マジックの華は、デッキリストだ。
そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。
だから、デッキリストを見るということは。
そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。
この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。
もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。
それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。
■ スタンダード: ローグ
2 《森》 2 《島》 1 《平地》 1 《沼》 4 《汚染された三角州》 3 《血染めのぬかるみ》 3 《溢れかえる岸辺》 2 《吹きさらしの荒野》 1 《梢の眺望》 1 《燃えがらの林間地》 1 《大草原の川》 1 《燻る湿地》 1 《窪み渓谷》 2 《伐採地の滝》 -土地(25)- 4 《荒野の囁く者》 4 《爪鳴らしの神秘家》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 1 《葉光らせ》 2 《放浪する森林》 2 《血の暴君、シディシ》 4 《龍王オジュタイ》 1 《ムラーサの緑守り》 -クリーチャー(22)- |
4 《残忍な切断》 4 《水の帳の分離》 1 《時間への侵入》 4 《深海の主、キオーラ》 -呪文(13)- |
4 《アラシンの僧侶》 3 《否認》 3 《影響力の行使》 3 《見えざるものの熟達》 2 《軽蔑的な一撃》 -サイドボード(15)- |
デッキを構築するときに大事なのは、「シナジーのライン」を見出せるかどうかだ。かの有名な「Caw-Blade」のコアパーツだった《戦隊の鷹》《石鍛冶の神秘家》《精神を刻む者、ジェイス》の3種で言えば、《戦隊の鷹》が《石鍛冶の神秘家》の装備品の装備先を何度も供給するし、《精神を刻む者、ジェイス》の「±0」能力と《戦隊の鷹》《石鍛冶の神秘家》とはどちらもライブラリをシャッフルできるので相性が良い、という相互補完の関係にあった。ここでは「シナジーのライン」とはそうした相互補完性を持つカードの連なりを指す。
そして《水の帳の分離》というカードについて考えたとき、このカードは単体でも【vol.43】で紹介したようなランプのフィニッシャーとしても機能するが、よりシナジーを追求するならば、やはりクリーチャーと組み合わせて攻撃回数も増やした方が望ましいだろうということに気付く。そこで最高の相棒として思い浮かぶのが《龍王オジュタイ》というわけだ。攻撃が通ると《予期》が擬似的に打てるこのカードは、攻撃してしまうと隙だらけになってしまうのが難点だったが、攻撃の都度《水の帳の分離》を探しだして全く相手にターンを渡すことなく殴り続けることができれば、一撃20点も夢ではない。
さらに隙を作らないという意味では《深海の主、キオーラ》の「+1」能力もまた同様だ。攻撃した後でも、第2メインで《龍王オジュタイ》を起こしてしまえば「呪禁」のままターンを返すことができる。さらに「-2」能力は《龍王オジュタイ》を探し出しつつ《水の帳の分離》を墓地に落とすことも可能なところ、それを墓地からプレイするのは《ヴリンの神童、ジェイス》の役目だ。プレインズウォーカーと《時間のねじれ》系カードとの相性の良さは今更語るまでもないだろう。
《ヴリンの神童、ジェイス》《深海の主、キオーラ》《龍王オジュタイ》《水の帳の分離》……『タルキール覇王譚』も『運命再編』も絡まないこの4種の神話レア同士の「シナジーのライン」=相互補完性をいち早く取り入れたという点で、このデッキはこれから先のスタンダード環境を攻略する切り札となるかもしれない。
【「ローグ」でデッキを検索】
■ モダン: ローグ
2 《島》 1 《山》 1 《沼》 1 《血の墓所》 1 《蒸気孔》 1 《湿った墓》 4 《汚染された三角州》 4 《沸騰する小湖》 4 《黒割れの崖》 2 《闇滑りの岸》 -土地(21)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 3 《瞬唱の魔道士》 4 《幽霊議員オブゼダート》 -クリーチャー(11)- |
4 《稲妻》 4 《コジレックの審問》 4 《血清の幻視》 3 《信仰無き物あさり》 1 《思考掃き》 4 《御霊の復讐》 3 《終止》 2 《イゼットの魔除け》 1 《マナ漏出》 2 《コラガンの命令》 -呪文(28)- |
