情報を制す者はマジックを制す。
特にSNSによる情報交換が盛んな現代、口コミがその後のメタゲームに与える影響は計り知れない。
すなわち、バズってる(話題になっている)カードを知ることは、メタゲームの把握と予測の大いなる助けとなることだろう。
当企画では、そんな「今、バズってるカード」を週刊で追っていきたいと思う。
カードの紹介に入る前に、先週行われたイベントやマジック関連の主な出来事を簡単におさらいしよう。
【『異界月』全カードリストが発表される】
7月8日(金)深夜、『異界月』の全収録カードリストが公開された。
非常に強力なカードが数多く収録されている『異界月』。スタンダード環境はもちろん、モダンやレガシーで活躍し得るスペックを持ったカードもありそうだ。
晴れる屋では7月の17・18日(土・日)に【プレリリース】を開催する。いち早くカードに触れたい! という方は、ぜひご参加を!
【ワールド・マジック・カップ2016東京予選】
先週末には【ワールド・マジック・カップ2016東京予選】(以下:WMCQ2016東京)が開催された。
333名もの参加者が集まり、スイスラウンド9回戦という長い戦いの中で強豪たちが激しく火花を散らし、勝ち残った精鋭8名による最高峰の激戦を越え、見事に2人目の日本代表の座をもぎ取ったのは竹下 徹(長野)!
【大会情報】多種多様なデッキが活躍するモダン環境、強豪が集う激戦を《風景の変容》デッキで制し、『ワールド・マジック・カップ2016 東京予選』優勝、そして見事2人目の日本代表となったのは、竹下 徹選手!おめでとう!#WMCQ pic.twitter.com/2JDFNQBgjA
— 晴れる屋 (@hareruya_mtg) 2016年7月10日
激戦の様子を収めた対戦動画の数々は必見! 決勝トーナメントの対戦カバレージや優勝者インタビューなどもアップロードされる予定である。ぜひご覧あれ!
主要な出来事はこのくらいだろうか。
さて、それでは今大きな話題を呼んでいるカードたちを紹介しよう。
1. 《風景の変容》
【ワールド・マジック・カップ2016 東京予選】を制したのは、《風景の変容》デッキを使用した竹下 徹選手だった。
《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が禁止解除されるまでは見向きもされなかったカードだが、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の解禁、そして《風景の変容》へとアクセスできる《白日の下に》が登場したことで、非常に安定したコンボデッキとして一定の評価を集めている。
《風景の変容》はたった1枚でゲームを決定付けられるほどのカードパワーを秘めているものの、土地が7枚並ぶまでは無駄カードでしかなく、手札にかさばってしまった際にキャストするまで耐えられないことが懸念材料のひとつだった。
その点《白日の下に》さえあれば、《風景の変容》の枚数を抑えることができるし、その場その場に応じて必要なカードを探してくることもできる。
ここまでは一般的な《風景の変容》デッキと大きな差異はないが、竹下選手ならではの味付けはメインボードの《仕組まれた爆薬》、そしてサイドボードの《虚空の杯》だ。
《仕組まれた爆薬》はZooのような攻撃的なデッキや、《氷の中の存在》、《紅蓮術士の昇天》に対して明確な回答となり、《虚空の杯》はこちらよりも速いコンボデッキや、1~2マナが集中したデッキに劇的に突き刺さる。
苦手をなくす構築。言うは易く行うは難しとは良く言ったものだが、竹下選手はこれをしっかりと実現し、見事に日本代表の権利を獲得した。
竹下選手の構築は【プロプレイヤーにも称賛】されており、竹下選手の、そして日本代表チームのワールド・マジック・カップ2016本戦での活躍にも期待が高まる。
2. 《紅蓮術士の昇天》
【第7期モダン神挑戦者決定戦】、【WMCQ2016東京】の2大モダンイベントにおいて、トップ8に計3名を送り込んだデッキがある。
それが「青赤《紅蓮術士の昇天》」だ。
3 《島》 1 《山》 2 《聖なる鋳造所》 1 《神聖なる泉》 1 《蒸気孔》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 1 《汚染された三角州》 1 《硫黄の滝》 -土地 (18)- 4 《氷の中の存在》 -クリーチャー (4)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《稲妻》 4 《血清の幻視》 4 《思考掃き》 4 《彼方の映像》 3 《信仰無き物あさり》 4 《稲妻のらせん》 4 《魔力変》 3 《差し戻し》 4 《紅蓮術士の昇天》 -呪文 (38)- |
