あなたの隣のプレインズウォーカー ~番外編4 緊急企画・『ドミナリア』キーアートを探る!~

若月 繭子

若月 繭子

 こんにちは、若月です。「毎年クリスマスには何かプレビュー記事が来るんだけど今年は来ないな、どうしたのかな」と思っていたら、一日遅れでとんでもなく素晴らしいプレゼントがやって来ました!

 テフェリー! ジョイラ! カーン! 『ドミナリア』キーアートは、この次元のストーリーなら絶対に欠かせないトリオ! こんなの興奮しないわけがない! とはいえこの3人が活躍していたのは背景ストーリーのウェブ展開が始まるかなり以前のことですので、あまり詳しくない/知らないという人も多いのではないでしょうか。というわけで年末緊急企画として、『ドミナリア』キーアートの人物を簡単に解説しました!

※情報は2017年12月下旬現在のものです。

ドミナリア次元

 マジックが始まった次元、ドミナリア。舞台として「回帰」するのは『時のらせん』ブロック以来ですので11年ぶりになります。昔(旧枠くらい)はほとんどのセットがドミナリアを舞台としていましたので、例えば今のラヴニカ次元やゼンディカー次元のように「この次元はこういう世界!」という明確な個性付けは成されていませんでした。今、ドミナリアはその外から、どのような世界として見られているのでしょうか?

「ストーリー / 次元 ドミナリア」より引用

この次元は寒冷な山脈や広大な平原、ジャングル、砂漠、そして島といった多彩な地形を誇り、火山の大陸シヴ、時間の砕かれし島トレイリア、暗くねじくれた島アーボーグなど、歴史的な場所が数多く存在します。

(略)

ドミナリアは、多元宇宙全体を脅かした時と次元の破損の中心地でもありました。プレインズウォーカーが引き起こした数々の大災害は、ドミナリアを荒廃させ、多元宇宙の構造をも不安定にしました。時間と空間が負ったダメージはドミナリアから他の次元へと広がっていきました。しかし、数多くの強力なプレインズウォーカーが裂け目を修復し、次元を再び安定したものへと復帰させたのでした。

 物語面で注目すべきは「数々の大災害」。マジックの通常セットの物語は、大体その次元で起こった何らかの騒動が取り上げられます。世界の名が変わるほどの変化(新ファイレクシア)であったり、政府と反政府組織の対立(カラデシュ)であったりと規模は様々です。ドミナリア次元のそれは多くがマジックの歴史に名を残す凄まじいものでした。兄弟戦争、ファイレクシアの侵略、そして最後にドミナリアが舞台になった時に語られた、世界法則までも変化させた「大修復」が挙がります。

 ざっくり言うと「大修復」とはその「数々の大災害」による幾つもの破壊の爪痕を、主にその原因となったプレインズウォーカーが身を持って癒す……というような出来事です。それが成された結果、世界の法則とプレインズウォーカーの力が変化しました。彼らは不老不死と全能の力を失い、言うなれば「地に足のついた」存在となったのです。ゲーム面ではそれによって「プレインズウォーカー・カード」を作ることが可能となり、同時に彼らが物語へと積極的に関わるようになりました。何にせよ「大修復」とその結果として生まれた「新世代プレインズウォーカー」は、マジックというゲームそのものを大きく変化させました。

黄金のたてがみのアジャニジェイス・ベレレンリリアナ・ヴェスチャンドラ・ナラー野生語りのガラク

 「大修復」と共に物語はドミナリアから離れ、話中では60年ほどが経過したとされています。以来、ドミナリア次元についてはほとんど音沙汰ありませんでした。わずかに確認できるのは『ミラディンの傷跡』前日談、また『エターナルマスターズ』のMagic Storyでは大修復後と思しきドミナリアの様子が少しだけ語られていました。その中で注目すべきは、「あの」トレイリアのアカデミーの名を継ぐ学府、《トレイリア西部》の新たなアカデミーでしょうか。

