マジックの華は、デッキリストだ。
そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。
だから、デッキリストを見るということは。
そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。
この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。
もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。
それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。
■ スタンダード: ローグ
8 《森》 8 《山》 4 《燃えがらの林間地》 4 《獲物道》 -土地 (24)- 4 《薄暮見の徴募兵》 4 《棲み家の防御者》 4 《激憤の巫師》 4 《罪を誘うもの》 4 《死霧の猛禽》 2 《黄金夜の懲罰者》 -クリーチャー (22)- |
3 《イトグモの蔦》 4 《アタルカの命令》 4 《極上の炎技》 1 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 2 《アーリン・コード》 -呪文 (14)- |
3 《引き裂く流弾》 3 《焙り焼き》 2 《アイノクの生き残り》 2 《翼切り》 2 《コジレックの帰還》 1 《自然のままに》 1 《溶岩の地割れ》 1 《反逆の行動》 -サイドボード (15)- |
【プロツアー『イニストラードを覆う影』】、そして【グランプリ・東京2016】の結果を見ればわかることだが、現在のスタンダードにおいて「赤」といえば《紅蓮術師のゴーグル》《ゴブリンの闇住まい》《炎呼び、チャンドラ》《先駆ける者、ナヒリ》くらいで、いずれもミッドレンジかコントロール向けのカードばかり。【プロツアー『タルキール龍紀伝』】【プロツアー『マジック・オリジン』】と連覇を果たした「赤ビートダウン」の系譜は、ここにきて完全に途切れてしまったようにも思える。
だが、まだ《アタルカの命令》も《極上の炎技》もスタンダードには存在しているし、何より『イニストラードを覆う影』にはいまだ活躍の機会を待つ神話レア、《アーリン・コード》《黄金夜の懲罰者》もいるのだ。ならば「赤ビートダウン」は死んでいない。きっと誰かが可能性を見出すときを虎視眈々と狙っている。そしてその可能性とは、この「赤緑ステロイド」かもしれないのだ。
このデッキの特徴は、《反射魔道士》によって価値が減衰しがちな1マナクリーチャーを大胆にカットし、中盤~終盤も機能するシステムクリーチャーで固めている点にある。《棲み家の防御者》《激憤の巫師》《死霧の猛禽》は「変異」を持つので《反射魔道士》を苦にしないし、《黄金夜の懲罰者》は速攻でダメージを当て逃げできる。
また、《激憤の巫師》《罪を誘うもの》の「威迫」をダブルブロックで止めにきたところで《イトグモの蔦》を合わせてあげれば1体2交換も容易い。赤緑というカラーリングが《反射魔道士》を乗り越えられるというならば、《アーリン・コード》の時代は、実はすぐそこまで来ているのかもしれない。
【「ローグ」でデッキを検索】
■ モダン: 黒緑死の雲
2 《森》 2 《沼》 1 《島》 2 《繁殖池》 2 《草むした墓》 1 《湿った墓》 3 《汚染された三角州》 2 《吹きさらしの荒野》 1 《樹木茂る山麓》 3 《樹上の村》 1 《忍び寄るタール坑》 2 《黄昏のぬかるみ》 2 《幽霊街》 -土地 (24)- 4 《桜族の長老》 1 《スラーグ牙》 2 《墓所のタイタン》 -クリーチャー (7)- |
4 《突然の衰微》 2 《死の雲》 1 《四肢切断》 1 《英雄の破滅》 3 《滅び》 1 《調和》 1 《残忍な切断》 4 《楽園の拡散》 3 《悪夢の織り手、アショク》 4 《野生語りのガラク》 2 《荒ぶる波濤、キオーラ》 1 《思考を築く者、ジェイス》 1 《リリアナ・ヴェス》 1 《ソリン・マルコフ》 -呪文 (29)- |
3 《強迫》 3 《自然の要求》 3 《否認》 2 《根絶》 2 《鞭打つ触手》 2 《墓掘りの檻》 -サイドボード (15)- |
「《死の雲》とプレインズウォーカーとの相性が良い」というのはよく知られていることであり、通常は《野生語りのガラク》が相方となることが多いが、たとえ色をタッチすることになったとしても、より軽いプレインズウォーカーとも組み合わせてみたいと思うのは自然な発想だろう。そういうわけでこのデッキは《悪夢の織り手、アショク》をタッチした《死の雲》、「アショクラウド」となっている。
