あなたの隣のプレインズウォーカー ~番外編3 こうしてできる隣のプレインズウォーカー~

若月 繭子

若月 繭子

 こんにちは、若月です。

 この連載は2011年7月に始まりました。つまりは来月、次回で6周年となります。ちなみにマローの週刊連載「Making Magic」は15年間続いています。逆立ちしても敵わんね。

 今回は突然ですが番外編として「この連載がどのように書かれているのか」を、私が所持する資料と共に記録に残しておきたいと思います。

1. 物語愛を叫ぶ

 元はと言えばこの連載、開設されたばかりのhappymtg.com(当時)に「背景ストーリー記事を書かせてもらえませんでしょうか?」と申し出たのが始まりでした。そして第1回冒頭にこう書いていました。

 「ディープすぎず、かつ馴染みやすい背景世界系の記事を」とお願いされましたので、どんなプレイヤーにも馴染み深い「プレインズウォーカー」達について、キャラクターとしての面にスポットを当てて様々なお話をしていこうと思います。

「あなたの隣のプレインズウォーカー ~第1回 ギデオン・ジュラを知ろう~」より引用。

 そしてタイトルが示す通り、当初この連載には「日本語ではあまり語られていない、明らかにされていないプレインズウォーカーの人物像や物語を紹介する」という意図が第一にありました。そしてしばらくはその通りの記事が中心となっていました。

 ですが時は流れ、公式による物語展開の方法が大きく変化しました。ご存知の通り、2014年秋の『タルキール覇王譚』から全てのストーリーがウェブサイトにて展開されるようになり、「日本語で」「無料で」読めるようになりました(その直前、『基本セット2015』のストーリーも『DotP2015』にて日本語&無料で追えましたが)。そのため私の記事に上記の役目はほぼ無くなり、「すでに公開されている物語や設定、世界観を噛み砕いてその良さを紹介する」ような連載へとシフトしました。今では「プレインズウォーカー個人を扱う回」の方が少ないくらいです。一番最近では2016年10月掲載の第49回(テゼレット回)がそれですね。とはいえ前述の通りウェブサイト展開は2014年秋からなので、日本語の物語に登場したことのないキャラクターはまだたくさんいますし、お馴染みのプレインズウォーカーでも知られていないエピソードはまだまだあります。それを紹介する機会もこの先あると思います。

策謀家テゼレット

 カラデシュブロックでのテゼレットのように「過去に人気のあったプレインズウォーカーがセンセーショナルに再登場」するとこの連載的には非常に盛り上がります。しかしテゼレットについては続きを書く機会を逸してしまってどうしようね。

 ちなみに「あなたの隣のプレインズウォーカー」というタイトルも当初の意図からつけたもので、かつそれほど深く考えたわけでもありませんでした。そのため今や内容との剥離が甚だしい上に無駄に長いので宣伝する際に文字数を食って仕方ありません。まあこれはもう諦めています。何か連載企画がある人はタイトルをシンプルにしておいた方がいいですよ!

2. こんな資料を使っています

 私が記事を書く上で一番大切にしているのは 「自分の目で一次資料を確認する」 「それが無理(実物が入手不可能とか)なら、その情報は一次資料からのものでない旨を明記する」。何せデッキ構築などのように、記事を書くにあたって私が何か新しいことを発見する余地はほとんどありません。どう情報を得てどう解釈し、どう感じ、どう表現するかというのが全てです。ではその情報はどこで手に入れるのか?

■ ウェブサイト

 まず何を置いてもこちら。本家サイトは平日毎日(と休日もGPやPTカバレージが)更新されています。時差があるので更新は日本時間翌日午前0時(冬時間は午前1時)。つまり本国では月曜日の更新がこちらでは火曜への日付変更付近になります。夜更かしはほどほどにね!

 また、本家サイトは3年ほど前に大幅リニューアルされました。そのため過去の記事は見つけにくくなっています。ですが消えているわけではなく、だいたいはアドレスが変わって現存しています。記事タイトルが判明している場合はGoogleで「(記事タイトル) wizards.com」というように検索すればわりとすんなり発見できます。

 また各国公式やそのソーシャルメディアアカウント(Twitter・Facebook・Tumblrなど)にも「そこにしかない情報」が時折載っているのでそちらへもアンテナを立てているとわりといいことがあります。最近ではカラデシュ領事府改革派とかね。

