皆さんこんにちは。
マジックの25年の歴史を記念して開催された『マジック25周年記念プロツアー』は大盛況のうちに幕を閉じました。世界中で人気の高い構築フォーマットということで、トッププレイヤーがプレイするモダンには注目が集まりました。
今回の連載では、プロツアーで活躍したデッキを見ていきたいと思います。
『マジック25周年記念プロツアー』
『基本セット2019』のカードが大活躍。墓地を活用したデッキの台頭
2018年08月03-05日
- 1位 BR Hollow One
- 2位 KCI
- 3位 Humans
- 4位 Humans
Hull / Orange / Wu
トップ4のデッキリストはこちら
同じ”競技大会”ではありますが、開かれたイベントであるSCG Tourと異なり、プロツアーでは勝利の期待値が高い戦略を選択するプレイヤーが多い傾向にあります。
SCG TourのメタはJeskai Control、Humansといったフェアデッキや、フェアデッキに強いTron、定番のAffinityなどが個人戦でもチーム戦でも多くなる傾向にありますが、プロツアーのメタは異なりました。最も高い使用率を出していたHumansを除くと、SCG Tourのメタと違って、KCIやBR Hollow Oneといったデッキが多く見られました。
今大会で高い使用率を出していたデッキと相性が悪いJeskai Controlを使用することを見送ったチームが多く、青いコントロールが好きなプレイヤーはTronとの相性が改善されたUW Controlを選択していました。(メタゲームブレイクダウン参照)
今大会で最も印象に残ったのはBR Vengevineでした。『基本セット2019』からの新カードである《縫い師への供給者》の登場によって実現したデッキで、プレイオフには残らなかったものの、最も注目を集めていたデッキと言えるでしょう。
『マジック25周年記念プロツアー』デッキ紹介
「Humans」「KCI」「BR Vengevine」「UW Control」
Humans
1 《島》
4 《古代の聖塔》
4 《魂の洞窟》
4 《手付かずの領土》
4 《地平線の梢》
1 《金属海の沿岸》
-土地 (19)- 4 《教区の勇者》
4 《貴族の教主》
4 《サリアの副官》
4 《帆凧の掠め盗り》
4 《翻弄する魔道士》
3 《スレイベンの守護者、サリア》
3 《幻影の像》
4 《カマキリの乗り手》
3 《民兵のラッパ手》
3 《反射魔道士》
1 《修復の天使》
-クリーチャー (37)-
2 《戦争の報い、禍汰奇》
2 《ガドック・ティーグ》
2 《再利用の賢者》
2 《イゼットの静電術師》
2 《罪の収集者》
1 《反射魔道士》
1 《はらわた撃ち》
1 《四肢切断》
-サイドボード (15)-
Humansは環境で最も人気のあるデッキの1つで、モダンの大きな大会の上位では必ずと言って良いほど見かけるデッキです。プロツアー、GP、SCG、MOCSなど、大会形式や規模を問わずコンスタントに結果を残していることから、環境のベストデッキとされています。
人気があり、結果を残し続けているデッキなので研究も進み、リストも完成されていますが、このデッキもわずかながら『基本セット2019』から新戦力を獲得し、さらに強化されました。
今大会では優勝こそ逃したものの、プレイオフに2チーム送り込むという安定した成績を残していました。
☆注目ポイント
『基本セット2019』から登場した《民兵のラッパ手》はこのデッキの新たな主力クリーチャーとして活躍しています。このクリーチャーの提供するアドバンテージによって、苦手としていたJeskai Control、UW Control、Mardu Pyromancerといった除去を多用するコントロールやミッドレンジとの相性がいくらか緩和されています。《幻影の像》でコピーすることでさらにアドバンテージを稼ぐことができます。
《民兵のラッパ手》のサーチ能力によって各クリーチャーの水増しができるので、《反射魔道士》、《幻影の像》、《修復の天使》の枚数がメインから減量されています。コンボが相手の際も各種ヘイトベアーが引きやすくなっているので、デッキの安定性にも貢献しています。
デッキの性質上、メイン、サイドともにクリーチャーがほとんどを占めていますが、サイドには《はらわた撃ち》と《四肢切断》が見られます。《はらわた撃ち》はミラーマッチやAffinity、Infect、Elvesに、《四肢切断》は先ほど挙げたマッチを含めてMardu Pyromancer、Jund、Hollow One、Spiritなどに対してサイドインされます。
KCI
4 《燃え柳の木立ち》
3 《ヤヴィマヤの沿岸》
4 《ダークスティールの城塞》
3 《埋没した廃墟》
2 《発明博覧会》
-土地 (18)- 2 《マイアの回収者》
