週刊デッキウォッチング vol.47 -絶対無敵最強崇拝 etc.-

伊藤 敦


 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: ローグ



Matsuda Hideyuki「ローグ」
平日スタンダード20時の部 (3-0)

20 《沼》
3 《荒廃した湿原》

-土地(23)-

4 《搭載歩行機械》
4 《血に染まりし勇者》
4 《ズーラポートの殺し屋》
4 《魂の略奪者》
3 《スゥルタイの使者》
2 《捕らわれの宿主》
4 《ナントゥーコの鞘虫》
4 《異端の癒し手、リリアナ》
4 《エレボスのタイタン》

-クリーチャー(33)-
4 《骨の粉砕》

-呪文(4)-
4 《蔑み》
4 《強迫》
3 《究極の価格》
2 《苦痛の公使》
2 《無限の抹消》

-サイドボード(15)-
hareruya



魂の略奪者異端の癒し手、リリアナエレボスのタイタン



 《ズーラポートの殺し屋》《ナントゥーコの鞘虫》を軸としたデッキは、【プロツアー『戦乱のゼンディカー』】【青黒ハスク】を経て、最近では【4色ラリー】に収斂しつつあるが、しかし本来は生け贄シナジーの頂点に君臨するべき《異端の癒し手、リリアナ》が、《地下墓地の選別者》《不気味な腸卜師》といった豊富すぎる3マナ域の選択肢とマナベースの都合によりデッキからはじき出されてしまっているのを見ると、世の無常さを儚む気持ちがなきにしもあらずというか、何とも切ない気持ちに襲われそうになる。

 そんな思いを抱いている全国1億3千万人の《異端の癒し手、リリアナ》ファンのために紹介したいのがこちら、何とこのフェッチ+バトラン時代においてまさかの黒単と、大変潔いデッキとなっている。

 気になる黒単のメリットだが、単色ならばダブルシンボルも気にせず《異端の癒し手、リリアナ》が運用できるという点はもちろん、《魂の略奪者》《エレボスのタイタン》という2大「《アスフォデルの灰色商人》先生!どこへ行ってしまったんですか」勢を積極的に採用できるという点は見逃せない。

 改めてリストを見直してみても、特に足りないパーツはこれといって見当たらない。《骨の粉砕》という最強除去も使えるし、サイドボードにはこれでもかと言わんばかりにハンデスを搭載している。黒単だからといって侮っていると、緊密なサクリファイス・シナジーであっという間にボコボコにされてしまうだろう。


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■ モダン: バント



Tomita Hayato「バント」
平日モダン14時の部 (3-0)

2 《森》
2 《平地》
1 《島》
2 《繁殖池》
2 《寺院の庭》
1 《神聖なる泉》
1 《聖なる鋳造所》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《吹きさらしの荒野》
1 《樹木茂る山麓》
1 《伐採地の滝》
1 《永岩城》
1 《ガヴォニーの居住区》

-土地(23)-

4 《貴族の教主》
3 《森の女人像》
1 《呪文滑り》
1 《クァーサルの群れ魔道士》
3 《捕食者のウーズ》
3 《聖トラフトの霊》
2 《最後のトロール、スラーン》

-クリーチャー(17)-
4 《流刑への道》
4 《差し戻し》
4 《きらめく願い》
3 《シミックの魔除け》
1 《戦争門》
1 《神格の鋼》
3 《崇拝》

-呪文(20)-
2 《石のような静寂》
2 《安らかなる眠り》
2 《血染めの月》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《聖トラフトの霊》
1 《鷺群れのシガルダ》
1 《至高の評決》
1 《引き裂く突風》
1 《太陽と月の輪》
1 《拘留の宝球》
1 《神格の鋼》
1 《ひるまぬ勇気》

-サイドボード(15)-
hareruya



聖トラフトの霊崇拝きらめく願い



 《トロールの苦行者》のような「呪禁」持ちのクリーチャーと《崇拝》を組み合わせた古典的な「絶対無敵最強コンボ」……と聞くと初心者っぽいと思われるかもしれないが、しかし少なくともモダンにおいては実際に最強のコンボとなる可能性がある。