 この一連の「指名手配」情報ではゲートウォッチ各人の能力をだいたい何らかの装置によるものと解釈しており、魔法がほとんど存在しないカラデシュ次元らしさが感じられます。

■ 各種書籍

 物語そのものはウェブサイトで毎週公開されていますが、「物理書籍」として現在も様々なものが存在します。

 ここからは画像が多めです。また、画像が暗かったりぼやけていたりしますが私の写真技術が低いことによるものです。ご了承下さい。

※画像は全て、クリックすると拡大します。

小説

 この連載で最も取り上げる機会が多いのはペーパーバック小説でしょうか。マジックの物語は長いこと小説をメインに語られてきました。全て英語ですが日本でも主にAmazonで入手が可能(絶版のため一部はプレミア)、また以前はファットパックにも封入されていました。

 こちらは『ラヴニカ:ギルドの都』ブロックの3冊、中身は右画像のような感じです。『イーブンタイド』までは各セットにつき1冊が刊行されていました。その後は形態が変化し、『アラーラの断片』ブロック・『ゼンディカー』ブロック・『ミラディンの傷跡』ブロックで各1冊、そしてプレインズウォーカーを主人公としたものが数冊刊行されていました。

 時々、小説表紙・裏表紙にのみ使用されているアートが存在します。凛々しいテゼレット、メタル系バンドのような新ファイレクシアヴィラン勢。そして『ネメシス』小説裏表紙の《アーテイ》何だその表情は。

 また、過去の小説が少しずつ電子書籍化されており、こちらは安価(数百円)で購入できます。『ラヴニカへの回帰』ブロックと『テーロス』ブロックは電子書籍のみの発刊でした。『回帰』ブロックの小説、当初はアメリカ国内のみの発売だったので「こっちでも買わせてくれ!」という英語メールを3か所くらいに送りましたよ。

 私のKindleは古いものです(2013年購入)。買う時に「最新機種を買えばタブレットPCみたく外出先でも作業できるな」と「外出したときくらい作業したくないわ」がせめぎ合った結果、後者が勝って純粋な電子書籍リーダーを購入しました。ちなみにこの画像ではとある有名な場面が写っています。

アートブック

 『戦乱のゼンディカー』ブロック以降、豪奢なアートブックが刊行されています。内容は数々の大判アートや世界設定の解説(かつて「プレインズウォーカーのための○○案内」としてウェブ掲載されていたような内容です)、そのブロックのストーリーもあらすじが掲載されています。

 美しい……。右の画像はカラデシュアートブック内、「発明博覧会図録」の頁です。この趣向は素晴らしい。解説の方も、しれっと重要情報が書かれていることもあって見逃せません。以前ちょっと言及した《不敬の皇子、オーメンダール》についても。今回ストーリー情報が全くないのも何ですし、抜粋して翻訳しましょう。

エムラクールの影響下、融合したエルドラージの大天使――悪夢の声ブリセラ――がスカースダグ教団と月皇審問を手中にし、エルドラージの餌とした。悪魔崇拝者ジェレンと月皇議会の議員らは皆殺しにされ、悪魔オーメンダールは天使らと同じくエルドラージの怪物へと変質させられた。

書籍『The Art of Magic: The Gathering – Innistrad』P.204より抜粋・訳

 《グリセルブランド》の後釜として期待されていたのですが……。 なおアートブックはだいたいそのブロックストーリー完結の少し前に発売されますのでネタバレに注意が必要です。

コミック

 上の2冊「Path of the Planeswalker」は過去にウェブ掲載されていたコミックを収録したもので、ジェイスやチャンドラといった割と初期のプレインズウォーカーの物語です。下の3冊は《ダク・フェイデン》を主人公としたアメコミです。ダクやフィオーラ次元はこのコミックにて初登場、後に『コンスピラシー』シリーズで取り上げられました。

 イニストラードにて、ダクと現地ヒロインのイングリド。後にテーロス編にて《悪夢の織り手、アショク》も登場しているのですが、途中でコミックそのものの刊行が止まってしまいました。ダク&アショクが今どうなっているのか、私も知らない。

画集

 マジックに携わっている多くのアーティストさんが個人画集を出版されています。マジック的な新情報はなくとも、どういった背景でそのアートが描かれ、キャラクターデザインが成されたのか、などがわかることがあります。もちろん単に眺めるだけでも満足。

 Rob Alexander氏による画集兼教本。表紙がすでに!(※編集:左の教本の表紙のアートはこれ) ちなみにこの2冊は『ファンタジーの世界を描く -建造物編-』、『ファンタジーの世界を描く -景観編-』というタイトルで日本語版も刊行されています。

