灼熱の埼玉からこんにちは、若月です。
暑いから氷河期の話をします! 構いませんよね!
1. アイスエイジというセット
「リマスター」シリーズのテンプレ通りに行きましょう。まず『アイスエイジ』はその名の通り氷河期のドミナリアが舞台。雪と氷に世界が覆われたということで「基本氷雪土地」が登場しました。とはいえ氷雪でなくとも『アイスエイジ』の基本土地アートはだいたいが雪景色なのですが。
『アイスエイジ』の《平地》と《冠雪の平地》は綺麗に繋がります。その世界の姿を一番よく見せてくれるのはいつも基本土地とは言ったもので、寒々としながらも美しい風景。そして20年以上前のセットでありながら、繰り返し再録されて今も使用されるカードが複数存在します。
ダメランことダメージランド(ペインランド)はここが初登場。とても息が長い二色土地です。最近では無色マナシンボルが定義されたことにより「アンタップイン三色土地」として評価が上がったとか。『アイスエイジ』から6年後に発売された『アポカリプス』にて対抗色版が登場、サイクルが完成しました。
あえて何か説明する必要があるかね?
《師範の占い独楽》が禁止されたことで奇跡デッキにお呼びがかかりました。つい先日発売の『統率者2018年版』にて新絵再録。あまり知られていませんが以前にも『コールドスナップ』のテーマデッキにて再録されていたため、新枠版は早くから存在しました。
対になっている色対策呪文。『エターナルマスターズ』にて一緒に再録されましたが、その際はフレイバーテキストも対になりました。
『エターナルマスターズ』版フレイバーテキスト
水は時に暴れるが、予測可能である。炎は常に快活で、圧倒的に暴れて全てを奪う。
炎は時に荒れ狂うが、気まぐれである。水は常に正確で、着実に流れて世界を形づくる。
また『アイスエイジ』は1995年6月発売。マジック初の独立エキスパンションとして登場しました。基本セットではなく、それでいて単体で遊ぶことができるように作られています。そのためか、《解呪》《対抗呪文》《暗黒の儀式》といった「基本的な呪文」が多数再録されています(これ以降の独立大型エキスパンションでも踏襲されることになります)。
当時前知識なしにスターターデッキを開封し、見知ったカードが絵違いで収録されていることに驚いたものでした。
2. その登場人物
『アイスエイジ』はヤヤ・バラード、フレイアリーズ、リム=ドゥール、ズアーといった今も知られる有名なキャラクターを多く輩出しています。当時はフレイバーテキストに名前や台詞が記載されているのみでしたが、『コールドスナップ』『時のらせん』『ドミナリア』そして近年の統率者セットにてその多くが伝説のクリーチャーとしてカード化されています。
ジョダー
『ザ・ダーク』から引き続き主人公です。第61回で書いた時はまだカード化されていませんでした。前作途中でゴブリンの群れから逃れるためにとある噴水に身を隠したのですが、それは実は《若返りの泉》でした。彼は溺れる寸前で難を逃れるも、泉の効能で極めて老化が遅い身体となってしまいました。暗黒時代からはすでに二千年以上が経過しており、いつまでも若さを保つジョダーはこの時代すでに不可視の学院にて「永遠の大魔道師」の称号を獲得していました。
ヤヤ・バラード
現在は白髪のお婆さんかつプレインズウォーカーですが、今回は『アイスエイジ』の話なので当時の姿を。ジョダーとは師弟兼友人のような存在です。元々ヤヤは彼のもとへ盗みに入ろうとした所を捕えられ、ですがジョダーは彼女を弟子に迎えて魔法を教授しました。やがてヤヤは特務魔道士として独立し、ですがその後も付き合いは続いていました。
ヤヤは当時から気風のいいフレイバーテキストで人気のキャラクターでした。調べた所『アイスエイジ』で10枚、『アライアンス』で7枚ものカードで喋っています。とはいえ後にプレインズウォーカーとして覚醒することまではカードからはわかりませんでしたので、何らかの手段で知った人の多くは驚いたのではないでしょうか。
ダリアンとロヴィサ
ここは一緒にごめん。氷河期にテリシア大陸を二分する勢力、王国キイェルドーと蛮族のバルデュヴィアの当時の長2人です。寒冷化の深まりと後述するリム=ドゥールの隆盛を受けながら、両勢力は長いこと対立してきました。第66回からの繰り返しになりますがこの2人も登場は古く、『アイスエイジ』『アライアンス』ですでにその名が見られます。
リム=ドゥール
