■ ゲストの紹介
斉藤「皆様お久しぶりです。衝撃の禁止改定から2か月経ちましたが、新環境のレガシー楽しんでいますか?」
斉藤「今回紹介するのはデルバー系デッキの現行最高傑作とも名高いグリクシスデルバーです。このデッキは『探査』生物が追加されて以降、SCGなど、海外では多くの結果を残していました。国内では奇跡偏重のメタゲーム内で苦しい立場を余儀なくされていましたが、禁止改訂以降、そのデッキパワーを遺憾なく発揮し、前評判どおりトップメタに躍り出たといえるでしょう」
斉藤「その中で見事にグリクシスデルバーを使いこなし、5月7日に関西で行われたCARDBOX OPEN(以下CBO)レガシーとその前日の『エターナルマスターズBOX争奪戦』で2日連続優勝を果たしたゲストをお招きしてこのデッキについてインタビューをしていきたいと思います。黒川 直樹(千葉)さん、よろしくお願いします」
黒川 直樹
(画像はCBOカバレージページより引用しました)
黒川「よろしくお願いします。レガシーに《秘密を掘り下げる者》が追加以降、デルバー系のデッキを長く使ってきました。今回、運よく優勝し、こういった機会をいただくことができて本当に嬉しく思っています」
斉藤「黒川さんはAMC Carnival準優勝、BIGMAGIC Open Legacy vol.1準優勝、第4期レガシー神挑戦者決定戦準優勝などデルバーデッキを使用して常に良い成績を残していたイメージでしたが、優勝は初めてだったんですね」
黒川「はい、仲間内ではシルバーコレクターだとか、決勝戦で当たりたいプレイヤーNo.1だとか揶揄されていました(笑)」
■ グリクシスデルバーとは?
斉藤「まず、グリクシスデルバーの一般的なリストを紹介しましょう」
3 《Volcanic Island》 2 《Underground Sea》 1 《Tropical Island》 3 《溢れかえる岸辺》 3 《汚染された三角州》 2 《霧深い雨林》 4 《不毛の大地》 -土地 (18)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《秘密を掘り下げる者》 2 《グルマグのアンコウ》 1 《真の名の宿敵》 3 《若き紅蓮術士》 -クリーチャー (14)- |
4 《渦まく知識》 4 《稲妻》 4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 3 《陰謀団式療法》 4 《目くらまし》 1 《四肢切断》 4 《意志の力》 -呪文 (28)- |
2 《狼狽の嵐》 1 《真の名の宿敵》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《致命的な一押し》 1 《紅蓮破》 1 《水流破》 1 《二股の稲妻》 1 《外科的摘出》 1 《古えの遺恨》 1 《コラガンの命令》 1 《Fire Covenant》 1 《夜の戦慄》 1 《仕組まれた爆薬》 1 《墓掘りの檻》 -サイドボード (15)- |
斉藤「グリクシスデルバー、通称グリデルとはどのようなデッキなのか紹介をお願いします。デルバーデッキらしく軽いクロックとそれをサポートする呪文で構成されていますね」
黒川「グリデルは、典型的なクロック・パーミッションです。1マナクリーチャーの双璧ともいえる《秘密を掘り下げる者》と《死儀礼のシャーマン》を有し、早いクロックとカウンター、ハンデスを絡めて相手の動きを妨害しながら、相手のライフを0にすることを目指すデッキです。特徴としては、以下の点が挙げられると思います」
- 安定している
- プレッシャーが早く多角的である。
- 相手を捌く力が強い
- メタ上での立場も良くなった
