のぶおの部屋 -第15回 エルドラージ(前編)-

斉藤 伸夫

 【2016年4月8日】、モダンで《ウギンの目》が禁止に---。

 『ゲートウォッチの誓い』発売以降、《エルドラージの寺院》《ウギンの目》という8枚の2マナランドによる圧倒的な展開力で文字通りモダン環境を蹂躙したエルドラージは、禁止改定によりその勢力を抑え込まれることになりました。

 ストーリーではプレインズウォーカーたちの連合によりその力を退けましたが、現実のフォーマットでは私たちはその力になす術なく屈してしまったというわけですね。

 さて、モダンという次元を運営という神の裁定によって追い出されたエルドラージたちはしかし、別の次元においてはさらに勢力を拡大していました。

 そう……なぜならその次元ではかつてのモダン以上に彼らに適した環境があったのです。

 16枚もの2マナランドが存在している環境である、レガシーです。

■ ゲストの紹介

斉藤「と、いうわけで今回はエルドラージデッキによりレガシー次元の年末ビックイベント、【エターナルフェスティバル2016】を蹂躙した二人のプレイヤーに話を伺いたいと思います。

景山 広樹さん (神奈川)菊池 雄大さん (宮城) です。

景山 広樹(右)/【第6期レガシー神挑戦者決定戦・準々決勝】より

菊地 雄大(左)/【第7期レガシー神挑戦者決定戦・決勝】より

エルドラージというアーキタイプができてから約1年が経ちましたが、お二人はその間ずっとエルドラージを調整し続けてきたグループのメンバーでもあります。

景山さんは晴れる屋とMOを中心にプレイし、エタフェス2014と2016でTOP8、【第6期レガシー神挑戦者決定戦】TOP8入賞。さらに【第7期スタンダード神挑戦者決定戦】TOP8、【第8期モダン神挑戦者決定戦】TOP4など、レガシー以外のフォーマットでも実績を持つ地力の高いプレイヤーです。

菊池さんは【第7期レガシー神挑戦者決定戦】準優勝、エタフェス2016TOP8と、エルドラージを使っての最近の入賞が目立つプレイヤーです。

今日はエルドラージという近年出てきたばかりのアーキタイプを操り、実績を残している二人にインタビューをさせていただきます。よろしくお願いします」

景山&菊池「よろしくお願いします!エルドラージというアーキタイプが出てきてからあまり時間が経っていませんが、習得してきたものをお伝えしたいと思います」

■ エルドラージとは?

斉藤「こちらが一般的なレシピになります」


Karlinski Anton「エルドラージ」
Bazzar of Moxen Annecy 2016 – Main Legacy(優勝)

3 《魂の洞窟》
4 《古えの墳墓》
4 《エルドラージの寺院》
4 《裏切り者の都》
3 《ミシュラの工廠》
2 《不毛の大地》
4 《ウギンの目》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地 (25)-

4 《果てしなきもの》
4 《エルドラージのミミック》
4 《作り変えるもの》
3 《猿人の指導霊》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》
2 《終末を招くもの》

-クリーチャー (25)-
2 《歪める嘆き》
2 《四肢切断》
4 《虚空の杯》
2 《梅澤の十手》

-呪文 (10)-
4 《フェアリーの忌み者》
4 《アメジストのとげ》
2 《終末を招くもの》
2 《真髄の針》
2 《漸増爆弾》
1 《四肢切断》

-サイドボード (15)-
hareruya

斉藤「こうして見るとモダンで使われているようなクリーチャーばかりですね。基本的な質問からさせてください。まず、エルドラージとはどのようなデッキなのでしょうか?」

菊池「『戦乱のゼンディカー』ブロック発売で成立し、『ゲートウォッチの誓い』の優良エルドラージを得て成立したアーキタイプです。大量の2マナランドを利用して《虚空の杯》《アメジストのとげ》などで相手を妨害しつつ、強力な生物を高速展開して、 相手を圧倒するストンピィデッキの一種です。大きく分けて3つの勝ちパターンがあります」

1. 《虚空の杯》《アメジストのとげ》のようなカードで相手のデッキ自体を機能不全にさせる。
2. 《エルドラージのミミック》×2→《難題の予見者》《現実を砕くもの》のような動きで高速ビートする。
3. 長期戦の末に《ウギンの目》を起動して毎ターン強いクリーチャーを展開し続けてリソース差で勝利する。

