(小説「The Brothers’ War」プロローグより訳)
それは世界が終わる前夜のこと。
不毛の谷の両端から、二つの軍勢が対峙していた。かつては瑞々しい緑を湛え、幅広く曲がりくねる川に刻まれ、それを挟む丘は樫、ブランチウッド、鉄根の深い木立に覆われていた。今やその木々は失われ、残るのはただ崩れかけの切株だけ。草も燃やし尽くされてその下の土は踏み締められ固く痩せていた。川は分厚い油の膜に覆われた緩い流れとなり、その水面を破るのは時折の名もなき暗い塊だけだった。
分厚く黒い雲が月も星も視界から遮っていた。テリジア大陸では季節外れの暖かい天候が続いていたが、アルゴスは雲に覆われ冷え込んでいた。来たる戦いに備える両軍はあらゆる森に火をつけた、それが敵の物資となるのを防ぐためだけに。日中には鈍色の雲が、伸ばされた未精製の鋼板のように立ち込めていた。夜になれば空に光はなく、今や何千もの篝火と鋳造所の光だけが風景に点在していた。谷の両側で、両侵略軍の明かりが、まるで闇の中の邪眼のように輝いていた。
こんにちは、若月です。
これはウルザとミシュラの兄弟戦争の全貌を描いた小説「The Brothers’ War」冒頭からの訳です。兄弟戦争終結、最終決戦前夜のこと……雰囲気だけでも感じ取っていただければと思いましたが、この小説は量も内容も実に重厚でして、それゆえに紹介に苦労する一本でもあります。そのため、この記事では「美味しいとこ取り」で進めて行くつもりです。既に内容を詳しくご存じの方は「ここ書いてないじゃねーか!」と思われるかもしれませんが、必要な箇所は今後の回で随時取り上げますのでご了承下さい。
というわけで今回は久しぶりの「リマスター」シリーズ、ウルザブロックに入る前にその前日譚である「兄弟戦争」つまりは『アンティキティー』のお話です。
1. アンティキティーとは
ウェザーライト・サーガ全体の中で、ウルザブロック (「アーティファクト・サイクル」とも呼ばれますがこの連載では「ウルザブロック」で統一しましょう) は「回想シーン」に当たります。マジックのセットは全てが時系列順に並んでいるというわけではなく、たまに過去に飛ぶこともあります。例えば『運命再編』は (『タルキール覇王譚』から) 1280年前の過去の物語でした。また神河ブロックはその前後のミラディンブロック・ラヴニカブロックからずっと昔の物語とされています。
そして『アンティキティー』、実際に遥か昔のセットという印象を持つ人も多いかと思います。発売は今から23年前の1994年3月。『アラビアンナイト』に続くマジック史上二番目の、そして『Limited Edition Alpha』 (アルファ版) から名前だけは登場していたウルザとミシュラの物語が、つまりはマジックオリジナルの物語が初めてはっきりと語られたエキスパンションです (『アラビアンナイト』は要するに「千夜一夜物語」なので完全にオリジナルではないということで)。
ウルザとミシュラの名が初めて登場したのはこの3枚。アルファ版においては本当に名前だけで、フレイバーテキストにも特にこれ以上の情報はありませんでした。ちなみにウルザ・ミシュラ以外にもアルファ版に名前が出ている有名キャラクターはセンギアやセラ、そしてノリン(!?)。
そのように最初は名前だけ出ていた様々な人物や地名が、『アンティキティー』にて明確に「一本の物語」を構成するカードとして登場しました。マジックの物語の歴史が真に始まったセット、と言っていいかもしれません。更には『アンティキティー』で初めて登場し、20年以上経った今でも聞く名も存在します。「アルゴス」「コイロス」そして「ファイレクシア」。
カラデシュ世界のかわいい厄介者、グレムリンも実は『アンティキティー』が初出。とはいえその姿はだいぶ異なりますね。
まあグレムリンはともかく、そのように後のマジックの物語において重要となる情報が非常に沢山提示されたのが『アンティキティー』です。ちなみにウルザとミシュラ本人とわかるアートは『アンティキティー』には存在せず、両者の姿がカードに登場したのはウルザが《精神力》、ミシュラが《仕返し》《内骨格器》と、ずっと後の時代になります。
