【2016年4月8日】、モダンでが禁止に---。
『ゲートウォッチの誓い』発売以降、という8枚の2マナランドによる圧倒的な展開力で文字通りモダン環境を蹂躙したエルドラージは、禁止改定によりその勢力を抑え込まれることになりました。
ストーリーではプレインズウォーカーたちの連合によりその力を退けましたが、現実のフォーマットでは私たちはその力になす術なく屈してしまったというわけですね。
さて、モダンという次元を運営という神の裁定によって追い出されたエルドラージたちはしかし、別の次元においてはさらに勢力を拡大していました。
そう……なぜならその次元ではかつてのモダン以上に彼らに適した環境があったのです。
16枚もの2マナランドが存在している環境である、レガシーです。
■ ゲストの紹介
斉藤「と、いうわけで今回はエルドラージデッキによりレガシー次元の年末ビックイベント、【エターナルフェスティバル2016】を蹂躙した二人のプレイヤーに話を伺いたいと思います。
景山 広樹さん (神奈川) と菊池 雄大さん (宮城) です。
エルドラージというアーキタイプができてから約1年が経ちましたが、お二人はその間ずっとエルドラージを調整し続けてきたグループのメンバーでもあります。
景山さんは晴れる屋とMOを中心にプレイし、エタフェス2014と2016でTOP8、【第6期レガシー神挑戦者決定戦】TOP8入賞。さらに【第7期スタンダード神挑戦者決定戦】TOP8、【第8期モダン神挑戦者決定戦】TOP4など、レガシー以外のフォーマットでも実績を持つ地力の高いプレイヤーです。
菊池さんは【第7期レガシー神挑戦者決定戦】準優勝、エタフェス2016TOP8と、エルドラージを使っての最近の入賞が目立つプレイヤーです。
今日はエルドラージという近年出てきたばかりのアーキタイプを操り、実績を残している二人にインタビューをさせていただきます。よろしくお願いします」
景山&菊池「よろしくお願いします!エルドラージというアーキタイプが出てきてからあまり時間が経っていませんが、習得してきたものをお伝えしたいと思います」
■ エルドラージとは?
斉藤「こちらが一般的なレシピになります」
Karlinski Anton「エルドラージ」
Bazzar of Moxen Annecy 2016 – Main Legacy(優勝)
3
4
4
4
3
2
4
1
-土地 (25)-
4
4
4
3
4
4
2
-クリーチャー (25)- |
2
2
4
2
-呪文 (10)- |
4
4
2
2
2
1
-サイドボード (15)- |
斉藤「こうして見るとモダンで使われているようなクリーチャーばかりですね。基本的な質問からさせてください。まず、エルドラージとはどのようなデッキなのでしょうか?」
菊池「『戦乱のゼンディカー』ブロック発売で成立し、『ゲートウォッチの誓い』の優良エルドラージを得て成立したアーキタイプです。大量の2マナランドを利用してやなどで相手を妨害しつつ、強力な生物を高速展開して、 相手を圧倒するストンピィデッキの一種です。大きく分けて3つの勝ちパターンがあります」
1. 、のようなカードで相手のデッキ自体を機能不全にさせる。
2. ×2→→のような動きで高速ビートする。
3. 長期戦の末にを起動して毎ターン強いクリーチャーを展開し続けてリソース差で勝利する。
斉藤「モダンでは禁止になってしまったを使えるのも魅力の一つですね」
菊池「それがとても大きいですね。、というこれまでのストンピィの定番2マナランドに加え、の2種類を使えることによって、ストンピィ特有の事故を大幅に減らし、速度に安定性が加わりました。土地から出るマナだけで他のレガシーデッキより大きいマナ域で勝負できるからです。まさしく古代のマナ基盤と現代の生物性能の融合です。レガシーをやっていないプレイヤー向けにモダンのデッキで言えば、『勝手に揃うトロン』のような感じですよ」
斉藤「もを1枚で3マナ分の土地=実質にすることによって、土地3枚で6マナを確保するのに一役かってくれていますよね。ところで、エルドラージのレシピは核になる生物やスペルはあまりにも強すぎるため固定されていますが、細かくいろいろなタイプがありますよね」
菊池「そうなんです。それぞれサンプルリストを織り交ぜながら説明していきます」
景山「まずエルドラージというデッキは大きく分類して3~4つに分けることができます」
1. 型エルドラージ (ストンピィ型・冒頭のリスト)
を採用し、初速に特化したのが強みです。一般的なレシピともいえるでしょう。他のタイプと比べてを使用したデッキに対して強烈に強いと言えます。
また、メインからやなどの重いところは採用しておらず、メインからを採用したプリズン型デッキもあり、こちらはコンボに対して強いです。
弱点としては、先手後手の差が大きいこと。そして、場が膠着するとの分息切れしやすい点が挙げられます。
このタイプは、を採用できるため、 コントロール力があります。
やなど、無色のカードに限らず白の強力なカードを採用できる点も魅力ですね。
弱点は土地で、白マナが出る土地を採用しなければならない点によりの分だけ2マナランドが減ってぶん回りが減っていることと、事故にあう確率が高くなってしまうことです。
大量の2マナランドからのぶん回りがあることに加えて、中盤から終盤にかけて強烈な動きができるのが強みです。特には、奇跡、デスタク、BG系、 同型において無類の強さを誇り、によって対戦相手のフェッチランドがめくれても有効活用できる点も含めて、からをサーチするという動きで盤面をまくることが容易です。
さらに安定感があるのも特徴で、初速が遅くとも土地が十分な手札であればキープできますし、後手でも重戦車プランをとることができます。
弱点はデッキに重いカードが多いぶんに最も弱く、2マナランドを破壊されて土地が引けずに負けというパターンが起こりやすい点です。
派生として、を採用した型エルドラージがあります。こちらはぶん回りもあり、 同型に対してものすごく強いのが特徴です。をアンタップすることが十分可能なデッキのため、再利用できるというイメージです。
■ なぜエルドラージ?
