週刊デッキウォッチング vol.37 -青撤退+隆盛コンボ etc.-

伊藤 敦


 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 同盟者



Hienuki Kouichi「同盟者」
休日スタンダード20時の部(3-0)

5 《森》
2 《平地》
1 《沼》
2 《梢の眺望》
1 《吹きさらしの荒野》
4 《同盟者の宿営地》
4 《ラノワールの荒原》
3 《コイロスの洞窟》
2 《ジャングルのうろ穴》

-土地(24)-

4 《探検隊の特使》
4 《獣呼びの学者》
4 《エルフの幻想家》
4 《カラストリアの癒し手》
2 《ズーラポートの殺し屋》
4 《古参の戦導者》
2 《ランタンの斥候》
2 《巨森の予見者、ニッサ》
3 《タジュールの戦呼び》
1 《アンデッドの大臣、シディシ》

-クリーチャー(30)-
4 《集合した中隊》
2 《墓所からの行進》

-呪文(6)-
4 《ドラーナの使者》
4 《ヴリンの翼馬》
2 《残忍な切断》
2 《エメリアへの撤退》
1 《ランタンの斥候》
1 《アンデッドの大臣、シディシ》
1 《墓所からの行進》

-サイドボード(15)-
hareruya



カラストリアの癒し手古参の戦導者タジュールの戦呼び



 今のスタンダードで同盟者デッキの最適解を導き出すのはなかなかに難しい。

 「《集合した中隊》があるが故の3マナ域以下のクリーチャー枚数」の要請と、「一部のキークリーチャーを除去されても勝ちきれるだけのカードパワー」の要請、さらに「《カラストリアの癒し手》のためにできるだけ生物のラインナップを同盟者で揃えたい」という要請とがそれぞれ衝突し、デッキとしての完成形を見えにくくしているからだ。

 【KenjiWayfinder】で披露したのは開き直って《集合した中隊》の要請に全てを寄せた形だったが、このデッキはまた別のアプローチを試みている。

 それが《エルフの幻想家》からの《タジュールの戦呼び》のラインだ。《タジュールの戦呼び》のカードパワーは凄まじく、《獣呼びの学者》からのマナブーストのゴールとして申し分ない。またもう1つのゴールとして《アンデッドの大臣、シディシ》も採用しており、《エルフの幻想家》を生かしつつ《タジュールの戦呼び》の4枚目かつ《墓所からの行進》の3枚目として機能させるテクニックには感銘を受けた。

 《ドラーナの使者》をサイドに落として《巨森の予見者、ニッサ》を採用するなど、メインは全体的に《乱撃斬》《焦熱の衝動》でタダ損をしにくい構成になっているのも好感が持てる。赤系デッキのサイドボードに積まれている《光輝の炎》は依然として課題だが、同盟者の可能性を感じさせるレシピだ。


【「同盟者」でデッキを検索】





■ モダン: ジェスカイの隆盛コンボ



Shouji Taku「ジェスカイの隆盛コンボ」
平日モダン17時の部(3-0)

2 《森》
1 《山》
3 《踏み鳴らされる地》
2 《繁殖池》
2 《寺院の庭》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
1 《セジーリのステップ》
1 《ならず者の道》

-土地(20)-

4 《東屋のエルフ》
4 《極楽鳥》
2 《アヴァシンの巡礼者》
4 《聖遺の騎士》
4 《命運縫い》

-クリーチャー(18)-
4 《信仰無き物あさり》
3 《炎の突き》
4 《壌土からの生命》
4 《神々との融和》
4 《ジェスカイの隆盛》
3 《珊瑚兜への撤退》

-呪文(22)-
4 《聖トラフトの霊》
3 《部族養い》
3 《古えの遺恨》
2 《白鳥の歌》
2 《天啓の光》
1 《ボジューカの沼》

-サイドボード(15)-
hareruya



ジェスカイの隆盛聖遺の騎士珊瑚兜への撤退



 『戦乱のゼンディカー』のカードリストが発表された時点で話題となった《珊瑚兜への撤退》《聖遺の騎士》コンボは、パーツの代替性がなく、それだけだと《欠片の双子》コンボに勝る点が少ないのが難点だった。

 しかしこのデッキでは《珊瑚兜への撤退》コンボが必然的にマナクリーチャーを採用せざるをえない構造となる点に着目し、マナクリーチャーを使った《ジェスカイの隆盛》コンボとのハイブリッドという荒業に乗り出している。

