こんにちは若月です。実を言いますと前回、待望のレイモスについて力の限りに書いたことで「燃え尽き症候群」に陥りかけたのですが、『イクサラン』ストーリーの盛り上がりにこうしちゃいられねえ! と起き上がってきました。だってジェイスとヴラスカがあんなに良い雰囲気とか誰がそんな展開予想できたよ!! 初めて読んだ時は私も「なんだこれ……なんだこれ……」しか言えなかったわ!! 純真なジェイスと姉御肌のヴラスカ、知っているキャラクターの筈なのにこんなに新鮮なものとして読めるなんて。
だが落ち着け、まだあわてるような時間じゃない……マジックのストーリーだとこういうのはだいたい悲劇へ向かうんだ私は詳しいんだ、いやウェブ展開になったタルキール以後はそうでもない感じがしますけどね (タルキール以前はお察し下さい)。
このクリフハンガーが「注目のストーリー5/5」。気になりすぎる。
そんなふうに気が付けばこの連載は第60回の節目、とはいえ番外編とかありますので実質65回くらいですが。新セット『イクサラン』の世界をじっくり見てみましょう!
1. 困惑と驚嘆
アモンケットに続いて完全新規次元が舞台となる『イクサラン』。それは「ヴラスカ海賊団が恐竜と戦う世界」という発表で始まりました。
これは誰もが頭上に疑問符を浮かべたかと思います。改めて読んでも「なんでそんなことになってるの」という感想が一番先に来る説明。「ヴラスカ」「海賊」「恐竜」全てが連想できるものとして繋がらない……わけがわからない。キーアートも完全に海賊ルックのヴラスカに、恐ろしい筈のゴルゴンと一緒に船員をやっている人間、それと猿。岸辺には恐竜に乗る兵士……うむ確かにこれは「ヴラスカ海賊団が恐竜と戦う」だな。いやその通りの絵を見せられてもやっぱりわけわかんないよ! けれど何かすごくわくわくするのは確かでした。だって海賊に恐竜、こんなの我々の内なる少年の心を刺激するに決まってるじゃん! そんなふうな、むしろ期待の大きな困惑とでも言いましょうか。
そして世界そのもののビジュアルはむしろ、同時に発表された次セット『イクサランの相克』キーアートが示してくれました。
古代中南米風の建物、そして最近の学説を取り入れたと思しき極彩色の羽毛恐竜。中南米に恐竜、そして海賊……ここで思い出したのは、これも過去何度か取り上げているマローの記事「おしえてあなたの望むこと」。この記事内の項目「要求#1:作ってほしいブロック」には様々な世界が列挙されているのですが、(以下引用)
・メソ・アメリカ風の世界 ― マジックはヨーロッパやアジア(さらにアフリカさえも)には注目してきた。南米はどうだろう。
・海賊の世界 ― マジックで海賊を扱ったことはないわけではないが、海賊というジャンルにしっかり取り組んだことはない。「パイレーツ・オブ・カリビアン」のようなブロックを作るとどうなるだろう。
・先史時代の世界 ― 恐竜、窟居人、古の動植物、恐竜。プレイヤーたちは、マジックではるか昔の世界を見たがっている。
一度に来たー! というよりはむしろ、セットの方向性として「陣営の対立」を突き詰めていった結果それらが合わさった、ような感じですが(参考)。だとしても何故ヴラスカが海賊に……? ともかく、新セットの期待感として「興奮と困惑」(特に後者)がここまで大きかったものは滅多にないと思います。
そしてカードやメカニズムが明らかになると、つまり『イクサラン』は「中南米風の文明社会を要する大陸とその周辺の広大な海を舞台に、四つの勢力が相争う話」というふうになりました。こう書くとごくごく真面目、ただその勢力が「恐竜」とか「海賊団」とか、何かこう……これまでになかった、繰り返すけれど少年の心を刺激する方向に突っ走っている。凄く奇妙な世界というわけではないのだけれど、とても新鮮に感じました。
