マジックの華は、デッキリストだ。
そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。
だから、デッキリストを見るということは。
そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。
この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。
もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。
それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。
■ スタンダード: ローグ
4 《森》 2 《沼》 1 《平地》 2 《梢の眺望》 2 《燻る湿地》 1 《燃えがらの林間地》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《樹木茂る山麓》 2 《血染めのぬかるみ》 4 《乱脈な気孔》 1 《風切る泥沼》 1 《ラノワールの荒原》 2 《海門の残骸》 1 《領事の鋳造所》 1 《荒廃した森林》 -土地(32)- 3 《森の代言者》 4 《包囲サイ》 3 《野生生まれのミーナとデーン》 2 《忘却蒔き》 1 《龍王アタルカ》 -クリーチャー(13)- |
4 《精霊信者の覚醒》 3 《衰滅》 4 《ハグラへの撤退》 1 《カザンドゥへの撤退》 3 《エメリアへの撤退》 -呪文(15)- |
4 《無限の抹消》 2 《精神背信》 2 《鞭打つ触手》 2 《次元の激高》 1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《龍王アタルカ》 1 《強迫》 1 《究極の価格》 1 《残忍な切断》 -サイドボード(15)- |
『マジック・オリジン』の発売当初から「何かをしそうなカード」として注目され、【ちょっと珍しいスタンダードのデッキたち】でデッキを紹介したこともある《精霊信者の覚醒》が、ついに頭角を現した。
レガシーの【土地単】の場合は34枚程度の土地が入るのが通常だが、このデッキも負けず劣らずたっぷり32枚もの土地を搭載し、《森の代言者》や《ハグラへの撤退》《カザンドゥへの撤退》《エメリアへの撤退》という3種の「撤退」のパワーを最大限高めている。
スタンダードの《踏査》こと《野生生まれのミーナとデーン》は有り余る土地を並べる手助けをするだけでなく、土地を手札に戻せるので各種「撤退」との相性も良い。また、フェッチランドと「撤退」との相性の良さについては説明するまでもないだろう。
複数枚の《ハグラへの撤退》からの全力《精霊信者の覚醒》はそれだけでも致死量のドレインに達しうるし、《ハグラへの撤退》で《包囲サイ》や《野生生まれのミーナとデーン》の能力を起動したクリーチャーに接死を持たせることで、「接死+トランプル」でダメージ効率を高めるギミックもある。スタンダードでもコンボデッキのような動きを追求したいという方は、このデッキを試してみると良いかもしれない。
【「ローグ」でデッキを検索】
■ モダン: ローグ
2 《島》 1 《平地》 1 《沼》 3 《神聖なる泉》 1 《神無き祭殿》 1 《湿った墓》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 3 《湿地の干潟》 1 《雲の宮殿、朧宮》 -土地(21)- 4 《面晶体のカニ》 4 《シディシの信者》 3 《臓物の予見者》 1 《溺れたルサルカ》 4 《バザールの大魔術師》 4 《血の芸術家》 3 《恐血鬼》 2 《ズーラポートの殺し屋》 2 《ヴリンの神童、ジェイス》 1 《血の座の吸血鬼》 -クリーチャー(28)- |
4 《先祖の結集》 3 《留まらぬ発想》 4 《黄泉からの橋》 -呪文(11)- |
4 《潮の虚ろの漕ぎ手》 3 《孤独な宣教師》 2 《呪文滑り》 2 《フェアリーの忌み者》 2 《暗黒破》 1 《フェリダーの仔》 1 《ロノムの一角獣》 -サイドボード(15)- |
スタンダードにおいて《先祖の結集》というカードが猛威を振るっていることからも、そのカードパワーは折り紙付きだ。ならばモダンにおいても活躍する余地がある、と考えるプレイヤーがいてもおかしくはない。