 とはいえ従来の《きらめく願い》型とは違いキャントリップ呪文を全く積んでいないこの構成で《ジェスカイの隆盛》コンボが決まるのか?と思われるかもしれないが、「場に《ジェスカイの隆盛》」+「マナクリーチャーか《命運縫い》合計2体」+「手札に《壌土からの生命》(と墓地に3枚以上の土地)」+「墓地に《炎の突き》」という状況を作るだけで、

《壌土からの生命》プレイ(手札に土地3枚)」
→「1枚目の土地を捨てて《炎の突き》プレイ(合計1マナ浮き)」
→「2枚目の土地を捨てて《炎の突き》プレイ(合計2マナ浮き+ルーター能力のドローを《壌土からの生命》の「発掘」で置換して手札の3枚目の土地を捨てる)」
→「《壌土からの生命》プレイ」……

 というループで「発掘3」をライブラリがなくなるまで繰り返すことができるので、途中で落ちた《命運縫い》を「蘇生」するなどすれば、《ジェスカイの隆盛》のパワー修正と《炎の突き》のダメージを合わせて対戦相手のライフを削りきることは容易だろう。

 しかも「《珊瑚兜への撤退》《聖遺の騎士》コンボ」と「《ジェスカイの隆盛》+墓地の《命運縫い》《壌土からの生命》《炎の突き》コンボ」は全て《神々との融和》でアクセス可能という美しさときたら!

 【アミュレットブルーム】対策としてサイドに《幽霊街》を1枚くらい積んでもいい気はするが、そんな重箱の隅くらいしかつつくところがない、製作者の発想力に脱帽モノのデッキだ。


【「ジェスカイの隆盛コンボ」でデッキを検索】





■ レガシー: リアニメイト



Inamura Sachio「リアニメイト」
第5期レガシー神挑戦者決定戦(13位)

1 《沼》
2 《Underground Sea》
2 《Bayou》
1 《Scrubland》
4 《血染めのぬかるみ》
3 《湿地の干潟》
2 《宝石鉱山》

-土地(15)-

1 《コーリスの子》
3 《ヴリンの神童、ジェイス》
1 《墓所のタイタン》
4 《グリセルブランド》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー(10)-
4 《渦まく知識》
4 《暗黒の儀式》
4 《納墓》
4 《陰謀団式療法》
3 《ギタクシア派の調査》
2 《再活性》
2 《入念な研究》
4 《浅すぎる墓穴》
3 《御霊の復讐》
1 《苦悶の触手》
4 《水蓮の花びら》

-呪文(35)-
3 《グルマグのアンコウ》
3 《突然の衰微》
2 《ザンティッドの大群》
2 《蒸気の連鎖》
2 《仕組まれた爆薬》
2 《真髄の針》
1 《虐殺》

-サイドボード(15)-
hareruya



浅すぎる墓穴ヴリンの神童、ジェイスグリセルブランド



 【vol.26】ではリアニメイトに《ヴリンの神童、ジェイス》が搭載されていたデッキを紹介したが、このデッキはリアニメイトの亜種である【Tin Fins】《ヴリンの神童、ジェイス》を搭載した形となっている。

 カウンターを搭載しないリアニメイトであるTin Finsの強みは《御霊の復讐》《浅すぎる墓穴》という2種のインスタントリアニメイト呪文を採用できる点にある。そしてこの2種の呪文は、実は《ヴリンの神童、ジェイス》とも相性が良い。「変身」してしまえばもはやターン終了時に追放する必要がなくなるからだ。《金属モックス》を採用せず、《ギタクシア派の調査》で「墓地にカードが5枚以上」という条件を満たしやすくしていることからも、このトリックをかなり重要視していることがわかる。

 反面1キルや2キル率は下がってしまうだろうが、この形の強みは「キープしやすさ」にある。安定してさえいればTin Finsはかなり強力なデッキなのだ。それ故に、速度とバランスの両立を目指したのは納得できるアプローチと言えよう。

 またサイドボードにはありふれた《実物提示教育》ではなく、《Karakas》《封じ込める僧侶》を無視できる《グルマグのアンコウ》をとっている点も面白い。《安らかなる眠り》があまり使われていないというメタゲームを読み切ってのことだろうが、《呪文嵌め》《狼狽の嵐》にも引っかからないため、意外とこれだけで勝ててしまえるのかもしれない。


【「リアニメイト」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、是非色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



この記事内で掲載されたカード


Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする

関連記事

このシリーズの過去記事