公式記事「約束されし終末」より引用
「ジェイスさん、私は以前言いましたよね。私達の物語も、終わらせなければならない時があると。まだ私達はここにいて、それぞれの物語を引き伸ばそうとしています、対価をいくら払おうとも。ですがもし、あらゆる物語がただ彼女の物語であったなら、どのような悪しき運命が開かれるのを待っているのでしょうか?」
「ジェイスさん、私は以前言いましたよね。私達の物語も、終わらせなければならない時があると。まだ私達はここにいて、それぞれの物語を引き伸ばそうとしています、対価をいくら払おうとも。ですがもし、あらゆる物語がただ彼女の物語であったなら、どのような悪しき運命が開かれるのを待っているのでしょうか?」
こんにちは若月です。Magic Story『異界月』編ラストバトル回は、想像を絶する展開でした。
《月への封印》というカードで結末はわかっている、ゲートウォッチの勝利、希望の未来へレディーゴー……と思われました。ところがところが。あれほどエムラクールの影響を受けないと言われていたゾンビまでもその名を呼び、鴉の男も鎖のヴェールも、どちらも恐らくは古く強大な存在もついにはリリアナの説得を諦める。ジェイスが巡る仲間たちの精神世界、その惨い、おぞましい描写。そして天使の姿をとるエムラクール……エメリアとの対峙。それは本当にジェイスがエムラクールを理解しようとしたための姿なのか、はたまた。『これは何もかも間違い。私は不完全で、足りなくて、始まったばかり。不毛の怨嗟ではなくて、花が咲くべき。土は受け入れてくれない。私の時じゃない。今はまだ』……謎めいた、とした言いようのないその言葉。そしてタミヨウの機転によって封印は成功したように思われ、ですが……。ウラモグ・コジレックに続いてやられたなんてとんでもない、エムラクールの空恐ろしさがますます際立った結末でした。あらゆる物語がただ彼女(エムラクール)の物語であったなら……
というふうに、いつものような「○○はどうなったの?」的な「まとめ回」を書くのはまだ難しいかな……という感じです。リリアナが「誓い」の場面で見せてくれた凄いデレとか詳しく追及したいんですけどね!「(ジェイスは)ただの男の子。私がいてあげなくちゃね」て!!!さらに『コンスピラシー:王位争奪』まではもうちょっとあるので、今回はまた別のお話を。毎年豪華なラインナップで楽しませてくれる『From the Vault』(以下FtV)シリーズ。今年のテーマは「Lore/伝承」! これはこの連載として取り上げなきゃ嘘でしょ!
というわけで今回は8月19日発売の『From the Vault: Lore』に便乗しまして、過去のFtVシリーズからいろいろとおもしろい話をまとめました!
1. 過去の収録カードから
まずは過去のFtVシリーズから、背景世界的に「熱い」カードを幾つかピックアップしてお話させて下さい! これでもかなり絞ったんですよ。
■ 《怒りの天使アクローマ》&《憤怒の天使アクローマ》
(『From the Vault: Angels』)
マジックの物語にて有名な天使は、しばしばその強さや美しさとは裏腹に「不憫」だと話題になります。この連載では「リマスター」シリーズで取り上げた《闇の天使セレニア》を始めとして、最近では《苦渋の破棄》にて切ない最期を遂げた《浄化の天使、アヴァシン》に全多元宇宙が泣いた。その回にて「我はアヴァシン/I am Avacyn」と言い続けていたのはもしかしたら「我はエムラクール/I’amrakul」へと対抗していたのでしょうか……単語を一つずつしっかりと区切っている所も特に。
そんな「不憫な天使」と言えばもう一人忘れてはならないのがこのアクローマ。この連載では『オデッセイ』・『オンスロート』ブロックをあまり取り上げていないんですよね。この2ブロックの物語は連続していまして、『オデッセイ』~『スカージ』まで時系列順に繋がっています。アクローマは『オンスロート』にて登場。このブロックの主人公の一人である《現実を彫る者イクシドール》が、《触れられざる者フェイジ》に殺された恋人の姿を模して創造した天使です……恋人を模して創造した、ですが恋人のように大切にはされず、本当にあくまで復讐の道具として扱われていました。アクローマの方では自身の創造主として心から仕えていたのですが。同じ「人造天使」でもアヴァシンはソリンに結構愛されていたことを思うと、余計に物悲しい。
