皆さんこんにちは。
気になる禁止改定は今回もノーチェンジでした。 現在のモダンは特定のデッキが支配することなく、メタが変化し続けている環境なので妥当な判断だと思います。
さて、今回の連載ではGP Sao PauloとSCGO Worcesterの入賞デッキを見ていきたいと思います。
GP Sao Paulo
Hareruya HopesのJose Echeverriaがタイトル獲得
2018年07月08日
- 1位 Mardu Pyromancer
- 2位 Abzan Traverse
- 3位 Ironworks Combo
- 4位 Mono-Green Tron
- 5位 Affinity
- 6位 Amulet Titan
- 7位 GR Eldrazi
- 8位 Mardu Pyromancer
Jose Echeverria
トップ8のデッキリストはこちら
1400名以上の参加者を記録し、南米のマジック史上最大規模のイベントとなったGP Sao Paulo 。
今大会のプレイオフにはAmulet Titan、Mono-Green Tron、Affinity、KCIといった直線的な戦略が多く勝ち残りましたが、決勝戦はAbzan TraverseとMardu Pyromancerという2つのフェアデッキの対決でした。
優勝したMardu Pyromancerは今大会で一番人気で、アドバンテージが取れる《若き紅蓮術士》や《未練ある魂》、ハンデスに特殊地形をシャットアウトする《血染めの月》、不要牌を有効碑に変換する《信仰無き物あさり》と揃っており、火力による最後の一押しもあるので同様に人気があったJeskaiなどのフェアデッキと相性が良かったのも勝因だと思われます。
GP Sao Paulo デッキ紹介
「Mardu Pyromancer」「Abzan Traverse」
Mardu Pyromancer
2 《沼》
2 《血の墓所》
2 《聖なる鋳造所》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《湿地の干潟》
4 《黒割れの崖》
-土地 (20)- 4 《若き紅蓮術士》
4 《騒乱の歓楽者》
-クリーチャー (8)-
4 《稲妻》
4 《コジレックの審問》
3 《思考囲い》
2 《致命的な一押し》
2 《集団的蛮行》
1 《魔力変》
1 《戦慄掘り》
1 《終止》
4 《未練ある魂》
3 《コラガンの命令》
2 《血染めの月》
1 《ヴェールのリリアナ》
-呪文 (32)-
2 《ゴブリンの熟練扇動者》
2 《配分の領事、カンバール》
2 《仕組まれた爆薬》
2 《外科的摘出》
2 《摩耗+損耗》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《集団的蛮行》
-サイドボード (15)-
フェアデッキに強いフェアデッキとして、大きな大会では必ずと言って良い程見られるようになったMardu Pyromancer。
ハンデスやアドバンテージが取れるクロックになる《若き紅蓮術士》や《未練ある魂》があるのでJeskaiなどフェアデッキに強く、本来ならコントロールに対しては無駄になりやすい除去も《信仰無き物あさり》で有効碑に変換することも可能です。特殊地形をシャットダウンする《血染めの月》もコントロールやTronなど土地コンボとのマッチアップでアドバンテージとなります。
マッチアップやサイドボードについては前回の連載のプレイヤーインタビューを参考にしていただければ幸いです。
☆注目ポイント
このデッキにとって相性の悪いマッチアップの1つとなるGW Hexproofや、最近復権の兆しを見せているGrixis Death’s Shadowなどとのマッチアップで使える《ヴェールのリリアナ》がメインから採用されている以外は至って普通のリストです。
《魔力変》は最近のリストでは採用を見送られる傾向にありますが、ドローを進めつつ必要な色マナを《血染めの月》をコントロールしていても捻出することが可能で、《騒乱の歓楽者》のコストダウンにも貢献します。
サイドの《ゴブリンの熟練扇動者》はコンボデッキやTronなどに対する軽い追加のクロックとして機能し、相手がサイドインしてくることが予想される墓地対策の影響を受けないのもポイントです。最近流行りのKCIに対しても、このデッキは《発明博覧会》と《埋没した廃墟》をシャットアウトする《血染めの月》に加え、サイドには《配分の領事、カンバール》や《外科的摘出》があるので有利です。
Abzan Traverse
1 《沼》
1 《平地》
2 《草むした墓》
1 《寺院の庭》
1 《神無き祭殿》
4 《新緑の地下墓地》
2 《吹きさらしの荒野》
2 《湿地の干潟》
2 《花盛りの湿地》
1 《樹上の村》