そしてその「新鮮さ」が大切なのだと思います。マジックの醍醐味の一つは「世界のメリハリ」とこれまでにも何度か書いてきました。明るい雰囲気の次は陰惨な世界、その次はまた気分をがらりと変えて……そんなふうに。アモンケットの過酷な砂漠とオアシス都市から、イクサランの豊かな密林と広い大海原へ。
更に、物語や設定としても前ブロックでは大ボス登場と主人公チームの敗北が早くから予告されていました。対する今回は全く先が読めません。何もかもが対照的、だからこそいつも全く新たな気持ちで次のセットに接することができます。ちなみに「イクサラン」は世界の名前であり大陸の名前でもあるのだそうです。つまり一つの大陸と周辺海域が今回のセットの舞台、ということですね。
2. 各勢力模様
マジックのセットではしばしば「勢力」的なものが色分けされて存在し、それぞれの個性を主張しています。『イクサラン』では吸血鬼・海賊・マーフォーク・恐竜の4つ。で私は最近思うのですが、今回の4つやタルキール氏族の5つくらいが丁度良いのかもしれませんね。ラヴニカはギルドが10で10勢力、テーロスに至っては大神小神合わせて15勢力があるようなものです。賑やかで楽しいですがその分それぞれへの注目度は小さくなってしまったり、どうしても扱いに差が出てしまうなあと思わなくもない。2ブロック6セットを経てもあまり目立っていなかったギルドとか、小説・記事合わせてもほとんど出番のなかった神様とか(かわいそうなので詳細は伏せる)。
のっけから話がそれました。この項目では主にMagic Storyと『イクサラン』バンドル付属小冊子から各勢力について解説します。
■ 薄暮の軍団
白黒の吸血鬼は今でこそさほど珍しくもなくなりましたが、「信仰に生きる吸血鬼」ということで今回は白単も! モチーフは「中南米に攻め込んだスペイン人征服者」なのだとか。その通りに彼らは遠くの大陸からの侵略者という立場です。「軍団」を率いるのは吸血鬼ですが、その下には多くの人間も加わっています。
『イクサラン』バンドル付属小冊子P.9より翻訳
薄暮の軍団は様々な儀礼と強大な信仰体系への献身から成り、それは不死者の聖騎士が率いています。七百年間に及ぶ戦乱を経て彼らの軍勢は遥か海の向こうの大陸を完全に征服し、吸血鬼軍はイクサランをその領土に加えるべくやって来ました。彼らのうち若干数の指導者はまた、不滅の太陽を探し求めています。伝説にてかすかに語られる、真の不死の源――彼らが今被る終わりのない不死状態とは全く異なる、永遠の生命を。
《駆り立てる僧侶》フレイバーテキスト
「不滅の太陽があれば、真の意味での永遠の命が得られるでしょう。終わりのない不死の影など必要なくなるのです。」
《軍団の征服者》フレイバーテキスト
薄暮の軍団はトレゾンから海を渡り、栄光と富と不滅の太陽を探しに来る。
「トレゾン」というのが彼らの故郷の名なのですね。そして彼らは元々人間であったのですが、山中の修道院に安置されていた「不滅の太陽」が盗まれてしまい、その責任を負うべく儀式によって不死者と化し、長きに渡る探索行を開始した……のだそうです。信仰に生きる彼らはその不死性を自らに課した重荷とみなすとともに、厳しい戒律に生きています。彼らが飲むことを許されているのは罪人や敵の血のみ(とはいえ全ての吸血鬼が厳格にそれを守っているわけでもないようですが)。そして食事を絶つ「断血」は信仰と献身を示す行動の一つであり、同時に狂乱のトランス状態に陥って幻視や新たな力を得るというものです。
イクサラン大陸へやって来た彼らの目的は三つあるようです。