また、「アーティファクトが大きく取り上げられている」「ウルザの物語が語られるセット」ということで、『アンティキティー』もある意味ではウルザブロックの仲間と言えるかもしれません。エキスパンションシンボルもアンティキティーが「金床」、サーガが「歯車」、レガシーが「ハンマー」、デスティニーが「フラスコ」と、製作や研究といった一連の方向性が感じられます。
2. 兄弟戦争の人々
「兄弟戦争」。最近マジックを始めた人でも、聞いたことはある単語かもしれません。この連載でも何度も言及してきました。MTGWikiから引用しますと、
兄弟戦争/Brothers’ Warとは、20ARごろ~64ARまで続いた、テリシア/Terisiare大陸全土を巻き込んだ大戦争。 単純に国家間の争いだけではなく、ウルザ/Urzaとミシュラ/Mishraの、兄弟の争いであり、ドミナリア/Dominariaとファイレクシア/Phyrexiaの前哨戦または代理戦争とみなすこともできる。
という感じに、マジックの物語を語る上で欠かせないとても重要な出来事の一つです。
まずは、兄弟戦争の物語にて大きな役割を果たすキャラクター5人を紹介しておきましょう。
その「兄弟」であるウルザとミシュラ、それぞれの有名な弟子が一人ずつ、そして裏から兄弟戦争を操ったファイレクシアの工作員。皆結構有名なカードに名前が出ていますので背景ストーリーを知らずとも聞いたことはあるかもしれません。そして5人とも特殊大判セット「Vanguard」にてカード化されていまして、そのフレイバーテキストが各キャラクターの的確かつ簡潔な説明になっているので訳しました。
■ウルザ
比類なき名声を持つ工匠、ウルザはプレインズウォーカーとなる以前からも謎を解くことが得意であり、それに取りつかれていた。世界を一つの巨大な、統合され完全な機械とみなすことは彼の最大の長所かつ弱点であり、それによってほぼありとあらゆる問題を解明するとともにその解決策が他に及ぼす影響に対して盲目にさせていた。
以前にも書きましたが、ドミナリアにおけるウルザの評価は時代によって異なります。ある時は世界を荒廃させた極悪人、ある時はファイレクシアの侵略を退けた英雄。カードとしては昔からのプレイヤーには何といっても《ウルザの激怒》、現在ではモダンフォーマットでの「ウルザランド」が有名ですね。
背景ストーリーの何か惨事の話題になったときに、半ば冗談に、半ば本気に「だいたいウルザのせい」という言葉を聞いたことのある人は多いかと思います……まあ、だいたい否定はできない、というのが正直なところです。でもとりあえずエルドラージとは関係ないはずです(ウルザが生まれる遥か以前にゼンディカーに封印されたので)。
ちなみに《無明の予見者》としてカード化されていることは割と知られている彼ですが、これは『インベイジョン』の物語にて「怪しく謎めいた物知りの老人」的な姿をとってしばしばジェラードたちと共に行動していたときのものです。いずれそこまで辿り着いたときに詳しく書くと思いますが、すっげー怪しかった。
■ミシュラ
兄を補完し、また対照的な存在として、ミシュラもまた複雑なアーティファクト技術の達人だった。巨大なファイレクシアの戦闘エンジンを最初にドミナリアへと持ち込んだことは彼の強みであり、同時にそれは弱点となって彼を、ウルザを、そしてドミナリアそのものを破滅の時へと突き進ませることになる。
ウルザは室内に籠っての学術的研究を好みましたが、ミシュラはむしろ実地調査に励む方でした。ミシュラと言えばやはり《Mishra's Workshop》。兄弟揃って無色マナの扱いが得意ですねえ。また最近では何といっても《ミシュラのガラクタ》。
そのフレイバーテキストとアートから、これは彼がファイレクシアに取り込まれた後のものだとわかります。中央の「黒い涙を流す仮面」はファイレクシアの意匠の一つとして様々なカードに登場しており、また『アポカリプス』のエキスパンションシンボルにもなっています。
■ タウノス
