皆さんこんにちは。
この記事を読んでくださっている方は既にご存知だと思いますが、《血編み髪のエルフ》と《精神を刻む者、ジェイス》が解禁されました。《死儀礼のシャーマン》の巻き添えで禁止になったと噂の《血編み髪のエルフ》ですが、その当時メタを支配していたJundも、最近はTier2かどうかも怪しい立ち位置だったので、解禁を予想していた方も多かったと思います。
《精神を刻む者、ジェイス》は筆者も予想していませんでした。レガシーにおいてトップメタである4C LeovoldやMiraclesなどがフィニッシャーとして採用しているほどの強さで、過去のスタンダードではその強さと万能さ故の採用率により禁止カードに指定されていました。モダンでは初めから禁止だったため、多くのプレイヤーがこれは解禁して大丈夫なのかと論争しています。
筆者も青が好きで当時のスタンダードで使っていた思い出もあるので、《精神を刻む者、ジェイス》の解禁にはとてもエキサイトしていますが、果たして環境にどのような影響を与えるのかは未知数です。モダン環境はレガシーのように《意志の力》のようなスペルはほとんどなく、コンボデッキに対しても4ターン目にタップアウトするのはリスクがあります。《血編み髪のエルフ》のような天敵も解禁され、BurnやAffinityなど速いデッキに対しては間に合わないこともあるので、環境を歪めるほどにはならないと考えています。
さて、今回の連載では解禁がどのような影響を与えたのか、禁止改定後に開催されたイベントの入賞デッキを見ていきたいと思います。
MODERN CHALLENGE #11176218
禁止改定後の最初のモダンの大規模なイベントを制したのはBurn
2018年02月17日
- 1位 Burn
- 2位 Burn
- 3位 Grixis Death’s Shadow
- 4位 Grixis Control
- 5位 Living End
- 6位 Taking Turns
- 7位 BR Hollow One
- 8位 BG Tron
トップ8のデッキリストはこちら
MOではリアルよりも早く《血編み髪のエルフ》と《精神を刻む者、ジェイス》が解禁されたこともあり、注目を集めていました。
歴代の解禁カードと比較して、環境に大きな影響を与えるとされていた《血編み髪のエルフ》と《精神を刻む者、ジェイス》でしたが、流石に新環境になって初のイベントだけあり、Death’s ShadowやTronなど既存のデッキの活躍も目立ちました。
今大会はBurnのワンツーフィニッシュによって幕を閉じました。新環境ではBurnのように積極的にライフを攻める戦略が勝ちやすい傾向にあり、遅く多色になりがちな《精神を刻む者、ジェイス》デッキの多くに対して強いので妥当な結果だと言えます。
MODERN CHALLENGE #11176218 デッキ紹介
「Grixis Control」「Taking Turns」
Grixis Control
1 《山》
1 《沼》
2 《蒸気孔》
2 《湿った墓》
1 《血の墓所》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
4 《廃墟の地》
1 《硫黄の滝》
2 《忍び寄るタール坑》
-土地 (26)- 4 《瞬唱の魔道士》
1 《ヴリンの神童、ジェイス》
-クリーチャー (5)-
4 《思考掃き》
2 《致命的な一押し》
1 《呪文嵌め》
2 《論理の結び目》
1 《対抗突風》
1 《戦慄掘り》
1 《終止》
4 《コラガンの命令》
4 《謎めいた命令》
2 《アズカンタの探索》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (29)-
2 《払拭》
2 《集団的蛮行》
2 《神々の憤怒》
1 《イゼットの静電術師》
1 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
1 《儀礼的拒否》