彼らだけでなく全ての勢力が探し求めている「不滅の太陽」とは何なのか。かつて不滅の太陽を守っていた、そして最初の吸血鬼となった聖エレンダとは何者で、どこにいて何をしているのか。それが物語へとどのように関わってくるのか。今回の話は戦いや対決ではなく「探索行」が中心なので、単純な勝敗でない決着がどのようにつくのかがまだまだ読めません。
■ 鉄面連合
海賊軍団。我々の次元でいう海賊は古代から現代まで世界各地に様々ありますが、その中でも16-17世紀カリブ海の海賊黄金時代、いわゆる「海賊」と聞いて最初にイメージするそれに近いですね。パイレーツオブカリビアン的な、自由と享楽に生きる悪党ども。とはいえ現実のそれと多分最も違うのは、彼らを取り締まる存在(現地の植民地総督・私掠船の場合は所属国・その戦争相手など)がほぼ無いということでしょうか。
『イクサラン』バンドル付属小冊子P.9より翻訳
鉄面連合は、薄暮の軍団の進出から海を越えて逃れてきた船乗りで成り立っています。彼らは元々、イクサランの大陸に植民地を建設して太陽帝国の都市との交易を目指しました。ですが帝国は彼らを追い出し、そのため船長らは海賊行為と略奪に転じました。現在、連合は海賊船長とその乗組員らによる緩い提携関係であり、海を支配しイクサランの富の分け前を手に入れようとしています――特に、不滅の太陽を。
マジックの「海賊」は過去にも少しだけ存在しましたが、大きく取り上げられたことはありませんでした。ある程度まとまって登場していたのは『ポータル・セカンドエイジ』の青勢力であるタラスの海賊、『メルカディアン・マスクス』の港町リシャーダを根城とする海賊くらいで、どちらも今から18年程前になります。つい最近では『霊気紛争』にて《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》が登場、物語でも結構重要な役割を果たしました。とはいえ彼女は海賊というよりは空賊ですけどね。
「海賊・クリーチャー」を検索すると2017年10月現在59枚がヒットしますが、そのうち『イクサラン』が39枚。つまりこれまでの倍以上に増加しました。そしてこれまでの海賊はほぼ人間のみでしたが、鉄面連合は『イクサラン』の4勢力の中では最も多彩な種族で成り立っており、人間の他にオーク・ゴブリン・セイレーンが確認されています。
オークはタルキールブロックで初めて大きくフィーチャーされましたが今回も中々かっこいい。この世界のゴブリンは猿に近い見た目なのがこれまた海賊的です。そして男性のセイレーンがいる! まあマジックには女性ミノタウルスなんかもいるので、例え元ネタの性別が限定されていても気にしなくていいのだと思う。セイレーンもエイヴンのような鳥人間の一種と考えればいいのか。
様々なお宝と共に彼らも一応「不滅の太陽」を探し求めていますが、他勢力ほどそれと因縁が深いわけではありません。それと自分達を故郷から追い出した薄暮の軍団はひときわ敵視している、というくらいですね。今回の主人公の片割れ、ヴラスカはこの鉄面連合の一員として海賊稼業に身を投じました。そもそもゴルゴンという種族が多元宇宙にはさほど多くなく、そして海のない(なかった)ラヴニカ生まれなのに海賊とかできるの……と思っていましたらまあ。そのあたりは次回に詳しく。
■ 川守り
『イクサラン』バンドル付属小冊子P.8より翻訳
川守りはマーフォークの小規模な放浪集団がまとまったものであり、太陽帝国の隆盛以前にはイクサランの大陸にて最も支配的な勢力でした。彼らは大地との調和に生き、そのシャーマンは風と水のエレメンタルを操る強力な自然魔術を振るいます。不滅の太陽はどのような者が振るおうとも、それが彼ら自身であってもあまりに危険であると信じており、そのため彼らは黄金の都オラーズカを守り、あらゆる侵入者を遠ざけています。