トレイリア西部
Academy at Tolaria West

 どんな所なのでしょう?『プレインチェイス』当時の公式記事から、《Academy at Tolaria West》についての一部を翻訳します。

『プレインチェイス』当時の公式記事より引用

ドミナリア、トレイリア西部のアカデミー

霧に覆われた孤島トレイリアは魔術学院の本場、高名なトレイリアのアカデミーでした――しかしそれは《練達の魔術師バリン》の最期となる強大な呪文によって破壊されました。ドミナリアの破滅的な過去の傷を癒そうと学者らは新たな魔術学校を設立し、人工的な水面で囲んで小さな島とすると、トレイリア西部のアカデミーという名を冠しました。新たなアカデミーはドミナリアにおける高等教育機関の復活を示しており、危険な時間魔法の研究は厳格に禁じられています。

 ドミナリアの、それどころかマジックの歴史において、トレイリアという存在は極めて重要な位置にあります。ある意味悪名と言っていいかもしれません。それが今やどうやら立派な施設として世界に知れ渡っている……多くの大破壊を生き延びてきたドミナリアは過去の傷から立ち上がり、新時代へと歩んでいる、そう感じさせてくれるような気がします。

 そして今回公開されたキーアートにいたのは、そのトレイリアの同窓会とでも言うべき3人でした。

テフェリー

ザルファーの魔道士、テフェリー

 魔術の神童、時間の達人、ザルファーの守護者……テフェリーは時間を操る術に卓絶した魔術師であり、ドミナリアの歴史に何度も名を残しています。彼はプレインズウォーカーでしたが『時のらせん』にて灯を失い、ただの人間となりました。あのウルザと並んで、いやむしろマジックのセットにおいてはウルザ以上に長く顔を出すキャラクターです。

 そして『時のらせん』ブロックで語られた大修復、旧世代プレインズウォーカーのカード化など、物語だけでなくマジックというセットとしても重要な出来事においてその姿を見せる、どこか象徴的なキャラクターという見方もできるかもしれません。

問題児

 彼は少年時代に元のトレイリアのアカデミーで学び、時間遡行実験の失敗に巻き込まれたことでプレインズウォーカーとして覚醒しました。その後は故郷ザルファーで宮廷魔道士となり、後のファイレクシア侵略においてはザルファーとシヴの一部を「フェイズ・アウト」させて守るとともに自らも姿を消しました。つい最近『統率者(2017年版)』に登場した《テフェリーの防御》はその場面です。

テフェリーの防御

 そしてテフェリーは前述の「大修復」にて重要な役割を果たしました。長いフェイズ・アウトからドミナリアへと帰還した彼は、世界が甚だしく荒廃していることを知りました。ドミナリアは度重なる大破壊から「(時の)裂け目」と呼ばれる構造的ひび割れに覆われ、そこからマナが流出していたのです。テフェリーはそれを「塞ぐ」方法を探す旅を始め、ドミナリア各地を巡って様々な出会いを経た先に、プレインズウォーカーがその灯、もしくは命までをも「裂け目」に捧げることでそれを塞ぐことができる、と身をもって証明したのでした。以後の彼はただの人間の魔術師となりながらもその知識で旅の仲間を支え、また残るプレインズウォーカーへとドミナリアを救う道を示しました。

 全てが終わると、テフェリーは仲間たちへと晴れやかに別れを告げ、プレインズウォーカーではなく一人の人間として自らの足で歩いて旅立ちました。それが『未来予知』、私たちの次元では11年前のことです。以後も『統率者(2014年版)』でのプレインズウォーカー・カード化や『From the Vault: Legends』『アイコニックマスターズ』での再録と、数年に一度は存在を主張していました。忘れてほしくないね、とでも言うかのように……?