1 《幽霊街》
-土地 (19)- 4 《タルモゴイフ》
4 《残忍な剥ぎ取り》
1 《漁る軟泥》
2 《包囲サイ》
-クリーチャー (11)-
3 《コジレックの審問》
3 《思考囲い》
3 《致命的な一押し》
2 《流刑への道》
2 《突然の衰微》
1 《忌まわしい回収》
1 《集団的蛮行》
4 《未練ある魂》
4 《ミシュラのガラクタ》
3 《ヴェールのリリアナ》
1 《最後の望み、リリアナ》
-呪文 (30)-
2 《外科的摘出》
2 《滅び》
1 《ボジューカの沼》
1 《戦争の報い、禍汰奇》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《再利用の賢者》
1 《弁論の幻霊》
1 《最後のトロール、スラーン》
1 《叫び大口》
1 《大渦の脈動》
-サイドボード (15)-
緑黒系のミッドレンジといえば最近はJundが流行っていますが、《未練ある魂》、《包囲サイ》といった他のミッドレンジやコントロールに強いアドバンテージが取れるカードにアクセス可能で、白特有の豊富なサイドボードカードがあるAbzanも選択するメリットがあります。
各種ハンデスや《未練ある魂》の提供するアドバンテージによって、Mardu Pyromancerと同様にJeskaiなどコントロールに対して相性が良いデッキです。
《残忍な剥ぎ取り》と《ウルヴェンワルド横断》といった「昂揚」にフォーカスしたバージョンで、墓地を肥やす手段として《忌まわしい回収》や《ミシュラのガラクタ》も見られます。
☆注目ポイント
《忌まわしい回収》や《ミシュラのガラクタ》を駆使することで「昂揚」を早い段階で達成することが可能で、このデッキの《残忍な剥ぎ取り》はほぼ2マナ4/4トランプルという効率的なマナレシオのクリーチャーとして扱えます。《ウルヴェンワルド横断》はクリーチャーをサーチできるのでサイドには《弁論の幻霊》などコンボや特定の戦略に対して有効なクリーチャーが1枚ずつ採用されており、ツールボックス的な要素もあります。
《残忍な剥ぎ取り》、《包囲サイ》、《タルモゴイフ》といった《稲妻》で処理されづらい高タフネスのクリーチャーでまとめられているのもこのリストの特徴で、相手の《流刑への道》や《致命的な一押し》といった単体除去も枚数が限られており《ウルヴェンワルド横断》による水増しもあるので、ハンデスによる妨害と混ぜていけば相手は対応に困ることとなります。
《戦争の報い、禍汰奇》はAffinityやLantern Controlとのマッチアップで、《弁論の幻霊》と《ガドック・ティーグ》は最近流行りのKCIを含めたコンボデッキとのマッチアップで相手のプランを妨害しつつクロックとして活躍します。《最後のトロール、スラーン》はJeskaiやUW Controlとのマッチアップで対策されづらいクロックです。
SCGO Worcester
安定のJeskai Control
2018年07月15日
- 1位 Jeskai Control
- 2位 UR Gifts Storm
- 3位 BR Hollow One
- 4位 Bant Spirits
- 5位 Burn
- 6位 Jeskai Control
- 7位 Jeskai Control
- 8位 Affinity
Cook/Saracino/Cotrupe
トップ8のデッキリストはこちら
チーム構築戦のSCGO Worcesterは新環境1週目の大規模な大会で、『M19』の加入と禁止改定によって環境が激変したスタンダードとレガシーと比べるとモダンはそこまで変化がなく、動きが安定しておりアグロデッキとの相性が良いJeskai ControlやUW Controlを選択したチームが多かったようです。メタゲームブレイクダウンは【こちら】
SCGO Worcester デッキ紹介
「Jeskai Control」「Bant Spirit」「UW Control」
Jeskai Control
Jeskai Controlを得意とするBenjamin Nikolichのチームもプレイオフ進出を果たしました。彼のチームはスタンダードもレガシーも青白デッキで、スタンダードを担当していたJon Rosumはツイッター上でもTeam UWxとツイートしていました。
Jeskai Controlは現環境のトップメタの一角であるTronとのマッチアップを苦手としますが、HumansやAffinityなどアグレッシブなデッキとの相性が良く、特に今大会ではAffinityやHumansを選択していたチームも多勝った上Tronが少なかったため、高い勝率を出していました。
☆注目ポイント