1 《対抗突風》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《滅び》
-サイドボード (15)-
プロツアー『イクサランの相克』でもGrixis ControlマスターのCorey Burkhartが、モダン部門を8-2という好成績を残していたGrixis Controlは、《精神を刻む者、ジェイス》の解禁によって大幅に強化されたデッキの1つとして注目を集めていました。
軽い除去や妨害スペルに恵まれており、HumansやAffinityなどに特に強いデッキとされていますが、フェッチランドやショックランドを多用するのでライフの損失が激しいため、メインではBurnとの相性が悪くなります。また多くの青いフェアデッキと同様に、Tronのような土地コンボに対しても不利が付きます。
☆注目ポイント
《精神を刻む者、ジェイス》の解禁は青いデッキの強化に貢献し、今後の青いデッキには必須となりそうです。これにより各カードの評価も大幅に変化しそうです。このデッキは多数採用されたフェッチランドや軽い除去、妨害スペル、《瞬唱の魔道士》など、《精神を刻む者、ジェイス》の強さを活かせる要素が揃っています。レガシーと同様に《渦まく知識》能力からフェッチランドで手札をリフレッシュしたり、《瞬唱の魔道士》をバウンスして墓地の除去を使い回すことで自身を守りつつアドバンテージを稼ぐ、といった使い方も可能です。赤いデッキに対しては《稲妻》をケアするために「+2」能力から始めた方が良さそうです。モダンの高速化によって、安全に4ターン目にキャストしてコントロールすることは厳しくなりますが、神ジェイスと呼ばれているほどの強さは健在のようです。
《コラガンの命令》と《瞬唱の魔道士》によるカードアドバンテージは、ロングゲームを制するキーとなります。《精神を刻む者、ジェイス》の「-1」能力によって容易にバウンスされてしまうため、「探査」クリーチャーは不採用となっています。
このデッキにとって、絶望的な相性のデッキであるTronに対抗するために、3色でありながら《廃墟の地》がメインからフル搭載されています。マナ基盤としてではなくスペルとしてカウントされているようで、土地の枚数が26枚と多めです。墓地を利用するカードや《アズカンタの探索》、《ヴリンの神童、ジェイス》を早い段階で変身させられるようにドロースペルは《思考掃き》が選択されています。
除去の選択にも若干変化が見られます。インスタントスピードの《終止》は、ミシュラランドや《血編み髪のエルフ》など速攻を持つクリーチャー対策になり、隙も小さく優秀ですが、《精神を刻む者、ジェイス》を始めとしたプレインズウォーカーにも触れる《戦慄掘り》の地位も向上しています。サイドの《集団的蛮行》は、このデッキにとって相性の悪いBurn対策で、全てのモードが役に立つので最低でも2枚は入れておきたいスペルです。
Taking Turns
《精神を刻む者、ジェイス》の禁止解除は、コントロールやミッドレンジ以外のデッキも恩恵を受けています。
《時間の熟達》や《時間のねじれ》などで追加のターンを得るスペルを繋げていき、相手の行動を封じるロックデッキは旧環境でも存在しました。《吠えたける鉱山》 や《クルフィックスの指図》などを置いてロックすることに特化したスタイルでしたが、《渦まく知識》と同様の効果を持つ《精神を刻む者、ジェイス》の「+0」能力によって必要なカードを探すことが容易になり、それ自体も勝ち手段になります。
☆注目ポイント
《精神を刻む者、ジェイス》の《渦まく知識》能力は、手札に来てしまった《時間の熟達》をライブラリートップに戻すことを可能にするので、「奇跡」を仕込むことができるようになりました。サイドには《終末》が採用されており、アグロデッキとの相性が改善されています。サイド後はコンボ要素を持ったコントロールとしても振舞えるようになりました。
《予言により》+「待機」スペルのコンボも搭載されており、《祖先の幻視》を「待機」させることなくドロー3してアドバンテージを得たり、《死せる生》で相手の戦場を更地にしたりと追加ターンスペルを引き当てる助けになり、時間を稼いだりと様々な場面で活躍します。