斉藤「安定感については言わずもがな、定番の《渦まく知識》と《思案》に加え、《ギタクシア派の調査》のキャントリップと《死儀礼のシャーマン》によるマナサポートですね」
黒川「プレッシャーという点では例えば、1ターン目《死儀礼のシャーマン》を出し、次のターンに《不毛の大地》と《秘密を掘り下げる者》を出すだけで相手のパーマネント0に対して5点クロックをかけられます」
斉藤「先手の勝率が高い理由ですね。多角的とはどういった点でしょうか」
黒川「相手のライフを速やかに0にするという目的に対し、《秘密を掘り下げる者》を使用するデッキの中で最も多くのアプローチを持っているという点ですね。だいたいのグリデルは4種類以上のクリーチャーを採用し、それぞれ『飛行、ルーズライフ、トークン、サイズ、アンブロッカブル』――と異なる手段でライフを削ることができます。相手からすると地上を固めても飛行が、攻撃を封じても《死儀礼のシャーマン》の能力があり、どうにかクリーチャーを根絶やしにしても最後の数点は直接火力で削られることがあるため、受け手側は対処が難しいと感じると思いますね」
斉藤「なるほど、《罠の橋》や布告系除去など一つの対策だけでは対処しきれないということですね。相手を捌く力が強いのは、カウンターとは別にハンデスを絡めているからでしょうか」
黒川「そのとおりですね。フェアデッキでありながら、《若き紅蓮術士》+《ギタクシア派の調査》+《陰謀団式療法》という必殺のシナジーを擁しています。わずか3マナでクロックを展開しながら相手の手札を2枚以上奪うという動きは、レガシーの凶悪なコンボデッキを前にしたときに最大の武器となります」
斉藤「ほとんどのコンボデッキがその場で負けに直結する最高の動きですね。メタ上での立場が良くなった点についても教えていただけますか?」
黒川「《師範の占い独楽》が禁止になったことにより、デッキ構造上苦手だった《相殺》も見なくなったことが追い風です。また、《相殺》で苦しめられていたコンボデッキの増加により、それらのコンボデッキの台頭を制御している立場になりました」
■ なぜグリデル?
斉藤「以前からデルバーデッキを使っている印象が強いのですが、グリデルを使おうと思った理由を教えてください」
黒川「元々はRUGデルバーが大好きで、3年ほど愛用していました。ですが《敏捷なマングース》と《タルモゴイフ》を主戦力とする性質上、《死儀礼のシャーマン》を苦手とするデッキでした。そして、奇跡が減り、《死儀礼のシャーマン》が環境に多くなることが予想できたので、『それなら、いっそのこと使う側に回ってやろう』と思い、グリデルに決めました。さらにグリデルの利点として、先ほど述べた《若き紅蓮術士》を用いた必殺の動きを持っていることが挙げられます」
斉藤「やはり《死儀礼のシャーマン》や《陰謀団式療法》のために足された黒が大切なのでしょうか? 《もみ消し》が入っているリストもありますが、《陰謀団式療法》を選んだ理由について教えてください」
黒川「《もみ消し》ではなく《陰謀団式療法》を選んだ理由は、先ほど述べた必殺の動きをメインボードから使える爆発力を捨てるのは惜しいと思ったからです。《もみ消し》だと構える動きになって動きづらくなりますからね」
斉藤「なるほど。黒を足すことで、URデルバーとは違った強さを持つことができるわけですね」
黒川「URデルバーも爆発力はあるのですが、《陰謀団式療法》がある分、グリデルの方がコンボに強く感じられたので、こちらを選ぶことにしました。また、デルバー同士の捌きあいをするゲームにおいては《グルマグのアンコウ》が勝利に貢献することも多いです」
斉藤「奇跡の減少により《グルマグのアンコウ》は除去がされにくい生物となりましたしね」
■ 一般的なレシピとの違いは?