アクローマはメインキャラだけあって多くのカードイラストに登場していました。オデッセイ・オンスロートブロックの物語は私としても結構お気に入りなので、いつか詳しく書きたいですね……この連載「いつか書きたい」話ばっかりだな。
『レギオン』の物語クライマックスでアクローマは仇敵フェイジと対峙、ですがそこに2人の争いを止めようと《クローサの拳カマール》が乱入し、《ミラーリ》の剣で2人を貫きます。そのとき不思議なことが起こって(雑な説明)フェイジと合体したアクローマは《邪神カローナ》となり、やがてカローナ自身も『スカージ』の物語クライマックスにて倒され……本当に最後の最後まで報われませんでした。白も赤も、当時のトーナメントでは大活躍していたのがせめてもの救いでしょうか。そういえば「レジェンド・ルール」の(1度目の)変更の一因になったと言われていますね、アクローマ。
そして「赤ローマ」こと《憤怒の天使アクローマ》は、『次元の混乱』で示された数多くの平行世界の一つにおけるアクローマの姿です。当時の公式記事「Order and (Planar) Chaos」によれば、ざっくり言うとこのアクローマは「怒りの中で創造されたから」赤い、らしいです(白い方も怒ってるじゃん……)。ってことはイクシドールの気分によっては青や黒や緑のアクローマも存在し得たのでしょうか。
■ 《イス卿の迷路》
(『From the Vault: Realms』)
『エターナルマスターズ』にてめでたく初日本語化。初出は古のエキスパンション『ザ・ダーク』。このセットは時系列的には『アンティキティー』と『アイスエイジ』の間、兄弟戦争後、氷河時代へ向かって寒冷化しつつあるドミナリアが舞台です。カード名にもなっている人物、「イス卿/Lord Ith」はその時代に生きた偉大な魔道士だったのですが、「偽善者メアシル/ Mairsil, the Pretender」によって《バールの檻》に幽閉されてその力を奪われ続けていました(そのメアシルも《友なる石》フレイバーテキストに登場しています。『統率者(2015年版)』では「詐欺師メアシル」となっていますね)。
ですがイス卿は残されたわずかな力で伝令のような存在、《人さらい》を作り出して(ちなみに人はさらいません)自身を救い出せる人物を探し求めさせます。それはやがて『ザ・ダーク』の物語の主人公である青年・ジョダー(第12回で少し説明しました。ウルザ・ミシュラの直系の子孫です)に接触し、ここにもまた長く続く物語が始まるのです。
実は様々なカードに様々な物語があれやこれやの『ザ・ダーク』、これもまた面白いんですよ。
そしてこの「迷路」とは一体何か? 『From the Vault: Realms』の「説明書」に記述がありました。イス卿は多種多様な魔術師が集う「Conclave」の長を務めていたのですが、それを取り囲む広大な魔法的迷宮が「イス卿の迷路」です。『ザ・ダーク』の時代は兄弟戦争の記憶から魔法が忌み嫌われていました(《魔女狩り師》なんてのもいますね)。そのためイス卿は敵を惑わせるべくこの「迷路」を作り出したようです。
そんなイス卿本人も『時のらせん』にてカード化されていました。タップ能力がそのまま「迷路」です。
■《モックス・ダイアモンド》
(『From the Vault: Relics』)
《モックス・ダイアモンド》というよりは、再録されたモックスシリーズ新規アートのお話です。モックスシリーズ再録? そう、Magic Onlineならね! Magic Online限定セット『Vintage Masters』にはモックスシリーズが収録されており、ダイアモンド同様にVolkan Baga氏が新規アートを手掛けています。ちなみに原画プリントが晴れる屋にて入手可能ですよ。
統一された構図、そして面白いのはこれらのモックスシリーズには「背景の次元」が設定されているということ。どの宝石がどの次元のものか、わかりますか?
