週刊デッキウォッチング vol.34 -アルーレン etc.-

伊藤 敦


 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: ローグ



Iso Toshiharu「ローグ」
休日スタンダード17時の部(3-0)

9 《森》
5 《島》
4 《神秘の神殿》
4 《ヤヴィマヤの沿岸》
2 《領事の鋳造所》

-土地(24)-

4 《搭載歩行機械》
4 《エルフの神秘家》
4 《惑乱のセイレーン》
4 《森の女人像》
3 《エルフの幻想家》
4 《つむじ風のならず者》
2 《女王スズメバチ》

-クリーチャー(25)-
2 《否認》
4 《進化の飛躍》
4 《開拓地の包囲》
1 《タッサの二叉槍》

-呪文(11)-
3 《再利用の賢者》
3 《軽蔑的な一撃》
3 《ナイレアの弓》
2 《龍の眼の学者》
2 《ガイアの復讐者》
2 《真珠湖の古きもの》

-サイドボード(15)-
hareruya



惑乱のセイレーン進化の飛躍開拓地の包囲



 環境を支配する《搭載歩行機械》に対する解答として「一時的にコントロールを奪って《進化の飛躍》で生け贄に捧げる」というコンセプトは【vol.30】で既に紹介したところだが、このデッキではさらに「永続的にコントロールを奪った上で《進化の飛躍》を構える」というスケールの大きな解答を示してくれた。

 鍵となるのは《惑乱のセイレーン》。相手のクリーチャーに「授与」することでコントロールを奪えるこのカードは、「授与」先がいなくなっても《惑乱のセイレーン》本体が残るため、《進化の飛躍》で2度おいしい思いができる。「授与」は7マナと重めだが、そこは《開拓地の包囲》《進化の飛躍》の起動マナと合わせて優しくサポートしてくれる。

 《搭載歩行機械》《つむじ風のならず者》《女王スズメバチ》《領事の鋳造所》と、1枚で複数体のトークンを用意できるカードもふんだんに詰め込まれており、《進化の飛躍》の種が尽きることはない。また、並べたトークンを生かす手法として1枚だけ採用されている《タッサの二叉槍》もお洒落だ。

 《惑乱のセイレーン》はローテーション落ちしてしまうが、『戦乱のゼンディカー』では《影響力の行使/Exert Influence》というコントロールを奪えるカードがあることから、ローテーション後も注目のアーキタイプになりそうだ。


【「ローグ」でデッキを検索】





■ モダン: 青赤コントロール



Shinohara Gen「青赤コントロール」
平日モダン17時の部(3-0)

5 《島》
1 《山》
2 《蒸気孔》
1 《神聖なる泉》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
1 《溢れかえる岸辺》
2 《硫黄の滝》
1 《ダークスティールの城塞》
1 《埋没した廃墟》

-土地(22)-

4 《搭載歩行機械》
4 《瞬唱の魔道士》
2 《粗石の魔道士》

-クリーチャー(10)-
4 《稲妻》
4 《血清の幻視》
2 《呪文嵌め》
3 《マナ漏出》
3 《差し戻し》
2 《電解》
2 《謎めいた命令》
2 《血染めの月》
2 《飛行機械の諜報網》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《真髄の針》
1 《大祖始の遺産》
1 《上天の呪文爆弾》

-呪文(28)-
2 《払拭》
2 《摩耗+損耗》
2 《疲弊の休息》
2 《神々の憤怒》
1 《渋面の溶岩使い》
1 《イゼットの静電術師》
1 《嵐の神、ケラノス》
1 《引き裂く流弾》
1 《マグマのしぶき》
1 《焙り焼き》
1 《否認》

-サイドボード(15)-
hareruya



血染めの月飛行機械の諜報網搭載歩行機械



 「ブルームーン」といえば【プロプレイヤー・行弘 賢が生み出し】、Lee Shi Tianを【プロツアー『神々の軍勢』】トップ8へと導いたアーキタイプとして有名だが、このデッキはそれに独自のアレンジを加えたものとなっている。

