週刊デッキウォッチング vol.32 -猫ロック etc.-

伊藤 敦

伊藤 敦


 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 黒緑ビートダウン



Futamata Youjirou「黒緑ビートダウン」
休日スタンダード17時の部(3-0)

7 《沼》
4 《森》
4 《ラノワールの荒原》
4 《疾病の神殿》
4 《ジャングルのうろ穴》

-土地(23)-

4 《搭載歩行機械》
4 《サテュロスの道探し》
4 《棲み家の防御者》
3 《黒猫》
4 《死霧の猛禽》
2 《無慈悲な処刑人》
1 《再利用の賢者》
2 《アンデッドの大臣、シディシ》

-クリーチャー(24)-
2 《思考囲い》
3 《英雄の破滅》
3 《衰滅》
1 《残忍な切断》
2 《進化の飛躍》
2 《宮殿の包囲》

-呪文(13)-
3 《強迫》
3 《霊気のほころび》
2 《思考囲い》
1 《苦悶の神、ファリカ》
1 《ガイアの復讐者》
1 《自然に帰れ》
1 《部族養い》
1 《ファリカの療法》
1 《悲哀まみれ》
1 《英雄の破滅》

-サイドボード(15)-
hareruya



黒猫進化の飛躍宮殿の包囲



 《黒猫》というカードには、そのカードの持つ効果や能力を超えて、多くの人々が共通して見出す、とあるニュアンスがある。

 それは一言で言うと、「不吉」だ。我々が現実に生活するこの世界において黒い猫を不吉の象徴として扱う民間伝承が存在するが故に、それとはまったく関係がない、黒猫が描かれているだけのこのカードにも、何かしらの不幸を引き寄せる引力、呪術的な力があるのではないか。そう考える人が少なからず存在する。現にかつてモダンのグランプリのトップ16に入賞したデッキに、【どう考えても「魔除け」としての用途以外では説明がつかない<黒猫>がサイドボードに鎮座していたこともある】ほどだ。

 だがこのデッキはむしろ《黒猫》の持つ死亡誘発能力に着目し、「相手の手札がゼロ枚の状態でドローステップに《黒猫》《進化の飛躍》で生け贄に捧げて相手のドローをインスタント以外使用できなくさせ、《黒猫》は毎ターンこちらのアップキープに《宮殿の包囲》で回収する」というソフトロックをデッキに組み込んでいる。健気に場と墓地、そして手札をぴょんぴょんと往復する《黒猫》の姿を想像すると、何だか微笑ましい。きっとこのデッキの製作者は猫派だろう。

 そう、《黒猫》は可愛いのだ。だから《黒猫》は不吉だなんて思わないで、このデッキのようにもっと健全に《黒猫》を運用する方法を考えてあげて欲しい(猫派の主張)。


【「黒緑ビートダウン」でデッキを検索】





■ モダン: ローグアグロ



カクタ ヨシタカ「ローグ・アグロ」
WMCQ東京予選 直前トライアルA(優勝)

1 《山》
1 《平地》
1 《沼》
2 《血の墓所》
1 《聖なる鋳造所》
1 《蒸気孔》
1 《湿った墓》
2 《乾燥台地》
2 《血染めのぬかるみ》
3 《魂の洞窟》
2 《反射池》
1 《黒割れの崖》
1 《断崖の避難所》
1 《竜髑髏の山頂》
1 《孤立した礼拝堂》

-土地(21)-

4 《僧院の速槍》
4 《闇の腹心》
3 《瞬唱の魔道士》
4 《僧院の導師》

-クリーチャー(15)-
4 《稲妻》
4 《流刑への道》
3 《コジレックの審問》
2 《カラスの罪》
1 《思考囲い》
2 《稲妻のらせん》
2 《未練ある魂》
2 《コラガンの命令》
4 《ミシュラのガラクタ》

