MTG Just Now! vol.55 -呪文捕らえ etc.-

晴れる屋メディアチーム



 情報を制す者はマジックを制す。

 特にSNSによる情報交換が盛んな現代、口コミがその後のメタゲームに与える影響は計り知れない。

 すなわち、バズってる(話題になっている)カードを知ることは、メタゲームの把握と予測の大いなる助けとなることだろう。

 当企画では、そんな「今、バズってるカード」を週刊で追っていきたいと思う。


 カードの紹介に入る前に、先週行われたイベントやマジック関連の主な出来事を簡単におさらいしよう。



【『異界月』がリリースされる】

 先週末には『イニストラードを覆う影』ブロックの第2エキスパンションである『異界月』がリリースされた。

 《約束された終末、エムラクール》《異端聖戦士、サリア》《最後の望み、リリアナ》といったストーリーでも重要な役割を担うカードはもちろん、《呪文捕らえ》《無私の霊魂》といった優良クリーチャーも数多く収録されている。


約束された終末、エムラクール異端聖戦士、サリア最後の望み、リリアナ


 晴れる屋でも【パック・BOXやシングルカード】を販売しているので、気になるカードがあるという方はぜひチェックしていただきたい。



【SCG Open Columbusが開催される】

 先週末には『異界月』リリース以降初となる大型イベント、【SCG Open Columbus】が開催された。

 500名にも及ぶ参加者が集う中、『異界月』の新カードで大幅に強化されたバントカンパニーを操り見事に優勝を果たしたのは【SCGレガシーの強豪】であるDevin Koepke!



※画像は【StarCityGames.com】より引用させていただきました。


 【メタゲーム・ブレイクダウン】では2日目に進出した120名のうち34名がバントカンパニーを選択しており、そのうちの22名はトップ64に入っていた。

 バントカンパニーはこれからしばらく最大勢力の仮想敵として環境に君臨することになりそうだ。さっそくHareruya Pros・高橋 優太が【SCG Openで結果を残した新バントカンパニーについて考察】している。ぜひご一読を。



 主要な出来事はこのくらいだろうか。

 さて、それでは今大きな話題を呼んでいるカードたちを紹介しよう。



1. 《呪文捕らえ》

 『異界月』リリース直後の【SCG Open Columbus】を制したのは前環境からのトップメタデッキの一角であるバントカンパニーだった。


呪文捕らえ


 これまでにも数々の活躍を見せていたこのアーキタイプをさらに一層高みへと押し上げた存在、それが《呪文捕らえ》だ。



Devin Koepke「バントカンパニー」
SCG Standard Open(1位)

5 《平地》
3 《森》
1 《島》
4 《大草原の川》
3 《梢の眺望》
4 《進化する未開地》
3 《ヤヴィマヤの沿岸》
2 《伐採地の滝》

-土地 (25)-

4 《無私の霊魂》
4 《森の代言者》
4 《反射魔道士》
4 《呪文捕らえ》
3 《薄暮見の徴募兵》
3 《異端聖戦士、サリア》
3 《不屈の追跡者》
2 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー (27)-
4 《ドロモカの命令》
4 《集合した中隊》

-呪文 (8)-
3 《ラムホルトの平和主義者》
2 《巨森の予見者、ニッサ》
2 《石の宣告》
2 《否認》
2 《オジュタイの命令》
2 《悲劇的な傲慢》
1 《不屈の追跡者》
1 《次元の激高》

-サイドボード (15)-
hareruya



 元々バントカンパニーはインスタントタイミングでプレイできるカードが多いデッキであり、非常に対戦難易度の高いアーキタイプだったが、《呪文捕らえ》の加入によって3ターン目以降はほぼ毎ターンマナを構えつつクリーチャーを展開していくといったプレイが可能となっている。


反射魔道士無私の霊魂異端聖戦士、サリア


 盤面の脅威には《反射魔道士》が、除去には《無私の霊魂》が、そして展開力で勝る相手やミラーマッチには《異端聖戦士、サリア》が、そして4マナ以下のあらゆる呪文に対しては《呪文捕らえ》が対応してくれる。

 これらのユーティリティ・クリーチャーは全て3マナ以下であり、《集合した中隊》から出すことができるのだから、恐ろしいほど隙がないデッキだ。

 特に《呪文捕らえ》《無私の霊魂》《鎖鳴らし》とともに新アーキタイプである「青白スピリット」(タッチ緑含む)でも使用されており、同大会の上位64名中10名、全体の約15.6%が選択しているという占有率の高さを見せた。


無私の霊魂鎖鳴らし


 上でも挙げたが、Hareruya Pros・高橋 優太がブログで【このデッキについての所感】を述べている。本記事と合わせてご覧いただきたい。



2. 《異端聖戦士、サリア》

 『イニストラードを覆う影』ブロックの舞台が発表されたときに生死が話題となった彼女は生きていた! 美麗なイラストと強烈なジャマー能力により人気者だった《スレイベンの守護者、サリア》は、すべてのMTGプレイヤーにとってのアイドルだ。


