週刊デッキウォッチング vol.35 -バブルハルク etc.-

伊藤 敦


 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 多色ビートダウン



Nakamichi Daisuke「多色ビートダウン」
PWC – 第456回in川崎/GPT神戸(準優勝)

2 《精霊龍の安息地》
1 《マナの合流点》
4 《砂草原の城塞》
4 《華やかな宮殿》
4 《啓蒙の神殿》
4 《ラノワールの荒原》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
2 《コイロスの洞窟》

-土地(25)-

4 《森の女人像》
4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《サテュロスの道探し》
4 《包囲サイ》
3 《龍王オジュタイ》
2 《龍王ドロモカ》
2 《龍王アタルカ》

-クリーチャー(23)-
4 《神々との融和》
4 《残忍な切断》
2 《書かれざるものの視認》
2 《エレボスの鞭》

-呪文(12)-
4 《ニクス毛の雄羊》
3 《思考囲い》
3 《悪夢の織り手、アショク》
2 《ガイアの復讐者》
2 《忌呪の発動》

-サイドボード(14)-
hareruya



ヴリンの神童、ジェイス龍王オジュタイ書かれざるものの視認



 デッキ構築の手法の1つとして、「シナジーを形成する2種類のカードからデッキを作る」というのはよくあるパターンだ。だが「シナジーを形成する3種類のカードからデッキを作る」のはなかなか難しい。互いにシナジーを形成する3種のカードを発見することが難しいからだ。

 だがこのデッキはそのシナジー・トライアングルを内包している。それは《ヴリンの神童、ジェイス》《龍王オジュタイ》《書かれざるものの視認》だ。《ヴリンの神童、ジェイス》《龍王オジュタイ》は互いに「放置できない脅威」で除去の対象を散らせるし、《ヴリンの神童、ジェイス》からは《書かれざるものの視認》を再利用することができる。そして《龍王オジュタイ》がいれば《書かれざるものの視認》はほぼ必ず「獰猛」が達成できるのだ。

 あの悪名高き【Caw-Blade】《戦隊の鷹》《石鍛冶の神秘家》《精神を刻む者、ジェイス》のように。《ヴリンの神童、ジェイス》《龍王オジュタイ》《書かれざるものの視認》は、もしかしたら次の環境を支配する3枚となるかもしれない。

 また、【ヤソのWMCQ名古屋のデッキ】を見ればわかるように、《ヴリンの神童、ジェイス》《包囲サイ》そして『タルキール龍紀伝』の龍王を搭載した赤抜き4色というのは、マナベースの問題さえクリアすれば『戦乱のゼンディカー』後の環境でも非常に強力なコンセプトとなりうる。次の環境のデッキに迷っているという方は、参考にしてみるのもいいだろう。


【「多色ビートダウン」でデッキを検索】





■ モダン: バブルハルク



Takahashi Kakeru「バブルハルク」
晴れる屋モダン杯(4-2)

1 《島》
1 《山》
1 《沼》
2 《蒸気孔》
1 《湿った墓》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《汚染された三角州》
2 《闇滑りの岸》
2 《黒割れの崖》
3 《シヴの浅瀬》

-土地(21)-

3 《臓物の予見者》
1 《モグの狂信者》
1 《臭い草のインプ》
4 《ゴルガリの墓トロール》
2 《影武者》
1 《目覚ましヒバリ》
4 《変幻の大男》

-クリーチャー(16)-
3 《殺戮の契約》
4 《信仰無き物あさり》
4 《イゼットの魔除け》
4 《留まらぬ発想》
4 《御霊の足跡》
4 《その場しのぎの人形》

-呪文(23)-
4 《炎の印章》
3 《石のような静寂》
2 《有毒の蘇生》
2 《仕組まれた爆薬》
2 《真髄の針》
1 《再利用の賢者》
1 《神無き祭殿》

-サイドボード(15)-
hareruya



変幻の大男御霊の足跡留まらぬ発想



 《変幻の大男》《御霊の足跡》というと効果をよく知らない方が多いかもしれない。だがこの2枚はとある無限ダメージコンボを構成する必須パーツなのだ。

 具体的には、「墓地にある《変幻の大男》《御霊の足跡》で釣る→《御霊の足跡》の効果でターン終了時に死亡し《変幻の大男》の能力が誘発→《臓物の予見者》《影武者》をサーチして《影武者》《変幻の大男》になる→《臓物の予見者》でサクリファイスして《目覚ましヒバリ》《モグの狂信者》をサーチ→《モグの狂信者》で本体1点、あとは《目覚ましヒバリ》をサクリファイスして《影武者》《モグの狂信者》を場に戻し、《影武者》《目覚ましヒバリ》になって (《目覚ましヒバリ》になった《影武者》は墓地に落ちた自分自身を場に戻せるので) 無限ループ」となる。

 もっともこれだと《変幻の大男》への《流刑への道》などで妨害されやすいため、このデッキでは《殺戮の契約》も搭載し、対応して自ら《変幻の大男》を墓地に送り込むトリックも採用している。《殺戮の契約》《その場しのぎの人形》でリアニメイトしたときも即座に対象にとれるし、《漁る軟泥》の処理などにも使えるため、かなりデッキに噛み合ったパーツと言えよう。

 モダンで勝つためには、「対戦相手のデッキコンセプトや大まかな構造を知っていること」が重要だ。大会でいざ当たったときに困らないように、様々なアーキタイプの定番レシピを見ておくといいだろう。


【「バブルハルク」でデッキを検索】





■ レガシー: 赤単



Chiba Shouhei「赤単」
晴れる屋レガシー杯(3-1-1)

10 《山》
4 《樹木茂る山麓》
3 《血染めのぬかるみ》
2 《乾燥台地》

-土地(19)-

4 《ゴブリンの先達》
3 《渋面の溶岩使い》
1 《僧院の速槍》
4 《大歓楽の幻霊》

-クリーチャー(12)-
4 《稲妻》
4 《Chain Lightning》
4 《溶岩の撃ち込み》
4 《発展の代価》
2 《焼尽の猛火》
1 《灼熱の血》
4 《裂け目の稲妻》
4 《火炎破》
2 《硫黄の渦》

-呪文(29)-
3 《紅蓮破》
2 《粉々》
2 《紅蓮地獄》
2 《墓掘りの檻》
2 《罠の橋》
1 《破壊放題》
1 《灼熱の血》
1 《真髄の針》
1 《大祖始の遺産》

-サイドボード(15)-
hareruya



ゴブリンの先達発展の代価大歓楽の幻霊



 「なんだ普通のバーンじゃないか」と思われるかもしれないが、このタイミングで取り上げたのには理由がある。

 先日の【禁止制限カードリスト告知】においてレガシーでは《時を越えた探索》の禁止が注目を浴びたが、その陰でひっそりと解禁されたカードがあった。


黒の万力


 それが《黒の万力》である。そしてバーンは《黒の万力》解禁による恩恵を受けられるのではないかと目されているアーキタイプなのだ。

 先手1ターン目に設置すればおおよそ「1マナ6点」という、《稲妻》2枚分のダメージ効率。さらにバーンには《ゴブリンの先達》があり、相手の手札の枚数を増やすこともできる。あるいは《一日のやり直し》をタッチしてみても面白いだろう。

 《時を越えた探索》がいなくなることで、デッキの多様性が増すと思われるレガシー。デッキビルダーにとっては、このタイミングこそ新しいアイデアの投入しどころと言えるかもしれない。


【「赤単」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、是非色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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