斉藤「お二人は一緒に調整して見事上位に入賞されましたが、なぜエルドラージにしようと思ったのですか?」
菊池「私はずっと無色のデッキを好んで使っていたんですが、レガシーでトップメタのデッキとやりあえる無色のデッキへの可能性に夢中になっていました」
景山「私の場合はもともとジャンドを使っていて自信があったのですが、神挑戦者決定戦で【加茂さんのエルドラージに踏みつぶされた】ことがきっかけで、エルドラージというアーキタイプの底力に魅了されたからですね。また、最近の大きい大会でジャンドは結果を残しておらず、トップメタのデッキを使用したいと考えていたときに、新しく登場して瞬く間にトップメタとなったエルドラージを調整しようと思ったのがきっかけです」
斉藤「どのような経緯で調整が進んでいったのでしょうか?」
菊池「国内で最初にを採用して結果を残した (【第6期レガシー神挑戦者決定戦】で9位) 【Yamakabeさんのリスト】に感銘を受け、ともに調整することになりました。個人的にマナアーティファクト使ってみたりと色々調整していましたが、ここで一気に形になりました」
景山「私もエルドラージを使い始めるにあたっては、晴れる屋でコンスタントに勝利していたYamakabeさんのアドバイスをうけ、彼が当時使用していたリストを75枚コピーするところから始めました。これをもとにチームで調整を加えたのが今の形ですね」
斉藤「となると、エルドラージというアーキタイプが出始めたころから調整をしていたのですね。グループでの調整はどうでしたか?」
菊池「基本的にはを使ったリストを調整していましたが、並行して白入りや型も回してはいました。複数人数で調整することは、私の苦手なプレイや構築の言語化作業の練習にもなってとてもプラスでした」
斉藤「では、その調整したレシピを元にレシピの説明をしていただきましょう」
■ 一般的なレシピとの違いは?
斉藤「では、お二人のレシピを教えてください」
景山「こちらが調整してできあがったリストになります」
景山 広樹「エルドラージ」
Eternal Festival Tokyo 2016(トップ4)
4
1
4
4
3
4
4
3
-土地 (27)-
4
4
4
4
4
4
1
1
-クリーチャー (26)- |
2
4
1
-呪文 (7)- |
4
4
2
2
2
1
-サイドボード (15)- |
斉藤「一般的なリストと比較してどのような変更を施したのか教えてください」
菊池「一般的なレシピと比較して明確に違うのは、最初の説明でも紹介した型ではなく、型というところでしょう」
斉藤「なぜ型を選択することを決定したのでしょうか?」
菊池「日本のメタでは、少し大きな大会の上位に行くと熟練の奇跡使いが必ずいます。そういう点では長期戦に対してを起動する前提でデッキを構築している型の方が、奇跡に対しては型より圧倒的に有利に戦えるからです」
菊池「最近増えつつあるを使ったBUG系のデッキに対しても、型より有利を付けられるのも魅力の一つです。また、ミラーを意識したときに型のエルドラージに対してもある程度有利に戦える点もあげられます」
菊池「反面、コンボやデルバーへの耐性が型より低いのはマイナスですが、それでもコンボにはやをメインから持つ上にサイドボードにはたくさんの対応できるカードを積めること、デルバーデッキは以前より減少傾向にあることを踏まえ、型にしました」
■ メタに合わせた変更点
斉藤「では、今後メタにあわせてデッキを変えるとしてどのようにするか教えてください」
菊池・景山「パターン分けして、順にあげていきます」
◆ ビート・テンポ (デルバー、感染) が増えた場合
ダメージがすれ違うゲームになりやすい相手です。ゲームを支配することのできるの増量をします。はサイドへの採用になるでしょう。場合によってはやの採用をして、一般的な型エルドラージに近づけることになるでしょう。
◆ コンボが増えた場合
カウンターであるを追加します。スニークショーが増えるのであれば、の追加をします。特にをメインに入れて、を採用するとさらに勝率を確保できます。デッキをプリズン型に近づけることになるでしょう。
◆ ミッドレンジ (BG系、デスタク、奇跡) が増えた場合
をメインに採用します。、、、デス&タックスの横並びになる生物たち、などに対して、通してしまえばゲームをかなり有利に運べるカードです。
次回はエルドラージの弱点やサイドボードの考え方、テクニックを紹介するといったプレイ編をお届けします。
では、次回プレイ編でお会いしましょう。
斉藤 伸夫
【The Last Sun 2013】トップ4をはじめとして、国内の大型レガシートーナメントにおける数多くの入賞経験を持つ関東レガシー界のエースオブエース。
レガシー環境に対する深い造詣と幅広い人脈を武器に、常に最先端のテクニックを取り入れたデッキを作り上げ、コミュニティにシェアしている。
レガシーにおけるプレイスピードと正確性はプロにもひけをとらない。
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