皆さんこんにちは。
先週末には『ドミナリア』のプレリリースがありましたが好きなカードは見つかりましたか?《減衰球》など少数ながらモダンでも使えそうな新カードが見られます。
さて、今回の連載ではグランプリ・シドニー2018とグランプリ・ハートフォード2018の入賞デッキと『ドミナリア』の新カードをご紹介していきたいと思います。
グランプリ・シドニー2018
マジック競技史上初の女性GPチャンピオン誕生
2018年4月14日-15日
- 1位 Hollow One, Humans, Mono Green Tron
- 2位 Mono Green Tron, Affinity, Grixis Control
- 3位 Titan Shift, Dredge, Humans
- 4位 Living End, UR Control, Humans
Ryan Lewis-Jonns, Jessica Estephan and Lachlan Saunders
トップ4のデッキリストはこちら
チーム共同デッキ構築戦という特殊な形式で行われたグランプリ・シドニー2018には、350チームが参戦しました。各チームでモダンのデッキを三つ構築して3人に振り分けますが、基本土地以外では同名のカードが一つのデッキにしか採用できないという制限があり、いかにカードの被りを回避しつつ競技向けのデッキを3人分用意するのかが重要になる高難易度のフォーマットです。
優勝したチームはHumans、Hollow Oneという現環境でベストだとされているデッキと、Jundや各種青いデッキなどフェアデッキとのマッチアップに強く、デッキの性質上被りが少ないTronを選択していました。デッキ独自のパーツが多く、プロアクティブで環境の多くのデッキと渡り合えるAffinity、そのAffinityと相性の良いLiving Endを選択していたチームも見られました。
余談ですが今回優勝したチームの一員であるJessica Estephanさんは女性プレイヤーで初めてグランプリ優勝を収めました。最近は女性プレイヤーを大会で見かけることも珍しくなくなりましたがまだまだ敷居が高いのが現状なので、とても喜ばしいことです。
グランプリ・シドニー2018 デッキ紹介
「Hollow One」「Living End」
Hollow One
1 《沼》
2 《血の墓所》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《血染めのぬかるみ》
3 《樹木茂る山麓》
1 《沸騰する小湖》
3 《黒割れの崖》
-土地 (18)- 4 《炎刃の達人》
4 《恐血鬼》
4 《炎跡のフェニックス》
4 《虚ろな者》
4 《通りの悪霊》
1 《黄金牙、タシグル》
3 《グルマグのアンコウ》
-クリーチャー (24)-
Hollow Oneは今月の初めに開催されたMOCS予選で最も高い勝率を出していたデッキで、オンライン上のイベントでしたが殿堂プレイヤーやプラチナ、ゴールド・レベル・プロも参戦していたハイレベルな大会の結果だったため、特に注目が集まりました。
シドニーと同じ週末に開催されたグランプリ・ハートフォード2018でもMike SigristやOwen Turtenwaldといったプロがこのデッキを選択していたことから、現環境のベストなデッキの一つであることは明確で、爆発力があり妨害要素も備わっているので見た目よりも安定しています。1ターン目に《虚ろな者》スタートができなくても《稲妻》で相手のクリーチャーを除去しつつ《恐血鬼》と《炎跡のフェニックス》を普通にキャストして攻めるというフェアデッキとしても十分に渡り合える柔軟なところもこのデッキの強みです。
☆注目ポイント
本来はカードディスアドバンテージになる《燃え立つ調査》ですが、このデッキでは1ターン目から《虚ろな者》を数体展開するための爆発力を支える重要なカードです。墓地から復活させることができる《恐血鬼》や《炎跡のフェニックス》を捨てることでアドバンテージになり、相手もキープした初手がランダムに変わってしまうことでプランが崩壊する可能性があるので、実質1ターン目から勝負が決まってしまうこともあります。
《虚ろな者》を高速展開する以外にもディスカードすることによって《炎刃の達人》を強化したり、墓地を肥やして「探査」クリーチャーのコストにしたりもできるので普通に黒赤のミッドレンジとしても振る舞うことも可能です。1ターン目の《燃え立つ調査》から《虚ろな者》という動きに目が奪われがちですが、ディスカードし始める前に《炎刃の達人》を優先的に出すことは重要で、威迫持ちなのでブロックされづらいクロックになります。
墓地から復活してくる《恐血鬼》 と《炎跡のフェニックス》の前では追放系以外の除去は効果が薄いので、Jundなどフェアデッキに強くなります。
