前編は【こちら】
斉藤 「前回はデッキ構造について解説していただきました。続く今回は、ANTの弱点やサイドボーディングなどプレイ中のテクニックについて教えていただきたいと思います。佐渡 海さん今回もよろしくお願いします。」
佐渡 「はい。よろしくお願いします!」
■ 弱点・やられて嫌なことは?
斉藤 「ANTを使っていて、やられたら嫌なことや苦手なカードを教えてください。」
佐渡 「やられるときついと感じることは、ANTにとっての4大ヘイトアクションである
(1)ハンデス
(2)カウンター
(3)早いクロック
(4)ヘイトベア(orパーマネント)
(2)カウンター
(3)早いクロック
(4)ヘイトベア(orパーマネント)
の中から2種類以上のヘイトアクションを行ってくるときついです。」
斉藤 「具体的にアーキタイプを見てみると、BUGデルバーは(1)《Hymn to Tourach》や《思考囲い》によるハンデス(2)《狼狽の嵐》や《Force of Will》などのカウンター(3)早いクロックと3ヘイトアクションに該当しますし、ミラクルですと(1)《ヴェンディリオン三人衆》によるハンデス(2)強力なカウンター呪文(4)複数のヘイトベアや《相殺》とこれも3ヘイトアクションに該当しますね。」
佐渡 「複数のヘイトアクションで攻める重要性は対ANTだけではなく対コンボデッキ全般に言えることだと思いますので、もしコンボに勝ちたいのであればこれらを意識して構築するといいかもしれません。」
佐渡 「その他に個別のカードとしては、メインボードからみるカードですと《スレイベンの守護者、サリア》、《ガドック・ティーグ》、《三なる宝球》、《虚空の杯》、《大歓楽の幻霊》、《Hymn to Tourach》、《相殺》が特に嫌いです。
サイド後の代表としては、《ヴェンディリオン三人衆》、《アメジストのとげ》、《翻弄する魔道士》、《エーテル宣誓会の法学者》、《神聖の力線》などが苦手とするカードです。
また、青いカードは入っているもののほとんどカウンター呪文がないので1ターン目にコンボを決めてくるベルチャーやスパイも苦手としています。」
■ 各主要デッキに対するサイドボーディング
1 《島》 1 《沼》 2 《Underground Sea》 1 《Bayou》 1 《Tropical Island》 1 《Volcanic Island》 4 《沸騰する小湖》 3 《汚染された三角州》 1 《溢れかえる岸辺》 -土地(15)- -クリーチャー(0)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《暗黒の儀式》 3 《陰謀団式療法》 3 《強迫》 2 《定業》 1 《汚物の雨》 4 《陰謀団の儀式》 4 《冥府の教示者》 2 《炎の中の過去》 1 《苦悶の触手》 1 《むかつき》 4 《ライオンの瞳のダイアモンド》 4 《水蓮の花びら》 -呪文(45)- |
4 《突然の衰微》 3 《夜の戦慄》 2 《ザンティッドの大群》 2 《蒸気の連鎖》 2 《狼狽の嵐》 1 《クローサの掌握》 1 《巣穴からの総出》 -サイドボード(15)- |
斉藤 「各主要アーキタイプへのサイドチェンジの考え方やゲームプランを教えてください。」
佐渡 「具体的なサイドチェンジプランと、ゲーム中に意識していることを挙げていきたいと思います。」
●対UR(G)デルバー
佐渡 「ライフがすぐに減ってしまうマッチのため《むかつき》はサイドアウトしています。URベースのテンポデッキにはメインから有利に構築してあるのでそこまで変えずに挑むことができると思います。《狼狽の嵐》は《暗黒の儀式》などのリチュアル呪文へのカウンターを守るために使うことが多いです。」
斉藤 「リチュアル呪文が通ってしまえば、マナ要求系のカウンターをすり抜けながら確定カウンターをハンデスで抜くこともできます。ハンデスを打つより先にマナ加速を通しておくというのも大事なアクションです。」
佐渡 「ゲームプランとしてはしっかり土地を伸ばすこと。《目くらまし》、《呪文貫き》をケアしながらラストターンくらいに勝つことを目標としています。ハンデスはゲームを通して2枚くらい引きたいですね。」
●対《実物提示教育》デッキ(オムニテル・スニークショー)