『アイスエイジ』の敵役です。テリシア大陸北方のトレッサーホーンに城塞を構え、ゾンビの軍団を作り上げて文明を脅かしていました。その背後にはプレインズウォーカー、「夜歩みし者」レシュラックの存在がありました。リム=ドゥールは主の過酷な支配に苦しめられ、配下の学者や魔術師に「プレインズウォーカーを殺す手段」を探させるほどでした。そして彼の正体は、実はジョダーと因縁のあるとある魔術師で……それは後ほど。
フレイアリーズ
氷河期に最もその名が見られるプレインズウォーカーといえばフレイアリーズでしょう。カードにその姿が初めて登場したのは『インベイジョン』ブロックに入ってから。有名なのは何といっても《破滅的な行為》ですね。生命を育む慈悲深さとプレインズウォーカーとしての容赦無い力の両方で知られていました。第28回に掲載した訳をリファインして再掲します。
小説『The Eternal Ice』 チャプター6より
フレイアリーズについて南の土地のエルフから、特にフィンドホーンから我々の所に届く記述は、アルゴスの瓦礫の影で育まれたものだ。これらの記述は彼女を女神と明言し、彼女を讃える他には何もない。彼ら曰く、フレイアリーズの許し無しには花が咲くことも、木々の葉が落ちることもないのだと。
(略)
とはいえ、これら偉大な伝説の一つには、若きプレインズウォーカーの例にもれず彼女もまた狂気に至ったと記されている。そして一人の魔術師の行動のみが、彼女をレシュラックやテヴェシュ・ザットのような破壊的な存在と化すのを防いでいたのだと。
驚くべき事実ではあるが、その魔術師の名はジョダーという。
その他
天才発明家アーカム、狂える魔術師ズアー、最新の『統率者2018』からははぐれ将軍ヴァーチャイルド。近年は『アイスエイジ』『アライアンス』の主要登場人物はほとんどがカード化され、残っている方が少ないくらいです。
3. その物語
まず、氷河期とはどんな時代か。気候が寒冷化し、氷河の進出とともに文明が後退・衰退した時期です。それをもたらしたのは何? そうウルザとミシュラの兄弟戦争、アンティキティー戦争(どっちで呼ぶのがいいんだろう)。
その争いによって世界は厳しく過酷なものになったということで、この時代の彼らの評価は大変辛辣なものでした。例によって小説から、アルガイヴの学者アルコル氏の記述を借りて説明しましょう。いつもお世話になってます。
小説「The Eternal Ice」チャプター3冒頭より訳
ウルザとミシュラの兄弟は長い影を投げかけた。様々な形で、我々は今もその影の中に生きている。
彼らの戦争は世界を作り変え、テリシア大陸を長い氷河期の只中に突き落とした。最後の戦いでアルゴスを破壊した際、彼らは世界をも雲で覆い尽くした。彼らは氷を呼び寄せ、世界をその軌道から外し、我々の宇宙をさらに多くのその先から閉ざしてしまった。
2人の運命とこの行いに対する報いは伝説によって異なっている。戦いを終わらせた大爆発で両者とも死んだというもの。片方もしくは両者とも別次元の機械の悪魔、ファイレクシア人に捕われたというもの。片方もしくは両者ともプレインズウォーカーに、意のままに世界の間を渡り歩く、定命の遥か上に立つ神のごとき存在となったというものもある。
このように様々な説が流れていたのは、同時期ウルザがドミナリアから離れて多元宇宙を放浪していたというのも理由の一つだと思います。またこの記述は、ドミナリア次元においてはプレインズウォーカーでなくとも多元宇宙の存在がある程度知られているということを示しています。
さて物語の冒頭は、吹雪の中で迷う一人の敗残兵から始まります。彼はこのような世界をもたらしたウルザとミシュラを呪いながらも、小さな洞窟を発見して逃げ込みました。その洞窟は無人に見えながらも、奥に赤い光が灯っているのを彼は発見しました。躊躇しながらもそこへ向かうと、あったのは一つの白骨死体。その指には大きな紅玉の指輪がはまっており、光を放っていました。その敗残兵、リム=ドゥールが指輪に触れると、彼は奇妙な力を感じました……。
いくらかの年月が経過し、トレッサーホーンの城塞にて不意にジョダーは目覚めました。寒々とした部屋。心当たりはなく、記憶もやけに曖昧でした。まもなく主を名乗る屍術師リム=ドゥールが現れ、自分は魔術によって死後から召喚されたのだと聞かされます。自分はオリジナルのジョダーではなく複製、そのため記憶は曖昧で、主に従わなければ即座に虚無へと送還されるのだと。複製とはいえ存在が消滅することは恐怖でしかなく、ジョダーはリム=ドゥールの命令を了承しました。彼の任務は、同じように召喚された学者らと共に文献調査を行うことでした。内容はさまよう次元についての調査、そしてプレインズウォーカーを殺害する方法を見つけ出すこと。少し後にジョダーは知るのですが、リム=ドゥールは主であるプレインズウォーカー・レシュラックの暴虐に苦しんでいるのでした。