 《ヴィダルケンの枷》《殴打頭蓋》といったややモダンのスピードに置いていかれつつあるカードを大胆に抜き去り、代わりにやはりというかなんというか、《搭載歩行機械》。しかもそれに加えて《飛行機械の諜報網》まで組み込んでいる。

 となればアーティファクトの数が心配になるところ、最近モダンではあまり姿を見なかった《粗石の魔道士》パッケージがきちんと穴を埋めている。そういえばそんなカードあったな、と思って『戦乱のゼンディカー』の1マナアーティファクトを見ると《面晶体の刃/Hedron Blade》と《突き抜けの矢/Pathway Arrows》だけだったのでウィンドウをそっ閉じしたが、ここまで書いたところで《粗石の魔道士》《搭載歩行機械》をサーチできるということに気がついた。納得の採用である。

 《上天の呪文爆弾》はなかなか見ないカードだが、《欠片の双子》への牽制となりつつ、自分の《瞬唱の魔道士》を戻したりと使い方は幅広い。様々なギミックで対戦相手を手玉にとれる、玄人好みのデッキと言えそうだ。


【「青赤コントロール」でデッキを検索】





■ レガシー: アルーレン



Alex Barnett「アルーレン」
SCG Premier IQ(2位)

1 《森》
1 《島》
1 《沼》
2 《Bayou》
2 《Underground Sea》
1 《Taiga》
1 《Tropical Island》
4 《霧深い雨林》
4 《汚染された三角州》
4 《新緑の地下墓地》

-土地(21)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《悪意の大梟》
1 《夢で忍び寄るもの》
1 《洞窟のハーピー》
1 《漁る軟泥》
4 《帝国の徴募兵》
4 《断片無き工作員》
1 《永遠の証人》
1 《寄生的な大梟》

-クリーチャー(21)-
4 《渦まく知識》
4 《思考囲い》
4 《陰謀団式療法》
1 《悪魔の意図》
1 《時を越えた探索》
4 《魔の魅惑》

-呪文(18)-
4 《突然の衰微》
2 《再利用の賢者》
2 《夜の戦慄》
1 《疫病媒体》
1 《月の大魔術師》
1 《イゼットの静電術師》
1 《フェアリーの忌み者》
1 《墓掘りの檻》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《真髄の針》

-サイドボード(15)-
hareruya



魔の魅惑思考囲い疫病媒体



 レガシーはマイナーではあっても一定数の使用者が常に存在するアーキタイプがいくつかあって、《魔の魅惑》デッキはその1つである。《魔の魅惑》下で《洞窟のハーピー》《寄生的な大梟》を揃えると無限ドレインで勝利となるため、それを目指すのがこのデッキの基本的な動きとなる。コンボパーツが多いように見えて、《魔の魅惑》さえ貼ってしまえば《帝国の徴募兵》から《夢で忍び寄るもの》《帝国の徴募兵》出し直し→《洞窟のハーピー》《夢で忍び寄るもの》出し直して《帝国の徴募兵》出し直し→《寄生的な大梟》でコンボパーツが全部揃うので意外にスピードは早い。

 この形では《Force of Will》《直観》をとっておらず、8ハンデスと《断片無き工作員》で積極的に消耗戦を挑みにいく形となっている点が興味深い。《魔の魅惑》を無理に探しにいくよりも、相手の動きを妨害しながらBUGジャンクとしてコントロール気味に振る舞いつつ、《魔の魅惑》を引いたら突然コンボ勝ちするといったイメージのようだ。

 また《帝国の徴募兵》のおかげでサイドボードに様々な対策クリーチャーを積める点がメリットで、特に《月の大魔術師》はかなり奇襲効果が高そうだ。《疫病媒体》はあまり見ないカードだが、《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》や《若き紅蓮術士》《僧院の導師》などのトークンをシャットアウトできるいぶし銀の性能を持っている。

 レガシーのコンボデッキの中では《実物提示教育》のコンセプトは確かに最強だが、それだけにメタられやすさもある。フェアデッキとしても振る舞える《魔の魅惑》デッキは、実は意外と良いポジションにいるのかもしれない。



【「アルーレン」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、是非色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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