情報を制す者はマジックを制す。
特にSNSによる情報交換が盛んな現代、口コミがその後のメタゲームに与える影響は計り知れない。
すなわち、バズってる(話題になっている)カードを知ることは、メタゲームの把握と予測の大いなる助けとなることだろう。
当企画では、そんな「今、バズってるカード」を週刊で追っていきたいと思う。
カードの紹介に入る前に、先週行われたイベントやマジック関連の主な出来事を簡単におさらいしよう。
【第7期スタンダード神挑戦者決定戦が開催される】
8月11日(木・祝)には【第7期スタンダード神挑戦者決定戦】が開催された。
参加者230名が集まった本大会で見事に優勝を収めたのは梅木 亮(神奈川)!
【神決定戦】プロツアー直後の予想困難なメタゲーム。頂点に立ったのは「昂揚」でも「現出」でも無かった。的確なプレイでバントカンパニーの力を引き出し、見事『第7期スタンダード神挑戦者』の座を掴んだのは、梅木 亮!おめでとう! #神決定戦 pic.twitter.com/Vz5kwn374i
— 晴れる屋 (@hareruya_mtg) 2016年8月11日
白単人間や白緑トークン、スゥルタイ昂揚、はたまた独創的なナヤミッドレンジなどが上位に勝ち上がる中、見事に優勝を収めたのはバントカンパニーだった。
こういったクロックパーミッションのような挙動をするデッキはある程度メタゲームが固まってきた状況でこそ一層強さを発揮するので、今後バントカンパニーを見かける機会は一層増えそうだ。
【2016-2017シーズン初のグランプリが開催される】
先週末にはイタリアで【グランプリ・リミニ2016】、アメリカで【グランプリ・ポートランド2016】が同日に開催された。
【プロツアー『異界月』】後、初となるこの2つのグランプリはどちらもスタンダードで開催され、優勝を収めたのはそれぞれ「バントカンパニー」(【グランプリ・リミニ2016】)と「ジャンド『昂揚』」(【グランプリ・ポートランド2016】)だった。
また、【グランプリ・リミニ2016】ではHareruya Pros所属のルーカス・ブローン、八十岡 翔太、ペトル・ソフーレクの3名がトップ8に進出するという獅子奮迅の大活躍を見せていた。
【ハレプロ】今回の #GPRimini では@LukasBlohon@yaya3_@PetrKikac の3名がTOP8に進出を果たしました!新メンバー加入後、いきなり快進撃!今後も応援お願いします!#HareruyaPros pic.twitter.com/A9iJYviEW4
— 晴れる屋 (@hareruya_mtg) 2016年8月15日
新シーズン開幕から好スタートを切ったプラチナレベル・プロ3名。特に八十岡とルーカスは【世界選手権2016】の出場権利もあるため、さらなる活躍に期待される。
主要な出来事はこのくらいだろうか。
さて、それでは今大きな話題を呼んでいるカードたちを紹介しよう。
1. 《無害な申し出》
2016-2017シーズンが幕を開けて最初のグランプリとなる【グランプリ・ポートランド2016】。ここではさっそく独創的なデッキが勝ち進んでいた。
赤くなった《寄付》こと《無害な申し出》。これと《悪魔の契約》を組み合わせるという、誰もが夢想したコンボデッキがいよいよ牙を剥いたのである。
6 《沼》 1 《島》 1 《山》 4 《燻る湿地》 3 《窪み渓谷》 2 《進化する未開地》 4 《シヴの浅瀬》 3 《詰まった河口》 2 《凶兆の廃墟》 -土地 (26)- -クリーチャー (0)- |
1 《意思の激突》 1 《焦熱の衝動》 3 《予期》 2 《分散》 2 《闇の掌握》 3 《光輝の炎》 2 《無害な申し出》 3 《衰滅》 3 《闇の誓願》 1 《シルムガルの命令》 4 《チャンドラの誓い》 3 《ジェイスの誓い》 4 《悪魔の契約》 2 《最後の望み、リリアナ》 -呪文 (34)- |
3 《否認》 2 《払拭》 2 《精神背信》 1 《龍王シルムガル》 1 《意思の激突》 1 《無害な申し出》 1 《無限の抹消》 1 《衰滅》 1 《即時却下》 1 《闇の誓願》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード (15)- |
基本的な勝ち手段は《悪魔の契約》+《無害な申し出》コンボでの即死プランだが、ボードコントロールしながらフィニッシャーも兼ねてくれる《最後の望み、リリアナ》の「-7」能力で勝利するパターンもあるタップアウトコントロールデッキである。
《闇の誓願》は状況に応じた解決策を探してきてくれるデッキの接着剤だ。「魔巧」達成時には探してきた《闇の掌握》や《最後の望み、リリアナ》をそのままプレイすることもでき、コンボ以外で使い道がない《無害な申し出》の採用枚数を絞ることにも貢献している。
また、《ジェイスの誓い》と《チャンドラの誓い》が合わせて7枚も採用されているのがおもしろい。エンチャントを複数枚並べることで《悪魔の契約》の天敵である《ドロモカの命令》に対抗しているのである。
デッキ自体も2枚の《最後の望み、リリアナ》に目を瞑れば比較的入手しやすいカードが多く、組みやすい部類のデッキと言える。変わったコンセプトのデッキが好きという方にはオススメだ。
2. 《集団的抵抗》
プロツアーでは白黒コントロールや「現出」系のデッキが目立ち、アグロデッキがいない! と嘆いているスライ信者に贈る。
今、《集団的抵抗》が熱い!