《レシュラックの秘儀》フレイバーテキスト(日本語訳はWisdomGuildデータベースより引用)
我を召されよ、我が魂を御身のそばに。我は御身の従僕にして御身の奴隷。血には血、肉には肉。ああ、レシュラック、我が偉大なる主よ。
――ネクロマンサー、リム=ドゥール
ですがある時、自分を助けに来たという人物がジョダーの前に現れました。新入りの学者に変装して潜入した彼女は弟子のヤヤ・バラードを名乗るものの、ジョダーは覚えていませんでした。彼女は不機嫌になりますが、ジョダーの私室に置かれた花を見て察します。それは忘却をもたらし思考を曖昧にするフィンドホーンの花粉。ジョダーは召喚された存在などではなく本人であり、リム=ドゥールにそう思い込まされているだけなのだとヤヤは言いました。
《Fyndhorn Pollen》フレイバーテキスト(日本語訳はWisdomGuildデータベースより引用)
おれが大きく息を吸い込むと、とたんに自分が誰でどこにいるのかもわからなくなってしまったんだ。
――エルフの狩人、ケルシンコのタヴェンティー
とはいえ果たしてヤヤの言葉は本当なのか。消滅の恐怖からジョダーは躊躇しますが、最終的には彼女の言葉を信じてトレッサーホーンの城塞を脱出します。しかしそれは気付かれ、追手が差し向けられました。2人は雪の中の隠れ処へ逃げ込むも、ジョダーは高熱を発するとともに完全に正気を失ってしまいました。他に手段はなく、ヤヤはプレインズウォーカー・フレイアリーズへと助けを求めました。
呼び出されてフレイアリーズは明かします。ジョダーはその永遠の人生の重荷、膨大な知識、親しい者に先立たれる悲しみに耐えられているわけではなく、定期的に儀式を用いて記憶を消去し、正気を保ち続けている。ですが今回、ジョダーは儀式を終える前にリム=ドゥールに誘拐されてしまった。花粉が効いている間は良かったのですが、その効能が無くなって彼は狂気へと堕ちてしまったのでした。フレイアリーズは彼を癒す方法を知っていましたが、ヤヤの協力と支払を求めました。
まずヤヤはキイェルドーの宮廷魔道士グスタ・エバスドッター(《渦まく知識》《対抗呪文》《水流破》などのフレイバーテキストにいます)の塔へ侵入し、《あの鏡》を手に入れてくるよう言われます。
ジョダーが最初の師から譲り受け、大切している秘宝を何故その人物が? 侵入した先で、ヤヤはグスタと不可視の学院にいるその従姉妹ゲルダ・アーゲスドッター(こちらは《骨投げ》《ラト=ナムの遺産》《Sol Grail》などに)が魔法の通信で会話をする様を盗み聞きし、ジョダーがリム=ドゥールの城塞にいたのは彼女らの2人の策略によるものだったと知ります。2人はジョダーの地位と実力に嫉妬し、彼をリム=ドゥールへと売り渡したのでした。とはいえその後の成り行きについては後悔していました。ヤヤはどうにか鏡を発見して手に入れ、キイェルドーの空騎士である友人の力を借りて戻っていきました。
そしてジョダーは、バルデュヴィアの宿営地で目を覚ましました。鏡の魔力で正気と記憶を取り戻し、そして回復までの間そこで世話をされていたのでした。長のロヴィサはその見返りとしてジョダーにリム=ドゥールを倒す助力を求めます。彼としても、リム=ドゥールが倒すべき脅威であることは確かでした。ジョダーとヤヤは一旦キイェルドーへ向かい、ダリアン王にバルデュヴィアとの同盟を進言しようとしました。街には寒冷化やリム=ドゥールの軍に追われた難民が多く流れ込んでおり、さらにその多くが、真の脅威はバルデュヴィアの蛮族だと考えていました。ヤヤは騎士団長アヴラム・ガリースンが国の実権を握るべくクーデターを計画していることを突き止めます。彼女は副官のヴァーチャイルドやジョダー達へと報告し、玉座の間まで反乱の兵が押し寄せるも、ジョダー達はそれを食い止めて王を守りました。首謀者達はストロームガルド騎士団を名乗っており、またリム=ドゥールに利用されていたことが明らかになりました。
《ストロームガルドの騎士》フレイバーテキスト(日本語訳は第5版より)
キイェルドー人は、支配者として最上の地位を占めねばならぬ。そして、ほかの者どもには死をもたらせ!