《疲労困憊》は追加ターンスペルではありませんが、相手のアンタップを飛ばすことで《精神を刻む者、ジェイス》を安全に着地させるための時間を稼ぎます。ドローを進めることで《時間のねじれ》など追加のターンを得て、《精神を刻む者、ジェイス》の忠誠値を増やしていき、最終的に相手のライブラリーを追放します。
MODERN CHALLENGE #11192645
Jundの復権
2018年2月24日
- 1位 Tron
- 2位 BR Hollow One
- 3位 Jund
- 4位 Jeskai Control
- 5位 Burn
- 6位 Eldrazi Tron
- 7位 Jund
- 8位 Titan Shift
トップ8のデッキリストはこちら
MOで毎週開催されるモダンの大規模なイベントであるModern Challengeは、優勝こそTronに譲ったものの《血編み髪のエルフ》の解禁により強化されたJundが復権し、《精神を刻む者、ジェイス》デッキの代表格とされていたJeskai Controlも勝ち残っていました。
今大会で決勝まで残ったデッキは、前環境からトップメタの一角として安定した成績を残し続けている土地コンボのTronと、プロツアー『イクサランの相克』でも日本人プロの行弘 賢選手が使用し見事にプレイオフ進出を果たしたBR Hollow Oneでした。
《血編み髪のエルフ》と《精神を刻む者、ジェイス》がいかに強力であっても、3ターン目から《解放された者、カーン》や1~2ターン目に複数展開される《虚ろな者》の対処は一筋縄ではいきません。TronもBR Hollow Oneも最初の3ターン以内にゲームを決定付ける脅威を展開することが可能で、「モダンはプロアクティブでスピードで勝る脅威が幅を利かせている環境」という公式の声明が禁止改定の際にありましたが、今大会の決勝は正にそれを証明した結果になりました。
MODERN CHALLENGE #11192645 デッキ紹介
「BR Hollow One」「Jund」
BR Hollow One
1 《沼》
3 《血の墓所》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《乾燥台地》
4 《血染めのぬかるみ》
3 《黒割れの崖》
-土地 (18)- 4 《炎刃の達人》
4 《恐血鬼》
4 《炎跡のフェニックス》
4 《虚ろな者》
4 《通りの悪霊》
1 《黄金牙、タシグル》
2 《グルマグのアンコウ》
-クリーチャー (23)-
プロツアーでも活躍していた《燃え立つ調査》 や《信仰無き物あさり》、《ゴブリンの知識》といったスペルによって《虚ろな者》を高速展開していく爆発力の高いデッキで、解禁後猛威を振るう《精神を刻む者、ジェイス》に対抗し得る戦略としても注目が集まっています。
デッキの性質上どうしても初手に左右されるので、マリガンをシビアにしていくことが重要になるデッキです。カード単体のパワーは低めですが回った時の爆発力はすさまじく、1ターン目から《虚ろな者》複数体を展開し、3ターン目にはゲームが終わることもあります。
☆注目ポイント
デッキ名にもなっている《虚ろな者》は、「サイクリング」かディスカードする毎に2マナ軽減されるので、《信仰無き物あさり》+《通りの悪霊》による組み合わせや、《燃え立つ調査》や《ゴブリンの知識》によってコストがフリーになります。しかし、《燃え立つ調査》と《ゴブリンの知識》は無作為にカードを捨てるため、《虚ろな者》自身が墓地に置かれてしまうこともあります。確実性に欠けるのが難点ですが、上手くいけば他のデッキでは中々真似できない強力な動きが可能です。
カードを捨てることによって墓地も肥えるので、《グルマグのアンコウ》や《黄金牙、タシグル》といった「探査」クリーチャーや、土地を置く度に墓地から復活してくる《恐血鬼》も採用されています。《炎跡のフェニックス》はあまり見かけないクリーチャーですが、再利用可能な速攻持ちの飛行クロックは強力です。墓地から復活するクリーチャーを多数採用しているので《流刑への道》など一部を除く除去に耐性があります。ディスカードと相性の良い《炎刃の達人》も回避能力持ちなので、このデッキでは強力なクロックとして機能します。