今回のマーフォークは青と緑。緑単のマーフォークすらいますが、湿潤な密林に住むということでさほど違和感はなかったと思います。緑のマーフォークは陸上を、青のマーフォークは水中を好むのだとか。基本的に淡水マーフォークなんでしょうかね、ローウィン/シャドウムーアみたく。とはいえ海上都市・孤高街でもその姿が見られるあたり、海水も平気なのでしょう。
彼らは黄金の都オラーズカや不滅の太陽を求めているのではなく、逆にその守り手という立場です。なおオラーズカから侵入者を遠ざけつつも、彼ら自身もその正確な場所は知りません。更には不滅の太陽が余所者の手に渡ることを阻止しようとしていますが、彼ら自身も手にするべきではないと戒めています。
《見習い形成師》フレイバーテキスト
侵入者が黄金都市を見つけないように、川守りは船を何千隻でも沈め続けるつもりだ。
《溢れ出る洞察》フレイバーテキスト
大いなる川の流れのように、現実がクメーナの脳裡に流れ込んで来た。敵を秘密の都市に近づけないためには、その力を自ら用いるしかない。
ですが薄暮の軍団・鉄面連合という外からの侵略者が訪れ、また太陽帝国が拡大政策をとるとともに川守りも時代の変化を痛感します。Magic Story「形成師」では彼らの内なる対立が描かれました。オラーズカと不滅の太陽が敵勢力に渡るのを防ぐべく先にそれを探し出そうとする者、そしてあくまでも守り手であるという自分達の任務に忠実であろうとする者。「破滅の太陽が悪しき手に渡れば、結果は悲劇となるだけ」とは示唆されていますが、具体的に何が起こるのかは語られていません……彼ら自身は果たしてどこまで知っているのでしょうか、それすらもまだ私達にはわかりません。
■ 太陽帝国
『イクサラン』の目玉は何といっても恐竜。それを有するのがこの太陽帝国です。
『イクサラン』バンドル付属小冊子P.8より翻訳
太陽帝国はイクサラン大陸の東岸を支配する強大な文明です。帝国の獰猛な戦士らを、太陽の力を振るう神官と大陸に生息する強大な恐竜を支配する魔道士が支えています。新たな統治者は帝国に拡大の気風をもたらし、かつて内陸に所持していた支配地域を取り戻そうとしています。帝国領土への外部勢力の侵入は、その人々に不滅の太陽の探索の火を灯しました。彼らはそれを自分達の主体性を示す象徴とみなしています。
羽毛恐竜! 恐竜の復元図は発見や解明が進むとともに変化し、同時にその姿はフィクションの世界にも反映されてきましたがこれまた今風ですねえ。そしてこの極彩色が太陽帝国の中南米的な雰囲気によく合っています。そういえば元々ケツァルコアトルとかいますしどうりで違和感がない。これは上手く組み合わせたものだなあと思いました。
太陽帝国では人々が恐竜と共に生きています。ですがそれらは飼われているわけでも家畜化されたわけでもなく、従えてはいるものの常にその命令を振り解く危険をはらんでいます。自然を飼い慣らすことはできない、だが自然とともにあれば強くなれる。太陽帝国の人々はそう信じています。
そんな太陽帝国は現皇帝のもと、繁栄と拡大政策の最中にあります。そのため大陸の支配を分かち合う川守りとは現在対立関係にあり、また外からの二勢力も無視はできないという状態です。そして彼らにとって黄金の都オラーズカは祖先の地、かつての首都であり、彼らが恐竜を従える力は最初に不滅の太陽によって授けられたと言われています。
そして新プレインズウォーカーのファートリは太陽帝国の恐竜騎士です。隣の恐竜がかわいい。彼女は「黄金の都を幻視した」ことを皇帝に告げたことからオラーズカの探索を命じられました。彼女については次回おそらくプレインズウォーカーについてまとめるのでその時に詳しく。しかし恐竜に騎乗して戦うというのはとてもロマンがあるよなあ。いいなあ。
3. 各種気になること
■ 不滅の太陽とは?