斉藤「では、黒川さんのレシピを教えてください」
黒川「こちらがCBOを2日連続優勝した時のレシピになります」
3 《Volcanic Island》 2 《Underground Sea》 1 《Tropical Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 4 《不毛の大地》 -土地 (18)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《死儀礼のシャーマン》 3 《若き紅蓮術士》 1 《真の名の宿敵》 2 《グルマグのアンコウ》 -クリーチャー (14)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《稲妻》 2 《陰謀団式療法》 1 《致命的な一押し》 1 《呪文貫き》 4 《目くらまし》 4 《意志の力》 -呪文 (28)- |
2 《外科的摘出》 2 《紅蓮破》 2 《侵襲手術》 2 《古えの遺恨》 1 《イゼットの静電術師》 1 《陰謀団式療法》 1 《致命的な一押し》 1 《狼狽の嵐》 1 《唐突なる死》 1 《夜の戦慄》 1 《真髄の針》 -サイドボード (15)- |
斉藤「一般的なリストと比較してどのような変更を施したか教えてください」
黒川「メインボードは一般的なレシピとほとんど変わりませんが、一つ違う点としては、新しい除去、《致命的な一押し》を入れたことです。一般的には《四肢切断》を採用していることが多いのですが、グリデルは《ギタクシア派の調査》を4枚取っていることもあり、ペイライフが厳しい場面が結構あるんです。それを嫌って、《致命的な一押し》にすることにしました」
斉藤「ライフを大事にするべきマッチが増えたのですか?」
黒川「そうですね。デルバーミラーが多くなり、タイトなダメージレースをするゲームが増えました。特に国内ではURデルバーが増えていますからね。もちろん《四肢切断》にも《グルマグのアンコウ》を捌けることや、デス&タックスの《聖域の僧院長》を除去できるという利点はあるので一長一短だとは思います」
斉藤「メインは一般的なリストに似てるとのことでしたが、サイドボードはいかがでしょうか? いくつか珍しいカードがありますね」
黒川「サイドボードはメタに合わせて絞りました。珍しいカードとしては、《侵襲手術》と《唐突なる死》でしょうか」
斉藤「その二つはあまり見かけませんね。選択した理由を教えてください」
黒川「《侵襲手術》の枠は、《狼狽の嵐》になっていることが多いのですが、エルフ、土地単にはこちらの方が勝ります。《狼狽の嵐》だとマナを払われてしまうことが多いんですよね。『昂揚』を達成していれば、《壌土からの生命》や《自然の秩序》をデッキからすべて取り除くことができます」
黒川「《唐突なる死》はグリデルが使える全体除去として選びました。《死儀礼のシャーマン》や《若き紅蓮術士》を使う関係上、《乱暴+転落》や《紅蓮地獄》などの全体除去が使いにくいんです。《唐突なる死》なら色や点数を選ぶことによって、自分への被害をなくして場を一掃することが可能です。あとは、《猛火の斉射》もいいカードですね」
斉藤「《狼狽の嵐》を《侵襲手術》に変更する、というプランはカウンターを有する《実物提示教育》などの有利なデッキよりもエルフ、土地単など負ける可能性を減らす構成ということがうかがえますね」
■ メタに合わせた変更点
斉藤「では、今後メタにあわせてデッキを変えるとしてどのようにするか教えてください」
黒川「パターン分けして、順にあげていきます」
◆ ビートが増えた場合
◆ コンボが増えた場合
◆ コントロールが増えた場合
◆ テンポが増えた場合
メインの《呪文貫き》を《致命的な一押し》や《四肢切断》《二股の稲妻》などの除去に変えます。サイドボードに《渋面の溶岩使い》に入れておくと、心強いと思います。赤系のビートデッキが多い場合は《青霊破》《水流破》も有力になります。
メインの《致命的な一押し》を《呪文貫き》の2枚目や《陰謀団式療法》の3枚目に変え、《真の名の宿敵》を《ヴェンディリオン三人衆》に変更します。サイドボードに4枚目の《陰謀団式療法》を追加するのもいいですね。
コンボと同じく《致命的な一押し》を《呪文貫き》に変えます。サイドボードに《苦い真理》を取るとコントロール戦は有利に運べると思います。《コラガンの命令》や《瞬唱の魔道士》も選択肢にあがるでしょう。
ビートが増えた場合と同じく、メインボードの《呪文貫き》を《致命的な一押し》、《四肢切断》、《二股の稲妻》などの追加の除去に変更します。また、《陰謀団式療法》をサイドに落とし、メインボードに《もみ消し》を搭載することによって、自分のマナ基盤を守り、相手のマナ基盤を攻めるという戦略も有効です。
次回はグリデルの弱点やサイドボードの考え方、テクニックを紹介するといったプレイ編をお届けします。
では、次回プレイ編でお会いしましょう。
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