――ストロームガルド騎士団長、アヴラム・ガリースン
これまで弱き王とみなされていたダリアンでしたが、この件から国の支配を確固たるものとし、同時にキイェルドーの人々はリム=ドゥールこそが真の脅威だと知ります。これによってバルデュヴィアとの同盟機運は高まり、とはいえこれまで対立してきた相手といきなり仲良くやれというのは中々難しいもの。中でもヴァーチャイルドは特に大きく反発した一人であり、『統率者(2018年版)』のカード名が示す通りに後に「背信」することになります。
一方、同盟の結成とリム=ドゥール軍との戦いのさなか、学院のゲルダから悲鳴混じりの連絡が届きました。フレイアリーズが突然現れ、書庫の閲覧を求めてきたのです。それは何世紀もの間固く守られてきたものですが、神のごとき存在であるプレインズウォーカーの機嫌を損ねるわけにはいかない。ていうか怖くて相手なんてしてられないというのが本音です。ジョダーはその要望が支払の一部であると察して了承し、同時にゲルダへとフレイアリーズへの対応を命じました。それはゲルダ達がリム=ドゥールへ自分を売り渡した罰でもありました。
そしてリム=ドゥールとの最終決戦前日、フレイアリーズがジョダーの前へと現れて最後の支払を求めてきました。それは《あの鏡》を借りること。ジョダーは不承不承それを了承し、鏡を渡しました。
翌朝、屍術師軍とキイェルドー・バルデュヴィア連合軍の最終決戦が始まりました。ジョダーはリム=ドゥール本人に対峙します。彼は敵の「正体」を把握していました。
小説「The Eternal Ice」チャプター15より訳
屍術師の姿はすっかり変貌してしまっていた。リム=ドゥールの頭には雄牛の巨大な角が生え、肩の筋肉もそれを支えるために肥大していた。彼は今もジョダーが最初に見た時のローブをまとい、右手指には多くの指輪がはめられていた。左手の指がその指輪を玩び、彼はジョダーへと頷いた。
大魔道士もまた頷いた。一帯は静かで、死と戦いの騒音は遠い彼方のようだった。
「やあ、同志ジョダー」リム=ドゥールはそっけなく言った。
「やあ、屍術師」ジョダーは返答し、焼け焦げた地面から立ち上がった。「それとも本当の名前で呼ぶべきかな? やあ、『同志メアシル』?」
敗残兵リム=ドゥールが吹雪の洞窟で手に入れたあの指輪。それはジョダーの古き敵、偽善者メアシルのものでした。その中に残されていた精髄によって彼の人格は半ばメアシルのそれとなっていたのです。ジョダーとリム=ドゥール、魔法使い2人の決闘が始まりました。共に暗黒時代から(ある意味で)生きてきた2人の力は互角であり、やがて両者とも呪文を使い切ってしまいました。そこでリム=ドゥールはレシュラックへと助力を求めますが、そのプレインズウォーカーはキイェルドーとバルデュヴィアにゾンビの軍団を浪費したとしてリム=ドゥールを責めました。彼は指輪の右腕を切断され、さらに生きたままばらばらにされ、生ける肉塊となってレシュラックに持ち去られてしまいました。ジョダーはどうしようもない不満と怒りと共に戦場に残され、アンデッドの軍は主を失って動きを止めました。
一応は勝利と言えるのか、憔悴したジョダーの前にヤヤが現れて顛末を聞きました。ですが休む間もなく2人をフレイアリーズが呼びました。氷河期を終わらせるので見届けたければフィンドホーンへ来るようにと。疲労の中でしたが2人はフレイアリーズのポータルを抜けて向かいました。
フレイアリーズは不可視学院の書庫で得た知識を元に、そしてジョダーの鏡の魔力も借りて「世界呪文」を、ある意味再びの《ウルザの殲滅破》を起こすつもりでした。ただし今回はその逆を。再びドミナリアは荒廃するとジョダーは反発しますが、フレイアリーズには考えがありました。世界各所を繋ぐ魔法の通路、《隠れ家》。それを安全弁のように用いて魔力を通し、逃がし、同じ効果を安全に作り出す。
