斉藤「【前回】はデッキ構造について解説していただきました。続く今回は、エルドラージの弱点やサイドボーディングなど、プレイ中のテクニックについて教えていただきたいと思います。景山 広樹さん、菊池 雄大さん今回もよろしくお願いします」
景山・菊池「はい。後編もよろしくお願いします!」
景山 広樹「エルドラージ」
Eternal Festival Tokyo 2016(トップ4)
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-土地 (27)-
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-クリーチャー (26)- |
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-呪文 (7)- |
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-サイドボード (15)- |
■ 弱点・やられて嫌なことは?
斉藤「エルドラージにとって、やられたら嫌なことや弱点などを教えてください」
景山「大きく分けると、以下の4点になります」
◆ エルドラージの弱点
1. 不毛の大地
2. ヘイトカード
3. リソース破壊、アドバンテージカード
4. やが効かないコンボ
1.
景山「とにかく2マナランドを割られるのが辛いです。ドロー操作がないため、土地をしっかり引けるとは限らないデッキだからです」
斉藤「エルドラージと対峙した場合、土地を割るときの優先順位はあるのでしょうか?」
景山「優先的に割るべきカードはとで、次点に、でしょう。の優先度が低いのは、によるマナ加速は大抵出された時点で仕事をしていますし、伝説の土地であるため、2枚目が手札で腐っている可能性があるからです」
景山「の能力を起動させないように、を狙う方が良いと思います。または他の土地を壊すことで、エルドラージの土地基盤を責めることができます。こうした理由から、を再利用してくる土地単のようなデッキは絶望的に相性が悪いです」
2. ヘイトカード
景山「、、のような置き物は、無色というデッキの性質上割りにくく、苦手としています。エルドラージ側もで対応しますが、カウンターが3つ乗るまでにで指定されたり、割られたりすることもあるため、完璧な対応は難しいです」
斉藤「置き物は色がないデッキだと干渉しづらいですからね。他に苦手なスペルなどはありますか?」
景山「スペルとしてはやが挙げられます。特殊地形を並べることによってデッキの力を発揮しますが、それが負けに直結するスペルのため苦手ですね」
3. リソース破壊、アドバンテージカード
景山「一例ですが、、、、などを連打されると、アド差で負けてしまいます」
景山「はハンドにある重いスペルが抜けても、土地が抜けてもきついです。は2マナと軽い上に、かがない場合にはの着地を許してしまいます。4/4絆魂はクリーチャーのサイズでビートするエルドラージにとってはとても厳しい生物です。はを除去したり、のカウンターを0にされてしまうことによってせっかく抑えつけていた除去スペルが有効札になってしまうからです」
4. やが効かないコンボ
景山「を持たないデッキなので、ベルチャーのような早いコンボや2マナのスペルでを釣り上げられる動きを苦手とします」
斉藤「『X=1』が間に合わなかったり、引っかからないアクションは負けに直結しますね。が効かないコンボデッキとはどのようなものがあるのでしょうか?」
景山「アルーレン、エルフ、食物連鎖のような生物コンボには干渉する手段が乏しく、あっさり負けてしまうこともしばしばです」
■ 各主要デッキに対するサイドボーディング
斉藤「それでは、各主要なアーキタイプへのサイドチェンジの考え方を教えてください」
菊池「具体的なサイドボードプランをあげていきましょう」
・対 奇跡コントロール
菊池「まず第一にで1 : 2交換をとられないように、複数体の展開は抑えてケアします。また、先手のときはを残すことがありますが、後手番はかなり多めに抜くようにしてます」
斉藤「確かに、は横にでてくる生物によって力を発揮する生物なので、の良い的になってしまいますからね。サイドインはやのようなパーマネント対策が多めですね」
菊池「はい。、、、と、エルドラージが苦手としているカードが3マナに寄っているため、に関しては出せるときに出して3まで貯めています」
斉藤「もしもでマウントを取られそうなタイミングでも、すぐ4にしても落とせるので、低いマナ域よりも優先してカウンターを貯めておくのも大事なアクションですね。ただ、貯めてしまうことでやのトークンは除去できなくなってしまいますが、これについては問題ないのでしょうか?」