3 《大爆発の魔道士》 3 《苦花》 2 《汚損破》 1 《イゼットの静電術師》 1 《殺戮の契約》 1 《払拭》 1 《対抗突風》 1 《隆盛+下落》 1 《飢えへの貢ぎ物》 1 《塵への崩壊》 -サイドボード(15)- |
モダンのグリクシスコントロールは最近では《ピア・ナラーとキラン・ナラー》を搭載し、GBx系のデッキに対してより裏目がない構築をとるのが主流だが、捌きに特化したコンセプト過ぎていまいち勝ちきれない印象はどうしても拭いきれなかった。そこでこのデッキは発想を転換し、見た目は従来のグリクシスコントロールのような形をとりつつも、強烈なフィニッシュ手段を搭載した「双子」類似のコンセプトへと大胆な変身をとげさせている。
そんな変革を可能にしたのが《御霊の復讐》と《幽霊議員オブゼダート》で、通常《御霊の復讐》で釣り上げたクリーチャーはターン終了時に追放領域へと行くが、この際に先に《幽霊議員オブゼダート》の能力で追放領域へと逃がしてしまえば、また次のアップキープに《幽霊議員オブゼダート》が通常通り場に戻ってくる (そして別のオブジェクトなので《御霊の復讐》の能力ではもはや追放されない) という裏技チックなコンボとなっている。
これと同じことが《ヴリンの神童、ジェイス》と《御霊の復讐》でも可能で、墓地の《ヴリンの神童、ジェイス》を釣って変身させるとプレインズウォーカーとして場に残り続けるので、このデッキの《御霊の復讐》はほぼインスタントの《再活性》となる。
キルターンやフィニッシュの確実性という点については「双子」コンボには及ばないものの、実質1枚コンボとすら言える《御霊の復讐》の2マナという軽さからくる奇襲性と《ヴリンの神童、ジェイス》も釣れるという汎用性の高さは特筆に値する。《幽霊議員オブゼダート》を通常プレイするオプションさえ用意できれば、モダンのトップメタ入りも夢ではないだろう。
【「ローグ」でデッキを検索】
■ レガシー: スタックス
6 《沼》 4 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 4 《古えの墳墓》 4 《裏切り者の都》 4 《不毛の大地》 1 《ファイレクシアの塔》 -土地(23)- 4 《蛇術師》 3 《深淵の迫害者》 3 《陰謀団の先手ブレイズ》 -クリーチャー(10)- |
2 《骨読み》 2 《毒の濁流》 4 《苦花》 3 《汚染》 4 《虚空の杯》 4 《金属モックス》 1 《梅澤の十手》 3 《三なる宝球》 1 《光と影の剣》 3 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(27)- |
4 《虚空の力線》 4 《Helm of Obedience》 3 《罠の橋》 2 《暗黒への突入》 1 《虐殺》 1 《仕組まれた疫病》 -サイドボード(15)- |
「スタックス」というデッキは「対戦相手の行動制限」を主眼に置くが、その制限の程度については、「対戦相手のパーマネントを残したまま制限をする」のか「対戦相手のパーマネントを削って制限をする」のかで大分違ってくる。そしてこのデッキはどちらかといえば後者の側に近いデッキとなっている。
《苦花》《蛇術師》という8枚もの「パーマネント生成装置」を搭載する理由は《汚染》と《陰謀団の先手ブレイズ》にある。維持するための制約は厳しいものの《血染めの月》をも超えるマナ制限能力を持つ《汚染》で足を止めた後は、《陰謀団の先手ブレイズ》が真綿で締め上げるように対戦相手のパーマネントを削り取る。《汚染》環境下でも《不毛の大地》は起動できるし、そこに《ヴェールのリリアナ》まで加われば、「-6」で対戦相手の心を折るには十分だろう。
サイドボードの《虚空の力線》+《Helm of Obedience》コンボも、黒単だと《虚空の力線》の後引きも許容できるのが地味に嬉しい。
《渦まく知識》と《Force of Will》のセットがまるで前提のようになってしまっているようにも感じられるレガシー環境だが、そんな中でこういった全く独自のデッキで結果を残せるというのは、もちろんデッキ愛と努力の成せる業なのだろうが、単純にデッキビルダーとして尊敬に値すると私は思う。
【「スタックス」でデッキを検索】
いかがだっただろうか。
すべてのデッキリストには意思が込められている。
75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。
読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。
それでは皆さん、よいお年を!
【晴れる屋でデッキを検索する】
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