齋藤友晴のGPシドニー&プロツアー『異界月』レポート、そしてこれから

齋藤 友晴


トモハルです!

みなさま、明けましておめでとうございます!

プロシーズンが変わったので、今回はこんな挨拶です^^

マジックのプロたちにとって、夏は一旦のゴール地点であり、スタート地点。

4つ目のプロツアーで燃え盛ってきた炎が落ち着くのも束の間、すぐに新シーズンのグランプリがありつつ、【世界選手権2016】でブワっと燃え上がります!





もうすぐですね、世界選手権。楽しみですね☆

昨シーズンはグランプリレースで惜しいところまで行きましたが、結局、世界選手権の切符は手に入らなかったので、今年はいちファンとして観戦を楽しみます♪



しっかし、ここではだいぶご無沙汰してましたすみません。

今回は2015-2016シーズン終盤や、全体を振り返る内容です。

それと、これからについて。



グランプリ・シドニー2016

7月29~31日

『異界月』『イニストラードを覆う影』リミテッドで開催されました。

【晴れるーむ合宿】で比較的好成績、からの現地プロツアーチーム合宿に合流して、またたくさんドラフト。そっちでの成績は更に良くて、自信十分で出たグランプリでした。


※画像は【MAGIC: THE GATHERING】より引用させていただきました。


なお、グランプリレースは首位Brian Braun-Duin(BBD)と1点差、また、チームメートのChristian Calcanoが、これまた世界選手権への道であるドラフトマスター上位だったので、いつもより早く集まり、いつもより多い回数ドラフトしてました。




初日のシールドでは、A級以上のレアが3枚もある強いデッキが組めました。

クリーチャーの細さは少し気になりますが、4パック使う『異界月』には太いクリーチャーが少ないので問題のない範囲。「昂揚」の噛み合わなさや、優勝したScott Lippとの対戦では全ゲーム接戦となり引き分けてしまったことで、成績は6-2-1

2日目には進出できるものの、GPレース首位だったBBDが1敗で初日を終えていたことで、いきなり王手をかけられた状況になってしまいました。

ですが、ベストを尽くす以外にできることはありませんし、そもそも発売直後のリミテッド・グランプリはプロツアーの良き練習になるので、前向きな気持ちで早めに寝ました。




2日目、第1ドラフトは流れのまま「赤緑」をピックし1-2

この段階で「赤緑」は「1番やりたくない色」でしたが、その後の練習やプロツアーも経た今となっては、個人的に「99%やらない色」です。


爪の群れのウルリッチ


序盤に赤緑マルチのボムである《爪の群れのウルリッチ》をピックできたとしても、頭の中で赤緑をやることは考えないレベル。流れ上、全く他の色が来ない場合を除き、赤か緑+ほか1色をやる前提で、こいつは優れたタッチ要員とだけ考えます。

赤緑は色の持つテーマやシナジーが弱すぎるほか、3-0したのを1度も見たこと聞いたことが無いためです。ちなみに他の色は最低2回~最大10回見ているぐらいの情報量の中で、です。

昔はドラフトと言えば、「白青か赤緑はいつも安定!」のように大雑把なセオリーがありました。赤緑に関しては「緑の優秀なクリーチャーを赤の強いスペルでサポート」というだけのシンプルテーマ。

ところが『異界月』の緑クリーチャーが弱すぎて破綻気味の上、他の色のテーマが格段に強固なものになっているので、セオリーが全く当てはまりません。


直接射撃孤独な狩人


なお、赤緑で3-0できるとしたら赤のポジションがすこぶる良く、赤が濃いデッキに上記のウルリッチや《直接射撃》《孤独な狩人》など、緑のパワーカードだけをそっと加えるような構成が1番可能性が高いと思います。

チャレンジャー精神が強い方、折を見て狙ってみて下さい☆




2日目第2ドラフトは、まさかの《騒乱の歓楽者》2枚入り「青赤」で2-1

ドラフト中、《騒乱の歓楽者》を遅めにキャッチしたことで色変えしたため、だらしない布陣となりましたが、それでも2-1できたのは「青赤」という色が強いのと、レアパワーによるところが大きいです

2-0対決も「あと一歩」というところでした。

色変えするときは、「色を変えた先が強い色か。やりたい色の組み合わせであるか。最終的に勝てる形になる可能性はどれぐらいか」を現状のラインと天秤にかけることが重要で、ドラフト中のその計算自体はうまくいったと思います。

ただ、第2ドラフトの段階で、もうGPレースが目無しになっていたため、練習から得るリターンを高めるべくレアの使用を優先したというのもあります。《騒乱の歓楽者》はデッキが噛み合えばすこぶる強いカードで、中途半端なこのデッキでも普通に強かったです。



プロツアー『異界月』(シドニー)

いつものリー・シー・タン率いる多国籍度ナンバー1チームで参加。

メンバーが16人もいたので、ほとんどひととおりのデッキを試した上で「バントカンパニー」と「白黒コントロール」がチームデッキに。自身はモリカツと75枚同じ「バントカンパニー」で参加。