タウノスは純真な疑問と生来の技術をウルザの仕事場にもたらし、そして工房の魔術師らと華麗な王宮との懸け橋となった。彼は迅速さと柔軟性でただちに見習いから主席工匠の座に駆け上がっていった。
《Candelabra of Tawnos》フレイバーテキスト(Wisdom Guildデータベースの翻訳より引用)
単純さを極めることによって、目立たぬが素晴らしく有用なものが生まれるという事実を、タウノスはウルザからすぐに学びとった。
《トリスケリオン》フレイバーテキスト(翻訳は『基本セット第4版』より)
タウノスの頭脳が生んだトリスケリオンは、のちに多才で有用であることが明らかになった。
タウノスはウルザの弟子です。時に師の考えや行いに疑問を抱きながらも、兄弟戦争の終結まで誠実に仕えました。そして「悪名高い」ウルザの弟子でありながら、その誠実な人柄によって多くの者から信頼を得てきました。
■ アシュノッド
兄弟戦争以前、ミシュラがファラジ王国の軍備増強を指揮していた頃、アシュノッドは腹心として彼を支えていた。だがミシュラが金属と石を扱っていたのに対し、アシュノッドは生きた肉体を用いた。彼女はあらゆる生命体を機械の原型とみなしていた。彼女が行った「改良」は敵も味方も怖れさせた。
《Cursed Rack》フレイバーテキスト(翻訳は『基本セット第4版』より)
アシュノッドは多くの拷問技術を考案した。それらは犠牲者が、たとえ何マイルの彼方にいようとも、最後の日が来たように慈悲を乞うほどのものであった。
《アシュノッドの供犠台》はとても古くから無限コンボの友でした。彼女の名を冠すカードでは他にも《アシュノッドの人体改造器》や《アシュノッドの戦具》など、見た目も能力もぞっとするものが並んでいます。《アシュノッドの戦具》は今見ると装備品ですねこれ。名を冠すカードの通りに嗜虐的な性格の女性として知られています。一方でタウノスとは同じ「弟子同士」として共感するものがあったのか、師匠同士ほど敵対はしていませんでした。
■ ギックス
冷酷さとむき出しの野心をもって、ギックスはファイレクシアの体制の中を法務官という至上の地位にまで駆け上がった。ファイレクシアでも最も重要な行いの多くを監視する間にも、ギックスは支配を追い求め続けている……弱者が強者の弾となるファイレクシアにて。
ギックスは元々、あのヨーグモスと同時代の人間でした。彼はヨーグモスによってファイレクシア人となり、古代スラン帝国とファイレクシアの戦争に従事しましたが最終的には主と共にドミナリアから閉め出されてしまいました。そして長い時を経て、再びドミナリアに接触します。兄弟がそれと知らず開いてしまったポータルから……
3. 兄弟戦争
それでは、いつもの「リマスター」シリーズのようにカードを踏まえながら物語を解説していきたいと思います。
マジックの物語世界の暦は「Argivian Reckoning/AR」で記されています。最近の年代設定は実のところはっきりしていないのですが、少なくともドミナリアで物語が展開していた頃はARで記されていました。その起点はウルザとミシュラの生年。この兄弟は同じ年の元日と末日に生まれた、ほぼ年子の兄弟です (ドミナリアは我々の地球よりも一年が長い)。とても仲良し、というわけではありませんでしたが兄弟の間には確かな理解がありました。二人は子供だった頃から古代スラン帝国の遺物を発掘する考古学キャンプに出入りし、そこでトカシア/Tocasiaという老考古学者の弟子となりました。
《羽ばたき飛行機械》フレイバーテキスト(翻訳は『基本セット第4版』より)
多くの学者が信じる説によれば、この羽ばたき飛行機械こそ、ウルザが機械生命に挑戦した最初の試みの結果であるという。恐らく、トカシアの見習いであった青年時代に作られたのだろう。
トカシアは結構多くのカードのフレイバーテキストに登場していますが (2017年4月現在10枚)、最も有名なのはこちらかと思います。この《羽ばたき飛行機械》も発掘された遺物の一つでした。それに魅せられた彼らは長い時間をかけて修復し、やがて師弟三人はそれに乗って飛んだ先で廃墟となった一帯を発見します。そこはかつてのスラン帝国の遺構であり、ウルザは古いアルガイヴの言葉で「秘密」を意味する「コイロス」と名付けました。
