週刊デッキウォッチング vol.40 -白黒追放ビートダウン etc.-

伊藤 敦


 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 白黒ビートダウン



Craig Wescoe「白黒ビートダウン」
グランプリ・インディアナポリス2015 (18位)

4 《平地》
1 《沼》
1 《大草原の川》
1 《窪み渓谷》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《吹きさらしの荒野》
2 《汚染された三角州》
4 《コイロスの洞窟》
4 《乱脈な気孔》

-土地(25)-

4 《マルドゥの悲哀狩り》
2 《アクロスの英雄、キテオン》
4 《白蘭の騎士》
4 《不毛の地の絞殺者》
4 《徴税の大天使》
4 《風番いのロック》

-クリーチャー(22)-
4 《精神背信》
4 《絹包み》
3 《見えざるものの熟達》
2 《停滞の罠》

-呪文(13)-
4 《軽蔑的な一撃》
2 《払拭》
2 《究極の価格》
2 《勇敢な姿勢》
2 《停滞の罠》
1 《見えざるものの熟達》
1 《否認》
1 《苦い真理》

-サイドボード(15)-
hareruya



マルドゥの悲哀狩り不毛の地の絞殺者絹包み



 【プロツアー『ドラゴンの迷路』】チャンピオンにして偉大なる白ウィニー愛好家でもあるCraig Wescoeの新作は、新世代の《火炎舌のカヴー》こと《不毛の地の絞殺者》をフィーチャーしたものだった。

 能力の発動には追放領域にある対戦相手のカードを必要とする「昇華者」たちは、環境が始まってみると思った以上に厳しい制約があるということがわかってきたが、それも白黒というカラーリングならば決して不可能事ではなかったようだ。

 何せお馴染みの「《搭載歩行機械》キラー」こと《絹包み》《停滞の罠》に加えて《精神背信》、そして何と《マルドゥの悲哀狩り》という素晴らしい相棒を見つけてきたのだ。

 『マジック・オリジン』でこれまで唯一活躍の場が与えられていなかったプレインズウォーカー・《アクロスの英雄、キテオン》も採用されているなど、数々の斬新なテクニックに満ちたこのデッキは、デッキビルダー・Craig Wescoeの代表作の1つとなるだろう。


【「白黒ビートダウン」でデッキを検索】





■ モダン: フェアリー



Kawaguchi Yousuke「フェアリー」
平日モダン17時の部 (3-0)

4 《島》
1 《沼》
1 《湿った墓》
4 《汚染された三角州》
4 《忍び寄るタール坑》
4 《闇滑りの岸》
4 《涙の川》
4 《変わり谷》

-土地(26)-

3 《搭載歩行機械》
4 《呪文づまりのスプライト》
3 《ヴェンディリオン三人衆》
2 《造物の学者、ヴェンセール》

-クリーチャー(12)-
4 《コジレックの審問》
1 《払拭》
1 《呪文嵌め》
2 《マナ漏出》
3 《四肢切断》
4 《謎めいた命令》
4 《苦花》
1 《饗宴と飢餓の剣》
2 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(22)-
4 《大爆発の魔道士》
4 《見栄え損ない》
2 《エレンドラ谷の大魔導師》
2 《強迫》
2 《殴打頭蓋》
1 《光と影の剣》

-サイドボード(15)-
hareruya



搭載歩行機械苦花ヴェールのリリアナ



 先週末に開催されたモダンの【グランプリ・ポルト・アレグレ2015】ではトップ8に16枚もの《野生のナカティル》が採用されていた。一方で同時期に禁止解除となった《苦花》はどうかというと、いまだトーナメントにおいて十分な結果を残しているとは言いがたい。

 しかしこのデッキはフェアリーが新たなステージに上るためのヒントを与えてくれた。《搭載歩行機械》の採用は、2ターン目以降は常にインスタントで行動するフェアリーにとって極めて自然と言える。出てくるトークンも1/1飛行なので、フェアリーたちは「一緒に攻撃する頼もしい仲間を得た」と思ってくれるかもしれない。

 『タルキール覇王譚』で《汚染された三角州》を手に入れたことも、ライフが厳しいこのデッキにとってデッキ構築に若干の制約がかかる《人里離れた谷間》を抜いてフェッチ+ギルドランドのマナベースにするためにはありがたい出来事だったと言えるだろう。

 何せおかげで《ヴェールのリリアナ》《造物の学者、ヴェンセール》といった強力なカードたちをフェアリーというコンセプトに収めることができたのだ。これにとどまらず、フェアリーの進化の可能性はまだまだ残されている。


【「フェアリー」でデッキを検索】





■ レガシー: 食物連鎖



K_F_CHICKEN「食物連鎖」
Legacy Daily – #8922986 (4-0)

2 《冠雪の島》
1 《冠雪の森》
1 《冠雪の沼》
3 《Tropical Island》
3 《Underground Sea》
1 《Bayou》
4 《霧深い雨林》
4 《汚染された三角州》
1 《新緑の地下墓地》

-土地(20)-

4 《死儀礼のシャーマン》
1 《極楽鳥》
4 《悪意の大梟》
2 《激情の共感者》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
4 《霧虚ろのグリフィン》
1 《黄金牙、タシグル》
1 《潮吹きの暴君》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー(19)-
4 《渦まく知識》
2 《思考囲い》
3 《突然の衰微》
3 《運命の操作》
4 《Force of Will》
1 《誤った指図》
4 《食物連鎖》

-呪文(21)-
1 《ディミーアの魔除け》
2 《花の絨毯》
2 《真髄の針》
2 《大祖始の遺産》
2 《強迫》
2 《狼狽の嵐》
2 《梅澤の十手》
2 《ゴルガリの魔除け》

-サイドボード(15)-
hareruya



霧虚ろのグリフィン運命の操作食物連鎖



 【vol.34】で紹介した「アルーレン」と並び、レガシーのマニアックなコンボデッキである《食物連鎖》

 追放領域からプレイできる《霧虚ろのグリフィン》はまさしくこのデッキのために印刷されたかのような効果で、《食物連鎖》との2枚コンボで (クリーチャーにしか使えない) 無限マナを生成する。《Force of Will》のコストで取り除いてもいいので何枚手札に来ても安心である。

 《運命の操作》はあまり見ないカードだが、ライブラリー中の《霧虚ろのグリフィン》を追放してデッキの密度を高めつつ《食物連鎖》を探しにいけるいぶし銀のカードだ。

 「アルーレン」同様、こういったBUGカラーのコンボは手札破壊や《突然の衰微》、そして何より《Force of Will》のバックアップが受けられるのでかなり実用的なデッキになりやすい。BUGカラーのコンボを見つけたら、レガシーへの転用を考えてみてもいいかもしれない。


【「食物連鎖」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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