菊池「は本体をすぐ落とせば脅威になりにくいです。に対してはとで対応しています。を複数枚貼るアクションも、がなかなかプレイできなくなったり、の果敢をさせる回数が減る上に、こちらのアクションも通しやすくなります」
斉藤「も多めにサイドアウトするのですね」
景山「コントロールデッキ相手にバニラが弱く、こちらの妨害要素であるに対する相手の『X=0』で一緒に流されてしまうことも多いので、減らすことにしています」
・対 エルドラージ同型
菊池「まずミラーということで1マナのスペルが入っていないため、を抜きますね」
斉藤「『X=2』で唱えても自分に障害がありますしね。ゲームプランとしてはどのようなものがあるのでしょうか?」
菊池「先にをキャストするのが目標です。を起動することで勝利に明確に近づくからです」
斉藤「の制圧力は決定的ですからね。除去をサイドインするのは自分が押しているときにも強力な上に、時間を稼ぐという意味でも役立ちそうですね」
菊池「先手後手で考え方を切り替えるようにしています。は、後手のときにチャンプブロックしてマナ加速を狙うこともあるほどです」
斉藤「土地を伸ばしてを目指すのが大事になるとして、そのプランに対応できるプランはないのでしょうか?」
菊池「5/8と堅いが着地することによってお互いかなり動きにくくはなりますが、それを打破することができるのがですね。ビート同型ですので先にカウンターを乗せてしまうことによって、いわゆる『十手ゲー』に持ち込めることになります」
・対 デス&タックス
景山「初速で圧殺出来る強い手札の場合を除いて、基本的には長期戦を狙います。長期戦とは、つまりを唱えることですね」
斉藤「このマッチはで奪える土地もとても強力な能力を持つ土地が多いですよね」
景山「はい。マナが増えることはもちろん、盤面が有利になればやは相手への妨害になります。またを奪うことができれば、相手や自分の伝説の生物を戻すことも可能になります」
斉藤「との2種類が並ぶことによるパワー5の先制攻撃ブロッカーは、なかなか突破できないですからね。土地を縛ってくるデッキとのゲームは、土地の置き方も大事になってくるのでしょうか?」
景山「とても大事なことですね。よく考えながらセットランドはしています。例えばがアクティブなら寝ても能力が有効なが強く、を置かれた場合にはからセットランドして、次のターンにを出して一瞬の加速を生かすこともしばしばです」
斉藤「手札にが複数枚来た場合には、にを切ってもらうことを誘うように土地を置くこともありそうですね」
・対
菊池「対はやられる前にやるイメージです。妨害兼クロックのは、2ターン目に出せるなら出した方が良いです。まで待ったり、の際に同時に出すことよりも優先すべきですね。カウンターされてから即コンボが揃ったら負けなので、相手の80-100%の動きは諦めます。そのため、基本的には揃わないことを信じて、&でコンボを遅らせて、クリーチャー全力展開から速度勝負します」
斉藤「は優先的に構えるのですか?」
菊池「カウンターは構えられるときは構えたいですが、前述の通りカウンター込みで揃ったら負けなので、私は展開を優先します。とはいえ、を打たれたときも、投了しないで勝ちを考えることも大事です。
+→で対応
→ or で対応
+からのコンボ→で対応
と、ババ抜きになりますが解答はあります。そのため、でハンドを見ることはとても重要なのです」
斉藤「はスニークショーとオムニショーに分かれやすいですが、これらの分類別に何か意識していることはあるのでしょうか?」
菊池「スニークの場合はコンボスピードが速いため、妨害を優先します。オムニショーの場合は妨害がなくても初速がとても速い手札ならスピード勝負を挑むことも多いです。を見た場合はを入れることになります」
斉藤「スピード勝負になったときにに合わせてクロックを出しつつ、で相手のファッティを戻す動きは強そうですね」
・対 ANT
景山「このマッチはショーテルと違って、明確に肉より妨害です。、、、のどれかがないならマリガンします。2枚くらいは初手に欲しいですね」
斉藤「序盤はひたすら守りながら、負けない道を作ってからの攻めに切り替えるのですね」
景山「を複数枚引いたり、セットから行く場合は、『X=0』もかなり有効です。妨害を用意できてから展開とカウンターの2択になったときは、基本的に展開を優先させています。私の考えでは、100点回りのコンボは負けでよいと考えているため、最悪をケアしません」
斉藤「やはり、1ターンでも早く勝つ準備をしてからカウンターを構えるという考えなのですね。メイン戦に限ってしまいますが、相手の『暴勇』に対応して自分のにを打つことによってカードを引かせて勝っているシーンはとても印象深かったです」
・対 BG系