パールの背景は洗練されたラヴニカの都市文化。
サファイアはマーフォークの手と面晶体。
ジェットは時のらせん時代の荒廃したドミナリア。
ルビーを持つのはローウィンの炎族の手。
エメラルドは素朴で瑞々しいアラーラのナヤ。
マジックのこういう「こだわり」、大好きです。
《モックス・ダイアモンド》の次元が設定されているのかはわかりません。収録元『ストロングホールド』の舞台はラース次元ですが、ちょっと背景のイメージは違う気がします。そしてつい最近、『エターナルマスターズ』で新入りが加わりました。
となると気になるのは、これは何処の次元なのだろうということで。持つ人の手に金属が発達していないのでミラディン/ファイレクシアではなさそう、これを作れるほど金属加工技術が発達しているとなるとテーロスではなさそう……何処でしょうね?
■ 《肉体と精神の剣》
(『From the Vault: Relics』)
こちらも再録の際の新規アートのお話を。
『ダークスティール』で登場した「○○と××の剣」シリーズは『ミラディンの傷跡』『ミラディン包囲戦』『新たなるファイレクシア』にて5本が揃いました。こちらの青緑剣は『From the Vault: Relics』にて先行収録されており、この時点で「残りの剣も登場するのでは?」と期待した人も多かったのではないでしょうか。そしてその通りに黒緑剣・赤白剣も登場、さらに『モダンマスターズ』にて青赤剣・白黒剣が再録されました……Chris Rahn氏のアートで統一されて。
こちらも晴れる屋で原画プリントが手に入りますよー。そしてこれらのアートにもまた「こだわり」的なものが存在します。ミラディン(新ファイレクシア)には5色のマナに対応する5つの太陽が存在し、時間や場所によってそれらの見える組み合わせは異なるのですが、それぞれの「剣」の背景にはその色に対応する太陽が描かれているんです。カードのアートは小さいですが是非よく見てみて下さい。
そんなミラディン(新ファイレクシア)世界の五つの太陽ですが、エルフだけは太陽ではなく「月」と呼んでいました。ですので『アヴァシンの帰還』で初めてタミヨウが登場して「様々な次元の月を研究している」という設定を読んだ時に疑問に思ったんですよ、タミヨウ的にミラディンのそれは太陽なのか月なのか。そして最近の公式記事「物語と結末と」によれば、どうやらタミヨウは「月」と認識している模様。
すごく何気ない疑問でしたが5年越しに解決しました。
■おまけ 《造物の学者、ヴェンセール》
(『From the Vault: Twenty』)
この連載では何度も語ってきたじゃん! その通りです、だから少しだけ。
物語では死んでしまったけれど(詳しくは第12回に)、ヴェンセールは(クリーチャーの方、ではありますが)モダンとレガシーの様々なデッキで使用されていて、今に至っても新しく知ってくれる人すらいる。さらにこうして『From the Vault: Twenty』の2007年枠としても選ばれた。それはとても嬉しいことだとずっと思っています。実際FtVへの収録が発表された時、私は他の何よりもこのカードに興奮しましたから……
■おまけ2 《残酷な根本原理》
(『From the Vault: Twenty』)
こちらもさすがに今回も取り上げるのは「またかよ!」って感じなので第27回・第29回・第34回をご覧下さい。それでも多すぎだろう、ごめんサルカン。ボーラス様も長いこと物語で見かけていませんね。『運命再編』と『マジック・オリジン』のリリアナ編に登場していましたがどちらも過去話ですし。あれか、『デュエル・マスターズ』で大活躍してるからか。
2. 「伝承」を探ろう
公式記事「『From the Vault: Lore』 発表」より抜粋