最近はドロースペルに《血清の幻視》よりもインスタントスピードでカウンターを構えながらキャストできる《選択》を採用したリストも活躍しており、今大会で優勝を果たしたチームのJeskai Controlも《選択》を採用したバージョンでした。Nikolich のリストはどちらも不採用で、ミラーマッチを想定して《廃墟の地》を増量し、ドロースペル枠には隙が少なくアドバンテージも稼げる《熟慮》が採用されています。
青いコントロール同型を意識していたのは《精神を刻む者、ジェイス》がメインから採用されていることからも明確で、《呪文嵌め》も相手の《瞬唱の魔道士》や《アズカンタの探索》をカウンターできます。《呪文嵌め》は性質上あまり枚数を入れたくないスペルではありますが、ミラーマッチ以外にもUR StormやBurnとのマッチアップでも使えるので、このデッキを使う際は是非採用したい1枚です。
最近よく見られるようになったKCI対策のために《石のような静寂》もサイドに採られています。AffinityやLantern Controlにも勿論有効で、Tronの《彩色の星》や《探検の地図》もシャットアウト可能と、受けが広くコストが軽いのも採用されている理由です。
Bant Spirit
《呪文捕らえ》や《鎖鳴らし》といった瞬速持ちのスピリットクリーチャーを多数採用したデッキで、スピリットクリーチャーを《ドラグスコルの隊長》と《至高の幻影》2種類のロードとそれらをコピーする《幻影の像》で強化してビートダウンしていくスピリット部族デッキです。またそれと同時に《集合した中隊》デッキのバリエーションでもあります。
『M19』から《至高の幻影》という新戦力を獲得し強化されたデッキで、カード1枚辺りのパワーは低めなので一見するとJeskai Controlのように除去やスイーパーを多用するコントロールとのマッチアップが厳しそうに見えますが、《無私の霊魂》や《呪文捕らえ》、《霊廟の放浪者》、《鎖鳴らし》といった妨害要素に加え、《集合した中隊》によるカードアドバンテージや墓地に落ちたクリーチャーをスピリットトークンに変換する《ムーアランドの憑依地》もあるので見た目以上にコントロールに強いデッキです。
☆注目ポイント
《霊廟の放浪者》は1マナと軽く妨害要素も内蔵しており、《鎖鳴らし》など 瞬速持ちのスピリットクリーチャーによるコンバットトリックもあるので相手にとっては厄介なクリーチャーとなります。《鎖鳴らし》は相手の単体除去に対して打ち消しスペルのように機能するので相手は除去を打ちづらくなり、《稲妻》などインスタントスペルでもタップアウトした隙にソーサリースピードで打つことを強いられます。《ドラグスコルの隊長》はスピリットクリーチャーを強化しつつ呪禁も与えるロードで、自身に除去耐性が無いので《無私の霊魂》などでバックアップしていきます。
Jeskai Controlなど除去を多用するデッキに対する最終兵器として機能するのが、このデッキに1枚だけ採用されている《ムーアランドの憑依地》です。準決勝戦でも《アズカンタの探索》と《瞬唱の魔道士》によってカードアドバンテージを稼ぐJeskai Controlとのロングゲームを制するという活躍っぷりでした。
コントロールやコンボに対する追加のクロックとして《聖トラフトの霊》と《スレイベンの守護者、サリア》がサイドに採用されています。《聖トラフトの霊》は言うまでもなく単体除去を多用するJeskaiなどコントロールとのマッチアップで活躍しますし、スイーパーのコストを増量させる《スレイベンの守護者、サリア》も相手にとっては厄介となります。コンボデッキに対しても《減衰球》とともに妨害要素として活躍します。Jeskai Controlと異なり速い段階からクロックを展開できるので、このデッキの《減衰球》はTronとのマッチアップでも妨害要素として機能します。
除去が少なくAffinityとのマッチアップを苦手とするため、《石のような静寂》と《崇拝》を採用しています。除去耐性のあるクリーチャーと《崇拝》の組み合わせは環境の多くのダメージによって勝利を狙うアグレッシブなデッキに対して有効です。
UW Control
青白系のコントロールでは《稲妻》や《稲妻のらせん》といった軽量除去、火力にアクセス可能で必要とあらば《瞬唱の魔道士》から《稲妻》を使い回すことによってBurnのように振る舞うこともできるJeskai Controlが主流ですが、青白2色のコントロールも最近よく見られるようになりました。
2色なため基本地形を多数採用できるので《血染めの月》でロックされる心配もあまりなく、スイーパーと除去を多用しているのでJeskai同様にクリーチャーデッキに強いデッキです。2色なのでマナ基盤に負担をかけることなく《廃墟の地》を4枚採用できるのもこのバージョンの強みで、Jeskai Controlと比べるとTronなど土地コンボとの相性も良くなっており現環境ではお勧めのコントロールデッキの一つです。