BurnはHollow Oneのクリーチャーを処理することが困難なため、以前から相性の悪くなかったマッチアップですが、複数の《集団的蛮行》をメインから採用することでかなり楽なマッチになったようです。
サイドの《仕組まれた爆薬》と《ヴェールのリリアナ》はこのデッキにとって最も相性の悪いデッキの一つであり、最近増加傾向にあるBogles対策になります。特に《仕組まれた爆薬》はAffinityやHumans、Stormなど様々なマッチアップでサイドインされるので、必ず採用しておきたいカードです。
Living End
「サイクリング」クリーチャーによって墓地を肥やしつつドローを進めていき、《暴力的な突発》や《悪魔の戦慄》といった「続唱」スペルから《死せる生》をキャストして相手のクリーチャーを墓地に送りつつ、墓地に落とした「サイクリング」クリーチャーを復活させるコンボデッキで、デッキ内に3マナ以下のスペルは《死せる生》以外1枚も入っていないので「続唱」から確実に《死せる生》をキャストできることを利用した戦略です。
去年リリースされた『アモンケット』に多数の「サイクリング」クリーチャーが収録されていたことによって強化されたデッキで、多くのデッキのサイドに採用されている墓地対策の《墓掘りの檻》の影響を受けないのもこのデッキの強みです。特徴のあるデッキなのでパーツの被りも少なく、共同構築チーム戦向けのデッキの一つです。
☆注目ポイント
《暴力的な突発》はこのデッキのキースペルで、インスタントタイミングで《死せる生》をキャストすることができます。もう1枚の「続唱」スペルである《悪魔の戦慄》はソーサリーである上にキャストするための対象を必要としますが、3マナで《死せる生》がキャストできることには変わりなく、このデッキのキーとなるスペルの1枚です。《死せる生》はピンチの際は3マナの《神の怒り》としても使用できるのも覚えておきたいところです。
《大爆発の魔道士》と《内にいる獣》はこのデッキのメインでは数少ない妨害要素で、Tronなどの特殊地形を使ったデッキが土地を伸ばしてゲームをコントロールすることを阻止します。《内にいる獣》はサイド後も《安らかなる眠り》や《虚空の力線》といった置物を処理する手段にもなり、それから出てきたトークンも《死せる生》で流せます。
《砂漠セロドン》、《遺棄地の恐怖》といった1マナで「サイクリング」できるクリーチャーが『アモンケット』から加入して以来、デッキの回りはスムーズになった印象です。《イフニルの魔神》は「サイクリング」クリーチャーですが、5マナと素でキャストすることも比較的容易で、「サイクリング」する度に相手側のクリーチャーに-1/-1カウンターを乗せることができるので、小型クリーチャーやチャンプブロッカーを一掃する手段にもなります。
グランプリ・ハートフォード2018
アイアンワークスコンボが1800人超えのモダンGPの頂点に立つ
2018年4月14日-15日
- 1位 Ironworks Combo
- 2位 Vigor Ramp
- 3位 Bogles
- 4位 Burn
- 5位 Elves
- 6位 Affinity
- 7位 Bogles
- 8位 Hollow One
Matt Nass
トップ8のデッキリストはこちら
公式カバレージのメタゲームブレイクダウンによると65個の異なるアーキタイプが2日目を競い、トップ16に入賞したデッキの内15名が異なるアーキタイプを使用していたとのことで、現在のモダンの多様性を示す結果となりました。
優勝を収めたのは《クラーク族の鉄工所》を軸にしたコンボデッキであるIronworks Comboを愛用するMatt Nassで、vol.13で紹介した先月のグランプリ・フェニックス2018から連続でプレイオフ進出を決めています。
グランプリ・ハートフォード2018 デッキ紹介
「Vigor Ramp」
Vigor Ramp
4 《宝石鉱山》
4 《シミックの成長室》
3 《グルールの芝地》
1 《ボロスの駐屯地》
1 《カルニの庭》
1 《セレズニアの聖域》
1 《魂の洞窟》
3 《トレイリア西部》
1 《ボジューカの沼》
1 《幽霊街》
1 《軍の要塞、サンホーム》
1 《光輝の泉》
1 《処刑者の要塞》
1 《ヴェズーヴァ》
-土地 (28)- 1 《歩行バリスタ》
4 《桜族の斥候》
4 《迷える探求者、梓》
1 《再利用の賢者》
4 《原始のタイタン》
-クリーチャー (14)-
3 《呪文貫き》
2 《四肢切断》
2 《大祖始の遺産》
1 《自由なる者ルーリク・サー》
1 《女王スズメバチ》
1 《炎渦竜巻》
1 《コジレックの帰還》
1 《仕組まれた爆薬》
-サイドボード (15)-
《花盛りの夏》が禁止になって以来、《精力の護符》を使ったコンボデッキはあまり見られなくなりましたが、《精力の護符》と『ラヴニカ』ブロックのバウンスランドとの組み合わせが強力なことには変わりなく、《花盛りの夏》によって土地を追加で3枚プレイできた頃と比べて爆発力は影を潜めていますが、今大会では惜しくも優勝は逃しながらも準優勝という好成績を残していました。