 なんといっても先手《貴族の教主》からの《聖トラフトの霊》という動きはあらゆるデッキにとっての脅威となるし、そして何よりモダンは《崇拝》を出されたら即投了の「バーン」が幅を利かせている環境だからだ。

 コンセプトそのものが「バーン」に強いとなれば、あとは緑のデッキの弱点となりがちな様々なコンボデッキのケアだろう。このデッキではそれを《きらめく願い》によって実現している。相手がフェアデッキなら追加の《聖トラフトの霊》にもなるこのカードは、ときに《ガドック・ティーグ》を、ときに《太陽と月の輪》を、またあるときには《引き裂く突風》をサイドボードから引っ張ってきて勝利に貢献する。

 また《崇拝》コンボはモダンのもう1つの定番デッキ、《欠片の双子》コンボすらも封殺する。《謎めいた命令》があると思うかもしれないが、安易なバウンスは《シミックの魔除け》が許さない。単純に見えて意外と隙がないこの《崇拝》コンボは、メタゲーム次第では最強の選択肢となりうることだろう。


【「バント」でデッキを検索】





■ レガシー: バント



Ikegami Akira「バント」
平日レガシー17時の部 (3-0)

1 《森》
3 《Tropical Island》
2 《Tundra》
2 《Bayou》
1 《Savannah》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《霧深い雨林》
1 《地平線の梢》
1 《Karakas》
2 《不毛の大地》
1 《Maze of Ith》

-土地(22)-

4 《貴族の教主》
3 《死儀礼のシャーマン》
4 《聖遺の騎士》
4 《真の名の宿敵》

-クリーチャー(15)-
4 《渦まく知識》
4 《剣を鍬に》
3 《目くらまし》
2 《ハルマゲドン》
4 《Force of Will》
3 《珊瑚兜への撤退》
1 《師範の占い独楽》
2 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(23)-
2 《封じ込める僧侶》
2 《被覆》
2 《クローサの掌握》
2 《仕組まれた爆薬》
1 《スレイベンの守護者、サリア》
1 《漁る軟泥》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《ハルマゲドン》
1 《無のロッド》
1 《ボジューカの沼》
1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》

-サイドボード(15)-
hareruya



真の名の宿敵珊瑚兜への撤退ハルマゲドン



 最近マジックを始めたプレイヤーが「え、ホントにこのカードスタンダードで使えたの!?」と驚きそうなカードランキングでも上位に位置するであろう、たくさんのプレイヤーの青春の一枚と思われる《ハルマゲドン》だが、現在ではレガシー以下でしか使えないため、これほど破天荒な効果のカードでも最近では【デス&タックス】のサイドボードくらいでしか使われていなかった。

 そんな《ハルマゲドン》を大胆にもメインから2枚も搭載したこのデッキは、《聖遺の騎士》《珊瑚兜への撤退》のコンボによる3ターンキルも視野に入れつつ、「2ターン目《真の名の宿敵》」によってフェアデッキに対して有無を言わさずマウントが取れる点が魅力となっている。

 《終末》を擁する「奇跡」にも、《ハルマゲドン》さえ通せれば問題はない。というか多分あらゆるデッキに対して《ハルマゲドン》「打てたら大体勝ち」なのである。土地が全部吹き飛んで平気な顔をしていられるデッキは、いかにレガシーといえど少ないに決まっているのだ。

 また《珊瑚兜への撤退》《聖遺の騎士》がなくても、《真の名の宿敵》をアタックに向かわせつつブロッカーとして構えやすくなるし、《渦まく知識》《師範の占い独楽》と組み合わせて強力なドロー操作としても機能するため、《ハルマゲドン》後のリカバリーも容易になる。ちまちま《不毛の大地》するのに飽きたなら、いっそのこと全部一度に破壊してしまった方が気分もスッキリするかもしれない。


【「バント」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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