齋藤 友晴「バントカンパニー」
プロツアー『異界月』

4 《森》
4 《平地》
1 《島》
4 《大草原の川》
3 《梢の眺望》
4 《進化する未開地》
3 《ヤヴィマヤの沿岸》
2 《伐採地の滝》

-土地 (25)-

4 《森の代言者》
3 《無私の霊魂》
3 《薄暮見の徴募兵》
2 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《反射魔道士》
4 《呪文捕らえ》
4 《不屈の追跡者》
2 《巨森の予見者、ニッサ》
1 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー (27)-
3 《ドロモカの命令》
4 《集合した中隊》
1 《オジュタイの命令》

-呪文 (8)-
3 《否認》
2 《老いたる深海鬼》
2 《石の宣告》
2 《悲劇的な傲慢》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《ヴリンの神童、ジェイス》
1 《龍王ドロモカ》
1 《空への斉射》
1 《オジュタイの命令》

-サイドボード (15)-
hareruya




デッキの解説は【森勝洋のプロツアー『異界月』レポート】をご覧いただくとして、このデッキの一番のパワフルポイントはだいたいのメイン戦で苦手な相手に強い、《老いたる深海鬼》だったと思います。


老いたる深海鬼


2枚じゃなく、3枚入れたらもっと良かった。

まずはグランプリでの経験や、チームディスカッションを経て更に自信のついたドラフトから




初日の第1ドラフトでは強いデッキがドラフトできて3-0

レアの豪華さに対し、《森林の巡回者》が4枚被り、「そんなにいらない!」という長所と短所が両方目立つものの、かなりポジションが良く、「白緑」はトップ3に入る良い色の組み合わせでもあることから終始手応えがありました。


爪の群れのウルリッチ


ちなみに、卓はゴールド・レベル以上ばかりというメンバーの中、《爪の群れのウルリッチ》はなんと1パック目5手目で流れてきました!

「ああ、『赤緑』をやらないのは共通見解か……。このメンバーならそりゃそうだ」と思いつつも、おいしくつまませていただきました(笑)

もちろん場合によりますが、基本的には3色目タッチのデメリットより、パワーカードの多さのメリットが上回る環境だと認識しています。



2日目の第2ドラフトは「白黒タッチ赤」で2-1


先駆ける者、ナヒリ


3パック目《先駆ける者、ナヒリ》出現により、これまた3色目でパワーカードタッチの形となりました。

ナヒリも、《狂気の預言者》も、「まあまあ強いけど比較的ゲームが長引きやすい白黒」というカラーにタッチするにはピッタリなパワーカードです。


支配の天使支配の天使


見た目で気になりそうな6マナ《支配の天使》2枚は、5マナ以下で止まりつつ重なるパターンのネガティブ印象が凄いですし、実際その状態で1ゲーム負けてますが、1枚だけ引く確率を高めればそれが強いのは当然ですし、2連打により何もさせず勝つというリターンもあるので、もし2枚目が自然と取れるならビビらず2枚取ったほうが良いです。

そして久々の大本命選択、「バントカンパニー」で出たスタンダードの結果。

デッキは良かったし、プレイもそれなりにできたものの、5-5でした。(ゴールド・レベル維持でプロツアーに残って欲しい選手へのトス1回含む)

構築ラウンドを総合すると運が「40/100点」ぐらいだった感覚の中、負け越していないのはデッキの地力の高さ、安定性によるものだと思います。


集合した中隊


禁止されてもおかしくなかった《集合した中隊》が4枚入っている前環境トップのデッキが、更に《呪文捕らえ》《無私の霊魂》《老いたる深海鬼》という新カードの恩恵も充分に受けているだけはありました。

トータル10-6で44位賞金1500ドルとプロポイント6点獲得

悪くはない結果でしたが、プラチナレベル到達にはトップ8ボーダーラインと同じ、12-4以上の成績が必要だったため、新シーズンはゴールド・レベルで迎えることが確定しました。




■ 2015-2016シーズンを終えて

シーズン最初に掲げた目標は、「同日開催を除く全てのグランプリに参加すること。そして、ビジネスを広げつつ、ゴールド・レベルになること」でした。

まず、グランプリ・コンプリートに関しては、ほとんど体調も崩さず、実際に全部参加できたので達成することができました☆

8/8~8/9 GP香港
8/15~8/16 GPデトロイト
8/29~8/30 GPサンティアゴ
9/12~9/13 GPマドリード
10/10~10/11 GPマディソン
10/24~10/25 GP北京
10/31~11/1 GPリヨン
11/7~11/8 GPシアトル・タコマ
11/14~11/15 GPアトランタ
11/21~11/22 GP神戸
1/9~1/10 GPオークランド
1/30~1/31 GPメキシコシティ
2/27~2/28 GPヒューストン
3/5~3/6 GPメルボルン
3/12~3/13 GPワシントンDC
3/19~3/20 GPパリ
4/16~4/17 GP北京
4/30~5/1 GPトロント
5/7~5/8 GP東京
5/21~5/22 GPロサンゼルス
5/28~5/29 GPミネアポリス
6/4~6/5 GPコスタリカ
6/11~6/12 GPプラハ
6/25~6/26 GP台北
7/2~7/3 GPサンパウロ
7/30~7/31 GPシドニー

