週刊デッキウォッチング vol.74 -アーリンジャンド etc.-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【晴れる屋のデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: ローグ



Matsui Shintarou「ローグ」
休日スタンダード20時の部 (3-0)

5 《森》
5 《山》
3 《燃えがらの林間地》
4 《獲物道》
3 《崩壊する痕跡》

-土地 (20)-

4 《壌土のドライアド》
4 《村の伝書士》
4 《エルフの幻想家》
3 《薄暮見の徴募兵》
2 《ケラル砦の修道院長》
4 《銀毛の援護者》
4 《面晶体の掘削者、ザダ》

-クリーチャー (25)-
4 《促進》
4 《大群の力》
2 《イトグモの蔦》
2 《空間の擦り抜け》
1 《邪悪な囁き》
2 《謎の石の儀式》

-呪文 (15)-
4 《集合した中隊》
4 《吠え群れの復活》
3 《ラムホルトの平和主義者》
2 《アドレナリン作用》
1 《ウルヴェンワルドの謎》
1 《森》

-サイドボード (15)-
hareruya



銀毛の援護者面晶体の掘削者、ザダ大群の力



 《面晶体の掘削者、ザダ》が生み出すグルーヴ感はすさまじく、《促進》ならわずか1マナで《集団潜在意識》になるし、《巨大化》系スペルなら《踏み荒らし》をプレイしたような状態になる。だが、如何せん《面晶体の掘削者、ザダ》だけではデッキに4枚しか積めない。《面晶体の掘削者、ザダ》の代替パーツは存在しないのだろうか?否、《銀毛の援護者》を使えばいいのだ。

 《銀毛の援護者》は対象にするたびに狼トークンを生み出せるため、《促進》など《面晶体の掘削者、ザダ》がいないとイマイチな効果の呪文でもアドバンテージがとれる。またトランプルを持っていることから《大群の力》との相性も良い。解決前に先にトークンが出るため、ちょっとお得な気分だ。

 何よりすさまじいのは両者が盤面に揃ったときだ。《面晶体の掘削者、ザダ》にプレイした呪文は最終的に盤面の狼/狼男をすべて対象にとることになるため、《村の伝書士》《薄暮見の徴募兵》、さらには《銀毛の援護者》で既に出ていた狼トークンの数だけ、追加で狼トークンが出てくることになる。ここでもしも2回目の呪文を唱えようものなら狼の数はさらに倍、それが《大群の力》なら……想像するだに恐ろしい。

 サイド後には《ラムホルトの平和主義者》《吠え群れの復活》《集合した中隊》を投入し、インスタントタイミングで行動する狼/狼男ビートダウンへと変貌する。白いデッキばかりのスタンダードに飽いてたまにはグルーヴ感を味わいたいという方は、《面晶体の掘削者、ザダ》で赤いデッキの可能性を追求してみるといいだろう。


【「ローグ」でデッキを検索】





■ モダン: ローグ



Aachen「ローグ」
Competitive Modern Constructed League – 2016/06/27(5-0)

9 《平地》
2 《森》
4 《寺院の庭》
4 《吹きさらしの荒野》
3 《空の遺跡、エメリア》
2 《幽霊街》

-土地 (24)-

4 《桜族の長老》
4 《前兆の壁》
1 《クァーサルの群れ魔道士》
4 《永遠の証人》
2 《不屈の追跡者》
1 《歓楽の神、ゼナゴス》
2 《太陽のタイタン》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー (19)-
4 《流刑への道》
4 《明日への探索》
2 《神の怒り》
2 《原初の命令》
2 《歯と爪》
2 《野生語りのガラク》
1 《太陽の勇者、エルズペス》

-呪文 (17)-
4 《大祖始の遺産》
2 《クァーサルの群れ魔道士》
2 《酸のスライム》
2 《審判の日》
1 《猛り狂うベイロス》
1 《太陽のタイタン》
1 《自然に帰れ》
1 《原初の命令》
1 《忘却の輪》

