週刊デッキウォッチング vol.69 -オールインブルー etc.-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: ローグ



Kobayashi Masanori「ローグ」
PPTQ2016#4 – 横浜西公会堂#3(トップ8)

10 《山》
7 《島》
4 《シヴの浅瀬》
4 《さまよう噴気孔》

-土地 (25)-

4 《次元潜入者》
4 《鎖鳴らし》

-クリーチャー (8)-
3 《意思の激突》
2 《稲妻の斧》
3 《双雷弾》
4 《癇しゃく》
4 《極上の炎技》
2 《一日のやり直し》
3 《粗暴な排除》
2 《溶鉄の渦》
4 《熱病の幻視》

-呪文 (27)-
3 《否認》
2 《ゴブリンの闇住まい》
2 《払拭》
2 《侵襲手術》
2 《邪悪な囁き》
2 《チャンドラの誓い》
1 《双雷弾》
1 《溶鉄の渦》

-サイドボード (15)-
hareruya



次元潜入者熱病の幻視一日のやり直し



 「クロックパーミッション」という戦略は、実現すれば無類の強さを発揮する。それでも《秘密を掘り下げる者》のような軽くて打点の高いクロックも《差し戻し》のような強力なカウンター呪文もない現代においては、そのような戦略は机上の空論と思われがちだが、その代わりに火力呪文によって「クロックパーミッション」の復興を図っているのがこのデッキだ。

 対戦相手がプレイした《灰色熊》に対しては、《対抗呪文》を打とうがエンド前に《火葬》を打とうが現象としては同じである。したがってバニラクリーチャーに対してなら、《稲妻の斧》《双雷弾》《癇しゃく》のようなインスタント火力はまるでカウンター呪文のようにも働くのだ。

 また、パーミッションというアーキタイプにおいては《ミューズの囁き》《嘘か真か》のようなドロー呪文が不可欠となるところ、《熱病の幻視》はドローとクロックを兼ねる極めて優秀なフィニッシャーとなる。そしてもし対戦相手が手札を素早くダンプできるデッキならば、《一日のやり直し》で無理矢理引かせてしまえばよい。

 赤いデッキといえば《ウェストヴェイルの修道院》が弱点となりがちだが、そこは青赤というカラーリングの切り札=《粗暴な排除》がきっちりケアをしている。こちらが動けば火力の的となり、動かなければ《次元潜入者》《鎖鳴らし》がクロックを増していく。中速以下のデッキが多いスタンダードにおいて、「クロックパーミッション」は実に的確なアプローチと言えるだろう。


【「ローグ」でデッキを検索】





■ モダン: 秘密を掘り下げる者



Morioka Ryouta「秘密を掘り下げる者」
平日モダン20時の部(3-0)

17 《島》

-土地 (17)-

4 《秘密を掘り下げる者》
4 《ニヴメイガスの精霊》
2 《膨れコイルの奇魔》
4 《氷の中の存在》
1 《上位の空民、エラヨウ》

-クリーチャー (15)-
4 《はらわた撃ち》
4 《ギタクシア派の調査》
4 《血清の幻視》
4 《万の眠り》
3 《変異原性の成長》
4 《使徒の祝福》
4 《差し戻し》
1 《ルーン唱えの長槍》

-呪文 (28)-
3 《ハーキルの召還術》
2 《払拭》
2 《外科的摘出》
2 《瞬間凍結》
2 《ドラゴンの爪》
2 《太陽のしずく》
1 《計略縛り》
1 《倦怠の宝珠》

-サイドボード (15)-
hareruya



ニヴメイガスの精霊氷の中の存在万の眠り



 最近新しいモダンのデッキを作ろうと思って《氷の中の存在》を使ったデッキを色々といじっていたのだが、ありがちな青赤というカラーリングだと《紅蓮術士の昇天》《若き紅蓮術士》《嵐追いの魔道士》といった2マナ域のライバルが多く、最終的に《氷の中の存在》の必要性が疑わしいデッキになりがちだった。私の場合はそこで諦めてしまったのだが、しかしこのデッキは、私が実現できなかった《氷の中の存在》の必要性を兼ね備えたモダンの新アーキタイプ」を見事に作り上げることに成功している。