高速化が進んだモダン環境では無防備な《悪夢の織り手、アショク》などすぐ落とされてしまうと思われるかもしれないが、そこはモダン環境最強のマナブーストの一角、《楽園の拡散》が降臨を早めるし、《桜族の長老》や《突然の衰微》による防御も地味ながら堅実にプレインズウォーカーを支える。普段は対処に頭を悩ませる《タルモゴイフ》も、《悪夢の織り手、アショク》の能力の前ではただの奪いやすいカモだ。
青をタッチしたメリットとしては他にも《思考を築く者、ジェイス》や、モダンで姿を見ることは珍しい《荒ぶる波濤、キオーラ》がある。「-1」能力の《探検》は土地を伸ばしつつドローを進め、《死の雲》への下準備を済ませてくれる。また、この手のデッキはフィニッシャー不足が悩みの種になりがちだが、青を入れたおかげで《忍び寄るタール坑》が採用できる点もありがたい。
黒いコントロールにありがちな手札破壊スロットをすべて除去とプレインズウォーカーに置換し、メインはあくまでボードコントロールに徹しているのも潔い。プレインズウォーカーが生きたままターンが返ってきたなら、あとは《死の雲》ですべてを吹き飛ばし、無人の荒野で能力を起動しまくろう。
【「黒緑死の雲」でデッキを検索】
■ レガシー: 青黒緑コントロール
4 《Underground Sea》 2 《Tropical Island》 1 《Bayou》 4 《霧深い雨林》 4 《新緑の地下墓地》 3 《汚染された三角州》 -土地 (18)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《氷の中の存在》 3 《悪意の大梟》 3 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー (14)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《陰謀団式療法》 2 《呪文貫き》 4 《突然の衰微》 2 《四肢切断》 4 《Force of Will》 -呪文 (28)- |
3 《ヴェンディリオン三人衆》 3 《思考囲い》 2 《外科的摘出》 2 《見栄え損ない》 2 《残忍な切断》 2 《真髄の針》 1 《毒の濁流》 -サイドボード (15)- |
これまでレガシーにおける《氷の中の存在》の可能性については幾たびとなく言及されてきたところではあるが、今回ついに《氷の中の存在》を4枚搭載したBUGが、ヨーロッパの300人規模のレガシー大会、【BOM Annecy 2016】においてトップ8という結果を残した。
《氷の中の存在》とも相性が良い《ギタクシア派の調査》+《陰謀団式療法》のシナジーが《突然の衰微》や《剣を鍬に》などを叩き落し、《瞬唱の魔道士》がそれらを再利用する。さらに《目覚めた恐怖/Awoken Horror》に変身したなら、使い終わった《瞬唱の魔道士》は手札に戻り、再び呪文を使いまわせるようになるのだ。他にも、バウンスで戻したクリーチャーを《陰謀団式療法》で叩き落せるというシナジーも見逃せない。
何より《氷の中の存在》が恐ろしいのはその打点の高さである。7点というクロックは1回のアタックを通すためだけに《Force of Will》を切る価値があるほどに十分すぎるプレッシャーだ。3回殴れば即終了、2回だけでも《死儀礼のシャーマン》の射程圏というのでは、いかに《秘密を掘り下げる者》や《タルモゴイフ》といえど、ダメージレースを挑むには分が悪い。
さらに《氷の中の存在》同士は互いに干渉しないため、2体並んで一撃14点も狙える。コントロールというよりは「《氷の中の存在》テンポ」とでも呼ぶべきこのデッキは、レガシーのメタゲームに食い込むだけのポテンシャルを十分秘めているように見受けられる。
【「青黒緑コントロール」でデッキを検索】
いかがだっただろうか。
すべてのデッキリストには意思が込められている。
75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。
読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。
また来週!
【晴れる屋でデッキを検索する】
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