-サイドボード (15)-
hareruya



空の遺跡、エメリア野生語りのガラク歯と爪



 もはや何でもありといった様相のモダン環境だが、モダンに関して一つ言えることがあるとすれば、「ジャンドと親和とバーンに勝てれば割となんとかなる」ということである。つまり、タフなアドバンテージ獲得エンジンと全体除去、ライフ回復手段+速やかなフィニッシュブローが揃っていればいいのだ。

 そんな思想を体現したのが今回紹介する白緑エメリアで、《明日への探索》《桜族の長老》で3ターン目の4マナを確保しつつ、EtB能力持ちのクリーチャーたちと《太陽のタイタン》《空の遺跡、エメリア》の組み合わせでジャンドを粉砕。親和は最低限の《流刑への道》《永遠の証人》、それと《原初の命令》からの《クァーサルの群れ魔道士》でお茶を濁し、バーン相手は《原初の命令》《永遠の証人》で心を折りにいく構造となっている。

 《空の遺跡、エメリア》デッキといえばフェアデッキには強いものの、対コンボデッキにおいてスピードが足りずにいいようにやられるイメージだったが、このデッキは《野生語りのガラク》からの《歯と爪》という強力な勝ち手段を採用しており、白いコントロールと見て油断する対戦相手を《歓楽の神、ゼナゴス》《引き裂かれし永劫、エムラクール》で一瞬のうちに屠りつくすことが可能だ。

 さらに《太陽の勇者、エルズペス》《不屈の追跡者》といった最近のカードが採用されているほか、土地やスペル、サイドボードも手に入りやすいカードが多く、デッキの値段が比較的安めなのも魅力的だ。コンボデッキやオールインのビートダウンばかりがモダンではない。モダンというフォーマットの懐の深さを感じさせるリストだ。


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■ レガシー: ジャンド



Tom Nelson「ジャンド」
StarCityGames.com – Legacy Classic 2016/06/26 Dallas(12位)

2 《沼》
1 《森》
3 《Badlands》
3 《Bayou》
1 《Taiga》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《新緑の地下墓地》
1 《怒り狂う山峡》
4 《不毛の大地》

-土地 (23)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《タルモゴイフ》
4 《闇の腹心》

-クリーチャー (12)-
4 《稲妻》
4 《思考囲い》
4 《突然の衰微》
4 《トーラックへの賛歌》
2 《Chains of Mephistopheles》
3 《ヴェールのリリアナ》
2 《情け知らずのガラク》
2 《アーリン・コード》

-呪文 (25)-
4 《墓掘りの檻》
3 《仕組まれた疫病》
2 《大渦の脈動》
2 《血染めの月》
2 《真髄の針》
1 《Chains of Mephistopheles》
1 《無のロッド》

-サイドボード (15)-
hareruya



トーラックへの賛歌Chains of Mephistophelesアーリン・コード



 レガシーといえば青、レガシーといえば奇跡。そんな前提に抗うべく、非青デッキ使いたちは日夜研究を重ねている。そして非青デッキの代表格とも言える「ジャンド」が、このたび新機軸を示した。それがこの「アーリンジャンド」だ。

 《罰する火》を大胆にカットし、代わりに究極の《渦まく知識》対策とも言える《Chains of Mephistopheles》に加え、4マナ域のプレインズウォーカーを合計4枚も採用したこの構造をもってすれば、奇跡の側は次々と並ぶ放置できないパーマネントを前に成すすべなく膝を屈するに違いない。

 サイドボードも《紅蓮破》系スペルをとらず、《実物提示教育》はもはや諦めているように思われるのがいっそ清々しい。

 《情け知らずのガラク》《アーリン・コード》といった両面のプレインズウォーカーたちは【両面カードに関するルールの改定】によって《突然の衰微》《漸増爆弾》に対して強くなっている。非青デッキは青いデッキに対する切り札として、これらのプレインズウォーカーを見直すべき時期に来ているのかもしれない。


【「ジャンド」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、ぜひ色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【晴れる屋でデッキを検索する】



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