週刊デッキウォッチング vol.52 -エルドラージ無双 etc.-

伊藤 敦


(スマートフォンの方は【こちら】)


 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: エルドラージランプ



Miyaguni Musashi「エルドラージランプ」
平日スタンダード14時の部(3-0)

4 《精霊龍の安息地》
4 《精霊龍の墓》
4 《魔道士輪の魔力網》
4 《ウギンの聖域》
4 《見捨てられた神々の神殿》
3 《領事の鋳造所》
3 《繁殖苗床》

-土地(26)-

4 《面晶体の這行器》
4 《忘却蒔き》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《大いなる歪み、コジレック》

-クリーチャー(10)-
4 《歪める嘆き》
4 《オジュタイの碑》
4 《予見者のランタン》
4 《面晶体の記録庫》
4 《隕石》
4 《精霊龍、ウギン》

-呪文(24)-
4 《搭載歩行機械》
4 《難題の予見者》
4 《次元の歪曲》
2 《魔道士輪の対応者》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-サイドボード(15)-
hareruya



面晶体の這行器歪める嘆き精霊龍、ウギン



 『ゲートウォッチの誓い』は「マナが無色であること」に価値を与えた革命的なエキスパンションと言える。なぜなら無色マナを出すことが有色マナを出すことに対して相対的に劣っていないというのならば、有色マナの出る土地をわざわざ使う理由がなくなるからだ。無色マナしか出ない土地は、無色マナしか出ない反面かなり強力な能力を持つものが多い。そして『ゲートウォッチの誓い』のおかげで、そんな無色マナしか出ない土地「だけ」を集めたデッキすら組むことが可能となった。

 そんないわば「無色単」に分類されるデッキの中でも「無色ビート」ではなくどちらかといえば「無色ランプ」と呼ぶべきこのデッキは、《爪鳴らしの神秘家》の代わりに《面晶体の這行器》を、《ニッサの巡礼》の代わりに《予見者のランタン》を採用しており、マナブーストするのに緑マナは別に必要ないということを証明してくれた。《隕石》は珍しいチョイスだが、牽制とマナブーストを両方兼ねつつ、《オジュタイの碑》の起動マナにも充てられるいぶし銀の役割を果たしそうだ。

 また、「無色単」の土地の中でも特に強力なのが《精霊龍の墓》で、一見クリーチャーが少なそうなこのデッキにおいても《繁殖苗床》さえ起動できれば、ビッグアクションまでの貴重な数ターンを稼いでくれることだろう。

 だが私もこの手のデッキが好きだからわかるのだが、このデッキの最大の強みはそういった個々のカードの効果やデッキの構造ではなく、何よりも「回していてセットランドが楽しい」ことにある。自分の動きを全く阻害しないアンタップインランドにバリエーション豊かなメリット能力が付いているなど、普通のデッキではありえない。ぜひ一度回してみて、その楽しさを実感してみて欲しい。


【「エルドラージランプ」でデッキを検索】





■ モダン: エルドラージ



Yamamoto Yoshiaki「エルドラージ」
平日モダン20時の部(3-0)

1 《沼》
1 《荒地》
4 《硫黄泉》
3 《魂の洞窟》
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
4 《エルドラージの寺院》
3 《幽霊街》
4 《ウギンの目》

-土地(23)-

4 《果てしなきもの》
4 《エルドラージのミミック》
4 《作り変えるもの》
4 《コジレックの叫び手》
2 《エルドラージの寸借者》
4 《頭蓋ふるい》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》

-クリーチャー(30)-
1 《殺戮の契約》
2 《四肢切断》
4 《幽霊火の刃》

-呪文(7)-
3 《虚空の杯》
3 《大祖始の遺産》
2 《思考囲い》
2 《喉首狙い》
2 《記憶殺し》
2 《仕組まれた爆薬》
1 《幽霊街》

-サイドボード(15)-
hareruya



エルドラージのミミックコジレックの叫び手頭蓋ふるい



 来週末モダンフォーマットで開催される【プロツアー『ゲートウォッチの誓い』】の見どころの一つといえば、「プロが持ち込んでくるであろう、【黒単エルドラージ】の完成形とはどのようなレシピになるのか?」であろう。《難題の予見者》をはじめとして、『ゲートウォッチの誓い』で最も強化されたアーキタイプであることは疑いようがないからだ。

 だが冷静に考えると何もプロツアーの結果を待つ必要はない。もしプロツアーより前に、自分たちの力でその「完成形」を作り上げることができれば、「わからん殺し」で勝ちまくることも可能となる。

 その点このデッキの「わからん殺し」感は凄まじい。【晴れるーむ合宿『ゲートウォッチの誓い』】【プロたちが注目】していた《エルドラージのミミック》を採用したビート型エルドラージというのみにとどまらず、《コジレックの叫び手》《頭蓋ふるい》といったあまり注目されていないカードに着目し、それらを《幽霊火の刃》でバックアップしている。

 《コジレックの叫び手》《エルドラージの寺院》でパンプできることもあり単体でも強力そうなほか、《エルドラージのミミック》の誘発能力の解決前にパンプすると、《エルドラージのミミック》が大きくなるというプチコンボもある。

 また、《エルドラージの寸借者》でクリーチャーを奪われることなどモダンのプレイヤーは想像もしていないだろう。プロツアーを前に、我々は既に「完成形」を目にしているのかもしれない。


【「エルドラージ」でデッキを検索】





■ レガシー: 茶単



Yamakabe Shun「茶単」
平日レガシー20時の部(3-0)

4 《魂の洞窟》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
4 《エルドラージの寺院》
4 《古えの墳墓》
4 《裏切り者の都》
4 《不毛の大地》
2 《ミシュラの工廠》

-土地(23)-

4 《磁石のゴーレム》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》
3 《ワームとぐろエンジン》
2 《鋼のヘルカイト》
1 《終末を招くもの》
1 《隔離するタイタン》

-クリーチャー(19)-
4 《歪める嘆き》
4 《虚空の杯》
4 《厳かなモノリス》
3 《稲妻のすね当て》
2 《スランの発電機》
1 《殴打頭蓋》

-呪文(18)-
3 《三なる宝球》
2 《ファイレクシアの破棄者》
2 《トーモッドの墓所》
2 《罠の橋》
2 《精霊龍、ウギン》
1 《ファイレクシアの変形者》
1 《漸増爆弾》
1 《世界のるつぼ》
1 《イシュ・サーの背骨》

-サイドボード(15)-
hareruya



難題の予見者現実を砕くもの虚空の杯



 《難題の予見者》をはじめとした『ゲートウォッチの誓い』のエルドラージたちは、モダンにとどまらずレガシーにまでその勢力を広げている。レガシーなら《エルドラージの寺院》のほかにも《古えの墳墓》《裏切り者の都》といった強力な2マナ土地が存在するからだ。

 またレガシーにおける《歪める嘆き》の強さは今更語るまでもないだろう。クリーチャーなら《死儀礼のシャーマン》《ルーンの母》《若き紅蓮術士》《ワイアウッドの共生虫》など、ソーサリーなら《冥府の教示者》《実物提示教育》《垣間見る自然》《終末》etc. と対象には困らない。

 《終末を招くもの》《エルドラージの寺院》の分だけキャストしやすくなった《ニンの杖》として手札の補充要員兼フィニッシャーとして貢献してくれるだろう。

 《虚空の杯》《剣を鍬に》さえ封じてしまえばもはや怖いものはない。これからはレガシーでもエルドラージの姿を見かける機会が増えそうだ。


【「茶単」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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