そしてフレイリーズは信奉者を率いて儀式を開始しました。氷の大釜/Ice Cauldronの底にあの鏡を置き、フレイアリーズ曰く「その大地の真の姿を見せる」。そしてフレイアリーズのあまりに大きな存在と魔力にジョダーは巻き込まれ、自らを失わないようこらえるのが精一杯の中、フレイアリーズの視点で世界を見て声を聞きました。魔力が網のように世界へ行き渡り、そして一斉に噴出しました。その威力は強まるばかりでした。キイェルドーでは洞窟という洞窟から炎が弾けて雪崩が起こり、海の深くでは珊瑚礁から凄まじい泡が弾けて近隣のマーフォークの居住地を壊滅させました。ヤヴィマヤでは花が一斉に開き、その奥深くで古の何かが身動きをしました。世界各所で、《隠れ家》がその圧力に耐えきれず機能を停止しました。
世界呪文が終わると、フレイアリーズはジョダーへと向き直りました。彼の言葉を聞くつもりでした。世界は氷から解放され、気候は兄弟の時代以前へと戻る。ですがジョダーは、急激な気候と環境の変化はまた新たな死と争いを招くものだと怒りをぶつけました。何よりも、自身の力の大きさを自覚しないプレインズウォーカーの傲慢さがそれをもたらす。例え人々に危害を加える意図はなくとも、誰もがその力と意志に振り回される。旧世代プレインズウォーカーの力の大きさを憂うジョダーの台詞はかなり刺さります。
小説「The Eternal Ice」チャプター18より訳
「危害を加える気はなかった?」 声を和らげてジョダーは尋ね、かぶりを振った。「あなたの力は強大すぎて、危害を加えずにはいられないんです。眠っているマンモスみたいなものです。それは良いマンモスなのかもしれませんが、それでもマンモスなんです。それが寝返りをうつ時には、全速力で逃げなければいけない。それを理解しないことには、真にあなたがどれほど危険かを理解しないことには、神なんて名乗る資格はありません」
フレイアリーズはその言葉を受け止め、ジョダーに鏡を返すとドミナリアを離れました。いつかこの次元に戻ることがあれば、なるべく貴方からは離れているつもりと言い残して。
そしてジョダーとヤヤが残されました。プレインズウォーカーがドミナリアを離れた今、この世界で最強の存在は? ヤヤの視線をジョダーは受けとめました。ならばなるべく良いマンモスになろう。それは挑戦でもあり、そして2人の前には新たな時代が待っているのでした。
4. その後と補足
『アイスエイジ』の物語は以上です。中々にすっきりとしたラスト。そして続編の『アライアンス』は二十年後から始まります。ヤヤは久しぶりにジョダーのもとを訪れるのですが、彼女は切り落とされた手を所持していて……。今一度のメアシル/リム=ドゥールの気配と、キイェルドー・バルデュヴィア連合からの新アルガイヴ成立。近代ドミナリアへと続く物語が紡がれます。最後にウルザもちょっと顔出すよ!
ところでストーリー解説の中では触れなかったのですが、第61回でも書いたジョダーの女師匠シーマ。この人がジョダーの最初の妻となったのだそうです。えーーーーーー何それ年上の女師匠を口説くとかそんな情熱的な所あったの!? 幕間なので詳しい話が全くないのが惜しい。
5. おわりに&宣伝です
2011年7月から始まったこの連載、大変ありがたいことに何と7周年を迎えることができました。一応月刊連載として何とかやってきましたがこのごろはついに掲載スケジュールが乱れてしまっています。申し訳ない。
そして先月休んだので時期を外してしまいましたが。またこちらの脚本と監修を担当させて頂きました。
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- マンガで分かる! Magic Story『ドミナリア』編
- 原作:Wizards of the Coast/漫画:アノアデザイン/脚本・監修:若月 繭子
やっぱり絵の力って凄い! 長い物語がわかりやすく楽しめます。あとは25周年のあれやこれや……こちらは公表でき次第。どうぞお楽しみに。
(終)
この記事内で掲載されたカード
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