多元宇宙を彩ってきた様々な出来事を、さらに深く探求しましょう――そして、歴史に学ばぬ者は同じ過ちを繰り返すということを示すのです! この限定版セットには、その強さと物語性の高さでマジックの歴史に名を残すカードの数々が収録されています。百聞は一見にしかず、古き真実を対戦相手に突き付け、驚愕させましょう。
多元宇宙を彩ってきた様々な出来事を、さらに深く探求しましょう――そして、歴史に学ばぬ者は同じ過ちを繰り返すということを示すのです! この限定版セットには、その強さと物語性の高さでマジックの歴史に名を残すカードの数々が収録されています。百聞は一見にしかず、古き真実を対戦相手に突き付け、驚愕させましょう。
というわけで、背景世界好きから大いに期待されていた今年のFtV。蓋を開けてみると……何と、多くの「新規フレイバーテキスト」が、ごく短い文章ながら多くのことを語ってくれていました。それを探りましょう。
■ 《陰謀団の儀式》
「陰謀団/Cabal」。オデッセイ・オンスロートブロックにおける悪役組織です。「前任」のファイレクシアよりはずっと小規模かもしれませんが、《陰謀団の先手ブレイズ》《陰謀団の貴重品室》《陰謀団式療法》など、その名を冠する多くのカードが当時のトーナメントで活躍しました。
《陰謀団の儀式》 『From the Vault: Lore』版フレイバーテキスト
(原文) The Patriarch is long dead, but his name still stains the lips of cultists.
(私訳) 総帥は死して長いが、その名は今も信者達の口に上る。
(原文) The Patriarch is long dead, but his name still stains the lips of cultists.
(私訳) 総帥は死して長いが、その名は今も信者達の口に上る。
そして『トーメント』版・FtV両方のフレイバーテキストにその名を見る《陰謀団の総帥》。物語での存在感はかなりのものでした。特に《触れられざる者フェイジ》との熱くも狂おしい関係は是非とも深く語りたいところですが、それはまたいずれ?
総帥は『レギオン』の物語内で死んでしまうのですが、新規フレイバーテキストを読むに、その後も長いこと陰謀団は存続していた(or いる)ということなのでしょう。何気にドミナリア次元の現状がごくわずかにアップデートされた、多分。
■ 《裏切り者グリッサ》
今年のFtVでは物語の主人公的カードが1枚は収録されるんじゃないかな、と思っていました。そして当たらずとも遠からずというか、元主人公が来ました。確かにミラディンという輝ける世界の変質を表すには最も相応しいカードかもしれません。アートは『ミラディン包囲戦』のオリジナルと変わらないながら、新規でフレイバーテキストが付きました。
《裏切り者グリッサ》 『From the Vault: Lore』版フレイバーテキスト
(原文) Once Mirrodin’s Brightest hope. Now Phyrexia’s cruel champion.
(私訳) かつてはミラディンの輝ける希望。今ではファイレクシアの無慈悲な勇者。
(原文) Once Mirrodin’s Brightest hope. Now Phyrexia’s cruel champion.
(私訳) かつてはミラディンの輝ける希望。今ではファイレクシアの無慈悲な勇者。
何かこれ、《シルヴォクののけ者、メリーラ》のフレイバーテキストを彷彿とさせます。
《シルヴォクののけ者、メリーラ》 フレイバーテキスト
(英語) Once a pariah, now Mirrodin’s greatest hope.
(日本語) かつての最下層民が、今ではミラディンの最も大いなる希望だ。
(英語) Once a pariah, now Mirrodin’s greatest hope.
