週刊デッキウォッチング vol.29 -スーパークレイジーデルバー etc.-

伊藤 敦


 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: エルフ



Naitou Eiji「エルフ」
平日サービススタンダード20時の部(3-0)

4 《森》
2 《平地》
2 《沼》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《砂草原の城塞》
3 《ラノワールの荒原》
2 《コイロスの洞窟》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地(22)-

4 《エルフの神秘家》
4 《節くれ根の罠師》
4 《エルフの幻想家》
4 《ドゥイネンの精鋭》
4 《群れのシャーマン》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
4 《森の伝書使》

-クリーチャー(25)-
3 《先祖の結集》
2 《ドロモカの命令》
3 《召喚の調べ》
2 《アブザンの魔除け》
3 《集合した中隊》

-呪文(13)-
2 《再利用の賢者》
2 《神聖なる月光》
2 《威圧の誇示》
2 《ドロモカの命令》
2 《無限の抹消》
2 《完全なる終わり》
2 《ウルドのオベリスク》
1 《ガイアの復讐者》

-サイドボード(15)-
hareruya



先祖の結集群れのシャーマン森の伝書使



 スタンダードのエルフには無限の可能性がある。

 『マジック・オリジン』発売直後の【第4期スタンダード神挑戦者決定戦】では《ティムールの剣歯虎》を起用した【エルフ信心】が話題になったが、《群れのシャーマン》《エルフの幻想家》が全てEtB能力持ちであることに着目するなら、《先祖の結集》とも合わせて使ってみようと考えるのはむしろ自然な発想だ。

 何といってもエルフの弱点は単体除去や全体除去で展開を阻害されやすい点と相手のシステムに触りづらい点にある。そこでアブザンカラーにして《先祖の結集》《ドロモカの命令》をタッチすることで、除去耐性とシステム耐性を同時に獲得したこのデッキは理論上最強、エルフ界のソリューションと言えるだろう。

 また白を採用することでサイドボードの選択肢が圧倒的に広がるのも魅力だ。この「エルフ・ラリー」はスタンダードにおけるエルフの新たなコンセプトとして、研究の余地があるデッキと言えるだろう。


【「エルフ」でデッキを検索】





■ モダン: 青黒赤デルバー



Fukaya Yuta「青黒赤デルバー」
PPTQ2016#1 – 町田市民ホール(トップ4)

1 《島》
1 《山》
1 《沼》
2 《蒸気孔》
2 《湿った墓》
1 《血の墓所》
4 《汚染された三角州》
3 《血染めのぬかるみ》
3 《沸騰する小湖》

-土地(18)-

4 《秘密を掘り下げる者》
4 《死の影》
2 《僧院の速槍》
1 《黄金牙、タシグル》
2 《グルマグのアンコウ》

-クリーチャー(13)-
4 《ギタクシア派の調査》
4 《思考掃き》
4 《稲妻》
2 《頑固な否認》
2 《思考囲い》
2 《暗黒破》
2 《ティムールの激闘》
2 《マナ漏出》
1 《終止》
4 《四肢切断》
2 《コラガンの命令》

-呪文(29)-
4 《外科的摘出》
3 《僧院の包囲》
2 《溶鉄の雨》
1 《渋面の溶岩使い》
1 《方解石のカミツキガメ》
1 《瞬間凍結》
1 《ディミーアの魔除け》
1 《乱暴+転落》
1 《墓掘りの檻》

-サイドボード(15)-
hareruya



秘密を掘り下げる者死の影ティムールの激闘



 グリクシスカラーの弱点はライフ管理が難しいことで、それが理由でモダンで常に一定以上の勢力を誇っているバーンデッキに対して厳しい戦いを強いられがちだ。最近ではろくなサイドボードの選択肢もない中で、《ドラゴンの爪》《吸血の絆》《死の影》の3択をサイドボードに3~4枚程度忍ばせてお茶を濁すのが通例となっている。

 しかしこのデッキはそういった従来の固定観念から脱却し、グリクシスデルバーでありながらむしろ《死の影》をメインコンセプトに据えることでバーンの克服を図るというアプローチをとっている。

 【Super Crazy Zoo】と同様に《ティムールの激闘》も採用されており、《グルマグのアンコウ》に撃つだけでも人が死にそうだ。

 《グルマグのアンコウ》《黄金牙、タシグル》の採用枚数には限度があるが、《死の影》も合わせれば7枚ものタフなクリーチャーを採用することが可能になる。グリクシスデルバーの新たな可能性を切り拓いた形だけに、今後の活躍が楽しみなデッキだ。


【「青黒赤デルバー」でデッキを検索】





■ レガシー: 青白黒コントロール



Yanagisawa Yuuta「青白黒コントロール」
平日レガシー14時の部(3-0)

4 《島》
2 《平地》
1 《沼》
2 《Tundra》
2 《Underground Sea》
1 《Scrubland》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
1 《湿地の干潟》
1 《Karakas》

-土地(22)-

1 《瞬唱の魔道士》
1 《造物の学者、ヴェンセール》

-クリーチャー(2)-
3 《祖先の幻視》
4 《渦まく知識》
3 《剣を鍬に》
2 《呪文嵌め》
2 《呪文貫き》
2 《対抗呪文》
3 《エスパーの魔除け》
1 《議会の採決》
3 《至高の評決》
4 《Force of Will》
3 《時を越えた探索》
2 《ヴェールのリリアナ》
1 《悪夢の織り手、アショク》
1 《遍歴の騎士、エルズペス》
1 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《イニストラードの君主、ソリン》

-呪文(36)-
2 《思考囲い》
2 《寒け》
2 《安らかなる眠り》
2 《墓掘りの檻》
2 《真髄の針》
1 《外科的摘出》
1 《コジレックの審問》
1 《剣を鍬に》
1 《盲信的迫害》
1 《謙虚》

-サイドボード(15)-
hareruya



祖先の幻視エスパーの魔除け至高の評決



 レガシーでコントロールを成立させるのは至難の業だ。多様なデッキ、多様な勝ち手段があり、それらすべてに対して適切な「受け」を用意するというのは、観念的には想定できても実現が難しいからだ。

 だが一方で最近ではレガシーも「3強」と呼ばれる、3つのトップメタデッキが支配しているという見方もある。《実物提示教育》《秘密を掘り下げる者》、「奇跡」の3つがそれだ。そしてこれらの「3強」に対抗するという限りにおいては、コントロールを組むことも不可能ではない。

 まず豊富な軽量カウンターと《造物の学者、ヴェンセール》《実物提示教育》を咎める。《秘密を掘り下げる者》に対してはカウンターできない《神の怒り》こと《至高の評決》を搭載し、薙ぎ払う。「奇跡」相手は《相殺》でカウンターしにくいマナ域かつ対処しづらいフィニッシャー、プレインズウォーカーで優位に立つ。これらの戦略を同時に成立させるため、引きムラを解消すべく《祖先の幻視》《エスパーの魔除け》《時を越えた探索》が接着剤となれば、「3強」に強いコントロールの完成だ。

 ……などと理想通りにいかないのが常ではあるが、しかしクロックパーミッションやコンボに比べ、コントロールがそれほど研究されていない環境なのもまた事実。【グランプリ・京都2015】【<ダク・フェイデン>コントロール】が活躍した実績もある。レガシーの新たな鉱脈は、コントロールにこそ眠っているのかもしれない。


【「青白黒コントロール」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、是非色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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