斉藤「モダンでは禁止になってしまった《ウギンの目》を使えるのも魅力の一つですね」

古えの墳墓裏切り者の都ウギンの目エルドラージの寺院

菊池「それがとても大きいですね。《古えの墳墓》《裏切り者の都》というこれまでのストンピィの定番2マナランドに加え、《ウギンの目》《エルドラージの寺院》の2種類を使えることによって、ストンピィ特有の事故を大幅に減らし、速度に安定性が加わりました。土地から出るマナだけで他のレガシーデッキより大きいマナ域で勝負できるからです。まさしく古代のマナ基盤と現代の生物性能の融合です。レガシーをやっていないプレイヤー向けにモダンのデッキで言えば、『勝手に揃うトロン』のような感じですよ」

斉藤《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》《ウギンの目》を1枚で3マナ分の土地=実質《Mishra's Workshop》にすることによって、土地3枚で6マナを確保するのに一役かってくれていますよね。ところで、エルドラージのレシピは核になる生物やスペルはあまりにも強すぎるため固定されていますが、細かくいろいろなタイプがありますよね」

菊池「そうなんです。それぞれサンプルリストを織り交ぜながら説明していきます」

景山「まずエルドラージというデッキは大きく分類して3~4つに分けることができます」

1. 《猿人の指導霊》型エルドラージ (ストンピィ型・冒頭のリスト)

猿人の指導霊

 《猿人の指導霊》を採用し、初速に特化したのが強みです。一般的なレシピともいえるでしょう。他のタイプと比べて《目くらまし》を使用したデッキに対して強烈に強いと言えます。

 また、メインから《忘却蒔き》《絶え間ない飢餓、ウラモグ》などの重いところは採用しておらず、メインから《アメジストのとげ》を採用したプリズン型デッキもあり、こちらはコンボに対して強いです。

 弱点としては、先手後手の差が大きいこと。そして、場が膠着すると《猿人の指導霊》の分息切れしやすい点が挙げられます。

2. 白エルドラージ (【サンプルリスト】)

変位エルドラージ

 このタイプは《変位エルドラージ》《カラカス》を採用できるため、 コントロール力があります。

 《封じ込める僧侶》《石鍛冶の神秘家》など、無色のカードに限らず白の強力なカードを採用できる点も魅力ですね。

 弱点は土地で、白マナが出る土地を採用しなければならない点により《裏切り者の都》の分だけ2マナランドが減ってぶん回りが減っていることと、事故にあう確率が高くなってしまうことです。

忘却蒔き

 大量の2マナランドからのぶん回りがあることに加えて、中盤から終盤にかけて強烈な動きができるのが強みです。特に《忘却蒔き》は、奇跡、デスタク、BG系、 同型において無類の強さを誇り、《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》によって対戦相手のフェッチランドがめくれても有効活用できる点も含めて、《ウギンの目》から《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をサーチするという動きで盤面をまくることが容易です。

 さらに安定感があるのも特徴で、初速が遅くとも土地が十分な手札であればキープできますし、後手でも重戦車プランをとることができます。

 弱点はデッキに重いカードが多いぶん《不毛の大地》に最も弱く、2マナランドを破壊されて土地が引けずに負けというパターンが起こりやすい点です。

 派生として、《厳かなモノリス》を採用した《忘却蒔き》型エルドラージがあります。こちらはぶん回りもあり、 同型に対してものすごく強いのが特徴です。《厳かなモノリス》をアンタップすることが十分可能なデッキのため、再利用できる《猿人の指導霊》というイメージです。

■ なぜエルドラージ?

斉藤「お二人は一緒に調整して見事上位に入賞されましたが、なぜエルドラージにしようと思ったのですか?」

菊池「私はずっと無色のデッキを好んで使っていたんですが、レガシーでトップメタのデッキとやりあえる無色のデッキへの可能性に夢中になっていました」

景山「私の場合はもともとジャンドを使っていて自信があったのですが、神挑戦者決定戦で【加茂さんのエルドラージに踏みつぶされた】ことがきっかけで、エルドラージというアーキタイプの底力に魅了されたからですね。また、最近の大きい大会でジャンドは結果を残しておらず、トップメタのデッキを使用したいと考えていたときに、新しく登場して瞬く間にトップメタとなったエルドラージを調整しようと思ったのがきっかけです」

斉藤「どのような経緯で調整が進んでいったのでしょうか?」

菊池「国内で最初に《忘却蒔き》を採用して結果を残した (【第6期レガシー神挑戦者決定戦】で9位) 【Yamakabeさんのリスト】に感銘を受け、ともに調整することになりました。個人的にマナアーティファクト使ってみたりと色々調整していましたが、ここで一気に形になりました」