 多くのプレインズウォーカーを手がけているAlexi Briclot氏の画集。ハードカバー・フルカラー200ページ弱のずっしり重く豪華なもので、私達もよく知るアートが大判でたくさん掲載されています。

 何とギデオンの初期ラフスケッチらしきものまで! けれどメモ書きがフランス語らしく全く読めません。無念。

古い冊子

 こういうの。こちらはかつてホビージャパンさんから刊行されていたガイドブックです。ネットがまだあまり普及していなかった当時、カードリストはこのような書籍媒体から入手することがほとんどでした。この本は始まったばかりのウェザーライト・サーガにおけるキャラクター・ストーリー情報が掲載されていて私的にはとても重要です。

■ 各種セット付属品

ファットパック(現バンドル)付属小冊子

 バンドルにはブースターパックの他に丈夫なストレージボックス、基本土地のセット、ライフカウンター、そしてこの小冊子が含まれています。内容はセットの概要やメカニズム説明、カード画像。カード毎の解説こそありませんが、日本で言うところの「公式ハンドブック」シリーズの位置づけだと思います。

 背景設定・ストーリー情報もあり、この連載でもたびたび取り上げてきました。内容や文章量はセットによって様々です。『アモンケット』五神と試練の解説はウェブより詳しく、前回ずいぶんとお世話になりました。『運命再編』ではあの熱い物語が。

 『コールドスナップ』では何と書きおろし小説が掲載されていました。《霧氷風の使い手、ハイダー》の物語です。かなりレア。

プレリリースの封入物、特殊セットの解説書など

 まずはプレリリースキットから。『ラヴニカへの回帰』『ギルド門侵犯』には各ギルドから加入者への手紙が封入されていました。種類が多いと集めるのも大変です。いつも協力してくれる仲間に感謝。『カラデシュ』『霊気紛争』ではテゼレット審判長のサインを入手しました。なかなかに達筆ですがどちらの手で書いているんでしょう。

 デュエルデッキ、統率者、From the Vault。そういった特殊セットに封入されている「説明書」にも思わぬ情報が掲載されていることがあります。例えば第50回で触れたように「《梅澤俊郎》が流された先はドミナリア」という情報は(以前からほぼ疑う余地はありませんでしたが)『From the Vault: Lore』にて公式に確定しました。Tetsuo Umezawaとボーラスの因縁話もそのうち書かないといけませんね。

 資料については以上になります。ある意味コレクション自慢でした。

3. 記事の心構え

 正直な話をしますとこの連載記事を書くテンプレ的なものは存在しません。せいぜい、

(1)題材を決める

 特定のキャラクター、物語そのもの、世界観紹介などなど。

(2)項目を決める

 キャラクターであればその個性、エピソード、カードとの関わり。物語であればその起承転結など。

(3)資料を元にひたすら書き、推敲し、校正する

 というくらいで……いえ一つ。記事の冒頭、導入方法については毎回こだわっているつもりです。可能であれば「その回の題目に合致した印象的な記述を小説や公式記事から見つけてきて引用する」。ぴったりの記述が見つかればもうその回は私の中では勝ったも同然。見つからない場合はシンプルに挨拶に留めます……今回がそうですが。

 また書きながらも文章の塊をコピー&ペーストして移動させつつ最良の構成を検討します。そのため「書き方」を解説することは難しいので、>「書く際の心構え」を紹介したいと思います。あくまで私がこの連載記事を書く際の心構えであって、必ずしも全ての記事に当てはまるものではないことをご了承下さい。

情報源と根拠を明確に

町のゴシップ屋

 極端なことを言ってしまえば、私の記事にある情報は全てネットや紙媒体のどこかしらに存在するものです。ただそれがばらけていたり外国語であったり入手困難だったりするだけで、この連載に新しい情報は何一つありません。いろいろなことは書いてありますがここは単に何とか上手くまとめているだけであって「情報源」そのものではないんですよ。だからこそ、上にも書きましたが、一次情報を自分の目で確認した上で言及する。自分の目で見てこそ信憑性が生まれると思っていますし、間違っていても確認することが可能です。

 また、古い事象を扱った回に多いですが、時々記事末尾に「参考資料」を列記しています(第37回第43回第49回第54回)。これは文中で「○○という記事によれば~」という記述があまりに頻発するのを防ぐため、というのが主な理由です。