 今回、『ドミナリア』キーアートのテフェリーは少し歳を経ているようにも見えます。アートを手がけるのは《時間の大魔道士、テフェリー》と同じTyler Jacobson氏、これは嬉しい演出です。

時間の大魔道士、テフェリー

 人間として彼はどのように年月を過ごしたのでしょうか。ジョイラやカーンとは長い時を経て再会を果たすのでしょうか……人生の大半を不老不死のプレインズウォーカーとして生きてきた彼にとっては短い時間かもしれませんけどね。

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ジョイラ

ギトゥのジョイラ

 テフェリーの学友であり、古くからの友人がジョイラです。魔術師であり工匠として年若いうちに故郷のシヴからトレイリアのアカデミーに移り、勉学と研究に勤しみました。本人のカード化は『未来予知』、それ以前では《修繕》に登場していたものが最も有名かと思います。ウルザブロックではテフェリーと共に複数のカードに描かれていました。

修繕押収緩慢な動き

 テフェリーからは異性として想いを寄せられていた時期もありますが、大体においては良き友人として長い時を共に過ごしてきました。互いに長命だとそのあたりはどんな感覚なんでしょう?

 しばしば誤解されますが、ジョイラはプレインズウォーカーではありません。トレイリアの時間遡行実験の失敗、それによって時の流れが混乱したトレイリア島で長期間に渡ってサバイバル生活をした際に時の流れが遅い水を飲んだことで非常に長命となりました。クリエイティブ・チームのKelly Digges氏はTwitterでこう述べています。

「昔のドミナリアでは不老や長命になる手段が雑に存在した、主にアクシンデントから。不老不死の神に等しいプレインズウォーカーには不老不死の人間の相棒が必要だったからね!」

 (主にリリアナにとって)残念なことに、今は不老不死は安くないのです……。

 さて、ジョイラの物語はほぼずっとテフェリーと共にありました。当初アカデミーでは悪友として悩まされ、トレイリアが破壊の後に再建されてからは力を合わせてウルザの研究に協力しました。ファイレクシアの侵略が始まるとザルファーだけでなくシヴも守るよう彼へと願い、テフェリーはその願いを叶えて共にフェイズ・アウトさせ、ジョイラもまた時の流れへと姿を消したのでした。

 ところでテフェリーはプレインズウォーカーであり、それも旧世代として覚醒しました。しばしば正気や善悪の基準を疑われる同類の中でも、彼は比較的良心的な人物と知られています。それでも、定命の存在とは決定的に違う存在であることを彼女は常に意識し、その視点から助言や警告を怠ることはありませんでした。

 ジョイラのその立ち位置が際立っていたのが『時のらせん』ブロック、大修復の物語です。時に突飛な行動をするテフェリーを諫め、また彼が出会う人々との間に立って緩衝的な役割をしばしば努めました。テフェリーが灯を失うと、その後遺症からしばし呆けてしまった彼を時に厳しく諭しながらも、決して見捨てることはしませんでした。

 最後に残るオタリアの「裂け目」の修復では、2人はその外から見守りました。自分たちの手が届かないところで世界の運命が決する。それを眺める元プレインズウォーカーと、同じほどの寿命を持つ友。それはまるで、かつてのプレインズウォーカーという存在から世界が離れて行こうとしているかのようでした。非常に印象的な場面でしたので、紹介させて下さい。

小説「Future Sight」Chapter23より抜粋・訳

「ずっとこうだったのか?」

「?」 ジョイラは瞬きをし、友人を見た。「どういう意味?」

「待つということだよ。見守るということ。立ち尽くすということ。無力さと不満。酷い苛立ち。君は千年間もこんな気持ちでいたのか? 定命の存在が神に等しいプレインズウォーカーへと世界の運命を委ねるのは、いつもこんな気分なのか?」