《原始のタイタン》はこのデッキの主なフィニッシャーで、《ボロスの駐屯地》と《処刑者の要塞》をサーチして《原始のタイタン》を強化しつつ、速攻を付けてアタックします。《原始のタイタン》が攻撃したときの誘発能力により土地をサーチできるので、《軍の要塞、サンホーム》で二段攻撃を付けられます。
異なる軸で勝負するデッキなのでJundや各種コントロールなどフェアデッキに強く、このデッキに対する妨害手段に貧しいAffinityや《原始のタイタン》に対する明確なアンサーを持たないHollow Oneなど、現環境では相性の良いデッキが多いのも利点で、Humansに対してもサイド後はスイーパーが入るので有利が付きます。ストームなどコンボデッキや土地破壊を多用するPonzaは苦手なマッチアップとなります。
☆注目ポイント
《迷える探求者、梓》はあの《花盛りの夏》には敵わないものの追加の土地を2枚プレイできるので、このデッキを支えるエンジンとなります。しかし、バウンスランドをプレイする場合は土地がバウンスする誘発能力にレスポンスして除去されてしまい、その後の追加の土地がプレイできなくなる恐れがあるので、ETB能力のない土地を先にプレイするなどしてケアする必要があります。
《桜族の斥候》も追加の土地をプレイする起動能力を持っているので、《精力の護符》がある状況ではタップすることで2マナが出せるマナクリーチャーとして扱えます。このデッキにとって厄介な置物の一つである《罠の橋》や《血染めの月》対策になる《再利用の賢者》や、戦闘を必要としないフィニッシャー兼除去としても機能する《歩行バリスタ》もメインから採用されているなど、入念な調整の跡が見られます。
《召喚士の契約》や《古きものの活性》といったサーチスペルがあるので見た目よりも安定した動きが期待できるデッキで、特に《古きものの活性》は《トレイリア西部》や《精力の護符》といったキーカードを探せます。《トレイリア西部》は《召喚士の契約》をサーチできるので、そこからフィニッシャーである《原始のタイタン》に繋がります。
サイドには追加の勝ち手段兼ハンデス対策で《強情なベイロス》が見られます。現在のトップメタの一角でHollow Oneが使う《燃え立つ調査》対策になり、相手が1ターン目に4/4を展開してくる可能性がある中で、こちらも4/4をライフゲインというおまけ付きで出せる可能性があり、場合によっては圧倒的に優位な展開になります。
《女王スズメバチ》はフェアデッキに対する追加の勝ち手段で、横に並ぶので《ヴェールのリリアナ》などに耐性が付きます。スイーパーの《コジレックの帰還》は《古きものの活性》でサーチすることが可能で、Affinityの《刻まれた勇者》に対するアンサーです。《炎渦竜巻》は《カマキリの乗り手》などのタフネス3のクリーチャーも除去できるので、Humansに対して有効なスイーパーとして活躍するでしょう。
ボーナストピック: モダンで活躍しそうな『ドミナリア』のカードたち
さて、今回の連載では『ドミナリア』のカードでモダンでも使えそうなものをご紹介していきたいと思います。
《減衰球》
TronとStormを1枚のカードで減速させるカードとして注目を集めているカードです。グランプリ・ハートフォード2018で優勝していたIronworks Comboに対しても有効なので、青白など多くのフェアデッキのサイドボードで採用されそうなカードです。2マナと軽く、複数のデッキを1枚で対策できるという点は、対策が必須のデッキが多いためにサイドのスペースが不足しがちなモダンでは特に重要です。レアリティもアンコモンでお財布に嬉しいのもポイントです。
3 《平地》
2 《神聖なる泉》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《天界の列柱》
2 《氷河の城砦》
4 《廃墟の地》
1 《幽霊街》
-土地 (25)- 3 《瞬唱の魔道士》
1 《前兆の壁》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
-クリーチャー (5)-
4 《血清の幻視》
2 《否認》
1 《スフィンクスの啓示》
3 《謎めいた命令》
2 《至高の評決》
1 《残骸の漂着》
4 《広がりゆく海》
2 《アズカンタの探索》
2 《拘留の宝球》
1 《試練に臨むギデオン》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《ギデオン・ジュラ》
-呪文 (30)-
2 《軽蔑的な一撃》
2 《安らかなる眠り》
2 《石のような静寂》
2 《減衰球》
1 《神聖な協力》
1 《天界の粛清》