メインは妨害や除去は必要最低限にまで絞られていますが、《集団的蛮行》 は「増呪」によりブロッカーを除外しつつ相手のプランを妨害し墓地を肥やすので、このデッキの方向性にもフィットしています。サイドの《渋面の溶岩使い》は墓地を肥やすこのデッキと相性が良く、追加のダメージソース、除去として活躍します。メイン、サイドと共に採用された《血染めの月》は今では赤いデッキの嗜みとも言えるほどのカードで、特殊地形に頼った多くのデッキに刺さります。プロアクティブで直線的な戦略でモダンらしいデッキです。
Jund
2 《森》
2 《血の墓所》
1 《草むした墓》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《新緑の地下墓地》
3 《血染めのぬかるみ》
1 《樹木茂る山麓》
4 《黒割れの崖》
3 《樹上の村》
2 《怒り狂う山峡》
-土地 (25)- 4 《闇の腹心》
4 《タルモゴイフ》
3 《漁る軟泥》
4 《血編み髪のエルフ》
-クリーチャー (15)-
3 《コジレックの審問》
1 《思考囲い》
2 《終止》
1 《集団的蛮行》
2 《コラガンの命令》
2 《大渦の脈動》
4 《ヴェールのリリアナ》
1 《最後の望み、リリアナ》
-呪文 (20)-
《血編み髪のエルフ》の禁止解除によってJundも復権してきています。
5年前にこのカードがモダンで禁止になる前と比べると、《最後の望み、リリアナ》、《漁る軟泥》、《集団的蛮行》、《コラガンの命令》、《致命的な一押し》など「続唱」できるスペルのバリエーションが増加しています。
旧環境では、緑黒ミッドレンジのバリエーションで結果を残していたのは緑黒の2色かAbzanでしたが、今後は《血編み髪のエルフ》の禁止解除によって《コラガンの命令》や《最後の望み、リリアナ》によって更にアドバンテージを稼ぐこともできるので、Jundも選択肢の一つとなりそうです。
☆注目ポイント
《血編み髪のエルフ》と《精神を刻む者、ジェイス》が解禁されたことで、除去や妨害スペルの優先順位も変化が見られます。《タルモゴイフ》や《死の影》といった高タフネスのクリーチャーにも効果がある《致命的な一押し》が、《稲妻》よりも優先して採用されていた時期もありました。現在は《血編み髪のエルフ》の「続唱」と相性が良い《稲妻》が《精神を刻む者、ジェイス》に対する牽制にもなるので軍配が上がります。
《集団的蛮行》は他のハンデススペルと異なり、状況に応じてモードを選択できるので、《血編み髪のエルフ》の「続唱」との相性が良く、捲れても「増呪」は可能なのでメインからの採用も理に適っています。先週末のModern Challengeでワンツーフィニッシュを果たしたBurnにも強いスペルです。
《コラガンの命令》も《血編み髪のエルフ》の解禁により強化されたスペルです。「続唱」との相性が良くアドバンテージを稼げます。《血編み髪のエルフ》は《コラガンの命令》で墓地から回収して嬉しいクリーチャーでもあります。相手のクリーチャーを除去しつつ墓地から回収し、再キャストできれば更にアドバンテージで差を付けることができます。
《血編み髪のエルフ》を再利用する手段は《コラガンの命令》だけでなく、《最後の望み、リリアナ》もあります。「-2」能力により墓地を肥やしつつ《血編み髪のエルフ》を回収します。小型クリーチャー対策にもなるので、「続唱」から捲れて嬉しいスペルの一つです。コントロールにとっても奥義はプレッシャーとなり、Jundが苦手としていた《未練ある魂》にも耐性が付きます。サイドには、追加のハンデスとして《思考囲い》が採用されていますが、今後は4マナ以上のスペルを落とせる《思考囲い》の方が《コジレックの審問》よりも優先されそうです。