佐渡 「《ザンティッドの大群》という強力な妨害が入るので《陰謀団式療法》1枚をサイドに落とし、妨害ばかり引いてしまうのを防ぐようにしています。また、スピードをそのままにして妨害を入れたいので、遅い《陰謀団の儀式》とドロースペルを減らします。《狼狽の嵐》は予想されず、こちらにハンデスがあるため比較的早いタイミングで《実物提示教育》を打ってくるのではまります。」
斉藤 「《ザンティッドの大群》は初動として最高なだけでなく、《実物提示教育》から《グリセルブランド》というアクションに合わせて出すことによって返しに大量にドローされようとも《Force of Will》されることなく勝てるという動きも可能ですね。《蒸気の連鎖》を1枚だけいれるのはなにか理由があるのでしょうか?」
佐渡 「《蒸気の連鎖》は《神聖の力線》をケアするために保険としてインします。1枚さえあれば《炎の中の過去》でのフラッシュバックと合わせてして2回触るチャンスを作ることができるため、最低限に抑えています。」
●対BG系
佐渡 「ハンデス連打でゲームプランを遅くしようとしてくることが多いので、ハンデスから大事なカードを守るために《狼狽の嵐》をサイドインします。早めにオールインして、リソースを削られる前に勝ちにいくのがよいです。トータルで見ると比較的有利に運べるマッチアップです。」
斉藤 「序盤にクロックを用意することと、《Hymn to Tourach》での妨害を同じターンに行えないので、序盤の妨害をいなして次の 妨害が来る前に勝ちにいくのが理想になりますね。
また、墓地の《冥府の教示者》をリムーブして《炎の中の過去》の邪魔をしてくる《死儀礼のシャーマン》ですが、《冥府の教示者》で《炎の中の過去》をサーチする前に、さらに《冥府の教示者》をサーチしてから《炎の中の過去》をサーチすることによって、墓地に2枚の《冥府の教示者》がある状況を作り出すこともできます。」
●対石鍛冶系
佐渡 「このマッチはサイドボーディングをしすぎないことが大事です。相手の妨害は多種に渡りますが、サイドインはヘイトベアのためだけに抑えるべきです。ヘイトベアが多いようなら《突然の衰微》の3枚目をサイドインするようにしています。」
斉藤 「《石鍛冶の神秘家》デッキはハンデス、カウンター、ヘイトベアといろいろな種類の対策が考えられますが、全てが厚いわけではないので、相手に付き合わないという選択肢も一つです。慣れていないとあれもこれもサイドインできるように見えてしまいますからね。」
●対エルフ
佐渡 「《思考囲い》や《陰謀団式療法》などのハンデス、《垣間見る自然》・《自然の秩序》などのフィニッシュにも強い《狼狽の嵐》をサイドインします。
《蒸気の連鎖》は《ガドック・ティーグ》や《自由なる者ルーリク・サー》のためにサイドインしますが、もし入ってないと知っているのであれば《定業》を戻しますね。
このマッチは、基本的にスピード勝負を挑むのがいいです。墓地には《死儀礼のシャーマン》や《漁る軟泥》で干渉はしてくるので、《炎の中の過去》は1枚サイドに落として《むかつき》で勝つのが一番簡単ですね。」
斉藤 「コンボスピード自体はANTの方が早いのでエルフ側の妨害が多くなります。妨害が入ったエルフはスピードが落ちるので、相手の妨害を《渦まく知識》でかわしたり、デッキにキーカードを維持することが大事になりますね。」
●対ミラクル
佐渡 「このマッチが一番インアウトのバランスが難しいです。《相殺》、《ヴェンディリオン三人衆》、カウンター、墓地対策、ヘイトベアと他方面から妨害が厚くくるからです。」
佐渡 「サイドアウトするカードからみていきましょう。
《陰謀団の儀式》は、墓地対策に引っかかって弱いので減らしています。また、《炎の中の過去》もとても強いですが墓地対策をされたときのデメリットが大きいため1枚に抑えています。
《沼》や《水蓮の花びら》はゲームが少しでも伸びたときマナは足りることになるのでサイドアウトします。トップデッキしたとき弱いカードですし、そこまでマナに困ることはありません。
《ザンティッドの大群》は《陰謀団式療法》と違い《師範の占い独楽》でトップに《狼狽の嵐》などのカウンターを置かれても大丈夫なところが強みです。僕は、ハンデスとセットでこの《ザンティッドの大群》を使うのが好きですね。《赤霊破》、《狼狽の嵐》、《被覆》などにも効きにくいため通りやすいです。」
