マジックの華は、デッキリストだ。
そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。
だから、デッキリストを見るということは。
そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。
この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。
もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。
それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。
■ スタンダード: 黒緑ビートダウン
6 《森》 3 《沼》 4 《疾病の神殿》 4 《ラノワールの荒原》 2 《ジャングルのうろ穴》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 2 《ならず者の道》 -土地(22)- 4 《エルフの神秘家》 4 《名誉ある教主》 4 《サテュロスの道探し》 4 《棲み家の防御者》 4 《墓刃の匪賊》 4 《夜の咆哮獣》 2 《無慈悲な処刑人》 4 《定命の者の宿敵》 -クリーチャー(30)- |
3 《群れの結集》 3 《墓所の力》 2 《残忍な切断》 -呪文(8)- |
3 《ナイレアの信奉者》 3 《悲哀まみれ》 2 《苛性イモムシ》 2 《冷酷な軍族》 1 《スズメバチの巣》 1 《悪行の大悪鬼》 1 《セテッサ式戦術》 1 《悪性の疫病》 1 《エレボスの鞭》 -サイドボード(15)- |
デッキのコンセプトが成立するかは、同じ役割のカードが2スロット (8枚) 積めるか、にかかっていることが多い。
4枚入っているカードをゲーム中に引ける確率はせいぜい6割ほどだが、それがもし8枚なら8割ほどにまで上昇するからだ。
スタンダードの「発掘」 (≒ライブラリーを墓地に落とすことをコンセプトの一部に組み込んだ) デッキが求めていたのは「自身もクリーチャーでありながら、墓地に落としたクリーチャーを打点に変換できるカード」だった。《夜の咆哮獣》だけでは引けるかどうかわからないが、《墓所の力》をデッキに入れるとデッキ内のクリーチャーカウントが減ってしまう。
しかし、この難題を『マジック・オリジン』が見事に解決してみせた。《墓刃の匪賊》はまさしく唯一無二のパーツであり、十分に墓地を肥やした上で《ならず者の道》と合わせればその能力はまさしく一撃必殺、《触れられざる者フェイジ》のようなものだ。
【「黒緑ビートダウン」でデッキを検索】
■ モダン: ゴブリン
2 《山》 1 《沼》 2 《血の墓所》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《婆のあばら家》 4 《魂の洞窟》 4 《変わり谷》 -土地(21)- 4 《軍勢の忠節者》 4 《モグの戦争司令官》 4 《ゴブリンの群衆追い》 4 《蛙投げの旗騎士》 1 《棘鞭使い》 4 《ゴブリンの酋長》 3 《ゴブリンの熟練扇動者》 2 《狂い婆》 2 《群衆の親分、クレンコ》 -クリーチャー(28)- |
4 《稲妻》 1 《巣穴の運命支配》 2 《コラガンの命令》 4 《霊気の薬瓶》 -呪文(11)- |
4 《ゴブリンの廃墟飛ばし》 4 《血染めの月》 2 《呪文滑り》 2 《ヤスデ団》 2 《四肢切断》 1 《棘鞭使い》 -サイドボード(15)- |
『マジック・オリジン』はモダンに影響をあまり与えていないと思われがちだが、実は1つ重大な意義があった。《ゴブリンの群衆追い》をモダンリーガルにしたことだ。
レガシーでは《ゴブリンの従僕》が《死儀礼のシャーマン》に阻まれるなどの理由であまりメジャーでなくなってしまったゴブリンだが、モダンならばまだまだ活躍の余地がある。《蛙投げの旗騎士》と《ゴブリンの酋長》を並べればスーパー《ゴブリンの戦長》の完成だ。
「速攻」を持たせた《ゴブリンの群衆追い》にあと足りないものは何か?そう、「トランプル」だ。ならば《軍勢の忠節者》を走らせればいい。
残念ながらレガシーと違って《ゴブリンの女看守》も《ゴブリンの首謀者》もいないものの、《森の伝書使》が再録されたのだから、これらもそのうち再録される可能性がある。殺伐としたレガシー環境で夢破れたゴブリン使いたちにとっては、モダンこそが新たな理想郷と言えるかもしれない。
【「ゴブリン」でデッキを検索】
■ レガシー: リアニメイト
2 《島》 2 《沼》 4 《Underground Sea》 4 《汚染された三角州》 4 《霧深い雨林》 -土地(16)- 2 《ヴリンの神童、ジェイス》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 4 《グリセルブランド》 1 《潮吹きの暴君》 1 《エメリアの盾、イオナ》 -クリーチャー(9)- |
4 《渦まく知識》 4 《納墓》 4 《再活性》 4 《入念な研究》 2 《思考囲い》 2 《思案》 4 《死体発掘》 2 《目くらまし》 2 《実物提示教育》 4 《Force of Will》 3 《水蓮の花びら》 -呪文(35)- |
3 《突然の衰微》 2 《思考囲い》 2 《残響する真実》 2 《真髄の針》 1 《ヴリンの神童、ジェイス》 1 《灰燼の乗り手》 1 《狼狽の嵐》 1 《実物提示教育》 1 《Tropical Island》 1 《裏切り者の都》 -サイドボード(15)- |
《マーフォークの物あさり》とリアニメイトとのシナジーの強さは【The Finals2007】で藤田 修の手によって証明済みだ。能動的に釣り竿を探しつつ、同時に釣り対象を墓地に送り込む動きは、「不要牌が手札に来てしまう」というデッキの根本的な弱点を解決できるからだ。
だが、この新時代の《マーフォークの物あさり》こと、《ヴリンの神童、ジェイス》の役割はそれだけにとどまらない。
《束縛なきテレパス、ジェイス》に「変身」した後は、《秘密を掘り下げる者》のクロックを抑えて盤面を保ちつつ、《瞬唱の魔道士》よろしくハンデスやリアニメイト呪文を再利用することもできるのだ。
《朽ちゆくインプ》と違ってクロックにはならないし、出して即起動できないためにターンが返ってくる前に《突然の衰微》や《紅蓮破》の当てどころになってしまうという弱点はあるものの、2マナという軽さで《Force of Will》の餌になりつつ、「自身のデッキのコンセプトを強める」と「妨害を強める」の両方をこなせるその性能からすれば、今後レガシーの様々なデッキにおいて活躍の可能性があるとみて間違いないだろう。
【「リアニメイト」でデッキを検索】
いかがだっただろうか。
すべてのデッキリストには意思が込められている。
75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。
読者の皆さんも、是非色々と面白いデッキを探してみて欲しい。
また来週!
【晴れる屋でデッキを検索する】
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