各勢力が争奪を目指している「不滅の太陽」。何かのアイテムなのか、それともエネルギーや概念的なものなのか、それもまだ不明です。まず、不滅の太陽はどのような経歴を辿ってきたのでしょうか? Magic Storyで語られた内容を簡単にまとめるとこうです。
イクサラン大陸から離れた東の大陸、トレゾンの山中にて、後に薄暮の軍団となる人々の修道院にて守られていた
↓
「悪辣なるペドロン/Pedron the Wicked」がそれを奪おうと押し入った
↓
だがそれは更に「翼あるもの/a winged being」によってペドロンの手から奪われ、西の大陸へ持ち去られた
↓
今は黄金の都オラーズカにあると言われている
不滅の太陽は「無限の富」「帝国の力」「自然の支配」「永遠の命」を約束すると言われています (参考) 。永遠の命、なるほど全盛期の力を取り戻そうとしているニコル・ボーラスが目をつけたとしてもおかしくありません。普通に考えればそのような伝説は眉唾ものですが、「旧世代プレインズウォーカーの力」として不老不死は実在し、ボーラスはそれを手にしていたのですからね。とはいえ自分で探しに行くのは煩雑すぎるということで、丁度良く野望を持つプレインズウォーカー、ヴラスカに目をつけたのだと思います。
このカードからは、「最終的にオラーズカは発見される」ことが示されています。能力が《イス卿の迷路》なのは「簡単には近寄らせない」ようなフレイバー? 『イクサランの相克』製品情報にも「伝説の都市オラーズカが発見されました。それを領有するには戦いは避けられません。」とあります。多くの勢力が一つの宝を目指して争う……これまでの物語でそれに近い展開だったのは『ラヴニカへの回帰』ブロックでしょうか。十のギルドの支配領域を通る謎の力線「暗黙の迷路」、それを走破して全ギルドを調停する力を示した者には大いなる褒賞が与えられる……そしてそれが叶わなかったなら《至高の評決》が下される。今思うに「至高の評決が下される」って、それ以上の説明はなくとも読む側には「ああ、そりゃヤバいわ」ってよくわかる表現でした。
同じように?川守りのマーフォークは不滅の太陽がもたらす破滅をひどく危惧しています。
《絶滅の星》フレイバーテキスト
「幻視が私を苦しめる。不滅の太陽の探索が、世界の終わりを引き起こす。」
――形成師のパショーナ
《源流の歩哨》フレイバーテキスト
「長老が言ってた。侵入者が黄金都市の秘密を見つけたら、私たちは終わりだって。」
《絶滅の星》は何だか謎ですよね。我々の次元での恐竜絶滅を思い起こさせもします。けれど別に「注目のストーリー」ではないし次セット『イクサランの相克』キーアートにも恐竜はきちんと描かれていますし。それこそ《至高の評決》と同じように「本当に起こったらヤバいよ」というある意味ifの呪文なのかもしれませんが。
■ イクサランの束縛とは?
プレインズウォーカーについては次回書こうと思うのですが、先にこちらを。
各所の描写から、イクサラン次元はどうやら「プレインズウォークによる脱出が不可能」であることが示唆されています。
この次元では、黄金の都オラーズカと、それが持つと言われる魔法の力を手に入れるべく四つの勢力が壮絶な争いの最中にあります。ですがプレインズウォーカーにとっては、 この次元は同時に牢獄でもあるのです。
もちろん、その任務に失敗した場合は、永遠にこの次元に囚われることになるでしょうが。
物語中ではジェイスだけでなくファートリも、プレインズウォークをしようとした際にこの「円で囲まれた輝く三角形」が頭上に現れて引き戻されていました。
気になった人もいるかと思いますが、そして「私も真相は知らない」という前提で書きますが、これ、アゾリウスのギルドシンボルに似ているような……?