(日本語) かつての最下層民が、今ではミラディンの最も大いなる希望だ。
新ファイレクシアの現状も長いこと新規情報が入ってきていませんね。《背教の主導者、エズーリ》も完成させられちゃったよ(第39回参照)、というくらいでしょうか。
おひさー。
グリッサを物語で最後に見かけたのは小説「Scars of Mirrodin: Quest for Karn」終盤、テゼレットと対峙する姿でした。その後テゼレット(彼もしばらく見ていませんね)は新ファイレクシアを脱出して今は別任務に就いている……というのが昨年8月の情報。グリッサもこうして新規フレイバーテキストを貰ったということは、生きているといいのだけれどねえ。
■ 《暗黒の深部》&マリット・レイジトークン
「マリット・レイジ」の名が初めて登場したのは『アイスエイジ』。一体何者なのか? プレインズウォーカーなのか? 長いこと様々な疑問が提出されてきました。その「正体」について私も調べましたところ、とりあえず見つかった最も新しい公式の言及は2006年8月の「Ask Wizards」でした。その質疑応答8月14日分を要約しましょう。
Q. マリット・レイジとは何者ですか?
A. アルガイヴの学者アーコルは彼女をプレインズウォーカーと考えていたが、そうではない。マリット・レイジについて知られていることは、彼女はとてつもない力を持つ存在であり、次元から次元へと渡り歩くことはできるが、プレインズウォーカーとは違うということだ。彼女はドミナリア出身ではなく、「亜神」と呼ばれるにふさわしい存在でもある。彼女は小説「The Eternal Ice」(アイスエイジ小説)に数度言及されている。ドミナリアにて数度大災害をもたらしたことがほのめかされており、人間の信者がいくらか存在する。
A. アルガイヴの学者アーコルは彼女をプレインズウォーカーと考えていたが、そうではない。マリット・レイジについて知られていることは、彼女はとてつもない力を持つ存在であり、次元から次元へと渡り歩くことはできるが、プレインズウォーカーとは違うということだ。彼女はドミナリア出身ではなく、「亜神」と呼ばれるにふさわしい存在でもある。彼女は小説「The Eternal Ice」(アイスエイジ小説)に数度言及されている。ドミナリアにて数度大災害をもたらしたことがほのめかされており、人間の信者がいくらか存在する。
「プレインズウォーカーではないが次元を渡り歩くことができる」、そしてその触手的な姿。今見るとどうしてもエルドラージを想像してしまいますが……(私もわかりません、本当に)。まあ、身も蓋もないことを言ってしまうと「元ネタが同じ」なのだと思います。《マリット・レイジの怒り》のフレイバーテキストはアイスエイジ版・第8版ともに、「宇宙的恐怖」を想起させます。
《マリット・レイジの怒り》 『アイスエイジ』版フレイバーテキスト
(英語)Dread Marit Lage lies dreaming, not dead.
(日本語、Wisdom Guildデータベースの翻訳より引用) 恐るべきマリット・レイジは夢見るままに横たわる、死せるにあらず。
(英語)Dread Marit Lage lies dreaming, not dead.
(日本語、Wisdom Guildデータベースの翻訳より引用) 恐るべきマリット・レイジは夢見るままに横たわる、死せるにあらず。
《マリット・レイジの怒り》 『第8版』フレイバーテキスト
マリット・レイジは氷河の奥底で凍りついている。しかし、彼女の夢はいまだに我らの世界に形を成し、我らの魂から温もりを奪っていくのだ。
マリット・レイジは氷河の奥底で凍りついている。しかし、彼女の夢はいまだに我らの世界に形を成し、我らの魂から温もりを奪っていくのだ。
――― キイェルドーの僧侶、ハルヴァー・アレンソン
そう、今回マリット・レイジトークンに付いたフレイバーテキストは《マリット・レイジの怒り》からのものですね!
マリット・レイジトークン フレイバーテキスト
(原文) Marit Lage lies dreaming, not dead. When will she awake from her icy prison?
(私訳) マリット・レイジは夢見るままに横たわる、死せるにあらず。彼女が氷の檻から目覚めるのはいつであろう?
(原文) Marit Lage lies dreaming, not dead. When will she awake from her icy prison?
(私訳) マリット・レイジは夢見るままに横たわる、死せるにあらず。彼女が氷の檻から目覚めるのはいつであろう?