菊池「ベースのデッキには、土地を伸ばしてを出すことを考えてます。とという場と手札の両面の妨害で攻めてくるので、セットランドの仕方が難しいです。盤面にがあるのであれば1マナランド、1マナランド、と置くのも耐性のある置き方です。しかしで手札から落とされてしまうと元も子もないので、2マナランドは出せるときに出すことが多くなるのも事実です」
斉藤「やなども見かけるデッキタイプですが、は入らないのですね」
菊池「はずっとテストしたのですが、採用しないほうが良いという結論になりました。リソースを奪ってくるデッキに生物や除去以外のカードを引きたくないということもあげられます」
斉藤「展開量で勝負するゲームになるのですね」
菊池「はに対抗できるクリーチャーのため、とっておきたくもなるのですが、がいないときには2ターン目に2/2で出すことも大事になります。展開量を増やし、から他のクリーチャーを守ったり、を使わせることによって相手の展開への時間を稼いだりと、先出しが大事になることも多いです」
・対
景山「まず対デルバー戦は誰もが思うことでしょうが、ライフを大切にすることを意識します。後攻であれば、やからを置くよりも、やから、を展開することを優先します。後手1ターン目のはすべてのカウンターが当たる上に茶破壊がない場合でしか有効でなく、1ターン目にやを置くことのデメリットの方が大きいからです」
斉藤「殴り合ってもダメージレースはエルドラージの方が速いことも多いですからね。をに突っ込ませないで生物を展開するということは、はケアしない方針でしょうか?」
景山「はい。をケアしないで展開するのを優先しています。ケアして出さないでいると、を喰らってさらに展開が遅くなります。逆にを打たせることで相手の展開を遅らせたり、を切りにくくさせることができます。単純にを持っていない場合もあるので、とにかく展開を優先します」
斉藤「をサイドインしているのは、最近が流行っているためでしょうか?」
景山「もちろんそのためです。しかしに対しての解答としては、のほうが優秀です。は4点払う (場合によっては6点払う) ことで、打ち消されなければ1 : 1交換できるというカードなので、リスクリターンがあまり良くないです」
斉藤「ライフを大事にしないといけないマッチで自分からリスクを負うことになりますからね。しかし、除去になるはサイドインしないのですね」
景山「は、早いゲームになりやすいデルバー戦では遅すぎる上に、腐るリスクを許容できないのでいれません。打ち消しや茶破壊がない場合に限り、数ターン後に1 : 1交換するというカードだからです。ほとんどの場合、破壊したいものを破壊できずに唱え損になります。また、エルドラージでないスペルの2マナは、想像以上に重たいカードです」
斉藤「のおかげでカウンターされずに生物を展開できる分、相手の手札にカウンターが溜まりやすいので、スペルはカウンターの餌食になることが多いイメージですね」
景山「まさしくその通りで、肉と土地でダメージを先行することを意識します」
■ 細かいテクニックや初歩テクニック
斉藤「初歩的なテクニックや細かい注意点などがあれば教えてください」
菊池「まずへの認識が、他のが入っているようなデッキとは全然違います。はめったに起動しません。お互い土地2枚とお互い土地5枚の場合を比較すると、エルドラージが勝つときは後者です。フラッドしたからといって相手の土地を壊すと、意外と自分の首を絞めることがあります」
斉藤「本当に苦手な土地を割ることが目的と考えたほうがよさそうですね。土地の扱い方が慎重なデッキですが、他に土地を扱うとき気を遣っていることはあるのでしょうか?」
菊池「ライフがタイトな相手でない限り、はギリギリまでセットしないようにしています。土地を伸ばしたいからですね。特に、1ターン目にからのを決めるときは慎重にリスクリターンを考慮しています。また、は面白い土地で、からマナがでるようになったり、のダメージを軽減、から奪ったフェッチをマナに変える働きをするなど、多種多様な役割を果たします」
斉藤「、と置かれて展開量が少なくても、油断するのは早いということですね。次にでまさかの6マナですからね。黒マナがたくさんでるので、をペイライフなしで唱えたり、稀になども素でプレイできたりする点も、忘れがちですが重要だと思います」
景山「展開では、とからを一気に2体出す動きが強力です。しかし実は見落としやすいこととして、とからのではをケアできていなかったり、他にもとからプレイされたは打ち消せたりするので、対峙したときはエルドラージ側の土地を慎重に観察するべきですね」
斉藤「型を使われていますが、絡みで重要なテクニックは何かありますか?」
菊池「は『探査』やで追放した土地も奪えることも大事です。また、対奇跡コントロールでは、相手のを奪ってを除去から逃がして再利用するのは楽しいですよ」