☆注目ポイント
Jeskai Controlでは《ドミナリアの英雄、テフェリー》の方が優先的に採用されていますが、このデッキでは《精神を刻む者、ジェイス》も採用されています。アグレッシブな戦略が多いモダンでは今一つ活躍のチャンスに恵まれなかった《精神を刻む者、ジェイス》ですが、《渦まく知識》能力によって《終末》をライブラリートップに仕込んだりコントロール同型で無駄になりやすい除去をライブラリーに戻したりと、今大会で多数存在した青いコントロールとのマッチアップではキーカードとなります。
《終末》は素でキャストするには重いスペルですが、《精神を刻む者、ジェイス》、《選択》、《血清の幻視》、《アズカンタの探索》など「奇跡」の誘発を仕込む手段もそれなりに用意されており、クリーチャーを墓地に落とさないのでBR Hollow Oneの《恐血鬼》や《炎跡のフェニックス》、GW Companyなどの《台所の嫌がらせ屋》や《復活の声》、GW Hex Proofの《蜘蛛の陰影》が付いたクリーチャーなどに有効で、現在の環境に合った性能のスイーパーです。《至高の評決》も4マナなので初手に来ても腐りづらく、Grixis Death’s Shadowなどカウンターを採用したアグロデッキも存在するのでマッチアップによって使い分けていきます。
メインから採用されている《ヴェンディリオン三人衆》は、このデッキでは相手のターンに自分を対象にすることで《終末》の「奇跡」を誘発させる手段にもなります。サイドの《世界のるつぼ》は《廃墟の地》を使い回せるので、このデッキが苦手とするTronとのマッチアップで活躍するほか、ミラーマッチでもアドバンテージが取れるので活躍が期待できます。
総括
GPなどで度々結果を残しているコンボデッキのKCIが少し強すぎるのではないかと話題になっているモダンですが、大会結果を見る限りではJeskai ControlやMardu Pyromancerなどフェアデッキも勝ち残っています。全てのデッキで採用できる《外科的摘出》や多くのデッキに採用されている《石のような静寂》など他のデッキにも効くフレキシブルな対処法もあるため、環境の多様性を脅かす程ではなさそうです。
モダンはローテーションが存在せずカードパワーが高い印象があるかもしれませんが、Humansの《帆凧の掠め盗り》 と《手付かずの領土》、Jeskai ControlやUW Controlの《ドミナリアの英雄、テフェリー》、今回の連載でもご紹介したBant Spiritの《至高の幻影》など新セットのカードが環境に影響を与えることも多いフォーマットなので、新セットがリリースされた際は色々と試してみることをお勧めします。
以上USA Modern Express vol.17でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!
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このシリーズの過去記事
- USA Modern Express vol.16 -フェアデッキに強いフェアデッキ ~マルドゥ・パイロマンサー~-
- USA Modern Express vol.15 -素敵だ。やはり「人間」は素晴らしい-
- USA Modern Express vol.14 -群雄割拠のモダンに訪れる新環境-
- USA Modern Express vol.13 -多様性溢れるモダン環境を勝ち抜く人間-
- USA Modern Express vol.12 -禁止改定、帰ってきた最強たち-
- USA Modern Express vol.11 -アグロからコントロールまで、様々なデッキが活躍-
- USA Modern Express vol.10 -2017年を締めくくったデッキたち-
- USA Modern Express vol.9 -猛威を振るうJeskai Control-
- USA Modern Express vol.8 -『イクサラン』がくれたもの-
- USA Modern Express vol.7 -モダン環境に訪れた《選択》-
- USA Modern Express vol.6 -常に変化するモダン環境-
- USA Modern Express vol.5 -吹き荒れるEldrazi旋風-
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- USA Modern Express vol.3 -勢力を増す死の影-
- USA Modern Express vol.2 -GP神戸迫る!荒れ狂うモダン環境-
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