マジックの華は、デッキリストだ。
そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。
だから、デッキリストを見るということは。
そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。
この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。
もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。
それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。
■ スタンダード: ローグ
6 《森》 6 《島》 4 《進化する未開地》 4 《伐採地の滝》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 1 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地 (25)- 4 《棲み家の防御者》 4 《エルドワルの照光》 4 《森の代言者》 1 《果敢な捜索者》 4 《不屈の追跡者》 4 《つむじ風のならず者》 -クリーチャー (21)- |
4 《未知との対決》 4 《継続する調査》 2 《謎の石の儀式》 4 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 -呪文 (14)- |
4 《否認》 2 《層雲の踊り手》 2 《翼切り》 2 《岸の飲み込み》 2 《ウルヴェンワルドの謎》 2 《飛行機械の諜報網》 1 《死者を冒涜するもの》 -サイドボード (15)- |
「調査」をテーマにしたデッキは【vol.66】でも紹介したが、今回はコンボデッキではなく「調査ビートダウン」を紹介しよう。
「調査」の難しいところは、手掛かり・トークンを出すこと自体はそれほど難しくないものの、カードを引くためにはいちいち2マナを払わなければならない点にある。【vol.66】のデッキでは《タミヨウの日誌》を採用することでその問題をクリアしていたが、結局5マナのカードをプレイしないといけないというのではマナがかかることに変わりがない。そこでこのデッキにおいては、発想を根幹から逆転させ、「もはや手掛かり・トークンをサクらないでパーマネントとして運用する」ことで、新たなコンセプトを生み出すことに成功している。
そんな荒業を可能にしているのが《未知との対決》。自ら手掛かり・トークンを生み出すだけでなく、コントロールしている手掛かり・トークンの数だけ威力が増すこのカードを使えば、《不屈の追跡者》がどれだけ手掛かり・トークンを生み出しても無駄になることはない。
さらに《つむじ風のならず者》のブロック不可付与能力も有り余る手掛かり・トークンを使えば起動し放題だし、適当に手掛かり・トークンをバラ撒いたら、裏向きの《棲み家の防御者》に《未知との対決》を打ち込み、さらに《棲み家の防御者》を表返しつつ2発目を打ち込んで一撃ノックアウトといった芸当も狙える。このデッキを相手に小粒なクリーチャーばかりと油断していると、思わぬ角度から手痛いしっぺ返しを食らいそうだ。
【「ローグ」でデッキを検索】
■ モダン: 白赤緑ビートダウン
2 《森》 2 《平地》 3 《寺院の庭》 2 《聖なる鋳造所》 2 《踏み鳴らされる地》 4 《吹きさらしの荒野》 2 《樹木茂る山麓》 1 《根縛りの岩山》 1 《陽花弁の木立ち》 2 《怒り狂う山峡》 2 《ガヴォニーの居住区》 -土地 (23)- 4 《極楽鳥》 4 《復活の声》 2 《クァーサルの群れ魔道士》 3 《大爆発の魔道士》 3 《スパイクの飼育係》 1 《永遠の証人》 2 《高原の狩りの達人》 2 《テューンの大天使》 1 《目覚ましヒバリ》 2 《太陽のタイタン》 -クリーチャー (24)- |
3 《流刑への道》 2 《稲妻のらせん》 3 《不死の贈り物》 2 《爆破基地》 3 《先駆ける者、ナヒリ》 -呪文 (13)- |
4 《耳障りな反応》 2 《漁る軟泥》 2 《跳ね返す掌》 2 《神の怒り》 2 《漸増爆弾》 1 《呪文滑り》 1 《クァーサルの群れ魔道士》 1 《召喚の罠》 -サイドボード (15)- |
モダンにおいて相手の心を折る方法があるとすればそれは何だろうか?トロンに対して《大爆発の魔道士》を出す?バーンに対して《スパイクの飼育係》を出す?否、それくらいではまだ相手は意気軒昂と立ち向かってくる。だが、もしそれらに《不死の贈り物》がついたらどうだろう?きっとその瞬間、相手はすべての感情をなくしてテーブルの上のカードをさっと片づけることだろう。
このデッキは《スパイクの飼育係》と《テューンの大天使》の無限コンボデッキ、いわゆる「テューンスパイク」に《不死の贈り物》シナジーを混ぜ込んだデッキとなっている。《不死の贈り物》は自発的に生け贄に捧げられる《大爆発の魔道士》《スパイクの飼育係》といったクリーチャーと相性が良いが、ETB能力しか持たない《永遠の証人》《高原の狩りの達人》のようなクリーチャーに付けても、《爆破基地》を使うことで循環を堪能することができる。
除去耐性のないクリーチャーに3マナのエンチャントを付けるなど、モダンにおいては不可能事と思われるかもしれない。だがたとえ対応して除去呪文を打たれて《不死の贈り物》が墓地に落ちたとしても、《太陽のタイタン》までたどり着けば何の問題もない。
ただでさえ出し得なクリーチャーたちが、《不死の贈り物》で何度でも戦場を出入りする。そしてそんな面倒なパーマネントの相手をしてしまえば、今度は《スパイクの飼育係》と《テューンの大天使》のコンボが襲い掛かる。相手の心を折りにいきたい日にはうってつけのデッキと言えるだろう。
【「白赤緑ビートダウン」でデッキを検索】
■ レガシー: グリセルストーム
