掲載:2012年4月18日)
イニストラードに狼男が未だ生息しているかどうかは定かではないが、恐らくは幾らか、もしかしたら多くが殺戮者による駆除から逃れ、アヴァシンによるウルフィーへの超自然的な変身を拒否したかもしれない。
というように一応、旧イニストラードでも「まだ狼男は残っているかもしれない」という書き方がされていました。元々、狼男の中には変身に抗うのではなく積極的に獣性へと身を任せる者もいたので、彼らは変質を拒否したのかもしれませんね。
イニストラードで人が狼男と化す原因は完全に解明されたわけではありません。狼男への変化は世界に存在する呪いの一種であるとも言われ、狼男が繁殖して増えるというよりはあるとき突然人から狼男になるようです。アヴァシンの祝福によって狼男はウルフィーへと変化しましたが、その後で人から狼男と化した者もいるのだと思います。狼男の本場ケッシグでは、あるとき「群れ」の復活が確認されました。
(掲載:2016年3月2日)
そして近頃どのような獣が、その森の中で決定的な復活を遂げたかを。この二週間にアレイナとハルはそれぞれ三体の獣人を倒し、加えてつい昨晩、共に一つの群れを退治した――小さい、だが確かに群れだった。
そして忘れてはいけない新キャラクター、アーリン・コード。「狼男(女)のプレインズウォーカー」として、そしてカードが出てからは「強そう」と大いに話題になっていますね。
髪の毛の房が尻尾をイメージさせるお洒落さん。両面を自在に行ったり来たりできるのは「自分の意思で変身をコントロールできる」彼女のフレイバーの再現なのでしょう。普通の狼男にそれは不可能です。プレインズウォーカーとしての素質がそうさせるのか否か、それは今のところわかりません。プレインズウォーカーとしては久しぶりの新キャラ、これからの活躍が楽しみです。
ああそれと小室さん、人間から狼男に変身すると服は破けます。そのへんはリアルです。
■ 吸血鬼
アヴァシンの帰還によって吸血鬼は一転劣勢に立たされ、彼らの領地内へと引っ込みました。これはイニストラードの歴史上でも数度しかなかった事らしく。ですが強大で長命、豪奢な生活をする吸血鬼という存在を怖れながら憧れを抱く人間は少なくはありません。
とはいえ選択権を持つのは吸血鬼の方で、彼らは自分たちの同胞となるに相応しいと認めた者だけを吸血鬼化させます。もしかしたら《マウアー地所の双子》なんかはその可愛らしさから吸血鬼として選ばれたのでしょうかね。ちなみにイニストラードで人が吸血鬼になるためにはそんなにかんたんにはいかず、血を吸われるだけでなく「その吸血鬼の血を犠牲者に導入すること」を始めとした結構長い手順が必要になります。
イニストラードの吸血鬼には代表的な血統が4つ存在します。マルコフ家、ヴォルダーレン家、ファルケンラス家、流城家。
カードに登場しているものは4血統ですが、かつては12ありました。うち5つはマイナーながら細々と存続しており、3つは断絶したのだそうです。公式記事「マルコフ荘園の謎」でマルコフ家の廃墟を訪れたジェイスは、ソリンの祖父エドガーらが天使の血を飲んで吸血鬼となる古の儀式を垣間見ましたが、そこにいたのは「12人」。もしかしたら彼らがその始祖たちなのでしょうか。
マルコフ荘園の壊滅という知らせが伝わったのか否か、吸血鬼たちの間にも不穏な動きが見え始めています。主にヴォルダーレン一族に。
「戦争に向かう」という今回のオリヴィアの二つ名、前回の優美な姿から一転して好戦的な姿。吸血鬼の女王といえば少し前に《マラキールの解放者、ドラーナ》のとても格好良い姿を見たばかりです。新しいオリヴィアはどんな活躍を見せてくれるのでしょうね。
■ デーモン
マジックの多くの種族の例に漏れず、デーモンの性質もその次元によって異なります。イニストラードのデーモンは純粋な黒マナの顕現であり、「闇の勢力が衰退すると、その隙間を埋めるようにデーモンが出現する」とされています。つまりはイニストラードという次元の仕組み自体がそうなっているんでしょうね。
イニストラードのデーモンといえば、我々にとってはフォーマットを超えて大活躍する《グリセルブランド》以上の存在は今のところないと思います。物語では上にも書いたように「出落ち」として有名ですが、一方でこんなエピソードもあります。
(掲載:2012年1月18日)
デーモンのグリセルブランド、彼の種の中で最も強大かつ捕えられたことのない1体が、前代未聞な程に図々しくも異様な行動に出たのは、ほんの少し昔のことだった。彼は満月の夜、獄庫そのものの上に立ち、アヴァシンへと戦いを挑んだ。
想像してみて下さい。獄庫の上、満月を背に堂々と立つグリセルブランドを。この記事が掲載された当時、まだグリセルブランド本人の外見がどのようなものかは明かされていなかったにも関わらず、多くの人がそのあまりの格好良さに痺れていました。
そしてグリセルブランドが死んでから物語中で一年弱、まさにその隙間を埋めるように……なのかどうかはともかく期待の新顔伝説デーモン来たじゃないですか。