4 《屑鉄さらい》
-クリーチャー (6)-
4 《オパールのモックス》
3 《仕組まれた爆薬》
4 《テラリオン》
4 《彩色の星》
3 《彩色の宝球》
2 《黄鉄の呪文爆弾》
4 《胆液の水源》
4 《精神石》
4 《クラーク族の鉄工所》
-呪文 (36)-
コンボの中でも今大会で最も優秀な成績を残していたのが《クラーク族の鉄工所》を使ったコンボデッキであるKCIでした。
殿堂プレイヤーのBen Starkは『基本セット2019』からの新カード、《練達飛行機械職人、サイ》をサイドに忍ばせたリストを使用して準優勝という好成績を残していました。
☆注目ポイント
このデッキの強みは妨害に対する粘り強さです。墓地対策や《石のような静寂》でもこのデッキを完全に止めることは難しく、各種ヘイトベアーや《安らかなる眠り》や《減衰球》といった置物は《仕組まれた爆薬》で一掃することが可能です。《石のような静寂》もサイドに4枚採用されている《自然の要求》で対処できます。《仕組まれた爆薬》はこのデッキならX=5でキャストすることもできるので、除去、スイーパーとしても優秀です。
《石のような静寂》を張られても、アーテイファクトスペルをキャストするたびに飛行機械・トークンを生み出す『基本セット2019』からの新カード、《練達飛行機械職人、サイ》がコンボ以外の勝ち手段として活躍します。カードアドバンテージエンジンとしても追加のフィニッシャーとしても使えるクリーチャーで、タフネスも4なので《稲妻》や《稲妻のらせん》といった除去で落ちないのも強みです。Jeskai ControlやMardu Pyromancerといったデッキとのマッチアップで特に強さを発揮します。
Jeskai Controlのようなカウンター呪文を採用したコントロール対策として、これまでは《耳障りな反応》や《防御の光網》がよく見られました。しかしBen Starkのリストはミラーマッチも含めた他のコンボとのマッチアップでも使える《否認》が採用されています。より幅広いシチュエーションに対応できるようになり、サイド後はコンボコントロールに変形します。《練達飛行機械職人、サイ》と《否認》という2種類の青いスペルを安定してキャストするために、追加の土地として《島》も採用されています。
BR Vengevine
4 《血の墓所》
2 《乾燥台地》
2 《血染めのぬかるみ》
2 《沸騰する小湖》
2 《樹木茂る山麓》
4 《黒割れの崖》
-土地 (17)- 4 《歩行バリスタ》
3 《搭載歩行機械》
4 《墓所這い》
4 《縫い師への供給者》
4 《ゴブリンの奇襲隊》
4 《傲慢な新生子》
4 《恐血鬼》
4 《復讐蔦》
4 《大いなるガルガドン》
-クリーチャー (35)-
『マジック25周年記念プロツアー』はチーム戦ということで、HumansやUW Controlといった手堅い選択をしたチームが多くを占める中、新たなアーキタイプも見られました。
今回ご紹介するBR Vengevineは『基本セット2019』から登場した《縫い師への供給者》を活用した墓地を使ったコンボデッキで、今大会で最も注目を集めたデッキでした。
《傲慢な新生子》を起動、または《縫い師への供給者》の能力によって《復讐蔦》や《黄泉からの橋》を落とし、《搭載歩行機械》や 《歩行バリスタ》といったアーティファクトクリーチャーをX=0でキャストすることで、1ターン目から《復讐蔦》を走らせたり、ゾンビトークンを数体展開する爆発力がこのデッキの特徴です。
☆注目ポイント
『基本セット2019』からの新カード、《縫い師への供給者》は墓地を肥やす手段であると同時にゾンビクリーチャーでもあるので、《墓所這い》を墓地から復活させる条件も満たします。このクリーチャーの登場により《復讐蔦》を安定して1ターン目に着地させることが可能になりました。
《黄泉からの橋》が落ちれば《搭載歩行機械》や 《歩行バリスタ》をX=0でキャストすることで墓地に落とし、1ターン目からゾンビトークンを展開することも可能です。中盤以降も使い回しの利く《恐血鬼》や《墓所這い》を《大いなるガルガドン》で生け贄に捧げてゾンビトークンを量産し、アドバンテージを稼げます。
《大いなるガルガドン》を「待機」させておくことで、《流刑への道》のような追放系の除去や、《終末》や《神々の憤怒》といったスイーパーにレスポンスして《復讐蔦》や《恐血鬼》を生け贄に捧げて墓地に落とせるので、返しのターンに体制を整えやすくなります。
トークンを生み出す《黄泉からの橋》の恩恵で横に並べる展開がしやすくなり、ブロッカー数体程度では止まらなくなっています。《信仰無き物あさり》や《恐血鬼》といったHollow Oneでも採用されているエンジンが採用されていますが、このデッキはより墓地に依存しているので、《虚空の力線》、《安らかなる眠り》、《墓掘りの檻》といった墓地対策カードが刺さるという弱点も抱えています。