全26回のグランプリに参加しました


※画像をクリックすると拡大します。





ビジネスを広げることに関しても、世界中の繋がりが広まったり深まったりして、実際に手を取り合う相手が増えていますし、これから晴れる屋が更にマジックを盛り上げていくための準備具合も増したと思うので、上々でした。

それからゴールド・レベル昇格に関しては調子が良く、シーズン前半で達成できました。

その段階までシルバーレベルで不戦勝2だったのにも関わらず、気づけばグランプリマスターレースで暫定1位というポジションでした。

「どうせ全部出るなら、これを本気で獲りにいって世界選手権に出る」という新しい目標が生まれ、そこから狙い続けたものの調子はイマイチで、だんだん下位との差が埋まって逆転されて、シーズン終盤は上位4人の僅差レースとなってしまい、プレイヤー専念度を最大限上げてのチャレンジとなりました。


結果、3位でフィニッシュ

グランプリマスター。この枠で世界選手権に出ることは叶いませんでした。

「できる、できる」

そう自分に言い聞かせ、どうしたら達成できるかしか考えずに、走り続けました。

だからこそ悔いはなくて、良い勝負ができて良かった、素晴らしい日々だったと感じています。



当初の目標も達成できているので、2015-2016は僕にとって良いシーズンだったと言って差し支えありません。

あとはハッピーに貪欲な僕らしく、最高のシーズンのひとつだったと今後言えるように最大限活かしていくのみです。



■ 2016-2017シーズンと、これからについて

昨シーズンを振り返ってみると、これまでにないくらい世界中を飛び回っていたので、

「プレイヤー専念度を最大限上げていた=会社や家族への時間が激しく減っていた」

という状態でした。

なので、「今シーズンは、昨シーズンよりも会社と家族への専念度を上げ、プレイヤー専念度を下げよう」というのが、そもそもの考えでした。とはいえ、プレイヤーに関してもやる気はあり、量でなく、質で勝負するというスタンス

ところがシーズンが終わり、プレイヤーは正直お腹いっぱいでした

公式が「グランプリマスターレースは数々の良きドラマを生み出したものの、プレイヤーの燃え尽きに繋がりやすいので廃止」と、【世界選手権招待枠について発表】しました。

納得できる変更だと、肌で感じました。

もう本当にお腹いっぱいだったようで、新シーズン最初のスタンダードのグランプリに行くか、マジックオンラインで練習しながら検討している際、精神的にですが、暴飲暴食の後のように吐きそうになったので、1発目は勇気を持って休みました。




プロツアーの経験がそのまま活きる回のグランプリを休む、というのはプロポイント的には勿体ないことだと思いましたが、自分の素直な気持ちに従いました。

こんなの、なんて贅沢な話だと思います。

32才、満腹の限界を越えるほど飛び回って、マジック三昧させてもらいました。

あの人の、あの言葉を思い出します。


“マジックは偉大なゲームではあるが、本当に楽しむことができるのは、
自分の生活とうまくバランスを取れている間だけだ。
ゲームと他の大事なことを、両方とも大切にできたなら何もかも上手くいく。”


by Gary Wise 【The Last Words】


ゲームは大切にできていたけれど、他の大事なことを大事にできていなかった状態だったと思います。

終盤、マジックにコミットしすぎました。

逆に、満腹にマジックしても、他も充分大事にできていたら精神的に良いコンディションで取り組めて、もっと結果も出たのかもな、なんて思います。

だからプロとしても、経営者としても、世帯主としても、まだまだ精進して自分の容量や効率を上げていかなければなりません。



■ ……その後

1週間マジックせずに会社、家族、ポケモンGO(!?)と頑張ったら……。

お腹が空きました(笑)



まさかの市川ユウキ、石村信太朗チームで練習チームシールド杯に出てみたり、練習して【グランプリ・広州2016】に出たりしたら、やっぱマジックめっちゃ楽しいし燃えるしもっとやりたいまだまだやりたいってなってます☆

目標を立てて、達成するために頑張ることが好きです。そして目標は大きければ大きいほど良いと考えてます。

大きな目標を達成するには犠牲は付きものだとも思います。でも、犠牲にしすぎちゃいけないものが存在するということ、それもまた事実ですね。


2016-2017 シーズン目標は、

「バランスを大事に量より質で頑張り、世界選手権2017の参加権を得る」

です。



協力、応援してくれる方々には、本当にいつも感謝しています!

まだまだ走るので引き続きよろしくお願いします!!


トモハル


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