このデッキはJamie Blanchetteというプレイヤーのデッキをその友人である【Pascal Maynardが紹介】したことで有名になった。基本的なコンセプトとしては、《面晶体のカニ》や《バザールの大魔術師》などで2マナ以下のクリーチャーを墓地に大量に落とし、そのあとで「X=2」の《先祖の結集》を打つことで、《臓物の予見者》《血の座の吸血鬼》といった「サクリ台」が1体と、《血の芸術家》《ズーラポートの殺し屋》という「ドレイン要員」数体を含んだ10体程度のクリーチャーが戦場に舞い戻り、あとはスタンダードの《先祖の結集》デッキと同様クリーチャーを生け贄に捧げまくってドレイン祭りが開催、ついでに《黄泉からの橋》が1~2枚落ちていればなお安心、といった構造となっている。
ほぼ必ず4マナが必要なので概ね最速4キルとモダンにしては大人しい速度のコンボデッキとなっているが、《シディシの信者》が2マナ以下のクリーチャーでありながら《送還》として防御も兼ねるいぶし銀の役割を果たすほか、《臓物の予見者》の占術が《先祖の結集》を探すのにも役に立つ。
スタンダードの倍以上の速度で溜まる墓地から全てのクリーチャーが結集する様は回していてとにかく爽快の一言に尽きる。《バザールの大魔術師》と《黄泉からの橋》が使いたいという人にはオススメのデッキだ。
【「ローグ」でデッキを検索】
■ レガシー: チームアメリカ
3 《Underground Sea》 1 《Bayou》 1 《Scrubland》 1 《Tropical Island》 4 《汚染された三角州》 4 《新緑の地下墓地》 2 《霧深い雨林》 3 《不毛の大地》 -土地(19)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《タルモゴイフ》 2 《墓忍び》 -クリーチャー(10)- |
4 《渦まく知識》 4 《暗黒の儀式》 3 《思案》 3 《思考囲い》 3 《もみ消し》 4 《Hymn to Tourach》 3 《突然の衰微》 2 《寄付》 1 《未練ある魂》 4 《悪魔の契約》 -呪文(31)- |
3 《冒涜の悪魔》 2 《封じ込める僧侶》 2 《被覆》 2 《毒の濁流》 2 《無のロッド》 1 《方向転換》 1 《未練ある魂》 1 《墓掘りの檻》 1 《情け知らずのガラク》 -サイドボード(15)- |
かつて【トリックス】という、《Illusions of Grandeur》と《寄付》のコンボデッキがあった。そのコンボ自体はレガシーでも使用可能だが、《Illusions of Grandeur》の「累加アップキープ」が重いので貼り得なカードとはいえず、単体で使いづらいのが難点となっていた。
そこでこのデッキは《Illusions of Grandeur》と同様に敗北のリスクと引き換えに多大なメリットを得られるカード、《悪魔の契約》を代わりに使うことで、よりスマートなコンボの実現を可能にしている。何せ《渦まく知識》や《思案》に加えて《悪魔の契約》自身によってカードを引き増せるのだから、コンボの相方となる《もみ消し》や《寄付》にたどり着くことは造作もない。
また《悪魔の契約》は《暗黒の儀式》から2ターン目に設置するルートもあり、《Hymn to Tourach》と合わせて相手の手札をズタズタにすることも可能となっている。実は《寄付》自体も2枚しか入っておらず、コンボに固執するというよりもチームアメリカ本来のコンセプトに合わせて《悪魔の契約》を手札破壊/ドロー/除去の3点を兼ね備えた単純なパワーカードとして扱っている点で、このデッキがレガシーにもたらした功績は計り知れない。それはつまり、《悪魔の契約》が単体でレガシーレベルのカードであることを証明したということに他ならないからだ。
どのような発想も、実際に試してみる価値はある。デッキビルダーに必要なのは、何事も恐れず実行してみる勇気なのだ。
【「チームアメリカ」でデッキを検索】
いかがだっただろうか。
すべてのデッキリストには意思が込められている。
75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。
読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。
また来週!
【晴れる屋でデッキを検索する】
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