3 《疲弊の休息》 3 《血染めの月》 2 《払拭》 2 《流刑への道》 2 《石のような静寂》 1 《白鳥の歌》 1 《摩耗+損耗》 1 《仕組まれた爆薬》 -サイドボード (15)- |
《紅蓮術士の昇天》の「昇天」が達成されればフィーバータイム突入だ。《魔力変》なら2マナ加速しつつ2ドロー、《血清の幻視》なら占術2を挟みつつ再度のドローが可能といった具合に、効果が2倍になることで得られる恩恵は計り知れない。
《紅蓮術士の昇天》の特性上、デッキの大半が4枚づつ搭載されたインスタントとソーサリーで構成される。また、探索(quest)達成を早期に目指すため、《思考掃き》や《信仰無き物あさり》といった墓地にカードを落とす軽量ドローが採られているのも特徴だ。
勝ち筋は計8枚の《稲妻》《稲妻のらせん》。フェッチランド+ショックランドが頻繁に使用されるモダンではライフが18を下回ることは珍しくなく、昇天達成後にこれらの火力呪文を3枚引けば決着がつく。
追加の勝ち筋として『イニストラードを覆う影』で登場した《氷の中の存在》についても触れておこう。インスタントかソーサリーの4回使用が「変身」の条件となるこのホラー・クリーチャーは、その性質から「青赤《紅蓮術士の昇天》」と抜群の相性を誇り、3ターン目に「変身」することもザラにあるという。
設置直後は《氷の中の存在》の0/4というサイズが相手の攻勢を和らげ、ひとたび《目覚めた恐怖》に「変身」したならば、盤面をリセットしつつ一撃7点を見舞うハードパンチャーへと変貌する。《紅蓮術士の昇天》に並ぶ、重要なフィニッシャーである。
この「青赤《紅蓮術士の昇天》」をデザインしたのは【The Finals 2011】王者・岡田 尚也。岡田はモダンフォーマットにおいてひたすらに「青赤《紅蓮術士の昇天》」を【使い込んでいる】。
その莫大な経験から裏打ちされた75枚で岡田自身も【第7期モダン神挑戦者決定戦】のトップ8に進出しており、【WMCQ2016東京】では75枚完コピの浅原 晃と、岡田とほぼ同じ構成のデッキを使用していた原根 健太の両名をトップ8に送り込んでいる。
軽量呪文の連打によって莫大なアドバンテージを得る爽快感は病みつきになること請け合いだ。
3. 《鎖鳴らし》
【『異界月』の全カードリスト】が発表されたことでにわかに人気を集めているカードがあることをご存じだろうか。
《鎖鳴らし》。これまでも青白や青赤の飛行ビートダウンなどで「2/1瞬速・飛行持ち」クリーチャーとして活躍が見られていたが、『異界月』が発売された後には、このカードの隠された2つの能力が脚光を浴びることとなりそうだ。
「鎖鳴らしが戦場に出たとき、スピリット(Spirit)1体を対象とする。ターン終了時まで、それは呪禁を得る。」……対象のスピリットに呪禁を持たせるこの能力は、『異界月』の新カード、《呪文捕らえ/Spell Queller》と組み合わせると、クリティカルな呪文を追放した《呪文捕らえ/Spell Queller》を守ることで莫大なテンポを獲得できるため、より強力だ。
また、「あなたはスピリット呪文を、それが瞬速を持っているかのように唱えてもよい。」という能力は、『異界月』の新カード《霊廟の放浪者/Mausoleum Wanderer》との相性が極めて良い。対戦相手がフルタップで《集合した中隊》を唱えたところで、《鎖鳴らし》の能力で瞬速を持たせた《霊廟の放浪者/Mausoleum Wanderer》を差し出してやれば、これまたすさまじいテンポアドバンテージとなる。
『異界月』は他にも青と白の強力そうなカードが多数存在しており、これらのカードを搭載した「青白スピリット」は、新環境において要注目のアーキタイプと言える。
そのキーカードになりそうな《鎖鳴らし》は、今のうちに手に入れておいた方が良いかもしれない。
8 《島》 8 《平地》 4 《港町》 4 《大草原の川》 -土地 (24)- 4 《霊廟の放浪者/Mausoleum Wanderer》 3 《倒し霊》 4 《鎖鳴らし》 4 《無私の霊魂/Selfless Spirit》 4 《呪文捕らえ/Spell Queller》 3 《往時の主教》 3 《霜のニブリス/Niblis of Frost》 2 《大天使アヴァシン》 -クリーチャー (27)- |
3 《意思の激突》 4 《非実体化/Unsubstantiate》 2 《オジュタイの命令》 -呪文 (9)- |
いかがだっただろうか?
今週もまた多くのカードがプレイされ、注目され、議論を呼ぶのだろう。
次回の記事も楽しみにしていただけたら幸いである。
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