Jundなどミッドレンジや青白コントロールなどの増加により、土地コンボのTronも勢力を増すことが予想されるため、《大爆発の魔道士》もフル搭載されています。しかし、《大爆発の魔道士》を4枚採用していてもTronは依然として厳しいマッチアップとなります。
ボーナストピック ~SCG IQ~
Temur Moon
禁止改定後の初のリアルの大規模なイベントであるSCG IQを制したのは、解禁された《血編み髪のエルフ》と《精神を刻む者、ジェイス》の2枚のパワーカードをフィーチャーしたTemur Moonでした。
各色からパワーカードを集めたグッドスタッフなので、デッキパワーは環境のミッドレンジの中でも随一ですが、4マナ域が多いのでマナクリーチャーによる加速も搭載されています。
☆注目ポイント
《血編み髪のエルフ》から「続唱」で《祖先の幻視》が捲れれば、多大なアドバンテージを稼ぐことができます。レガシーのShardless Sultaiを彷彿させる動きです。《祖先の幻視》は《予言により》からもキャストすることが可能なので、「待機」させる必要は少なくなりそうです。
このデッキの《血編み髪のエルフ》は、Jundのように戦場に影響のないハンデスが捲れることはないので、必ず何かしらのアドバンテージが取れるような構成になっています。カウンターは「続唱」と相性が悪いため、このタイプのデッキでは使いづらく、コンボとのマッチアップはどうしてもメインでの相性が悪くなってしまいます。《イゼットの魔除け》は《呪文貫き》として機能しつつ除去、手札の入れ替えのモードを状況に応じて使い分けていける優秀なスペルです。
RG Ponza
1 《山》
2 《踏み鳴らされる地》
1 《燃えがらの林間地》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
1 《ケッシグの狼の地》
-土地 (21)- 4 《東屋のエルフ》
2 《極楽鳥》
4 《不屈の追跡者》
1 《クルフィックスの狩猟者》
2 《高原の狩りの達人》
1 《強情なベイロス》
1 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
2 《嵐の息吹のドラゴン》
1 《スラーグ牙》
2 《業火のタイタン》
-クリーチャー (20)-
2 《台所の嫌がらせ屋》
2 《古えの遺恨》
2 《神々の憤怒》
2 《大祖始の遺産》
1 《強情なベイロス》
1 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
1 《削剥》
1 《原初の命令》
-サイドボード (15)-
赤緑の土地破壊、RG Ponzaは旧環境でも存在しましたが、このデッキも《血編み髪のエルフ》の解禁によって強化されたデッキの一つです。マナ加速から土地破壊スペルによって相手を減速させて、《嵐の息吹のドラゴン》などで相手の耐性が整う前に殴り倒すデッキです。
Tronのような土地コンボに強いデッキでしたが、今後は《血編み髪のエルフ》から土地破壊やクリーチャーによってテンポアドバンテージを取っていくミッドレンジとして見られそうです。
☆注目ポイント
マナ加速からの《血編み髪のエルフ》→《石の雨》は、回れば相手を選ばず強力な動きです。土地破壊以外にも「続唱」から《不屈の追跡者》が捲れれば更にアドバンテージが稼げます。メインからフル搭載されている《血染めの月》のおかげでTronや各種多色コントロールやミッドレンジに対して強いデッキです。
《嵐の息吹のドラゴン》は、プロテクション(白)なので《流刑への道》に耐性があり、マナコストの関係で《致命的な一押し》なども効かないのでフィニッシャーとして信頼できるクリーチャーです。
土地を破壊されながら3/2速攻クリーチャーに対処するのは容易でなく、ミッドレンジやコントロールの台頭によりTronが流行るようなら、このデッキは良い選択肢になりそうです。
プレイヤーインタビュー Joe Stempo