そして彼らは一つの洞窟を調査すべく中へと進み、台座に乗った輝く石を発見しました。
《Mightstone》フレイバーテキスト(Wisdom Guildデータベースの翻訳より引用)
彼の弟ミシュラと、師匠トカシアで一緒にコイロスの聖窟を探検していた時の事。遅れたウルザはタグシンの広間で驚くべきマイトストーンを発見した。
《Weakstone》フレイバーテキスト(Wisdom Guildデータベースの翻訳より引用)
兄弟の少年時代、トカシアはコイロスの聖窟の探検に彼らを連れて行った。そこ、タグシンの広間で、ミシュラは神秘的なウィークストーンを発見したのだ。
その石は不思議なことに二つに分かれ、兄弟それぞれが一つずつを手にしました。二人はその事実も重要性も知らなかったのですが、その石は太古の昔からとある扉を封じていたのでした。兄弟はそれぞれの石に取り憑かれ、互いのそれを奪うことを考えます。やがて二人の間に決定的な諍いが起こり、その争いの巻き添えでトカシアを死亡させてしまいました。ミシュラは砂漠の只中へと逃走し、ウルザもまた考古学キャンプの解散と共に独りで旅立ちました。
やがて二人は成長し、それぞれの住む地で力を得るに至ります。ウルザはヨーティア国/Yotiaの都市クルーグ/Kroogにて (主に持参金のアーティファクト目当てで) 将軍の娘婿となって軍備の増強に励み、またこの頃に弟子のタウノスを得ました。ミシュラは砂漠の国ファラジ/ Fallajiで奴隷となっていたのですが学識の深さから王子の教育係を命じられ、彼もまたこの頃に弟子のアシュノッドと出会いました。
《クルーグの護符》フレイバーテキスト(翻訳は『基本セット第4版』より)
ウルザが最初に得た盟友の中に、クルーグの街の人々がいた。ウルザは友好のあかしとして、街の治療師たちに強力な護符を贈った。以来、何千もの人々が癒しを求めてクルーグを訪れた。
そしてミシュラはそれだけではありませんでした。ある時彼はアシュノッドを伴ってコイロスの洞窟を再訪し、開いていたポータルを通ってその先の世界を訪れました。
最初に気が付いたのは熱だった。乾いて快適な砂漠の熱ではなく、アルマーズの沼地のような重く湿った熱を。それは毛布のように彼女にまとわりついた。今や彼女は腐敗と腐朽の辛辣なその匂いを感じた。違う、それだけではなかった。油と薬品の匂いもあった。(略)
色彩があった。密林の植物が騒々しく取り巻き、花々が暗緑色の葉と蔓の海に鮮やかな斑模様を描いていた。だがその色には違和感があった。あまりに濃く、眩しく、異質で、金属的光沢を帯びていた。そして蔓は……一様で、何らかの自然のものというよりはケーブルに近かった。彼女は花の一つに手を触れ、だが素早く引っ込めた。その花から染み出ていた液体はわずかに腐食性で肌を刺した。一匹の蜻蛉がその花にとまったが、近づいて観察するとそれは本物の昆虫ではなく、銀の針金と黄金の板で作られた小型の機械だった。彼女はそれを捕まえようと手を伸ばしたが、その蜻蛉は瞬時に飛び立ち、密林の奥深くへと逃げていった。
彼女は振り返った。ミシュラが輝く円盤から踏み出した、まるで海から泳者が出て来るように。
「ああ。覚えている通りだ」
「ここに来られた事があるのですか?」
「夢の中でだが」
その返答もまた、散漫で夢のような声だった。アシュノッドは杖を強く握りしめ、空を見上げた。ぼんやりと赤く輝く曇り空は、雪の下の赤熱した石炭を思わせた。
「ファイレクシア」ミシュラがようやく言った。
(小説「The Brothers’ War」チャプター12より抜粋・訳)
ファイレクシアの「第一層」は一見私達が知るものと変わらない自然の風景が広がるも、よく見るとそれは全て人工物という場所です。この時ミシュラはファイレクシアに長居はしませんでしたが、三体の《ドラゴン・エンジン》を持ち帰りました。