肯定的に

ブレイゴの好意/Brago's Favor
 「良い」「おもしろい」というようなプラスの感情を喚起するような書き方を心がけています。感情は感情を呼び起こします。例として『運命再編』序盤のエピソード。ナーセットのために過去を変えようというサルカンの熱い決意に心を動かされなかった人は少ないでしょう。

そして、見るだろう。見せてやる。サルカンはその瞬間決心した。どんな事でもしてやろう、力の限りに、物事を正すために。彼女の時が訪れたなら、ナーセットが再びタルキールに生きる時が訪れたなら、彼女を、龍たちが待っているように。

公式記事「古の、新たなタルキール」より引用

 つくづくマジックの物語展開においてタルキールブロックが果たした功績は大きいと思います。あの熱い物語を誰もが読めたことでファンが一気に増えましたもん。良い、おもしろい、と感じたならそれを良い、おもしろい、と伝えることを心がける。それにこれでも一応販促記事なんですよ、販促になった試しはないと思いますが! ですので「弱い」とか「駄目」とか、マイナスイメージのある表現はなるべく使用しないようにしています。戦略記事でしたら言い切ることも必要だと思いますが、こちらはあくまで「物語を楽しんでもらう」のが目的ですしね。第一私だってネガティブなことは書きたくない……どうしても必要なら書くけどね。

  • メジャーな物語やキャラクターに対して:皆が漠然と抱いているいい印象を言語化する
  • マイナーな物語やキャラクターに対して:「実はこんななんですよ」というやはりいい印象やおもしろい展開を言語化する

 「そうそうそうだよ」「あるある」と思ってもらうことが大切です。例えば『戦乱のゼンディカー』『ゲートウォッチの誓い』における悪役オブ・ニクシリス。第40回42回にも書いた通り、彼は敵ながら実に気持ちのいいキャラクターです。一人称語りの記事ではどこかノリが良くてひたすらポジティブ、そしてゲートウォッチとの対決にあたっても相手の実力を認めることにやぶさかでありませんでした。……でしょ?

弄りはほどほどに

悪戯

 マジックの物語には「ネタキャラ」として愛されるキャラクターもたくさんいます。それを「ネタ風に弄る」のもときにはいいですが、読んで不快にならない程度に&マジックへの敬意は失わないように努めています。「首飾り」《黄金牙、タシグル》「ただのおっさん」《鐘突きのズルゴ》のように「物語では笑えるけれどトーナメントでは大活躍」というキャラクターはありがたいですね。

黄金牙、タシグル龍王シルムガル

 タシグルについてはわざわざ公式で説明記事が存在していたくらいです。このように「向こうもわかっている」のは稀だと思いますが、そういう事例は積極的に活用していきたい。

脱線・余談上等

移し変え

 私の記事は元々「マジックで強くなるためには全く必要ない」ことがわかりきっているので、「そういえばこんなおもしろい話もあったな」と思い付いたら無駄話であろうがだいたい書いています。ただ本筋から外れすぎない程度にね。そしてそんなふうですので逆に高橋さん原根さんの「一切の無駄のない」記事には憧れがあります。

グロ注意

奇怪な突然変異

 時にマジックにはグロい展開も容赦なく存在します。そしてそういったものへの耐性は人によって様々です。そのため、取り上げる際にはそれを本当にどうしても取り上げたいかを検討し、注意書きも入れるようにしています。例としては第24回、対抗色ダメージランドの背景についての項目。

 同じく『ネメシス』小説、ラストシーン近くから、《隆盛なるエヴィンカー》との決闘に敗れたヴュエル(《墜ちたる者ヴォルラス》の本名)が処刑される間際に目にしたものの描写。

※ややグロ注意。表示するにはこちらをクリック。

耳と鼻が顔から滑り落ち、最後の息とともに歯も落ちるその時、ヴュエルは見上げた。そして目にした――ラースの永遠の灰色の空が、雲一つない完璧な青空に変わるのを。それはドミナリアの空だった。シダー・コンドーの息子ヴュエルは、最後の最期に、故郷へと帰り着いた。

 これはヴュエルの死に様こそなかなかグロいものの、「死の直前に故郷の青空を見ることができた」という救済と、ラースの灰色からドミナリアの青色への鮮やかな変化が、ドミナリアが誇りとする豊かなマナと色彩を際立たせる名場面だと思っていますので紹介しました。