スレイベンの守護者、サリア異端聖戦士、サリア


 「以前ほど強くなくてもいい。生きていただけでよかった」

 そんな生存を喜ぶ声が聞こえる中に姿を見せた彼女は、以前と変わらない美しさと、遜色なくぶっとんだジャマー能力をもっていた。

 さきに紹介した【SCG Open Columbus】で優勝したDevin Koepkeのバントカンパニーにもがっつりと3枚も採用されている。《反射魔道士》《不屈の追跡者》《呪文捕らえ》と強力なカードがひしめく3マナ域に食い込む《異端聖戦士、サリア》の強さは、疑似《宿命》能力が生み出すテンポアドバンテージにある。

 対戦相手の《集合した中隊》から出てくるクリーチャーや《大天使アヴァシン》はタップインするため戦闘に参加できず、そもそも4マナや5マナといったマナの供給すら“特殊地形縛り”によって許さないのだ。除去には弱いが、単純にパーマネントを並べあう勝負においては《異端聖戦士、サリア》の右に出るものはいない。


進化する未開地集合した中隊大天使アヴァシン


 「昂揚」が注目されたことでさらなる人気を集めている《進化する未開地》《異端聖戦士、サリア》の格好の餌食だ。ただでさえタップインのもどかしさを感じるカードにも関わらず、《異端聖戦士、サリア》の環境下では「ダブルタップインフェッチ」なんていう産業廃棄物と化す。

 バントカンパニーのようなパーマネント主体のデッキには滅法強い彼女。【SCG Open Columbus】のバントカンパニーばかりの結果を見るに、彼女の背には追い風が吹いている。



3. 《最後の望み、リリアナ》

 前環境の勢いをそのままに《呪文捕らえ》《異端聖戦士、サリア》が加わったバントカンパニーが活躍を続けているようだが、『異界月』で強化されたデッキはバントカンパニーだけではない。【SCG Open Columbus】で2位に入賞したスゥルタイコントロールがその筆頭だ。



Ali Aintrazi「スゥルタイコントロール」
SCG Open Columbus(2位)

4 《沼》
3 《森》
2 《島》
4 《窪み渓谷》
4 《進化する未開地》
4 《風切る泥沼》
3 《詰まった河口》
2 《伐採地の滝》

-土地(26)-

4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《森の代言者》
2 《棲み家の防御者》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《龍王シルムガル》
1 《約束された終末、エムラクール》

-クリーチャー(14)-
2 《ウルヴェンワルド横断》
1 《闇の掌握》
1 《究極の価格》
2 《破滅の道》
1 《殺害》
4 《衰滅》
1 《研究室の捜索》
2 《ジェイスの誓い》
1 《リリアナの誓い》
4 《面晶体の記録庫》
2 《面晶体の記録庫》
2 《最後の望み、リリアナ》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-呪文(20)-
3 《即時却下》
2 《ラムホルトの平和主義者》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
2 《知恵の拝借》
2 《死の重み》
1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
1 《龍王シルムガル》
1 《苦い真理》
1 《最後の望み、リリアナ》

-サイドボード(15)-
hareruya



※(2016年7月27日追記):こちらのデッキリストですが、メインボードの《面晶体の記録庫》の枚数は正しくは2枚でした。このたびは誤った情報を掲載してしまい皆様にご不便をおかけしてしまったことを深くお詫び申し上げます。

 名手Ali Aintraziが作成した新世代のスゥルタイコントロールは「昂揚」を中心にしたものだ。《墓後家蜘蛛、イシュカナ》《約束された終末、エムラクール》といった派手なフィニッシャーが目立つなか、そこで確かな存在感を放っているのが《最後の望み、リリアナ》である。


最後の望み、リリアナ


 「+1」能力で戦場をコントロールし、「-2」能力で1枚挿しのクリーチャーたちを再利用する。そして、たとえ墓地に落ちても「昂揚」の達成に貢献するという八面六臂の活躍を見せるのだ。

 3マナのプレインズウォーカーが強力であることは、《ジェイス・ベレレン》《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》《ヴェールのリリアナ》が歴史の中で証明してきた。なかでも自衛能力を持つものは強力で、その系譜を継ぐ《最後の望み、リリアナ》エリート街道まっしぐらのカードである。


ジェイス・ベレレンゼンディカーの代弁者、ニッサヴェールのリリアナ


 2ターン目の《ヴリンの神童、ジェイス》。3ターン目の《最後の望み、リリアナ》。4ターン目の《衰滅》。こんな青黒ベースのコントロールはこれからも多く見られることだろう。

 カードパワー、シナジー。その両方を兼ね備えた新世代のプレインズウォーカーから目が離せない。






 いかがだっただろうか?

 今週もまた多くのカードがプレイされ、注目され、議論を呼ぶのだろう。

 次回の記事も楽しみにしていただけたら幸いである。



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