《トレイリアの風》、《炎の斬りつけ》、《溶岩の撃ち込み》のモードを持ったこのカード。単体でカードアドバンテージに繋がることはないが、最低でもクリーチャー除去として働きながらも状況に応じて手札を調整し、対戦相手にフィニッシュの火力をお見舞いできる利便性が魅力的だ。
実際にこのカードを採用した興味深い赤黒バーンがMagic Onlineで結果を残しているのでご紹介したい。
10 《山》 4 《沼》 4 《燻る湿地》 4 《凶兆の廃墟》 1 《ガイアー岬の療養所》 -土地 (23)- 4 《傲慢な新生子》 4 《熱錬金術師》 4 《騒乱の歓楽者》 -クリーチャー (12)- |
1 《稲妻の斧》 4 《集団的蛮行》 4 《焼夷流》 4 《苦しめる声》 4 《血管の施し》 4 《集団的抵抗》 4 《癇しゃく》 -呪文 (25)- |
4 《自傷疵》 1 《極上の炎技》 2 《穢れた療法》 4 《稲妻織り》 3 《黄金夜の懲罰者》 1 《ゴブリンの闇住まい》 -サイドボード (15)- |
MO界では知らぬ者はいない強豪、“medvedev”の意欲作。海外では《熱錬金術師》を採用した青赤バーン「Izzet Machinegun」が流行しているが、このデッキでは青の代わりに黒をタッチすることで《集団的蛮行》や《血管の施し》といったより攻撃的なスペルを採用している。
《集団的抵抗》は《癇しゃく》や《血管の施し》といった多数の「マッドネス」持ちのスペルとも相性がよく、手札を効率的に消費した後は《騒乱の歓楽者》がアドバンテージを回復してくれる。現環境のバーンは《ドロモカの命令》の軽減モードがキツイのでは? と思われるかもしれないが、そこで《集団的蛮行》の手札破壊モードがいぶし銀の活躍を見せてくれる。
ガンガン対戦相手のライフが減っていく様子が実に爽快なこのデッキ。赤いアグロが組みたい! 「3点、対象は本体で」と言いたい! とうずうずしているプレイヤーにはうってつけだ。
ちなみに余談だが、《紅蓮術師のゴーグル》を使って《集団的抵抗》をプレイすると「増呪」で増やしたモードも含めてコピーする。
3. 《恐血鬼》
【WMCQ2016名古屋】を来月に控え、ますます盛り上がりを見せるモダンフォーマット。
モダンの最近の注目株といえばドレッジが挙がるだろう。【第7期モダン神挑戦者決定戦】で優勝し、【WMCQ2016東京】ではトップ8に2人が入賞。【BIGMAGIC Sunday Modern】でもトップ8に入賞するという破竹の勢いで勝利を重ねるドレッジは、遠く海の向こうで先週末開催された【SCG Open Baltimore】でも優勝していた。
『イニストラードを覆う影』から《傲慢な新生子》と《秘蔵の縫合体》が加入したことで強化されたドレッジデッキ。今回【SCG Open Baltimore】で勝利したリストには《大いなるガルガドン》が採用されており、《黄泉からの橋》による爆発的なトークン生成で勝負を決めるコンボ色の強いデッキリストになっている。
多種多様なアーキタイプとのマッチアップを想定しなくてはならないモダンにおいて、サイドボードに墓地対策カードのスロットを割きづらいこともあり、そういったメタ的な強みもドレッジが現在幅を利かせている最大の要因の一つだ。
ドレッジの詳細な構築や回し方に関してはHareruya Pros・津村 健志の以下の記事で丁寧に解説されている。ドレッジを使う側も使われる側も一度は目を通しておきたい。
- 2016/07/19
- 津村健志のドレッジ調整記&WMCQ2016東京レポート
- 津村 健志
また、来週末には【グランプリ・広州2016】も開催される。ドレッジが再び勝利を重ねるのか、あるいは墓地対策の前に膝を屈することになるのか。今から楽しみである。
いかがだっただろうか?
今週もまた多くのカードがプレイされ、注目され、議論を呼ぶのだろう。
次回の記事も楽しみにしていただけたら幸いである。
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