ラヴニカの法を司るギルドであるアゾリウスは、束縛の魔法に長けています。更にラヴニカの十のギルド間の争いを防ぎ、一万年続く平和と繁栄をもたらした不戦協定魔法ギルドパクト。それほどの広範囲に、長期間に渡って効く、大きな強制力を持つ魔法をかけたのはアゾリウスの創設者、最高判事アゾール一世。彼は「ラヴニカ出身ではない」。ギルドパクトの魔法もある意味ではラヴニカを束縛する魔法である……何らかの魔法的な力がイクサランを束縛しているとしたら?
更に言いますと昔、少なくとも旧ラヴニカブロックの頃まで、ラヴニカ次元は多元宇宙の他から孤立していました。それは『ディセンション』の物語にて、《幽霊街》の存在について登場人物達が語る中で明かされました。
小説「Dissension」チャプター8より抜粋・訳
「私達――天使は以前知っておりましたが、ラヴニカはとある……事態によって封鎖されています」フェザーは言った。「他の場所や世界や状態から、です。遠い昔、天使すら若かった頃、ここと似た世界やそうでない世界から訪れる者がいました――それらの世界にはそれらの天使や悪魔、人々や神がいました。彼ら新参者の多くは、常にそういった存在があるわけではないと気付くこともありませんでした。ですが訪問者の中でも僅かな者はとても強い力を持っており、それら別の世界へ再び旅立ちました。時折彼らは帰還し、そういった地の物語をもたらしました」
(略)
「それは、ギルドパクトよりもずっと以前のことです。しばしの後、そういった訪問者の到来が頻繁でなくなったことに私達は気付き、やがて完全に途絶えました。彼らのことを覚えているのは僅かな者のみでした。初代のアゾールもその一人であり、それを後継者に伝えたといいます……そうではありませんか?」
「被告人は更なる質問を許可されてはいない」アウグスティン四世が答えた。「だが物事は迅速に進めよう……その通り。その話は伝えられている」
「入ったら出られない」ではなくそもそも「入れない」だったようですが。そしてこの孤立現象は、後に明かされた所によればドミナリアの「時の裂け目」も関わっていたようです。とはいえ、なーーーーんか引っかかるねえ。関係があるのかもしれないし、単なる偶然の類似かもしれない。
■ そのラヴニカは大丈夫なの?
これまでも、ジェイスがギルドパクトの業務を放って他の次元へ向かうたびに「ラヴニカは大丈夫なのか」「ラヴィニアが怒りのあまりプレインズウォーカーに覚醒して追ってくるぞ」等々言われていました。
グルールの暴動。オルゾフとアゾリウスの断絶。だからこそゴルガリは地下に留まるべきなのだ――ギルドパクトが歩き、話し、突然姿を消す現状で、今や嘆かわしい事件が起こっている。
「ギルドパクトが突然姿を消す」ことはどうやら(少なくとも各ギルドの上層部くらいには)知れ渡っているようです。一部のギルドマスターはプレインズウォーカーという存在も知っているので、彼らはジェイスの正体がそれだということも薄々感じているかもしれません。
これまでも度々姿を消してきたギルドパクト、ですが今回は特に長期間です。「孤独のジェイス」によれば彼は「役立たず島」で40日間は過ごしたとのこと。……まあ思うに、「破滅の刻」後に一番軽傷かつ責任感もあるギデオンがまずラヴニカへ戻ってラヴィニアに事情の説明くらいはしたのではないでしょうか。ボロス軍で手当てもしてもらえますし。後はラル・ザレックも何かしら把握している可能性はありますよね。
けれどギルドパクト不在の状況が大丈夫かと言われると……決して大丈夫ではないと思う。『ディセンション』から『ドラゴンの迷路』までの間も、ギルドパクトの魔法が失われていたことにより各ギルド間の対立が激化、ギルドによっては一時的にほぼ壊滅していました。「ギルドパクトの体現」というステータスが記憶喪失によって変化したのかどうかはわかりませんが、単純にラヴニカ次元から長期間離れているだけでもあまり宜しくないよたぶん?
「ギルドパクトーーー!!!」
以上になります。次回は多分プレインズウォーカー連中について。よろしゅうに!
(終)
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