ジョイラはしばし考えた。「いえ、大抵はもっと悪いわね」

「ああ……」 テフェリーは杖を前後にひねり、足元の泥へその先端をうずめた、「考えたこともなかった。済まなかった」

慰みか憤激か、ジョイラは彼へと微笑みかけた。そして再び裂け目を見上げると友へと片手を伸ばした。

「許すわ、でも今は黙って。見守りたいの」

テフェリーは何も言わず、だが彼もまた手を伸ばすとジョイラの暖かな指が掌を包むのを感じた。共に2人は見守り、世界の運命がその手の届かぬ所で決定される時を待った。

 全てが終わると、ジョイラは旅の中で遭遇して心を通わせた大魔道士ジョダー(アイスエイジブロックの主人公。「あなたの隣のプレインズウォーカー」第61回参照)のもとへ向かいました。テフェリー、そしてカーンとの再会があるのならそれは何のために、そしてどのような形になるのでしょう……?

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カーン

解放された者、カーン

 カーンは知性を持つゴーレムです。ウルザによって創造され、対ファイレクシア計画の重要な一部として時間遡行計画に携わり、ウェザーライト乗組員兼その機構の一部として冒険を繰り広げました。

 テフェリーとジョイラは、トレイリアのアカデミーで彼が創造された直後からの友人であり、その付き合いは千年以上に及びます。カーンは2人がフェイズ・アウトで旅立った後もウェザーライト号乗組員として最後まで戦い、最後には《レガシーの兵器》の起動とともにウルザの灯を受け継いでプレインズウォーカーとなりました。

銀のゴーレム、カーンレガシーの兵器

 プレインズウォーカーとなった後、彼は金属次元アージェンタム(後のミラディン)を創造するとそれを管理人である《メムナーク》へと任せて再び旅出ちました。当時の彼は知るよしもありませんでしたが、アージェンタムには彼が持ち込んだ「ファイレクシアの油」が残っており、それはやがて世界を蝕み、新ファイレクシアとして再興するに至るのです。

 その後ドミナリアへは『時のらせん』ブロックにて帰還し、テフェリーたちと再会を果たしました。そして彼はテフェリーが連れていた一人の工匠、ヴェンセールと出会います。カーンは新たなプレインズウォーカーの力を宿す彼に、新時代の萌芽を感じました。工匠であるヴェンセールにとっても、生きて自ら動くゴーレムはたまらなく興味をそそる存在でした。短い間ですが2人は深い友情を育みました。

造物の学者、ヴェンセール

 そしてカーンも旧世代プレインズウォーカーとして「裂け目」の修復に携わります。彼が向かったのはトレイリア、ですが裂け目へと灯を捧げたことで、彼の内に眠っていた「ファイレクシアの油」が活性化し、急速に彼を蝕んでいきました。意識を支配されかかる中、彼はヴェンセールへと伝言を残して失踪しました。決して追ってきてはならないと……

堕落した良心法務官の相談

 時を経て、カーンはファイレクシアの油に侵食されたミラディン次元の核に囚われ、「機械の父」として崇拝されていました。ですがやがて、彼を探し求めてヴェンセールがそこに辿り着きました。ミラディン次元を、それ以上に友を救うために。余命わずかであった彼は、最後の力をもって自らの心臓ごとプレインズウォーカーの灯をカーンに移植しました。プレインズウォーカーの灯を持つ存在はファイレクシアの侵食を受けないことからカーンは浄化され、同時にヴェンセールの灯を受け継いで再びプレインズウォーカーとなりました。ミラディンを救うには既に遅く、そして友の死に悲嘆しながらも「自らの足跡を浄化する」ためにカーンは再び旅立ちました。

 ……そして長いことその行方は定かでありませんでしたが、ついにドミナリア次元にて再登場するようです。たしかにドミナリア次元は一度ファイレクシアに勝利した世界。その手がかりを求めてなのでしょうか、それとも他に目的や理由があるのでしょうか?

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 以上になります。連載「あなたの隣のプレインズウォーカー」を読み込んでくれている方にはかなり今更の内容ですが、書かずにはいられませんでした。それでは良いお年を!

(終)

この記事内で掲載されたカード

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