やがて、開いた扉からファイレクシアの勢力がドミナリアへの侵入を開始します。ファイレクシアからの「夢」を受け取った者達――「ギックスの兄弟団」がコイロスの洞窟を訪れ、その者らの精神から法務官ギックスはミシュラを知ることになります。彼は使者をミシュラ配下に侵入させ、ミシュラは彼らの誘惑に従ってファイレクシアの手駒と化していきます……。
その一方で、兄弟が身を置いていたヨーティアとファラジは対立関係にあり、やがて二人は敵同士として再会します。テリジア大陸に戦乱の嵐が吹き荒れました。
《Artifact Blast》フレイバーテキスト(Wisdom Guildデータベースの翻訳より引用)
ウルザとミシュラの戦いに対する最前線で、秘宝破はその名声が広く行き渡っていた。不運な魔道師が兄弟がすでに作ってしまった機械には役に立たないと気付く前のことではあるが。
《露天鉱床》フレイバーテキスト(翻訳は『基本セット第4版』より)
それ以前の戦いとは異なり、ウルザとミシュラの戦いでは、ドミニアそのものさえも戦争の犠牲となった。
※ドミニアとドミナリア
「ドミニア/Dominia」はマジックの世界全体、今で言う「多元宇宙/Multiverse」。「ドミナリア/Dominaria」はその中の一つの世界の名です。昔はしばしば混同されていました。
そしてAR57年頃、飛行機械に乗っていたウルザの息子ハービンは嵐に巻き込まれて漂流し、未踏の陸地に辿り着きました。そこは豊穣なるアルゴスの島(※大陸説もあり)。
《横風》フレイバーテキスト
ハービンの羽ばたき飛行機械は嵐の中に2日間閉じこめられた。空が晴けてみると、見えるのは木々の地平線だけだった。
《踏査》フレイバーテキスト
最初の探検隊員はアルゴスを自然の富の宝庫だと思った ――― 豊富な鉱脈の上に生い茂る豊かな森の国だと。
ハービンは自力で飛行機械を修理して帰還し、アルゴスの存在を自軍に伝えます。それは願ってもない資源の宝庫でした。ミシュラ軍もやや遅れてアルゴスを知り、そして辿り着いた両軍はまずアルゴスを守ろうとする現地の人々との戦いを繰り広げます。兄弟はそれぞれこの地を征服しようとし、また互いにその資源を与えまいとしました。まずは森そのものが彼らに対して立ち上がりましたが、両軍の機械の軍勢はあまりにも破壊的でした。
《Argothian Treefolk》フレイバーテキスト(Wisdom Guildデータベースの翻訳より引用)
耳の奥にまとわりつく、あの泣声を夢の中で聞いたのだ。機械が森に死をもたらした時の声をね。
《Citanul Druid》フレイバーテキスト(Wisdom Guildデータベースの翻訳より引用)
アルゴスが滅んだ時より狂気の淵に追いやられ、シタヌールのドルイドは戦いの中にしか心の平穏を見い出せなくなってしまった。
当時のアルゴスの長が、実は割と最近カード化されています。
『統率者(2014年版)』、「自然の導き」デッキ付録の説明書より引用
ティタニアはドミナリアにあるアルゴスの森の精霊の化身でした。ある者には女神であると考えられていた彼女はその土地と密接に結びついており、彼女の怒りにあわせて大地を戦いに駆り立て、土地が略奪されることで苦しみました。皮肉なことに、アルゴスの豊かさがその破壊をもたらしたのです。兄弟戦争とも呼ばれる戦いで争っていた工匠の兄弟のウルザとミシュラは、彼らの戦争で使用する機械を維持するのに新たな資源を必要としていました。(後略)
彼女らの奮闘も空しくアルゴスは不毛の大地となり、やがて最後の戦いの時がやって来ました。曙光とともにドラゴン・エンジンが動き出し、飛行機械が舞い上がります。そして軍の片翼を任せられていたタウノスはある時、敵陣に奇妙な一団を確認しました。よく見ると彼らは身体の一部を機械に置き換えていました。ギックスの兄弟団。アシュノッドの作品かとも思いましたが違和感がありました。そして奇妙なことに両軍の機械兵は共に凶暴化し、敵味方見境なく攻撃を始めました。混乱の中でタウノスはアシュノッドと合流し、ですが彼女は襲いかかってきた悪魔からタウノスを逃がします。一方で兄弟は遂に戦場で対面しますが、ウルザが驚いたことにミシュラは今もまだ青年の姿でした。