UW Control
2 《平地》
2 《神聖なる泉》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《天界の列柱》
1 《氷河の城砦》
1 《秘教の門》
4 《廃墟の地》
-土地 (25)- 2 《瞬唱の魔道士》
1 《前兆の壁》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
-クリーチャー (4)-
UW Controlは今大会ではHumansに次いで高い使用率を出していたデッキで、プレイオフ進出は逃したものの、多くの上位入賞チームが選択していたアーキタイプでした。
SCG Tourでは《稲妻》や《稲妻のらせん》といった軽い火力スペルを採用したJeskai Controlが人気でした。しかし、現在の環境ではTronとのマッチアップで重宝する《廃墟の地》をマナ基盤に負担をかけることなくフル搭載可能で、スイーパーの《終末》、 《石のような静寂》や《安らかなる眠り》といった特定の戦略に刺さるサイドボードカードをデッキの構成を歪めることなく採用できる青白の2色の方が好まれています。
《終末》を「奇跡」で唱えて更地にしたターンに《精神を刻む者、ジェイス》をプレイする動きは、Jeskaiにはない要素です。
☆注目ポイント
UW Controlはクリーチャーを墓地に落とさないスイーパーの《終末》を採用しているので、先ほどのBR VengevineやHollow Oneとのマッチアップに強く、Jeskaiにとっては厳しいマッチとなるTronも《廃墟の地》を4枚採用しているのでいくらかは改善されています。
Humansとの相性は悪くはありませんが、軽い単体除去と《瞬唱の魔道士》によって小回りが利いたJeskai Controlと比べるとやや不利が付きます。《ゴブリンの電術師》と《遵法長、バラル》を手軽に除去する手段が限られているのでStormもやや不利なマッチとなります。
NassiffはHumansの《翻弄する魔道士》をケアして、《終末》以外にも《神の怒り》と《至高の評決》といった異なるカードを採用し、スイーパーを散らしています。
KCIやBR Vengevineといったデッキとの対戦も想定していたようで、サイドには墓地対策の《安らかなる眠り》や、アーティファクトの起動をシャットアウトする《石のような静寂》が3枚ずつと多めに採られています。さらに無色スペルをわずか1マナでカウンターできる《儀礼的拒否》までも採用されています。
《悪斬の天使》は除去が少ないHollow OneやBR Vengevine、Humansといった多くのデッキに対して、サイド後の有力なフィニッシャーとして活躍します。今回のNassiffのリストでは採用は見送られていますが追加で《黎明をもたらす者ライラ》も採用していたリストも見られました。
総括
『基本セット2019』がモダンに与えた影響は予想以上に大きく、トップメタのHumansや、グランプリでコンスタントに結果を残していたことで注目を集めていたKCIを強化し、BR Vengevineというデッキも新たに登場しました。
SCG Tourでもコンスタントに結果を残していたTronやMardu Pyromancerはプロツアーのチーム戦であった『マジック25周年記念プロツアー』では対策が厳しかったのか振るいませんでした。しかし、チーム戦ということで個人の正確な成績までは分からなかったため、個人戦のグランプリやSCGOでは、また違った結果になってくるかもしれません。
現在は墓地を活用したデッキが活躍している環境なので、今後はチーム戦であっても個人戦であっても《虚空の力線》のような墓地対策はしっかり用意しておきたいところです。
以上USA Modern Express vol.18でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!
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- USA Modern Express vol.17 -メタゲームは巡り、フェアデッキの時代来る-
- USA Modern Express vol.16 -フェアデッキに強いフェアデッキ ~マルドゥ・パイロマンサー~-
- USA Modern Express vol.15 -素敵だ。やはり「人間」は素晴らしい-
- USA Modern Express vol.14 -群雄割拠のモダンに訪れる新環境-
- USA Modern Express vol.13 -多様性溢れるモダン環境を勝ち抜く人間-
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