斉藤「奇跡コントロールを使っているとき、『X=1』を置かれた後に『X=0』でこちらのを封じられたこともありました。こうしてみると様々なテクニックに満ちたデッキでもあるんですね」
■ まとめ: エルドラージに興味がある人へ
斉藤「エルドラージに興味がある人、使う人に向けて一言アドバイスをお願いします」
景山「まず異なるフォーマットのプレイヤーのために。エルドラージは比較的安価で、他のデッキよりは簡単に回せて、しかも強いデッキです。初速のぶん回りだけで勝てるだけでなく、膠着した盤面を突破する力もあります。そして他のフォーマットをプレイしている人の場合は特に向いているデッキだと思います」
景山「リミテッドプレイヤーの例をあげるとすれば、盤面が有利か不利かを常に考えているでしょうし、コンバットが上手でしょうから、リミテッド的なコンバットが多発するこのデッキにうってつけです。また、自分のデッキに何が残っているかを考える力があればなお強いですね。2マナ土地がデッキに何枚残っているか。トップしたら強いファッティが何枚残っているか。確率を計算して、未来を予測する力はレガシープレイヤーよりもあると思います」
景山「逆に、レガシープレイヤーの場合でも経験の差を生かせます。相手の手札に何があるか。相手のデッキに何があり、どのプレイが裏目を引きやすいか。そういった相手依存の部分を予測できるのは、経験値あってこそだと思います。ですが知識、経験が浅い人でも、自分の右手に対する期待値を最大限に生かすプレイならやりやすいはずなので、レガシーに馴染みがない人にこそ、エルドラージをおすすめしたいです」
景山「これは『誰でも勝てる』から言うのではなく、レガシー外のプレイヤーの方が複雑な盤面、自分のデッキに眠ってるカードを予測する力を持っているからこそおすすめするわけです。エルドラージはがない分、初手と引いたカードがすべてです。しかし、アクセスしたカードを見て、デッキに何が多く眠っているかを数えることができます」
景山「スペルの種類はクリーチャー4×6とがほとんどで、 それらに加えて2マナ土地の枚数と1マナ土地の残り枚数を常に頭に入れておくと良いでしょう。引きムラはもちろんあるけれども、偏った引きをしたときでも『 使えるリソースで何ができるか』を考える。このデッキはフラッドに対する受けは強いので、 土地を引きすぎたときはロングゲームを意識すれば良いです」
景山「『エルドラージは右手ゲー』とはよく言われることではありますが、全くの誤りだと思います。コンスタントに上位に残る人は存在するし、 なかなか結果がついてこない人もいる。その差はプレイングにあり、練度をあげるには環境を知ることと、確率を素早く処理することが求められると思っています」
景山「初速だけで倒せるマッチはそんなに多くないです。苦しいとき、むらっけが多いときにいかに勝つのかがカギなデッキです。自分の初手が最高ではないときは、裏目を捨てる。対戦相手が100点に近い動きをしたときは、どんな選択をしても大抵勝てません。なので苦しいときは、自分の動きに対して100点の解答は持っていないと割り切って考えて、思い切ってプレイしましょう」
斉藤「ありがとうございます。プレイの大事な考え方ですね。菊池さんはいかがでしょうか?」
菊池「エルドラージは2マナランドからの、とのパワーが飛び抜けて高いデッキです。それだけにどう構築してもある程度ぶん回ってしまうので、リストをコピーするにしても構築するにあたっても信頼できるリストかどうか見極めるのは難しく、リストの強さの信ぴょう性をかなり疑ってかからないといけないアーキタイプだと感じています」
菊池「構築する上ではとのパワーをどう生かしていくのか、などのマナ加速を使ってそれらの影響力の強い序盤で押し切るのか、どうしても膠着してしまう中盤以降のためになどを入れるのか……いずれにせよ、デッキの穴を埋めるためにどういうカードを採用するべきなのかがポイントです。自分にあった構築を探してみてください」
斉藤「エルドラージは簡単といわれがちなデッキですが、勝っているプレイヤーたちの練りこまれた考えがわかるインタビューを今回はありがとうございました!今後の活躍にも期待しています」
ということで、チームエルドラージの景山さんと菊池さんでした。
それでは、また第16回でお会いしましょう!
斉藤 伸夫
【The Last Sun 2013】トップ4をはじめとして、国内の大型レガシートーナメントにおける数多くの入賞経験を持つ関東レガシー界のエースオブエース。
レガシー環境に対する深い造詣と幅広い人脈を武器に、常に最先端のテクニックを取り入れたデッキを作り上げ、コミュニティにシェアしている。
レガシーにおけるプレイスピードと正確性はプロにもひけをとらない。
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