-呪文(24)-
2 《呪文滑り》
2 《大爆発の魔道士》
2 《稲妻のらせん》
2 《未練ある魂》
2 《神聖の力線》
2 《ヴェールのリリアナ》
1 《ブレンタンの炉の世話人》
1 《摩耗+損耗》
1 《虚無の呪文爆弾》

-サイドボード(15)-
hareruya




闇の腹心僧院の導師ミシュラのガラクタ



 色々なデッキを見ていると、「製作者の意思をトレースしやすいデッキ」と「そうでないデッキ」があることがわかる。そしてこのデッキは間違いなく後者の部類に入るだろう。軽くて支配的なクロックと大量の妨害呪文というデッキ構造は、どちらかといえば《秘密を掘り下げる者》デッキのお家芸だからだ。

 だがこのデッキは《僧院の速槍》《闇の腹心》《僧院の導師》というラインを貫いた。多分どうあっても《闇の腹心》を使いたいと、そういうことなのだろう。ジャンドからも《闇の腹心》が抜けつつある現在、《闇の腹心》が強いデッキとは何か?それを追求し続けてここまで来た。そういう意思を感じる。だからこその《ミシュラのガラクタ》なのだ。

 4色目の《瞬唱の魔道士》《カラスの罪》など、一見しただけでは役割や必要性がわからないカードもある。しかし製作者はきっと確たる理由を持っているのだ。ローグデッキとはそういうものだ。決して理解されない、自分だけの哲学を込めたデッキ。けれど、それ故にこのデッキは輝いている。

 いつか製作者に会えたら、このデッキのカード採用について細部に至るまで聞いてみたい。そう思わせるほどに個性溢れるデッキリストだ。


【「ローグアグロ」でデッキを検索】





■ レガシー: 青黒赤ジャンク



Ugata Tetsurou「青黒赤ジャンク」
平日レガシー17時の部(3-0)

3 《Underground Sea》
2 《Badlands》
1 《Volcanic Island》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《汚染された三角州》
2 《新緑の地下墓地》
4 《不毛の大地》

-土地(20)-

4 《秘密を掘り下げる者》
3 《死儀礼のシャーマン》
3 《ゴブリンの熟練扇動者》
3 《墓忍び》

-クリーチャー(13)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
4 《稲妻》
3 《思考囲い》
1 《マグマの洞察力》
4 《Hymn to Tourach》
3 《目くらまし》
4 《コラガンの命令》

-呪文(27)-
4 《Force of Will》
3 《墓掘りの檻》
2 《ヴェンディリオン三人衆》
2 《紅蓮地獄》
2 《非業の死》
1 《赤霊破》
1 《Bayou》

-サイドボード(15)-
hareruya



秘密を掘り下げる者墓忍びマグマの洞察力



 このデッキは現在のレガシーのトップメタの一角、4色《秘密を掘り下げる者》と比較すると、極めて攻撃的なリストだ。

 カウンターよりも手札破壊でマウントをとり、《Force of Will》はサイドに落として築いた枚数優位のアドバンテージは決して手放さないという姿勢は、どちらかといえばジャンドに近いものがあるかもしれない。《突然の衰微》がないため4/5となった《タルモゴイフ》の処理には一見手間取りそうだが、3枚入った《墓忍び》がダメージレースの打開を可能にする。

 《ゴブリンの熟練扇動者》《コラガンの命令》といったスタンダードで活躍したカードをふんだんに取り入れていることからも、ありきたりなコピーデッキに満足できないデッキビルダーの矜持を感じさせる。また、相手によっては腐りがちな《不毛の大地》《マグマの洞察力》で有効牌に変換するというのは面白いテクニックだ。

 レガシーといえど、オリジナルデッキがメタゲームに入る余地が皆無というわけではない。世界を変えるのは、変えようとする意思なのだ。『戦乱のゼンディカー』もカードも続々と発表されている。皆さんも独自のテクニックで、ぜひとも新しい世界を切り拓いていって欲しい。


【「青黒赤ジャンク」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、是非色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



この記事内で掲載されたカード


Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする

関連記事

このシリーズの過去記事