 なぜ《氷の中の存在》が必要なのか?その理由は土地のスロット「17 《島》」を見ればわかるように、青単だからだ。そして、そうは言っても青単で《秘密を掘り下げる者》以外にまともな1マナ域が存在するのか?と思われるところ、《ニヴメイガスの精霊》の存在がうまいことデッキのコンセプトに噛み合っている。《氷の中の存在》を最速で変身させるためにはファイレクシアマナのスペルを大量に搭載する必要があるところ、《ニヴメイガスの精霊》もまた、ファイレクシアマナのスペルと相性が良いからだ。

 さらに《ニヴメイガスの精霊》《万の眠り》の「複製」でスタックに積まれたコピーも追放できるため、一瞬にして恐ろしいサイズに膨れ上がる。そしてその攻撃を通すための《使徒の祝福》は、《氷の中の存在》を守る用途にも使える。

 他にもフェッチランドを使っておらず、お財布に優しい点も見逃せない。お気に入りの《島》の絵柄で、あるいは《氷の中の存在》のイメージに合わせた《冠雪の島》で、戦場を青一色に染め上げよう。


【「秘密を掘り下げる者」でデッキを検索】





■ レガシー: 12ポスト



Hiyama Kenji「12ポスト」
晴れる屋レガシー杯(4-1-1)

10 《島》
4 《雲上の座》
4 《微光地》
3 《古えの墳墓》
2 《ヴェズーヴァ》
1 《すべてを護るもの、母聖樹》
1 《ウギンの目》

-土地 (25)-

4 《難題の予見者》
2 《ワームとぐろエンジン》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《大いなる歪み、コジレック》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー (9)-
4 《思案》
4 《呪文貫き》
4 《実物提示教育》
3 《狡猾な願い》
4 《全知》
4 《探検の地図》
1 《師範の占い独楽》
3 《厳かなモノリス》

-呪文 (27)-
3 《外科的摘出》
2 《誘惑蒔き》
2 《漸増爆弾》
1 《有毒の蘇生》
1 《青霊破》
1 《魔法改竄》
1 《計略縛り》
1 《エラダムリーの呼び声》
1 《拭い捨て》
1 《嘘か真か》
1 《誤った指図》

-サイドボード (15)-
hareruya



雲上の座実物提示教育全知



 「12ポスト」というアーキタイプは、【vol.9】【vol.30】【vol.53】でも紹介したように、緑をメインカラーにすることがほぼ前提となっている。それは《輪作》《原始のタイタン》によって《雲上の座》《微光地》《ヴェズーヴァ》をサーチし、「神座」の恩恵を受けて重いマナ域の呪文をプレイするというのが「12ポスト」のメインコンセプトだからだ。だが、そのような既成概念を打ちこわし、青単にすることで「オムニテル」とのハイブリッドを図っているのがこのデッキだ。

 《Force of Will》の代わりに《難題の予見者》を採用し、青いカードへの依存度を下げてMUD的なスペル構成との折衷を目論んだこの形は、通常の「オムニテル」と異なり《Force of Will》がないのと、《島》を並べ続けることができないために《不毛の大地》を食らうので序盤戦の優位は薄いが、その分なんといっても「神座」の爆発力のおかげで《全知》のハードキャストすらも狙える点が強みだ。

 ハイブリッドのおかげで、「《実物提示教育》《全知》」ルート、「《実物提示教育》→デカブツ」ルート、「《雲上の座》《厳かなモノリス》→デカブツ」ルートなど複数の勝ち手段が狙える。そして勝ち手段が複数あるということは、致命的なサイドカード1枚に封殺されない、ということを意味しているのだ。

 洗練されたコンセプトのデッキばかりが上位を占めるレガシーだからこそ、「わからん殺し」(=デッキ構造の全体を把握させないという点でアドバンテージを得ること) の効果は他のフォーマットよりも大きい。ハイブリッド度合いの調整は職人並みの精密さが必要になるが、挑戦してみる価値はありそうだ。


【「12ポスト」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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