斉藤 「そうですね。もしも除去を複数枚もっていた場合《陰謀団式療法》のフラッシュバックコストにあてることによって除去以外のスペルを抜いて勝つことができますしね。」
佐渡 「あとは決めにいく前の相手のエンド時に《突然の衰微》を《師範の占い独楽》に対してプレイすることもよくあります。《相殺》やヘイトベアがないときは、ライブラリーのトップにカウンターを隠していることが多いので、それをドローさせてから自分のターンにハンデスから勝ちにいけるからです。」
●対ミラー
佐渡 「ミラーでの勝ち方は2パターンに分かれます。
1つ目は1~2キルがあるかないかです。お互い妨害をしないと先に仕掛けた方が勝ってしまうわかりやすい形ですね。
2つ目はハンデスとドロースペルのハンドから進行する形です。ハンデスで妨害しながらドロースペルで《冥府の教示者》をトップに積みながら《ライオンの瞳のダイアモンド》や《水蓮の花びら》を先に置いておくのがセオリーになります。
キーパーツを抜きながら進行できるハンデスも重要ですが、《思案》《渦まく知識》のようなドロースペルの扱いが本当に大事になります。」
斉藤 「いくらハンデスしてもライブラリートップにキーカードをつまれてしまうと干渉できないですからね。しかし佐渡さんのサイドボードには《狼狽の嵐》があるので有利に運べそうですね。」
佐渡 「ミラーをさらに意識するのであれば《師範の占い独楽》を採用するとさらによくなるでしょう。」
■細かいテクニックや初歩テクニック
斉藤 「初歩的なテクニックや細かい注意点などがあれば教えてください。」
佐渡 「ANTのテクニックをいくつか紹介したいと思います。」
★1 :《ライオンの瞳のダイアモンド》+《冥府の教示者》+《陰謀団の儀式》+4マナ分(土地4など)という状況下。
佐渡 「『《陰謀団の儀式》でマナを出してから《冥府の教示者》スタック《ライオンの瞳のダイアモンド》起動』という動きが普通ですが、その動きでは「スレッショルド」を達成できない場合があります。そのときは《ライオンの瞳のダイアモンド》を置き、まずは《冥府の教示者》をプレイし、そのスタックで《陰謀団の儀式》を打ってから《ライオンの瞳のダイアモンド》を起動という順序でプレイすれば、他の手札がすべて墓地に送りながら《冥府の教示者》と《陰謀団の儀式》が解決されることになるので《陰謀団の儀式》の「スレッショルド」を達成し、《冥府の教示者》も「暴勇」で解決するという動きができます。」
斉藤 「早いタイミングで仕掛けるとき、ドロースペルをあまり打っておらず「スレッショルド」していないときに使えるテクニックですね。土地が2,3枚で《暗黒の儀式》などからスタートするときなどはよくありそうです。」
★2 :《渦まく知識》+《ギタクシア派の調査》などのドロースペル+《ライオンの瞳のダイアモンド》+《むかつき》という状況下。
佐渡 「《暗黒の儀式》など”リチュアル呪文がたくさんあれば簡単に《むかつき》を打つことができますが、リチュアル呪文の代わりに《ライオンの瞳のダイアモンド》が複数枚手札にきてしまうこともあります。そんなときに使えるテクがこちらです。《渦まく知識》で自分のライブラリートップに《むかつき》を積み込みます。その後、《ライオンの瞳のダイアモンド》を設置してから《ギタクシア派の調査》などのドロースペルを打ち解決前に《ライオンの瞳のダイアモンド》を起動してマナを浮かせておくことで、ドロースペルで入手した《むかつき》をそのままプレイし勝ちにいくことができます。」
斉藤 「《ライオンの瞳のダイアモンド》を2枚使用すれば《むかつき》を打っても黒マナが浮いて解決ができる=《水蓮の花びら》がめくれなくても勝てるので、”《むかつき》死”がかなり軽減されそうですね。」
★3 :リチュアル呪文+《冥府の教示者》+《炎の中の過去》+《ライオンの瞳のダイアモンド》という状況下。
佐渡 「リチュアル呪文を解決して、《ライオンの瞳のダイアモンド》を設置してから《冥府の教示者》プレイ→《ライオンの瞳のダイアモンド》起動→《冥府の教示者》「暴勇」で解決というのがコンボの基本的な動きです。ですが、このとき手札に《炎の中の過去》があると、《冥府の教示者》がカウンターされてもそのまま《炎の中の過去》をフラッシュバックすることで勝利することができます。」