エロ注意

運命の逆転

 時にマジックにはエロい展開も容赦なく存在します。そしてそういったものへの耐性は人によって様々です。そのため、取り上げる際にはそれを本当にどうしても取り上げたいかを検討し……ごめんなさい嘘です、こっちはだいたい喜々として取り上げています。公式に存在するんだからいいじゃん、そんなガチ描写があるわけでなし! ちなみに物語で存在するけれどこの連載で喋っていないそういう話・・・・・もわりとあるのよ? たとえば《梅澤俊郎》と……

 やっぱりやめとく。けれどそんな話を詳しく取り上げられるのも背景ストーリーを扱うこの連載の醍醐味。ここでおはようって言いましょうよ。

よくわからないところは上手くごまかす

ものぐさ

 うわー身も蓋もない上に曖昧。ですが実際、物語には「わからない」「その先は不明」で終わっている物事もいろいろあります。勿論「不明」と書き切ってしまっても別に良い、むしろ「不明」と書いて終わらせておくべきという場合もあります。ですが全てがそれではモヤっとするというのと、私が調べ切れていないだけで実は結末が存在するのかもしれません。そういうときはなるべく「イイハナシダナー」の雰囲気でまとめるようにしています。

 「こういうふうにごまかしました」って明かすのは何だかなあと思うのですが例として第49回、エーテリウム金属の話について。一つになったアラーラへとエーテリウムの材料を求めて出たエーテル宣誓会はその後どうなったのか、という箇所です。

『コンフラックス』~『アラーラ再誕』にてアラーラ世界が一つとなった後、求道団の者らは(地続きとなった)他の断片へとエーテリウムの原料の一つである赤い石を探す旅に出ました。ですが隣接しているとはいえグリクシスは地獄そのものであり、バントですら異質な生物と異質な魔法の存在する馴染みない世界でした。とはいえ、ある者はその旅の中で新たなマナに触れ、新たな経験と視点を得て、一つのアラーラ世界を体現するような存在となっていくのでした。

「あなたの隣のプレインズウォーカー ~第49回 てぜれっとオリジン~」より引用

 ここ、結局エーテリウムの作り方とか資源とかどうなったん? という疑問には答えていません(その後作成できるようになったようですが。第50回参照)。わりとこういう感じにごまかしているところがこの連載にはたくさん存在しますので探さないでください。

4. ちょっとプレイバック

 まもなく連載6周年、その間とてもいろいろなことがありました。そこで「ターニングポイントになった回」「思い出深い回」をいくつか挙げてみます。もし未読で、興味を持っていただけましたら読んでみて下さい。

第10回 イニストラード・ファイナルアンサー (2012年7月)

希望の天使アヴァシングリセルブランド

 『イニストラード』ブロックは小説が刊行されず、ウェブにて公開されたメインストーリーも断片的なものでした。それでも『イニストラード』『闇の隆盛』『アヴァシンの帰還』の序・破・急はきちんとしていて、序盤に提示された様々な謎が明かされたり伏線が最終的に解決したりしなかったりしました。そういったいろいろな情報が記事やカードに散らばっているので、一つにまとめたらわかりやすいんじゃないかな、と「答え合わせ」を書いたのでした。

 そしてこれがわかりやすく参照に便利ということで、以降「プレインズウォーカー解説回」ではない「ブロックストーリーまとめ回」が定着しました。書くのは結構大変なんだけど同時に楽しいのでよし。

第16回 \スリヴァーだー!/ (2013年9月)

 不動の人気種族スリヴァー。『基本セット2014』でまさかの再登場を果たすことがわかり、ある日の打ち合わせのやり取りにて。

「スリヴァーってあれだよね、\アリだー!/

\アリだー!/

「「\アリだー!/」」

 というただそれだけから「スリヴァーやりましょう」と書くことになった回でした。SFC世代乙。デザインチーム渾身の究極完全体メタリック・スリヴァーの画像は今見ても傑作です。

 記事中にあるように「(M14スリヴァーのいる)ここはどこだ?」という疑問を持っていなければ書くに至らなかったと思います。視点が大切。シャンダラー次元にスリヴァーがいることがわかり、一気にスリヴァーの世界が広がりました。そういえば公式ウェブサイト、シャンダラーの解説ページにはこんな記述が……。

今、この稀な次元の住人は、絶え間なく進化を続けその世界を消費し尽くす脅威となっている種族、スリヴァーの高まる集団意識との戦いを強いられています。

「次元解説ページ:シャンダラー」より引用

番外編 とあるリセットの呪文の物語 (2014年1月)