SCG IQ New Hollandで見事に優勝を果たしたJoeにお話を聞くことができました。Joe Stempoは、SCG Classics、Regionalsでもプレイオフに進出経験のある強豪プレイヤーで、青いコントロールやミッドレンジも得意としています。今回も、《精神を刻む者、ジェイス》の解禁により強化されたJeskai Controlを使用していました。
Jeskai Control
1 《平地》
2 《神聖なる泉》
2 《蒸気孔》
1 《聖なる鋳造所》
4 《溢れかえる岸辺》
4《沸騰する小湖》
3 《天界の列柱》
2 《硫黄の滝》
1 《氷河の城砦》
-土地 (23)- 4 《瞬唱の魔道士》
4 《呪文捕らえ》
2 《ヴェンディリオン三人衆》
-クリーチャー (10)-
3 《流刑への道》
3 《血清の幻視》
2 《選択》
1 《呪文嵌め》
3 《稲妻のらせん》
2 《論理の結び目》
1 《否認》
2 《電解》
3 《謎めいた命令》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (27)-
2 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
1 《イゼットの静電術師》
1 《天界の粛清》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《摩耗+損耗》
1 《残骸の漂着》
1 《至高の評決》
1 《石のような静寂》
1 《アズカンタの探索》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《嵐の神、ケラノス》
-サイドボード (15)-
--「優勝おめでとう。まず最初になぜJeskai Controlを選択したのか教えてくれる?」
Joe「レガシーもプレイしていて《意志の力》の強さはよく知っていたから、モダンでも《撹乱する群れ》を使いたいと思っていたんだ。実際にMagic Onlineで《撹乱する群れ》が入ったデッキが成績を残していて少し悩んだけど、最終的にはIQを勝ち抜くために使い慣れているこのデッキを選ぶことにしたよ。 」
Joe「Jeskaiは、テンポからコントロールとフレキシブルな戦略を可能とする色の組み合わせで、《呪文捕らえ》を採用したJeskaiで過去の大会では勝てたんだ。ただ、クリーチャーを少なめにしたBenjamin Nikolichのリストも試したんだけどイマイチしっくり来なかった。」
Joe「《呪文捕らえ》はモダン環境で過小評価されているカードの1枚で、《精神を刻む者、ジェイス》が解禁されたことで価値が上がったと考えている。相手のキャストした《精神を刻む者、ジェイス》を追放したり、インスタントスピードで出してプレッシャーをかけることもできる。最近また見られるようになってきた、カウンターされない《最後のトロール、スラーン》のようなスペルも追放できるから便利だね。」
Joe「Jeskaiは、9枚の火力と10枚の瞬速クリーチャーのおかげで攻守の切り替えが効いて、コントロールとしてもテンポデッキとしても振る舞えるから、ほかの遅いコントロールとのマッチアップでも優位に立てることが多かった。」
--「なるほど。Flashタイプのコントロールは、確かにプレインズウォーカーの牽制もできるから今の環境では強そうだね。今までのJeskaiと比べても、《選択》と 《血清の幻視》のスプリットや《聖トラフトの霊》の不在、サイドの《嵐の神、ケラノス》など興味深いカード選択だね。」
Joe「《聖トラフトの霊》は、コンボに対してメインフェイズでタップアウトするリスクがある上に、アグロ相手にはブロッカーがいることが多いから、強いときと弱いときのバラつきが激しくてそれほど好きなカードではなかったんだ。フィニッシャーなら《精神を刻む者、ジェイス》の方が良いね。《聖トラフトの霊》2枚の代わりに《ヴェンディリオン三人衆》2枚を採用した。《ヴェンディリオン三人衆》は瞬速持ちだから隙が少なくて、相手の《精神を刻む者、ジェイス》にも強いカードだ。」