1 《神の怒り》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《太陽の勇者、エルズペス》
-サイドボード (15)-
《ウルザの後継、カーン》
話題のプレインズウォーカーである《ウルザの後継、カーン》は生き残れば毎ターンカードアドバンテージを稼ぎ出し、初期忠誠度は5と固く、コストも4マナと軽いのでモダンでも十分に通用するポテンシャルがあります。「+1」能力は相手に選択権があり、情報も与えてしまいますが追加のドローになり、次のターンには「-1」能力によって追放されたカードも戻ってくるので、アドバンテージが稼げます。
「-2」能力はAffinityのようにアーティファクトが並ぶデッキではフィニッシャー級のサイズのトークンを生成します。このトークンによって自身を守ることができるのもポイントです。除去を多用したJundやJeskaiといったフェアデッキとのマッチアップで、ロングゲームでも渡り合う手段としてAffinityのサイドに数枚採用されそうです。
4 《産業の塔》
4 《ダークスティールの城塞》
4 《ちらつき蛾の生息地》
4 《墨蛾の生息地》
-土地 (17)- 4 《羽ばたき飛行機械》
2 《メムナイト》
4 《信号の邪魔者》
4 《電結の荒廃者》
4 《大霊堂のスカージ》
3 《鋼の監視者》
1 《光り物集めの鶴》
3 《刻まれた勇者》
1 《エーテリウムの達人》
-クリーチャー (26)-
《モックス・アンバー》
《モックス・ダイアモンド》、《金属モックス》、《オパールのモックス》……モックスという名前の付くマナ加速アーテイファクトは条件付きながら各フォーマットで活躍する強さを持っていたことから『ドミナリア』に収録されている《モックス・アンバー》にも期待しない理由はありません。Magic Onlineでは既にこのカードのお供として話題となっていた《今田家の猟犬、勇丸》を始めとした白い伝説のクリーチャー各種を多数採用した白いアグロデッキが結果を残していました。
3 《地平線の梢》
2 《シェフェトの砂丘》
1 《永岩城》
4 《幽霊街》
2 《変わり谷》
-土地 (21)- 4 《アクロスの英雄、キテオン》
3 《今田家の猟犬、勇丸》
2 《スレイベンの検査官》
4 《レオニンの裁き人》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
4 《ちらつき鬼火》
3 《刃の接合者》
2 《オレスコスの王、ブリマーズ》
2 《異端聖戦士、サリア》
3 《刃砦の英雄》
-クリーチャー (31)-
2 《神聖な協力》
2 《安らかなる眠り》
2 《石のような静寂》
1 《断片化》
1 《太陽の槍》
1 《四肢切断》
1 《忘却の輪》
1 《墓掘りの檻》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
-サイドボード (15)-
《モックス・アンバー》を利用することで1ターン目から1マナの《今田家の猟犬、勇丸》と《アクロスの英雄、キテオン》、2ターン目に《異端聖戦士、サリア》や《オレスコスの王、ブリマーズ》に繋げることが可能です。これ以外にも《スレイベンの守護者、サリア》を始めとして白には優秀な伝説のクリーチャーが多数存在します。
《スレイベンの守護者、サリア》と《異端聖戦士、サリア》、《レオニンの裁き人》+《幽霊街》による土地破壊によって相手を縛るヘイトベアーの要素も含まれています。《オレスコスの王、ブリマーズ》や《刃砦の英雄》の恩恵もあり横に並びやすいので《アクロスの英雄、キテオン》を変身させやすく、《歴戦の戦士、ギデオン》に変身させることができれば「+1」能力によってスイーパーをケアしつつ自身を守ったり、「+2」能力によって相手のブロックを阻止したりと様々な状況で活躍が期待できます。
総括
同じモダンでもチーム戦と個人戦という異なる形式の大会結果を見ていきましたが、多様なデッキが活躍している環境で対策しなければならないデッキが多く、Jeskaiを始めとするコントロールにとっては不利で、Hollow OneやHumans、Boglesといったプロアクティブな戦略の方が圧倒的に勝ちやすい環境です。
特定のデッキや戦略が支配している環境ではないため、禁止改定も予想どおりノーチェンジでした。
かなり思い切った解禁だと話題になっていた《血編み髪のエルフ》と《精神を刻む者、ジェイス》も多くのデッキで使われてはいるものの環境を再び支配するというほどではなく、これらのカードがフィットするミッドレンジのフェアデッキは速すぎる環境についていくのが困難なため、ポジション的には普通に強いカードに落ち着きそうです。
以上USA Modern Express vol.14でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!