1 《沼》 2 《Bayou》 2 《Underground Sea》 1 《Badlands》 1 《Scrubland》 3 《湿地の干潟》 2 《汚染された三角州》 1 《宝石鉱山》 -土地 (13)- 1 《虐殺のワーム》 1 《地獄彫りの悪魔》 4 《グリセルブランド》 -クリーチャー (6)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《渦まく知識》 4 《納墓》 4 《暗黒の儀式》 4 《陰謀団式療法》 4 《冥府の教示者》 4 《浅すぎる墓穴》 2 《暴露》 2 《苦悶の触手》 1 《堀葬の儀式》 4 《水蓮の花びら》 4 《ライオンの瞳のダイアモンド》 -呪文 (41)- |
3 《突然の衰微》 2 《花の絨毯》 2 《先駆ける者、ナヒリ》 1 《悟った達人、ナーセット》 1 《巣穴からの総出》 1 《孤独の都》 1 《ファイレクシアの闘技場》 1 《漸増爆弾》 1 《防御の光網》 1 《ヴェールのリリアナ》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード (15)- |
《精神の願望》というカードをご存じだろうか?かつて存在した「エクステンデッド」というフォーマットにおいて猛威を振るったカードだ(参考: 【コガモメモリーズ】)。あまりに強すぎる効果ゆえにレガシーでは禁止カードに指定されているが、そこはカードプールが広いレガシーだけに、これとよく似た効果を実現できるクリーチャーが存在する。《地獄彫りの悪魔》だ。
ひとたび攻撃が通ればすべての手札とすべてのパーマネントを生け贄にライブラリトップから6枚を自由にプレイできるようになるこのカードは、《グリセルブランド》単とも呼べる「Tin Fins」において、《Karakas》も《真髄の針》も効かない《グリセルブランド》としての役目を担う。6枚の中に《苦悶の触手》があれば、まるで往年の《精神の願望》からの《苦悶の触手》さながらに大ダメージをたたき出すことが可能だ。
《ライオンの瞳のダイアモンド》+《堀葬の儀式》のオプションによって《納墓》を釣り竿としても機能させることが可能となるし、《虐殺のワーム》はヘイトベアーをまとめて薙ぎ払いつつも《苦悶の触手》の露払いとなる。
サイドボード後に《暗黒の儀式》から着地する《ヴェールのリリアナ》や《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》は《墓掘りの檻》などをサイドインしてくる相手に対する強烈なカウンターパンチとなるほか、単体でフィニッシャーとなりつつサイドカードを探しにいける《先駆ける者、ナヒリ》の投入はさすがに予想できない。オールインのメインボードとコントロールのサイドボード、どちらも無数のアイデアの詰まった力作だ。
【「グリセルストーム」でデッキを検索】
■ ヴィンテージ: 人間アグロ
4 《真鍮の都》 4 《宝石鉱山》 4 《マナの合流点》 4 《魂の洞窟》 1 《露天鉱床》 1 《不毛の大地》 -土地 (18)- 4 《貴族の教主》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 3 《アヴァブルックの町長》 3 《闇の腹心》 3 《封じ込める僧侶》 3 《クァーサルの群れ魔道士》 2 《堂々たる撤廃者》 4 《瘡蓋族の狂戦士》 3 《カマキリの乗り手》 2 《反射魔道士》 -クリーチャー (31)- 1 《Ancestral Recall》 1 《Time Walk》 1 《Black Lotus》 1 《Mox Emerald》 1 《Mox Jet》 1 《Mox Pearl》 1 《Mox Ruby》 1 《Mox Sapphire》 -パワー9 (8)- |
3 《突然の衰微》 -呪文 (3)- |
3 《イゼットの静電術師》 3 《外科的摘出》 3 《石のような静寂》 2 《不毛の大地》 1 《封じ込める僧侶》 1 《堂々たる撤廃者》 1 《反射魔道士》 1 《突然の衰微》 -サイドボード (15)- |
今週末には【第6期神決定戦】が開催されるということで、2週続けてヴィンテージの最新デッキをお届けしよう。「オース」「メンター」「MUD」「ストーム」「Dredge」といった定番のデッキが多いという印象のヴィンテージだが、プレイヤー人口が増加したことで、【先週】紹介した「エルドラージ」だけでなく、近頃は様々な地殻変動が起きているように見受けられる。その代表的な例がこの5色人間だ。
ここ最近のエキスパンションによって「人間」というクリーチャータイプは大幅に強化されている。それらは無論様々な色に散らばっているが、ヴィンテージなら色の制約は大した問題とはならない。何より《磁石のゴーレム》が制限カードとなった今、先手1ターン目の行動として最も有力なのは《スレイベンの守護者、サリア》になりつつある。ならば《魂の洞窟》を最大限活用した「人間ヘイトベアー」というのはすこぶる合理的な発想と言えるだろう。
《瘡蓋族の狂戦士》はコントロール系のデッキに対して無類の強さを発揮することが予想される。《カマキリの乗り手》は《三角エイの捕食者》すらも乗り越える、ヴィンテージにおいて(《グリセルブランド》や《引き裂かれし永劫、エムラクール》を除いて)最も巨大な飛行クリーチャーかもしれない。
それにしても《アヴァブルックの町長》や《反射魔道士》がヴィンテージ級だと誰が予想しただろうか?デッキビルダーたちの知恵のおかげで、こういった予測もつかないデッキが活躍するのを見ることができるのは間違いなくマジックの良いところだ。
【「人間アグロ」でデッキを検索】
いかがだっただろうか。
すべてのデッキリストには意思が込められている。
75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。
読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。
また来週!
【晴れる屋でデッキを検索する】
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