Joe「《選択》と 《血清の幻視》のスプリットは、24枚目の土地をキャントリップに変えた結果で、《選択》はインスタントだから《瞬唱の魔道士》と相性が良くて1マナ立てておくことで《呪文嵌め》のブラフにもなるけど、《血清の幻視》の方がドロー操作としての性能は上だ。」
Joe「今回の禁止改定の影響で、ミッドレンジやコントロールが増えると考えた。サイドの《嵐の神、ケラノス》は、ほかの《精神を刻む者、ジェイス》デッキや《血編み髪のエルフ》デッキとのマッチアップで追加のフィニッシャーとして使える。Jundは基本的にこのカードに触れなくて、青いデッキもカウンターとバウンス以外に処理することが難しいから、これに対する明確なアンサーは《天界の粛清》だけど、このデッキ相手にサイドインしてくることはまずないね。」
--「《嵐の神、ケラノス》は、確かにミッドレンジやコントロールが流行るなら対処されづらいフィニッシャーとして活躍しそうだね。」
--「今回の《精神を刻む者、ジェイス》と《血編み髪のエルフ》の禁止解除についての感想を聞かせてくれる?」
Joe「個人的に禁止解除は良かったと思う。《精神を刻む者、ジェイス》は明らかに強いカードだけど、正直に話すと多くのマッチアップでサイドアウトしていた。4ターン目にタップアウトすることはこの環境ではリスクが大きくて、《精神を刻む者、ジェイス》は横に並ぶ戦略やライフを速攻で攻めてくる戦略に弱くなる。」
Joe「《血編み髪のエルフ》も強かったけど、フォーマットを歪めるほどの強さはないと思う。Jundの復権に一役買っていてAbzanよりもJundを選ぶ理由になるけど、どちらか一方のデッキが優れているというわけではないと思う。あと気が付いたことは、《血編み髪のエルフ》の解禁の恩恵を受けたPonzaも人気があって、それが多分今回Tronとあまり当たらなかった理由だと思う。Tronは確かに《精神を刻む者、ジェイス》や《血編み髪のエルフ》を使ったミッドレンジやコントロールに強い戦略だけど、もしPonzaが《血編み髪のエルフ》を使った代表的なデッキになるならTronにとってはキツイメタになりそうだね。」
Joe「《血編み髪のエルフ》は解禁されても大丈夫だとほとんどのプレイヤーが思っていたけど、《精神を刻む者、ジェイス》の解禁に関しては多くのプレイヤーは少し神経質になり過ぎているかな。Magic Onlineのメタでは《精神を刻む者、ジェイス》デッキで占められているって言われていたけど、リアルの大会ではそれほど多くなかった。リアルの方がカードが高くて資産的な問題もあると考えられるけどね。」
--「確かに《精神を刻む者、ジェイス》は$150ぐらいまで高騰したから、急に集めるのは難しそうだね。多くのプレイヤーにとっては『マスターズ25th』の再録待ちになりそうだから資産的な所も考慮に入れた方が良さそうだね。」
サイドボードガイド
今回彼がSCG IQで当たったマッチアップのサイドボードガイドも教えてもらいました。
対 Jund
Joe「Jund側は、《精神を刻む者、ジェイス》を対策するために《稲妻》を残してくるだろうから、《呪文捕らえ》の効果は薄い。3点火力はそこまで強くないから少し減らす。このマッチアップではコントロールとして振る舞うことが多くなるから、スイーパーなどコントロールスペルを多数サイドインした。《血編み髪のエルフ》が解禁されてJundはアグロ寄りのミッドレンジになったけど、《ピア・ナラーとキラン・ナラー》やスイーパーで時間を稼いで《アズカンタの探索》や《嵐の神、ケラノス》、《精神を刻む者、ジェイス》で勝つという戦略は変わらない。」
対 Burn
Joe「今回1番当たったデッキ。Burnは基本的に、4ターンキルコンボデッキとして見ているから、4マナの《精神を刻む者、ジェイス》はあまり強くない。《謎めいた命令》は、中盤以降の火力をカウンターしつつアドバンテージも得られるから少しマシなカードになる。《仕組まれた爆薬》と《天界の粛清》は、理想的な除去とは言えないけど、《仕組まれた爆薬》はクリーチャーを多くキープした相手に対して刺さることがある。」