「やあ、兄さん。調子悪そうだね。機械に命を吸い取られたんだね。失敗だったね、兄さんの多くの失敗の一つだ。兄さんは自分が老いるがままにさせて、もう消えそうな光になってるじゃないか。最後に一度だけ話そうか、それとも今殺そうか? 力というのは何処にあるんだと思う? 兄さんは僕の石がまだ欲しいのかな? ほら、あげるよ! 兄さんは一度も本当の力を知らなかったよね。自分で戦ってこなかったよね。機械と計算の安全な世界に閉じこもってさ。それが間違った道だったってわかったと思うけど。兄さんは老いて死ぬ、けれど僕は兄さんの土地と民と機械を手に入れて僕の望むままにしてやるよ」
(略) ウルザは弟が逃げるのを見て、何がミシュラをここまで強くしたのかを把握した。ウルザの攻撃によってミシュラのローブが燃え、それとともにその下の皮膚までも熱で剥がれてしまっていた。皮膚の下にあったのは金属だった。ウルザがそれを目にしたのは一瞬だったが、それで十分だった。四肢であったものは金属板に、筋肉として働いていたものは滑車と絡み合った鋼線だった。
(小説「The Brothers’ War」チャプター34より抜粋・訳)
《仕返し》フレイバーテキスト
不潔な、金属的な悪臭でウルザの五感が圧倒された。そのとき、ウルザは弟がもう弟でないことを悟った。
弟であったものを、そして今や戦場に満ちるファイレクシアの機械を見てウルザは成すべきことを理解します。
謎めいたアーティファクト、《Golgothian Sylex》の真の由来は明かされていません。《第三の道のフェルドン》が手に入れ、アシュノッドが奪い、そこからタウノスに渡され、ウルザの手に辿り着きました。世界に破滅をもたらすとされる杯、そしてその使用法も刻まれていました。
Wipe the land clear. Bring the ending. Topple the empires to bring a fresh start.
Call the end, fill with memories of the land.
(小説「The Brothers’ War」チャプター24より抜粋)
杯を前に精神を集中させるウルザ。辺りからは大地の泣き叫ぶ声が聞こえていました。マイトストーンに揺さぶられてか否か、彼の中に何かの力が芽生えつつありました。けれどそれを追求している時間はありません。ミシュラが戻ってきて、向かってきていました。先程よりも更に機械に近い姿で。
『大地の記憶で満たし、終焉を呼ぶ』。ウルザはその生涯を、戦争への悔恨を、弟への悔恨を全て杯へと注ぎ込み――
杯の底から閃いた光が外へ、上へ広がり、第二の太陽となって触れたもの全てに火をつけた。ウルザはその光をほんの一瞬感じ、その中で微笑んだ。最後に見えたのは弟の姿、機械に融合した、共に衝撃波に飲み込まれた。弟の顔に浮かんでいた笑みはその身体のシステムが切れると共によじれた偽の笑顔となった。そしてミシュラとドラゴン・エンジンであったものは最小の粒子にまで零落し、その粒子もまたウルザが呼び寄せた爆発の力に捕えられた。そして遥か、遥か遠くへと吹き飛ばされていった。
そしてウルザもまた、消えた。
(小説「The Brothers’ War」チャプター34より抜粋・訳)
そしてどれほどの時間が経過したのか、地中で《Tawnos's Coffin》に籠って生き延びたタウノスの前にウルザが現れ、告げました。この戦争を語り継いで欲しい、自分の行いを決して繰り返させないようにと。ミシュラは、と尋ねるタウノスへとウルザは悔恨とともに答えました。遥か昔に弟はあの機械の帝国に殺されていたのだと、自分は知るよしもなかった……と。タウノスが気付いたその両眼は人のものではなく、輝く石でした。
そして歩き出したタウノスを、降り始めの雪が追いかけていました。
……そうして兄弟戦争は終結し、アルゴスは完全に破壊され、ドミナリアは寒冷化を始め、ウルザはプレインズウォーカーとして多元宇宙を放浪し、そしてファイレクシアへの復讐を開始します……
(続く)
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