 私はよくTwitterで独り言を呟きつつネタ出しをしています。元々は《至高の評決》について語っていたところ、「フレイバーのある全体破壊呪文」繋がりで《抹消》を思い出し……

 当時はこの連載もまだ「プレインズウォーカー紹介記事」の体裁を割と保っていました。なのにプレインズウォーカーほとんど関係ないし唐突すぎる、だったら関係なくとも唐突でも「是非とも載せたい」って思わせるような内容を書いてやればいいのだ! どうだ! とばかりに完成原稿を送りつけたのがこの一本でした。目論見は当たり、とても大きな反響をいただいたのを今でも覚えています。ウェザーライト・サーガをある程度大きく扱った回としてもこれが初めてでした。この回が好評でなかったら「リマスター」シリーズはなかったかもしれません。

抹消

 後に「物語」をフォーカスした『From the Vault:Lore』に《抹消》が収録されました。やっぱりこのカードには格別に長く深い物語が込められているんだなあ……と感激しました。

第27回 君の名はウギン (2014年11月)

苦しめる声

 『タルキール覇王譚』とともに物語のウェブ展開が始まってまもなくのこと。この「週刊連載」形式、実は結構熱いのでは……? じわり人気が上がってきた頃でした。『基本セット2015』『タルキール覇王譚』の各所に漂う、あのウギンの気配。『未来予知』でほのめかされ、『ゼンディカー』ブロックでも深く関わっていたらしい、そしてボーラスと因縁を持つプレインズウォーカー……これは登場するかどうかはわからないけれど、おもしろい記事にできるのでは? 「過去に提示されていた様々な情報をまとめる」、上で挙げた3本も全てそんな内容ですね。つまり私はこういうのを書くのが好きなんでしょう。

 そして凄いナイスタイミング(本当)で《命運の核心》が発表され、期待が最高潮に達したタイミングで記事を出すことができました。このカードの隅にサルカンがいる! と気付いたときの興奮は忘れません。

第54回 未来予知図の10年目 (2017年3月)

 そして最近ではこれですね。マジックの歴史において極めて重要な『時のらせん』ブロック、特に『未来予知』について一つまとまった記事を書くというのは何年もの間ずっと温めていたことでした。それがようやく叶った。奇しくも掲載直後、《エイヴンの思考検閲者》が『アモンケット』で10年目の本収録を果たしてくれました。思えば遠くへ来たものだ。プレインズウォーカーが現在の姿になった出来事、「大修復」の物語についてももう一度詳しく取り上げたいのですが……ああそう、最近確定したのですが物語中では「大修復」から約60年、だそうです(MAGIC STORY PODCAST: ALISON LUHRS AND KELLY DIGGES 2分05秒付近より)。思ったより経っていなかった。カラデシュ次元で霊気技術の革新が起きたのがその60年前なのだそうです。大修復はプレインズウォーカーの性質変化以外にもさまざまな変化を多元宇宙に引き起こしたのかもしれません……こういうのが上述した「情報源と根拠を明確に」「脱線・余談上等」というやつ。

 本当はもっとたくさん選びたいのですがこんな所でしょうか。一本一本に様々な苦労や思い出が詰まっています。皆さんの「お気に入り回」がありましたらTwitter(@aishawakatsuki)で教えていただけるととても喜びます。

5. 最後に

 さて私は「マジックの背景世界」というニッチな分野を最初期から追及してきました。第3版《ベナリアの勇士》のBenalishって何だ、と思ったのが全ての始まりだと思います。自分で何か発信するようになったのは15年ほど前からでしょうか。それは英語小説や記事を読んで「こんなにおもしろい物語がほとんど知られていないなんて!」という意欲からでした。

 何か記事を書いてみたい、ライターになりたいという人へ。とにかく書いてみて下さい。そして続けて書いて下さい。継続は力なり、です。何よりも締め切りは守りましょう。「継続して」「締め切り通りに」書けるライターは信用・重宝されます。

 今や物語もマジックにおいてメジャーな楽しみとなっています。幸いにして私はそれを少し詳しく話せるだけの知識と資料をこれまで積み重ねてきました。ですが「少し詳しく話す」ことでみんなが物語をもっと楽しめて、もっと好きになってくれるならこれほど嬉しいことはありません。私はきっとそのためにこれからも記事を書き続けていくのでしょう。

(終)

この記事内で掲載されたカード


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