Joe「例えば今大会では、《ゴブリンの先達》2体と《大祖始の遺産》でタップアウトした相手の戦場を一掃した。《払拭》は良いカウンターだけど、ソーサリーの火力も多いから過信しすぎないように気を付ける。《稲妻のらせん》を妨害してくる《頭蓋割り》対策に使うのが一番良い使い方になる。」
対 Affinity
Joe「相手は《感電破》を残してくるし《ギラプールの霊気格子》も考慮して《呪文捕らえ》を少し減らす。サイド後に厄介なのが《ギラプールの霊気格子》と《刻まれた勇者》だけど、親和相手にはそれらをカウンターするためのマナを立てて動くことは難しい。《石のような静寂》と《仕組まれた爆薬》はアンチシナジーになるけど、《仕組まれた爆薬》は《ギラプールの霊気格子》に対する数少ない解答なんだ。」
対 Traverse Shadow
Joe「一番サイドボードに悩んだマッチアップだったね。巧いDeath’s Shadowのプレイヤーに対しては火力で削ることは難しくてクリーチャーのサイズも射程圏外だから、火力スペルはこのマッチではあまり強くない。念のため《稲妻》を数枚残したけどもしかしたら全部抜くのが正しい選択だったかもしれない。《精神を刻む者、ジェイス》を一枚サイドアウトしているのは《頑固な否認》に引っかかりやすいから。また、《呪文嵌め》の対象になるのは《タルモゴイフ》ぐらいだからこれもサイドアウトすることにした。」
Joe「《残骸の漂着》は《頑固な否認》されることもあるけどインスタントスピードのスイーパーなのでサイドイン。カウンターされない《至高の評決》はベストだね。《ピア・ナラーとキラン・ナラー》はかなりの時間を稼いでくれる。相手の《頑固な否認》を対策するために《払拭》を一枚サイドインしているんだけど、運良く相手の《コラガンの命令》をカウンターすればテンポアドバンテージを得られる。」
対 RG Ponza
Joe「ダブルシンボル・トリプルマナシンボルの重いスペルを中心にサイドアウトしていく。また《呪文嵌め》も対象になるスペルがないからサイドアウトされる。」
Joe「Ponza側の脅威は《不屈の追跡者》以外は重いスペルが多いからマナクリーチャーは必ず火力で除去していく。マナを縛られやすいから占術する時も土地と軽いキャントリップを優先的にキープしていく。2ターン目に《瞬唱の魔道士》をキャストするのはこのマッチアップでも有効だ。相手が《石の雨》しかしてこないなら毎ターン2点ダメージによるクロックをかけることもできるし、相手のライフを攻めていけば、土地を破壊して脅威を展開される前に火力でゲームを終わらせることもできる。」
--「Jeskai Controlは禁止改定前の環境でもコンスタントに結果を残していたデッキだし、《精神を刻む者、ジェイス》禁止解除の恩恵を最も受けたデッキの一つとされていて早速結果を残していたから、詳しく聞けて良かった。今回は連載のために詳しく解説してくれてありがとう。」
旧環境でも上位でよく見られたJeskai Controlは《精神を刻む者、ジェイス》が加入し大幅に強化されました。青いフェアデッキが好きな方にもお勧めできるデッキです。
総括
《精神を刻む者、ジェイス》と《血編み髪のエルフ》の解禁は予想通り環境に大きな影響を与えているようです。禁止改定からまだそれ程経っていないためリアルの大会結果の方はまだ少ないですが今週末にはSCG Classicsや各地でIQなども開催されます。
各大会結果を見てみると《精神を刻む者、ジェイス》と《血編み髪のエルフ》は歴代の禁止解除されたカードと比べると確かに大きな影響を与えていますが、今のところは環境の多様性を破壊するほど支配的ではなさそうです。Taking TurnsやPonza、Domain Zooといった旧環境ではマイナーな立ち位置だったデッキが強化され、Jundなど復権してきたデッキやTemur Midrangeのような新しいデッキも見られるので、環境が今後どのように変化していくのか楽しみです。
以上、USA Modern Express vol.12でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!