景山「私もエルドラージを使い始めるにあたっては、晴れる屋でコンスタントに勝利していたYamakabeさんのアドバイスをうけ、彼が当時使用していたリストを75枚コピーするところから始めました。これをもとにチームで調整を加えたのが今の形ですね」

斉藤「となると、エルドラージというアーキタイプが出始めたころから調整をしていたのですね。グループでの調整はどうでしたか?」

菊池「基本的には《忘却蒔き》を使ったリストを調整していましたが、並行して白入りや《猿人の指導霊》型も回してはいました。複数人数で調整することは、私の苦手なプレイや構築の言語化作業の練習にもなってとてもプラスでした」

斉藤「では、その調整したレシピを元にレシピの説明をしていただきましょう」

■ 一般的なレシピとの違いは?

斉藤「では、お二人のレシピを教えてください」

景山「こちらが調整してできあがったリストになります」


景山 広樹「エルドラージ」
Eternal Festival Tokyo 2016(トップ4)

4 《魂の洞窟》
1 《カラカス》
4 《古えの墳墓》
4 《エルドラージの寺院》
3 《不毛の大地》
4 《裏切り者の都》
4 《ウギンの目》
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地 (27)-

4 《果てしなきもの》
4 《エルドラージのミミック》
4 《作り変えるもの》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》
4 《忘却蒔き》
1 《終末を招くもの》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー (26)-
2 《歪める嘆き》
4 《虚空の杯》
1 《梅澤の十手》

-呪文 (7)-
4 《アメジストのとげ》
4 《虚空の力線》
2 《四肢切断》
2 《全ては塵》
2 《漸増爆弾》
1 《梅澤の十手》

-サイドボード (15)-
hareruya

斉藤「一般的なリストと比較してどのような変更を施したのか教えてください」

菊池「一般的なレシピと比較して明確に違うのは、最初の説明でも紹介した《猿人の指導霊》型ではなく、《忘却蒔き》型というところでしょう」

斉藤なぜ《忘却蒔き》を選択することを決定したのでしょうか?」

終末トレストの使者、レオヴォルド

菊池「日本のメタでは、少し大きな大会の上位に行くと熟練の奇跡使いが必ずいます。そういう点では長期戦に対して《ウギンの目》を起動する前提でデッキを構築している《忘却蒔き》型の方が、奇跡に対しては《猿人の指導霊》型より圧倒的に有利に戦えるからです」

菊池「最近増えつつある《トレストの使者、レオヴォルド》を使ったBUG系のデッキに対しても、《猿人の指導霊》型より有利を付けられるのも魅力の一つです。また、ミラーを意識したときに《猿人の指導霊》型のエルドラージに対してもある程度有利に戦える点もあげられます」

虚空の杯難題の予見者

菊池「反面、コンボやデルバーへの耐性《猿人の指導霊》型より低いのはマイナスですが、それでもコンボには《虚空の杯》《難題の予見者》をメインから持つ上にサイドボードにはたくさんの対応できるカードを積めること、デルバーデッキは以前より減少傾向にあることを踏まえ、《忘却蒔き》型にしました」

■ メタに合わせた変更点

斉藤「では、今後メタにあわせてデッキを変えるとしてどのようにするか教えてください」

菊池・景山「パターン分けして、順にあげていきます」

◆ ビート・テンポ (デルバー、感染) が増えた場合

梅澤の十手

 ダメージがすれ違うゲームになりやすい相手です。ゲームを支配することのできる《梅澤の十手》の増量をします。《絶え間ない飢餓、ウラモグ》はサイドへの採用になるでしょう。場合によっては《猿人の指導霊》《四肢切断》の採用をして、一般的な《猿人の指導霊》型エルドラージに近づけることになるでしょう。

◆ コンボが増えた場合

歪める嘆き

 カウンターである《歪める嘆き》を追加します。スニークショーが増えるのであれば、《カラカス》の追加をします。特に《アメジストのとげ》をメインに入れて、《ファイレクシアの破棄者》を採用するとさらに勝率を確保できます。デッキをプリズン型に近づけることになるでしょう。

◆ ミッドレンジ (BG系、デスタク、奇跡) が増えた場合

全ては塵

 《全ては塵》をメインに採用します。《精神を刻む者、ジェイス》《真の名の宿敵》《ヴェールのリリアナ》、デス&タックスの横並びになる生物たち、《僧院の導師》などに対して、通してしまえばゲームをかなり有利に運べるカードです。


 次回はエルドラージの弱点やサイドボードの考え方、テクニックを紹介するといったプレイ編をお届けします。

 では、次回プレイ編でお会いしましょう。

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