マジックの華は、デッキリストだ。
そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。
だから、デッキリストを見るということは。
そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。
この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。
もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。
それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。
■ スタンダード: ローグ
13 《島》 1 《沼》 4 《進化する未開地》 4 《詰まった河口》 4 《窪み渓谷》 -土地 (26)- 3 《ヴリンの神童、ジェイス》 3 《氷瀑の執政》 4 《龍王シルムガル》 -クリーチャー (10)- |
4 《意思の激突》 3 《本質の変転》 2 《溺墓での天啓》 4 《シルムガルの嘲笑》 4 《忌呪の発動》 3 《岸の飲み込み》 2 《シルムガルの命令》 2 《秘密の解明者、ジェイス》 -呪文 (24)- |
4 《スフィンクスの後見》 3 《否認》 3 《究極の価格》 3 《強迫》 2 《破滅の道》 -サイドボード (15)- |
『イニストラードを覆う影』によって環境は白と緑に染まり、青や黒のコントロールを見ることはめっきり少なくなった。だが『タルキール龍紀伝』のドラゴンボーナス呪文、とりわけ八十岡 翔太に「《対抗呪文》より強いことがある」とまで言わしめた《シルムガルの嘲笑》は、いまだスタンダードに健在なのだ。ならば青黒にはまだ可能性が残されている。そんなメタゲームへのレジスタンス精神が随所に見て取れるのがこちらの青黒コントロールだ。
「このスタンダードはカードパワーとマナベースの妥協点をどう見つけるか」という【八十岡の言葉】に忠実に従い、潔く13枚もの《島》を搭載して序盤のスペルを《意思の激突》と《シルムガルの嘲笑》に絞っているこのデッキは、通常のコントロールなら《衰滅》《次元の激高》といった全体除去が収まるべきスロットに《岸の飲み込み》を採用するという異次元の発想を見せつけてくれている。
バウンスでは根本的な解決にならないのではないかと思うかもしれないが、どんなダメージレースも《龍王シルムガル》さえ生きていれば切り抜けることができる。そう、このデッキは《龍王シルムガル》というカードが持つポテンシャルへの圧倒的な信頼のもとに成り立っているのだ。
《本質の変転》は《龍王シルムガル》を守るのに最適だし、奪ったカードが墓地に落ちたら《秘密の解明者、ジェイス》や《シルムガルの命令》で回収して再召喚すればいい。とことんまで《龍王シルムガル》を使い尽くし、そして勝利するこのデッキは、《龍王シルムガル》への愛なくしては作れないであろう見事な一作だ。
【「青黒コントロール」でデッキを検索】
■ モダン: 多色ビートダウン
1 《森》 1 《島》 1 《平地》 1 《沼》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《吹きさらしの荒野》 3 《汚染された三角州》 1 《梢の眺望》 1 《神聖なる泉》 1 《窪み渓谷》 1 《寺院の庭》 4 《魂の洞窟》 1 《ガヴォニーの居住区》 -土地 (24)- 4 《教区の勇者》 4 《貴族の教主》 4 《カルテルの貴種》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《サリアの副官》 4 《ズーラポートの殺し屋》 4 《反射魔道士》 -クリーチャー (28)- |
4 《先祖の結集》 4 《集合した中隊》 -呪文 (8)- |
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 3 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 3 《石の宣告》 2 《アヴァシンの巡礼者》 1 《変異原性の成長》 1 《四肢切断》 1 《強迫》 -サイドボード (15)- |
【第7期モダン神挑戦者決定戦】では【白緑人間】と【白単人間】という2つの《サリアの副官》デッキが注目を浴び、さらにトップ8には【4色人間カンパニー】というこれまた《サリアの副官》デッキが勝ち上がり、注目を浴びた。
もはや《サリアの副官》のカードパワーがモダン級であることは疑う余地がない。しかし、ならばどのような形の人間デッキが最良なのだろうか?そんな議論にさらに一石を投じる形の人間デッキがこの度登場した。4色、しかし《カマキリの乗り手》ではなく黒をタッチした《先祖の結集》人間だ。
《集合した中隊》《ナントゥーコの鞘虫》《反射魔道士》《ヴリンの神童、ジェイス》《ズーラポートの殺し屋》《先祖の結集》の組み合わせは旧スタンダードを席巻した。そしてこのうち《ナントゥーコの鞘虫》以外は「人間」なので、《ナントゥーコの鞘虫》を《カルテルの貴種》に差し替えるだけであら不思議、全く同じコンセプトのデッキがモダンでできあがるのである。製作者の発想に脱帽というほかない。
《教区の勇者》《サリアの副官》によるビートダウンのラインと、《カルテルの貴種》《ズーラポートの殺し屋》によるコンボのライン。この2つが《ヴリンの神童、ジェイス》《集合した中隊》を軸に混然一体となり、相手の対応に合わせてより良いラインを選択できる。ハイブリッドデッキでありながらレシピの美しさとコンセプトの強靭さを併せ持つ、見事な完成度のデッキだ。
【「多色ビートダウン」でデッキを検索】
■ レガシー: ハイタイド
12 《島》 3 《溢れかえる岸辺》 3 《汚染された三角州》 -土地 (18)- -クリーチャー (0)- |
4 《渦まく知識》 4 《狼狽の嵐》 4 《High Tide》 3 《狡猾な願い》 1 《直観》 3 《転換》 4 《意志の力》 4 《思案》 4 《定業》 4 《商人の巻物》 4 《時のらせん》 3 《Candelabra of Tawnos》 -呪文 (42)- |
4 《氷の中の存在》 1 《外科的摘出》 1 《否定の契約》 1 《白鳥の歌》 1 《思考停止》 1 《ハーキルの召還術》 1 《断絶》 1 《瞑想》 1 《拭い捨て》 1 《青の太陽の頂点》 1 《転換》 1 《墓掘りの檻》 -サイドボード (15)- |
デッキウォッチングでは初の登場となる(と思われる)「High Tide」。その名のとおり《High Tide》を軸にしたコンボデッキだが、特にメインボードはレシピがほとんど固定のため、なかなか紹介する機会がなかった。しかし最近ではサイドボードに強力な新兵器を搭載し、レガシーのマイナーコンボデッキの座からの脱却を虎視眈々と狙っているようだ。
その新兵器とは《氷の中の存在》。スペル単ゆえに意外性はないが、実際に対峙したときのサイドボーディングを想像すると、《剣を鍬に》をサイド後に残すのか、《突然の衰微》は、といった駆け引きが生まれ、かなりやりづらくなるであろうことは想像に難くない。
またメインで《意志の力》だけでなく《狼狽の嵐》をもフル投入し、安定性を犠牲にしてでもチェインコンボの完遂に主眼を置くようになっているのにも注目だ。
《Candelabra of Tawnos》というマニアックかつ入手難度の高いカードを搭載していることもあり、自分で組んだり対戦したりすることはおそらく少ないであろうアーキタイプではあるが、いざ当たったとき、どんなカードが入っているのか知らないようでは「わからん殺し」の餌食にされてしまう。最新のレシピをチェックしておいて損はないだろう。
【「ハイタイド」でデッキを検索】
いかがだっただろうか。
すべてのデッキリストには意思が込められている。
75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。
読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。
また来週!
【晴れる屋でデッキを検索する】
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