こういう芸の細かさがたまらないわー。
■ 《メムナーク》
かつてのミラディンの管理人メムナーク。詳しくは第17回に書きましたが、彼は《銀のゴーレム、カーン》によって《ミラーリ》から創造された知性ある構築物であり、創造主に金属次元アージェンタムの管理人を任されました。完璧に計算され尽くしたその世界をメムナークは「美しい、だが死の世界」と感じ、ドミナリアのような色彩と生命溢れる世界へ変えようとしました。構築物でありながらそんなにも瑞々しい心を持っていた彼は、世界に染みついていた「謎の黒い油」を拭き取ったことで次第に狂気へと蝕まれていってしまいました。最終的に《グリッサ・サンシーカー》に倒されるも、「黒い油」の正体は結局謎のままでした……『ミラディンの傷跡』までは。
《メムナーク》 『From the Vault: Lore』版フレイバーテキスト
(原文) “An imperfection in the perfect world? We can’t allow that.”
(私訳) 「完全な世界の中の不完全? 許容できぬ」
(原文) “An imperfection in the perfect world? We can’t allow that.”
(私訳) 「完全な世界の中の不完全? 許容できぬ」
今回の新規フレイバーテキストでは、旧『ミラディン』ブロック時代には明言されていなかったその「狂気の原因(=謎の黒い油)の正体(=ファイレクシア)」がオリジナルよりも見えてきます。「完全」「完成」といったものにこだわるのはファイレクシアの影響……まあ『ミラディンの傷跡』ブロックの展開を知った今だからこそそう感じるだけかもしれませんが。
『フィフス・ドーン』にて倒されたメムナークはミラーリの姿へと戻ったのですが、『ミラディンの傷跡』ブロックにおいてその行方は全く語られていませんでした。ミラーリは元々「探査機」。もしかしたら今も新ファイレクシアの何処かで、世界の姿を記録し続けているのかもしれません。
3. とあるリセット呪文の物語 Again
ここで突然ですが、この連載の「過去回」を一つ紹介させて下さい。
『From the Vault: Lore』が発表された時、私がまず真っ先に「入って欲しいカード」として思いついたのがこの《抹消》でした。1枚のカードが秘める「物語」の長さと濃さでこれに勝るものはそうそうありません。以前、ふと思い立って構想を練ったところ止まらなくなり、記事を一本書き上げてしまったものがこちらになります。
- 2014/01/07
- あなたの隣のプレインズウォーカー 番外編 とあるリセット呪文の物語
- 若月 繭子
そう、この1枚のバックストーリーだけで1本の記事が書けてしまうほどなんです。
《抹消》呪文の使い手はそのフレイバーテキストが示すように《練達の魔術師バリン》。強大な力を持つ魔術師として(プレインズウォーカーでないながらも)数千年を生き、多くの名声を得てきた彼ですが、家族を守ることだけはできませんでした。妻を戦争で、娘をファイレクシアの疫病で失い、そこに至って彼はウルザの右腕を務めてきた代償を思い知ります。そして妻と娘が眠るトレイリアの地を悲嘆と絶望の中で自らとともに吹き飛ばした……大まかな物語はこのような流れ。ですがこのカードは、背景を探れば探るほどに古のマジックストーリーを彩る要素がこれでもかと溢れ出てきます。ドミナリアとファイレクシアの戦争、ウルザ、氷河時代、トレイリアのアカデミー……興味を持った方は是非、上記のリンク先で詳しい物語を読んでみて下さい。
そして《抹消》の物語の結末とも言えるカードが《トレイリア西部》。バリンが吹き飛ばしたアカデミーの名を抱き、ドミナリアに今も(たぶん)座し続ける魔法の学府。今回のFtVにこちらも一緒に入ってるって……入ってるって……感涙を禁じ得ませんでした、大袈裟でなく本当に。
4. 今回はここまで
いやあ懐かしい話をつい沢山してしまいました。オデッセイ・オンスロートブロックやザ・ダークはなかなか書く機会がないので楽しかった。
次回は『コンスピラシー:王位争奪』のお話を予定しています。物語の方では早速新キャラも登場しました。♪デデッデデーデー デデッデデーデー
(終)
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