マジックの華は、デッキリストだ。
そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。
だから、デッキリストを見るということは。
そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。
この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。
もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。
それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。
■ スタンダード: ローグ
8 《沼》 4 《島》 4 《窪み渓谷》 2 《進化する未開地》 4 《詰まった河口》 4 《精霊龍の安息地》 -土地 (26)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《精神壊しの悪魔》 1 《アンデッドの大臣、シディシ》 2 《龍王ドロモカ》 2 《龍王コラガン》 4 《龍王アタルカ》 -クリーチャー (17)- |
2 《闇の掌握》 3 《衰滅》 3 《屍術的召喚》 3 《末永く》 2 《悪意の調合》 4 《ジェイスの誓い》 -呪文 (17)- |
3 《強迫》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 2 《知恵の拝借》 2 《鞭打つ触手》 1 《龍王シルムガル》 1 《否認》 1 《過去に学ぶ》 1 《荒廃の一掴み》 1 《悪性の疫病》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード (15)- |
【The Last Sun】の前身とも言えるThe Finals、その07年大会で【先週のPPTQで優勝した藤田 修】が当時使用し、そして優勝を収めた【青黒リアニメイト】といえば、シンプルな構成でありながら非常に強力かつ安定したムーブのデッキとして当時の話題をさらったデッキだった。
その安定性の秘密は、同じ役割のカードを重ねて入れることにある。そしてこのデッキも同様の思想をもとに構築されていることは明らかだ。釣り上げたいクリーチャーとして《龍王ドロモカ》、《龍王コラガン》、《龍王アタルカ》。釣り上げたいクリーチャーを墓地に落とすカードとして《ヴリンの神童、ジェイス》、《ジェイスの誓い》、そしてニューフェイス・《精神壊しの悪魔》と《悪意の調合》。さらに釣り上げる呪文として《屍術的召喚》と《末永く》を採用し、引きムラを極力減らすことに注力している。
《末永く》といえば、《龍王コラガン》と《龍王アタルカ》を一度に釣り上げれば、そのターンにまず14点アタックが入り、次のターンはどちらか一方が除去されたとしても20点に達するという美しい噛み合いも存在する。
プランはリアニメイト一本と思わせておいて、《精霊龍の安息地》を重ね引くことで《龍王ドロモカ》や《龍王アタルカ》を素でプレイすることも可能となる。墓地対策などサイドからでも飛んでくることの方が珍しい現在の環境においては、今こそリアニメイトを使うべきなのかもしれない。
【「ローグ」でデッキを検索】
■ モダン: 青赤昇天
3 《島》 1 《山》 2 《聖なる鋳造所》 1 《蒸気孔》 1 《神聖なる泉》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 1 《汚染された三角州》 1 《硫黄の滝》 -土地 (18)- 4 《氷の中の存在》 -クリーチャー (4)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《血清の幻視》 4 《思考掃き》 4 《彼方の映像》 4 《稲妻》 3 《信仰無き物あさり》 4 《魔力変》 4 《稲妻のらせん》 3 《差し戻し》 4 《紅蓮術士の昇天》 -呪文 (38)- |
3 《疲弊の休息》 2 《白鳥の歌》 2 《流刑への道》 2 《広がりゆく海》 2 《石のような静寂》 2 《血染めの月》 1 《僧院の導師》 1 《仕組まれた爆薬》 -サイドボード (15)- |
【モダン神やヴィンテージ神が注目する】など発売前から「下の環境で活躍する」と注目を浴び、いざ『イニストラードを覆う影』が発売となるやいなや既に【グリクシスコントロール】などのデッキにおいてそのポテンシャルを開花させつつある《氷の中の存在》だが、このカードが真価を発揮するのは、やはり0マナキャントリップと組み合わせたときであろう。
「インスタントかソーサリー」という縛りがあるとしても、モダンならば《ギタクシア派の調査》と《魔力変》という2大 (実質) タダキャントリップ呪文が存在する。ということは最序盤、カウンター4個からでも一瞬にして氷が溶ける可能性もあるということであり、自分のスペルを《差し戻し》する小技でカウンターを減らしにいくシチュエーションも十分想像できそうだ。
さらに《氷の中の存在》の氷が溶けそうだからといって《突然の衰微》を使ってしまうと今度は《紅蓮術士の昇天》が生きる。かといって《大祖始の遺産》などをサイドインしようにも、《氷の中の存在》にはそれらは全く効かないのだ。
これまで《紅蓮術士の昇天》デッキはそれのみに対処を集中することで容易く破られてしまう脆さを抱えていたが、単体で勝てるカードパワーがありつつも《紅蓮術士の昇天》と互いに弱点を補完しあう《氷の中の存在》というカードが登場したことによって、隙のない一線級のデッキへと進化を遂げた可能性がある。これから要注目のデッキタイプと言えるだろう。
【「青赤昇天」でデッキを検索】
■ レガシー: エルドラージ
4 《地底の大河》 4 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 4 《古えの墳墓》 4 《エルドラージの寺院》 4 《裏切り者の都》 4 《ウギンの目》 -土地 (24)- 4 《難題の予見者》 4 《現実を砕くもの》 4 《忘却蒔き》 4 《破滅の伝導者》 4 《真実の解体者、コジレック》 4 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー (24)- |
4 《心なき召喚》 4 《類似の金床》 4 《ウルザの保育器》 -呪文 (12)- |
4 《虚空の力線》 4 《虚空の杯》 4 《アメジストのとげ》 3 《漸増爆弾》 -サイドボード (15)- |
《真実の解体者、コジレック》4枚、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》4枚。
もしかしてこのデッキはマナを必要としない全く別のカードゲームのデッキなのだろうか?あるいは《実物提示教育》と《Eureka》でも使うのか?
否、さにあらず。ちゃんとレガシーで真っ当に10マナの呪文を手札からプレイするデッキなのだ。
コンセプトの鍵は《心なき召喚》にある。クリーチャーのコストを2マナ軽くするこのカードは、引かないときにデカブツが手札にどうしようもなく溜まるという弱点を抱えていたが、ならば8枚、いやいっそのこと12枚入れてしまえばいいのである。そう、《類似の金床》と《ウルザの保育器》の出番だ。
統率者戦でもやっていなければなかなか存在を知ることはないであろうこれらのカードは、《心なき召喚》と同様にエルドラージ・クリーチャー呪文のコストを2マナずつ軽くしていく。さらに定番の《ウギンの目》《エルドラージの寺院》《古えの墳墓》《裏切り者の都》と合わせれば、2+2+2+2+2=You win! 最強に
デカブツを出して殴るだけという単純な構造ながらも、10マナと10マナのコラボレーションにより圧倒的な爽快感とともに忘れかけた童心を思い出させてくれるであろうこのデッキは、2016年のクレイジーデッキ大賞候補にノミネート間違いなしの傑作だ。
【「エルドラージ」でデッキを検索】
いかがだっただろうか。
すべてのデッキリストには意思が込められている。
75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。
読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。
また来週!
【晴れる屋でデッキを検索する】
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