週刊デッキウォッチング vol.30 -パクリファイスエヴォリューション etc.-

伊藤 敦


 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: ローグ



Suzuki Masahiro「ローグ」
平日サービススタンダード20時の部(3-0)

5 《森》
5 《山》
4 《樹木茂る山麓》
4 《奔放の神殿》
4 《岩だらけの高地》
2 《光輝の泉》

-土地(24)-

4 《搭載歩行機械》
4 《謙虚な離反者》
4 《森の女人像》
4 《棲み家の防御者》
4 《クルフィックスの狩猟者》

-クリーチャー(20)-
4 《巻き添え被害》
4 《反逆の行動》
4 《力による操縦》
4 《進化の飛躍》

-呪文(16)-
4 《再利用の賢者》
3 《ゴブリンの熟練扇動者》
2 《龍王アタルカ》
2 《マグマのしぶき》
2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》

-サイドボード(15)-
hareruya



反逆の行動謙虚な離反者進化の飛躍



 今やスタンダードではあらゆるデッキに《搭載歩行機械》が入り込んでいる。

 だがそんな状況だからこそ、「《搭載歩行機械》を倒すためのデッキ」というのもまた、コンセプトとして成立しうるのだ。

 このデッキは《反逆の行動》《力による操縦》という8枚の「パクるカード」と、《巻き添え被害》《進化の飛躍》という8枚の「サクるカード」を搭載し、対戦相手が《搭載歩行機械》をプレイしたが最後、「パクリファイス (=パクってサクリファイスすること) 」によって飛行機械トークンまでも「おまえのものはおれのもの」にしてしまう。

 コンボパーツは「サクるカード」と相性が良い《謙虚な離反者》で集めることが可能だし、一度揃ったコンボパーツは《棲み家の防御者》で回収できる。スペルが全部4積みであることといい、コンセプト的にも全てのパーツが1つの方向を向いた、極めて美しいデッキと言えよう。


【「ローグ」でデッキを検索】





■ モダン: ローグ



Chiba Tatsuya「ローグ」
休日モダン20時の部(3-0)

2 《沼》
1 《森》
1 《山》
2 《血の墓所》
2 《草むした墓》
1 《踏み鳴らされる地》
2 《新緑の地下墓地》
2 《樹木茂る山麓》
3 《銅線の地溝》
2 《黒割れの崖》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
2 《埋没した廃墟》

-土地(23)-

3 《サテュロスの道探し》
1 《現し世の裏切り者、禍我》

-クリーチャー(4)-
4 《カラスの罪》
4 《炎の突き》
4 《信仰無き物あさり》
4 《壌土からの生命》
3 《探検》
3 《忌まわしい回収》
1 《不気味な発見》
3 《闇の誓願》
3 《最悪の恐怖》
4 《呪文織りのらせん》

-呪文(33)-
3 《突然の衰微》
2 《群れネズミ》
2 《外科的摘出》
2 《自然の要求》
2 《古えの遺恨》
2 《悲哀まみれ》
2 《涙の雨》

-サイドボード(15)-
hareruya



呪文織りのらせん闇の誓願カラスの罪



 このデッキはデッキリストを見ただけでは、どうやって勝つのかわからないかもしれない。

 キーパーツは《呪文織りのらせん》で、墓地に《カラスの罪》《闇の誓願》、そして手札か墓地にもう1枚の《カラスの罪》がある状態でこれをプレイし、墓地の《カラスの罪》《闇の誓願》を「刻印」すると、手札か墓地の《カラスの罪》をプレイするだけで毎回《闇の誓願》がタダでスタックに乗るので、《カラスの罪》は「回顧」があるから、要は「魔巧」を達成してさえいればライブラリーの土地 (もしくは《カラスの罪》) を1枚サーチするたびに (黒) (黒) が浮くループに突入することになる。

 あとは23マナほど溜めてから最後に《現し世の裏切り者、禍我》をサーチして叩き付けてやればいい。きっと対戦相手の目は点になっているはずだ。

 《闇の誓願》の力でこのコンボが新たに誕生したように、エキスパンションが出るたびにモダンやレガシーでは何かしらのコンボができていたりする。何かをしそうな怪しげなカードについては、チェックを怠らないようにしよう。


【「ローグ」でデッキを検索】





■ レガシー: 12ポスト



Chris Rowland「12ポスト」
Legacy Championship – 2015(15位)

1 《島》
3 《Tropical Island》
1 《Savannah》
1 《Tundra》
4 《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》
2 《魂の洞窟》
1 《Karakas》
4 《雲上の座》
4 《微光地》
2 《ヴェズーヴァ》
1 《ウギンの目》

-土地(25)-

4 《原始のタイタン》
3 《白金の帝像》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー(8)-
4 《渦まく知識》
3 《輪作》
3 《撤廃》
1 《白鳥の歌》
4 《実物提示教育》
4 《終末》
4 《師範の占い独楽》
2 《真髄の針》
2 《Candelabra of Tawnos》

-呪文(27)-
3 《狼狽の嵐》
3 《抵抗の宝球》
2 《翻弄する魔道士》
2 《造物の学者、ヴェンセール》
2 《白鳥の歌》
2 《聖なる場》
1 《ボジューカの沼》

-サイドボード(15)-
hareruya



終末白金の帝像雲上の座



 《渦まく知識》《実物提示教育》をタッチした形の12ポストはこれまでにも存在したが、そこに《終末》まで入っているというのはなかなかに珍しいのではないだろうか。

 だが、何せ《渦まく知識》《師範の占い独楽》が入っているのだから「奇跡」は約束されたも同然だ。対戦相手もまさか《雲上の座》を置いておきながら《終末》とは予想できないだろうから、きっとかなりの数のクリーチャーを屠ったことだろう。

 また《白金の帝像》《秘密を掘り下げる者》などのデッキにとって単純なサイズ面で如何ともしがたいクリーチャーなので非常に頼もしい。他にもサイドボードの《翻弄する魔道士》は、《紅蓮破》に引っかかるとはいえ、たとえば「ANT」などのデッキ相手には予想外の角度から突き刺さりそうだ。

 デッキ全体が意外性の塊であり、多くの「わからん殺し」を狙うことができるという点で、一発勝負の舞台である【Legacy Championship 2015】においてはかなりの戦略的優位が見込めたことだろうと思われる。


【「12ポスト」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、是非色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


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