斉藤 「これはカウンターが強い相手にとても有効的な手段ですね。《炎の中の過去》は《渦まく知識》や《思案》でデッキの中に戻してしまう人をよくみかけますが、手札にあると非常に強力です。上記の流れでカウンターを持っている相手が《冥府の教示者》を通してきた場合には、ハンデスをサーチしましょう。手札にあるカウンターを抜いてから、墓地に落とした《炎の中の過去》を安全に通すことができます。」
■まとめ、ANTに興味がある人へ
斉藤 「最後にこのデッキに興味がある人、うまくなりたい人へアドバイスをお願いします。」
佐渡 「僕の成長過程で練習した流れがあるので、参考にしていただければなと思い紹介したいと思います。
まずこのデッキでひたすら一人回しをしました。それは何百回したかわからないくらいしましたね。どんどん自分で回していてもキルターンの安定や各カードのシナジー、ハンデスなどの妨害を挟みながらキルできる流れみたいなものが把握できてきます。
そのあとはハンデスしか妨害手段がないミッドレンジ系のデッキとひたすら練習しました。それによりハンデスだけのデッキへの対処法がわかるようになります。こちらのハンデスでジャンド側の《Hymn to Tourach》を抜くとジャンド側には妨害がなくなってしまうといったパターンが顕著ですね。
次の段階として、カウンターが軽いがスピードが速いクロックパーミッションであるマーフォークです。《呪い捕らえ》、《目くらまし》、《Force of Will》をいかに乗り越えるかという練習ですね。スピード勝負で負けないことを意識しながら妨害をしっかり挟む練習になります。
次に、さらにカウンターの密度が濃く《不毛の大地》でマナ拘束をしてくるUR(G)デルバーとひたすら練習することに。土地をしっかり伸ばし、相手の有効牌(《目くらまし》《呪文貫き》)を不要牌にさせる練習です。
その後は、デルバーデッキでありながらハンデスも使ってくるBUGデルバーと練習をとことんやりました。ハンデス、カウンター、早いクロック、《不毛の大地》とコンボが苦手とする駆け引きが多く発生するマッチですね。
最後に、一番の壁であるミラクルと練習しました。カウンターが濃い上にヘイトベア、強い墓地対策、《相殺》によるロック、《相殺》でカウンターを隠しながらのゲーム進行、単純なハンデスよりもきついタイミングがある《ヴェンディリオン三人衆》など一番難しいマッチですね。《突然の衰微》をいかに正しいタイミングで使って勝ちにいけるかという壁の高いマッチです。
僕はこのような流れで練習をしてきました。各練習は100マッチ以上やりましたし、とにかく数をこなすことを意識しました。
僕もですが、Carstenが言っていたように最初はボコボコにされても諦めないで続けることの大切さを訴えたいです。こんな僕でもたくさん負けましたからね。慣れてくるとショーテルにはないストーム独特の動きの美しさに魅了されることでしょう。
あとレガシー特有かもしれませんが、コンバットがほとんどないのでコンバットよりもスペルでマジックをするのが好きな人におすすめのデッキですね!このデッキは他のデッキのようにアドバンテージをとることはあまりしませんが、相手の除去を腐らせるのでそこをカードアドバンテージとして早いタイミングで勝つという気持ちよさも感じることができます!」
斉藤 「誰が使ってもある程度の強さがあり、打ち出す弾が時代によって変わるショーテルデッキを『大砲』に例えるならば、昔からさほど変わらない形で存在してて、使い手によって切れ味がまったく変わるデッキであるANTは『刀』のようなデッキだなと実感したインタビューでした。今回はありがとうございました。」
佐渡 「こちらこそ呼んでいただいて光栄です。ありがとうございました!ANT最高!」
不定期になりますが、これからも紹介したいアーキタイプやプレイヤーがいれば一緒に解説していきたいと思います。
では、また次回お会いしましょう。
※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させていただきました。
『マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト』
http://mtg-jp.com/
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